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中国製7石トランジスタラジオキットのゲルマニウムトランジスタ化~その2~ [ラジオ]

2018年8月11日の日記

完成基板2.jpg やっと,鳴るようになりました......。

さて,前回は中国製の7石(実際には6石ですけど)トランジスタラジオキットをAmazonで購入して,ゲルマニウムTrで作り始めました。

とりあえず,まずは低周波部から組み立てて,順次,テストしていきます。

案の定,ウンともスンとも言いません。それに,普通はスイッチが入ったとたん,ガリッと音がするのが普通ですが,それすら言わないので,これは悪い予感がします.....。

まず,ウンともスンとも言わないのは低周波部のトラブルが予想されます。

問題はやはり,低周波段の2SB171のバイアス回路にありました。

ここは前回も指摘しましたように,S9013Hという中国製Trを固定バイアスで使っています。これは危険な回路で,個々のTrの特性に依存しますので,このままだと簡単に他のTrと入れ替えることができません。おまけに温度的に不安定で,もともとTrという素子は温度係数が正のため,温度が上昇するとさらに電流が流れやすくなる性質があり,危険なのですが,この回路ではそれを防ぐことができません。

Tr固定バイアス回路1.jpg固定バイアス回路

このとき,コレクタ電流ICは次の通りとなります。また,Trは導通状態ではシリコンでVBE=0.6V,ゲルマで0.2Vとほぼ一定と考えてよいので,Vccが一定で,同じTrを使うなら,コレクタ電流はRBだけで決まっちゃうことになります。

          Ic計算式(固定バイアス).jpg       

問題はIChFEの関数になっちゃうことで,hFEというのはTrの品種によっても,また,同じTrでも製造時のばらつきが非常に大きく,平気で2倍や3倍くらいは変わっちゃうので,この回路にしちゃうとほかのTrと差し替えができません。おまけにTrは温度係数が正なので,温度が上昇すると際限なくコレクタ電流が流れてしまうことになります。熱暴走ですね。

そこで,こういうことがないように考えられたのが電流帰還バイアスで,エミッタに抵抗が入っているのが特徴です。特にゲルマの時代は電流帰還バイアスが定位です。▼の図の (a) が正規? の電流帰還バイアス回路です。

Tr電流帰還バイアス回路1.jpg電流帰還バイアス回路

ベースに分流回路を設け,そこにベース電流より多め(10倍以上)の電流を流してやれば,ベース電位はほぼ固定されちゃいますので,自動的にコレクタ電流も決まってしまいます。

          Ic計算式(電流帰還バイアス).jpg

さっきの固定バイアスと違うのは,分流回路にIBより十分大きな電流を流す,と言う条件がありますが,hFEが出てこないことで,Trのばらつきを抑えることができます。

この回路だと温度的にも安定で,仮にコレクタ電流が増えても自動的にエミッタ電位が上昇し,コレクタ電流を制限する方向に作用します。ちょっと負帰還みたいな感じなので,これを電流帰還というのですが,わかりにくい用語だといつも思います。ちなみに真空管の自己バイアスはこの作用があり,過電流が流れると自動的にカソードの電位が上昇し,バイアスが浅くなる(プレート電流が減る)ようになっていて安全です。

Trのパワーアンプに終段のTrのエミッタに0.22Ωや0.47Ωといった低抵抗が入っているのはそのためで,これを省略すると危険です。金田式アンプなんかでは省略してしまっているのですけどね.....。安全を考えたら入れておくべきです。

ただ,どういうわけか,シリコンの時代になると,R2を省略してしまった(b)の回路が増えてきます。Cherryの6石や8石のTrラジオキットもそうですし,シリコンTrを使った市販ラジオはほぼこれです。Trのばらつきが減ってきたからとか,ひとつでも部品を減らしたい,と言うこともあったのでしょうけどね.....。

なぜかこれも電流帰還バイアスの一種,と言うことになっているのですが,iruchanはこれは固定バイアスと言うべきだと思っています。やはり安定性の面では (a) の方が優秀なのは言うまでもありません。今回の中国製キットも高周波部はこの回路になっています。

先ほども書きましたが,低周波部は固定バイアスになっていて,最初,試しにそのままやってみたら思いっきり発振してスピーカから強烈な音がします。オシロで見てみると,4kHzくらいで発振していました。やはり固定バイアスはダメです。

しかたないので,エミッタに抵抗を入れ,きちんと電流帰還バイアスにしたら発振が止まりました。やはりゲルマニウムTrは電流帰還型バイアスでないとダメなようです。

そこで,まずは固定バイアスとなっている,低周波段の定数をLTspiceで決めて抵抗を変更しました。基本的にはA級シングルアンプなので,動作点はロードラインの中点に来るようにします。

今回,低周波用ゲルマニウムTrのSpiceモデルも作りました。東芝の2SB542SB56を作っておきましたので,ご利用ください。この2種類があれば,電圧増幅用と電力増幅用のTrモデルとして使えるでしょう。ゲルマのSpiceモデルはネットを探してもほとんど見つかりませんので,ご利用いただければ幸いです。高周波TrとしてはNECの2SA56のモデルを作りましたので,詳しくはこちらをご利用ください。

Here are the LTSpice models of Japanese low-frequency germanium transistors. 

.model 2SB54 PNP (IS=2.21785661056217E-10, BF=80, EG=0.67, VAF=67, RB=10, RC=1.53846153846154, TF=1.59154943091895E-07, CJC=42p, CJE=63p, MFG=TOSHIBA)

.model 2SB56 PNP(IS=5.28833988298141E-10, BF=56, EG=0.67, VAF=71, RB=10, RC=3.6231884057971, TF=1.59154943091895E-07, CJC=42p, CJE=63p, MFG=TOSHIBA)
 
この,.modelではじまる部分を,LTspiceのstandard.bjtファイルのどこかにコピペしておけば使えるようになります。

XH108-2 低周波部Spice.jpg LTspiceでシミュレーションです。

        ☆         ☆         ☆

ようやくこれで低周波部が動作するようになり,スピーカからもガリガリと音がするようになりました。

ただ,まだおかしい......orz。

どうにも音量が非常に小さいのです。

さんざん原因を調べたところ,やはり5kΩの可変抵抗が不良のようです。どう見てもチャチだし,壊れそうと思っていました。しかたないので,Alpsの基板用に交換しました。

また,出力段のバイアスは河童さんからいただいた基板についていた,SV31を使います。これはバリスタです。

ゲルマニウムTrの時代は,温度補償用によく用いられました。電気的にはDiですが,温度特性がTrと同じのため,出力段の素子の温度補償用に用いられます。オリジナルの回路も1N4118というDiを使っています。

SV31底面.jpg 三洋のバリスタSV-31底面

う~~ん,ひっくり返して底を見たら,ちょっと面白いことに気づきました。

実を言うと,バリスタというのはP-N接合面を持っていて,Diと同じ構造なのですが,出来損ないのTrを使っていた,と言う話があります。Trは初期の頃は非常に歩留まりが悪かったのはよく知られていますが,コストも高いので,ひとつP-N接合ができなかったとか,特性が悪くてリジェクトされたTrの脚を1本切って,バリスタにしていることがあります。SV-31ももとは3本脚だったようで,そういう感じです。英MullardのOCP70というフォトTrも,OC70の出来損ないだという話を以前書きましたけど,バリスタもそのようだったようです。

ところが....。

いつもはiruchanはここにサーミスタを使っているのですが,SV31を使ってみると厄介なことに気づきました。サーミスタだと動作電流でバイアスを自由に変更できますが,バリスタだとそうはいきません。使用してみたら出力段の2SB134に100mAくらいの電流が流れて,触ると熱くなっています。まずい......。

残念ながら,サーミスタだとサーミスタに電流を流すための抵抗を大きくするとバイアスが小さくなりますが,バリスタだと調整できません。しかたないので,ここはバリスタをあきらめ,いつもの通りサーミスタにしました。

さて,ようやくこれで低周波部はOKとなったので,次は局発から調べていきます。

残念ながら,こちらも動作していません......orz。

本機は高周波部(IF含む)はすべて電流帰還型バイアス回路となっていますが,シリコンTrの場合は,少々手抜き? の (b) のバイアス回路となっていることが多く,今回もオリジナルはこうなっています。

LTspiceで回路定数を決め,きちんと電流帰還型バイアスにしてようやく局発が動作するようになりました。

        ☆         ☆         ☆

さて,ここまで来たらトラッキング調整を先に済ませてしまいます。最後でいいんですけど,ゲルマニウムTrを使っているし,例によってカバレージでトラブるので先に調べておこうと思います。高い方で発振が止まる,なんてこともよくありますので.....。

局発はAMラジオの場合,受信周波数+IF分だけ高い周波数を発振させないといけません。今回,IFは450kHzで作ることにしますから,985kHz~2055kHzで発振すればOKです。

またまたところが.....。

予想してたんですが,上が厳しい~~!!

どうやっても1800kHzくらいにしかなりません。これじゃ,受信上限は1350kHzということになっちゃいます[雨][雨]

オリジナルのシリコンTrだと問題ないのかもしれませんが,バリコンを交換するしかなさそうです。

どー見てもチャチなバリコンだったし,これはアカンのちゃうか? と思っていたらやっぱりでした。

しかたないので,やはり日本製のミツミのPVC-20Yに交換したら楽勝で2200kHzくらいまで発振しますから,ちゃんとカバレージが取れました。

頭に来て,LCRメータで容量を調べました。

中国製7石Trラジオバリコン
OSC 5.5pF ~  63.8pF
ANT 5pF ~  144.7pF
 
ミツミ PVC-20Y
OSC 4.44 ~ 64.6pF
ANT 4.47 ~  145.3pF
  
なんだ,悪くないじゃないか,と思ってしまうのですが,トリマがおかしく,メインのバリコンの下限位置だとちゃんと調整が効くのですが,上限位置だとトリマを回してもほとんど変化しません。
 
局発上限.jpg 局発の波形
 
調整は,いつも通り,下限をOSCコイル(コア赤)で決め,上限はバリコンのトリマ(O)であわせます。このとき,局発のTr(2SA353)のコレクタにデジタルオシロや周波数カウンタをつなぐと調整ができます。
 
        ☆         ☆         ☆

次はIFTのコアの調整をしして,きちんとIFに同調させておきます。テストオシレータを450kHzで発振させ,適当な電線をつないでおくと,バーアンテナが受信します。テストオシレータは1kHzくらいで変調できるので,AM変調した正弦波を出しておいて音が最大になるようにコアを調整すればOKです。

ちなみに,iruchanは455kHzじゃなく,450kHzで調整することにしています。PLLシンセサイザのラジオは450kHzとなっていることが多いです。なお,どういうわけか,本機は465kHzのようです。中国はIFが465kHzなんでしょうか......。ちなみに,日本で455kHzと決められたのは1950年のことで,戦後初期のスーパーのラジオは463kHzです。

さて,ここまで来たら普通は放送が聞こえるはず.........なんですけど......。

まだ,ほとんど放送が聞こえません。ダイヤルを回すとかすかに放送が聞こえるところがありますが,ほとんどガーッと言っているだけです。

う~~ん,困ったな~~~

とりあえず,こうなったら疑うのはIFの発振。オシロをつないで各IFのコレクタの電圧波形を見てみます。

すると,やはりIFの1段目が2Vrmsくらいに強烈に発振していました......orz。周波数も480kHzくらいです。

IF1発振.jpg あちゃ~~~~[雨][雨]

まあ,これはよくあることで,今までiruchanも自作のラジオでは必ず経験すると言っていいくらいです。さすがにCherryの6石や8石のキットはそういうことはなく,やはり優秀なキットだと思いました。TrのスーパーのラジオでIF2段のものは必ずと言っていいくらい,発振してしまいます。

原因は,やはりゲイン過大,というのが最大の問題です。

hFEの低いTrに交換する,と言うのも手ですが,よほど初期のTrでない限り,hFEの小さなTrというのはありませんし,そもそも,普通のTrラジオはシリコンTrなんですが,これだったら最低でもhFEは100くらいはありますから,そんなTrを使っていてもメーカー製のラジオは発振したりしませんから,Trの交換は最後の手段と考えます。

手としては,負荷となっているIFTの1次側インピーダンスを下げることです。

具体的には,パラに100kΩくらいの抵抗を接続してQをダンプします。普通はこれで直ります。日立製ゲルマニウムTrを使った自作スーパーもこれで止まりました。

でも,これはダメでした。やはり強烈に発振します。

しかたないので中和を試してみます。

IFTの反コレクタ側のピンからベースに数pFのセラミックコンデンサをつないでみます。

いろいろと容量を変えてみましたが,やはり発振が止まりません。

次に疑うのはIFTとアンテナコイルが結合していること。場合によってはIFT同士が結合していることもありますが,たいていはバーアンテナがIFの漏れを拾って発振しています。

特に,今回の基板が小さいので,アンテナコイルが近接していて,これはあり得そうです。

でもこちらもバーアンテナの接続を外しても発振が止まらないので,IFTと結合しているわけではなさそうです。

ほかには,検波のDiのあとのフィルタの定数が悪く,AGC回路に高周波が漏れているというようなことが原因だったりします。特に,HiFi用ということでここのカットオフ周波数を高くしたり,負荷インピーダンスを小さくしているとこういうことがあります。

あとは,コレクタ電流が大きすぎると発振することがあります。IF段は最大でも1mAくらいが普通で,あまり大きな電流にしてはいけません。結局,本機は0.2mAくらいまで電流を下げました。-Vccからベースに入っている抵抗を最初は22kΩにしていたのですが,最終的に100kΩに上げています。ちなみに,CherryのCK-606は330kΩを使っています。

そこで,820kΩにしたら発振は止まったのですが,さすがにやり過ぎ,という感じで,結局,IF1のベース抵抗は100kΩとしました。

これでようやく局が入るようになり,高校野球中継が入るようになりました[晴れ][晴れ]

最終的な中国製7石Trラジオキットのゲルマニウム版回路は下記の通りとなりました。

7管式収音机回路GE版.jpg

まだ,感度不足で,NHKでもボリウム最大でようやく音が聞こえる,と言う次第なんですが,つづきはまた次回とします。


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中国製7石トランジスタラジオキットのゲルマニウムトランジスタ化~その1~ [ラジオ]

2018年7月17日の日記

急に猛烈な暑さとなりました。一昔前まで考えられなかったような最高気温が記録されています。皆様におかれましては,くれぐれもお身体ご自愛ください。

さて,このところゲルマニウムTrを使ったAMやFMラジオを作っていますが,どうにもうまくいかず,泥沼にはまってしまっているiruchanです。

きょうは,中国製の7石トランジスタラジオキットをゲルマニウム化したいと思います。

以前,国産のCherryの6石8石のキットをゲルマニウム化していますけど,さすがに国産なだけあって,部品の品質もよく,また,初心者向けの電子工作と言う目的もあってか,プリント基板も余裕を持って広々とわかりやすく作られているし説明書も詳しいので,何の苦労もなく,ゲルマニウムTrに置き換えることができました。

残念ながら,昔なつかしい,ACEやHOMERなどとともに,Cherryのキットも製造中止になってしまい,もう入手することが難しくなってしまいました。これじゃ,電子工作に興味を持った子供たちがラジオを組み立てることができないし,工作の楽しみを経験することができないじゃないか,日本はもう終わりだなぁ~~~!! と思っているiruchanです。大げさ?

と,思っていたら秋葉原にある,aitendoというお店で中国製のラジオキットが売られていました。結構,ネットにも載っていて,作った人がいらっしゃるようです。

いつもながら天邪鬼なiruchanはシリコンじゃね~って感じでこれをゲルマニウム化しようと思いました。ACEやCherryもシリコンTrになっていましたけど,それを2SA101なんかのゲルマニウムTr化しちゃいました。

買ったのはK-108Cという緑色の基板のもの。ほかに,K-108Bというケース付の黄色い基板(紙フェノール?)のものもあります。

K-108C基板.jpg K-108C基板

   ここまで作ったのですけれど......。

ただ,結論から先に言っちゃいますと,これらのキットのゲルマニウム化はあきらめた方がよいです.....。

もう,正直言って,えらい目に遭っちゃいました......。

なにより,aitendoのキットはほとんどが説明書も回路図もないのですが,やはりそれは大変困るし,それに,このキットの最大の問題点は基板が小さいこと。SMD部品じゃなく,普通のアキシャルリードの部品を使った基板としてはかなりの実装密度で,容易にはんだづけできません。特に,ゲルマニウムTrだと,金属缶のTO-1型のパッケージが多いのですが,これがギリギリ。IFTのケースに触れそう。TO-1型のTrは外被がコレクタになっているので,GNDに接続されているIFTのケースに接触するとVccをショートしちゃいます。おまけに,K-108Cのほうは両面スルーホール基板になっていて,部品の交換が容易じゃありません。さらに驚いたことに,キットとして売られているものなのに,パターンミスがあり,もとから動作しないんですね。おかげで貴重なゲルマTrを1個,飛ばしてしまいました.....orz。

両面スルーホール基板というのは,現在ではごく普通のプリント基板で,LepaiのLP-2024A+などのアンプでもよく使われています。もちろん,両面ですから,基板の表と裏にパターンがあり,それぞれのパターンを連結するため,金属製の丸い円筒形のスリーブが埋め込まれていて,上下のパターンを連結するようになっています。ま,今じゃ,上下両面どころか,16層なんて基板も出ていますけどね......。

そのスリーブのおかげで,一度はんだづけしたら終わり,という風に考えた方がよく,部品をつけ間違えて再度,加熱して部品をはずそうとすると一緒にそのスリーブも外れてしまうことが多いのです。

こうなったら厄介で,ハンダが載る,ランド部分がなくなっちゃうので,新しい部品のはんだづけができなくなっちゃいます。両面スルーホール基板で部品を取り外すときはこの金属スリーブまで外さないよう,気をつけないといけません。おまけに,パターンの銅箔の接着が弱く,そのうち,パターンもごっそりはがれてくる.....という始末で手に負えません。

さすがに,もとがシリコンTrの回路に,ゲルマニウムTrを使用した場合,バイアス電圧が異なるため,周辺の抵抗値をあとから変更しないといけないのですが,両面スルーホール基板のせいで,部品の交換が非常にやりにくいです。

また,パターンミスの問題のせいで,完成して電池をつないでみてもウンともスンとも言いませんでした。もちろん,このときはパターンミスがあるなんて思いもしません。

これ,たいていはスーパーの場合,局発が動作していません。

やはり,原因はそうで,コンバータのTrのコレクタにオシロをつないでも一直線のまま.....orz。

しかたないので配線をチェックしますが,おかしいところはありません。そこで,Trの各電極の電圧を測ってみてびっくり。局発のTrには松下の2SA101を使ったのですが,コレクタが-7Vくらいで,ベース電圧もまったく同じです。こんな高い電圧になるわけがありません!! おまけに,IF段は,というとどれもコレクタ電圧が-2Vくらいになっていて,異常に低いです。こちらの方はIF段のコレクタ電流が大きすぎることを意味しています。

それに,TrというものはVBEはゲルマTrで0.2V,シリコンで0.6Vくらいなので,ベースにこんな高い電圧がかかっていると,ベース~エミッタ間電圧は最大でも5VくらいでTrが死んじゃいますから,2SA101はお亡くなりになってしまっています。

回路をさんざん見直してみても原因がわかりません。クソ~~~っ!!

頭にきて,原因はベースがどこかで-Vccにつながっているから,と考えて手当たり次第にテスターで導通テストをしてみると,なんたることか,プッシュプル出力段となっているOPTの1次側と導通があります。

まさか.......。

と思って見てみると表側の細いパターンがOPT1次側の金属製スリーブと接触しているではないですか!! これじゃ,もろに局発のTrのベースに-Vccがかかっちゃいます!

基板不良箇所.jpg 基板パターン不良

こんなこともあるんですね~~。メーカ製の基板に欠陥があって,そんなものを売っている,とは思いもしませんでした。

結局あれやこれやで部品を交換しているうちに基板も傷んできたのですべてのTrを撤去し,名誉ある撤退をすることにしました。全将兵を無事に撤退させたキスカ奇跡の撤退と言いたかったけど,将兵が1名犠牲になっちゃってますから,ダンケルク撤退ですね~~~。

        ☆         ☆         ☆

そこで,今回はK-108Bの方にしようかと思いました。こちらは基板が片面基板だし,材質も紙フェノールのようで,色も黄色い色をしています。

ただ,このキットはAmazonでも安く売られていますし,もとは中国製なので,Ali Expressだと送料なしで$6くらいで売られています。iruchanは必要なのは基板だけと言ってもいいくらいなので,Amazonで買いました。Aliは少し不安がありますからね.....。

amazon画面1.jpg 7つチューブってなんだよ.....

そのほか,"週の真ん中では" とか," テストリポート","ケースが戻ってくることはありません" って何? ってな感じで,怪しげな日本語だらけだし,見れば見るほど怪しいことばかりですけど,一応,説明書もついているようだし,Ali Expressなどでも広く販売されていたり,また,You Tubeなどでも製作動画が出ているくらいなので,大丈夫だと思いました。 最近のAmazonで売ってる怪しげな工具や部品同様,注文したら中国から送られてきました。工具類は安くていいものがあるので,結構,利用しています。

とはいえ,このキットの場合,部品の品質には疑問点がつきます。特に,ボリウムとバリコンは捨てて,国産のものに交換しておく方が無難だと思います。IFTは大丈夫ですが,OSCコイル(赤)も国産に変更した方がよさそうです。一応,ディスクリートの半導体ラジオが売られていた時代,IFTもOSCコイルもゲルマ用とシリコン用で分かれていましたし,IFTもTrのインピーダンスにあわせて何種類もありました。

回路はほとんどK-108Cと同じです。説明書も中国語ですが,ついていて,回路図やプリント基板のパターン図もカラーで印刷されたものがついているので,親切です。

内容物.jpg キットの中身です。説明書も付属してます。

  ちょうど2週間で中国から届きました。

さて,ということでオリジナルはシリコンTrを使っていますが,これをゲルマニウムTrで作っていきたいと思います。

オリジナルはS9013HというTrと,S9018HというTrを使っています。どちらも2SC1815などと同様のTO-92型なので,使いやすいです。前者がハイhFEのため,高周波段に使用され,後者が低周波増幅と電力増幅に使用されています。

7つチューブというのは7石,と言うことらしいですが,驚いたことに検波までダイオード接続したS9018Hが使われていることで,ここはゲルマDiにしたいと思います。

S9018H.jpg S9013HS9018H

それにしても,普通,7石というと高周波増幅(RF)つきか,中間周波3段,あるいは他励式コンバータのことを指し,検波用のDiまでは含みません。6球スーパーは高周波つきなのを意味するのと同じで,マジックアイがついていても6球スーパーとは言いませんので,ご注意ください。

だから,本機は6石スーパーです。回路もごく普通の6石スーパーです。特に変わったところは見受けられません。

K-108-468-sch.jpg オリジナルの回路です。

それならゲルマ化は簡単.....と思っちゃったのですけれど......。

実はこれが茨の道。大変な目に遭っちゃいました......orz。

使用Tr.jpg 使用予定のゲルマニウムTr

すべて中古です。三洋のTrはいつもお世話になっている河童さんからいただきました。2SB171はもとはOC71で,松下が蘭Philipsから技術導入して作ったTrです。

どうも,問題は本機の回路がS9013HなどのTrに最適化して設計されているためのようで,Trを交換するととたんに機嫌が悪く,うまく動作しないのです。

S9013HS9018HというTrは中国独自の規格か,と思いましたがオリジナルはフェアチャイルドのようですし,相当昔のTrのようです。海外製もONセミなどがあります。だから,結構,信頼性が高いTrのようです。中国ではたくさんのメーカが作っているようで,ネットで規格表も簡単に手に入りました。末尾のHはhFEのランクのようで,HだとS9013Hが144~202,S9018Hが97~146のようです。

おまけに電極の配置が日本製のTO-92と違って,左からEBCという配置になっているのも好都合。Cherryの6石キットなどだと2SC1815の代わりに2SA49なんかを使ったりしたわけですが,電極の配置が2SC1815はECBなので,ベースだけアクロバティックにピンを曲げて配線しないといけなかったのですが,S9013Hなどだと,電極は同じ配置なんですね~~(^^)。

ただ,残念ながら,基板のパターンはTO-92型なら一直線で・・・となっていればよいのに,わざわざと三角形になっているのは問題で,おまけにベース位置は上下逆で,ゲルマのTO-1型用だとの穴でないとまずいのです。

まあ,多少,ベースのピンを少し逆に曲げてやればいいのですけどね....。

2SB270.jpg こんな風にはんだづけします。

それと,やはりゲルマとシリコンじゃ,バイアス電圧が異なるので,バイアス回路はいじらないといけないのですが,前回までのCherryのキットなどでは,出力段以外はいじる必要がなく,一発で動作しました。ただ,低周波のS9018Hの回路は固定バイアスとなっているため,最低限,変更が必要だとはすぐに気がつきました。

今回もまずはそれで.....と思いましたが,決定的にダメでした。やはりバイアス回路はいじらないといけないようです。

        ☆         ☆         ☆

次回はバイアス回路の変更と調整に入りたいと思います。


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Panasonic AM/FMラジオ RF-626の調整 [ラジオ]

2018年6月24日の日記

Panasonic RF-626-1.jpg Panasonic RF-626 AM/FM radio

ディスクリートで,しかもゲルマニウムTrを使ったFMラジオを製作中ですが,泥沼の西部戦線で膠着状態に陥ってしまっているiruchanです.....(^^;)。

とりあえず,トラッキング調整が終わり,ちゃんと76~95MHzまでカバーしているのですが,まだ放送が入りません。原因調査中です。

ということで,膠着状態になってしまった西部戦線を打開すべく,新兵器を投入します。

その新兵器とは.....。

毒ガスでも戦車でも飛行船でもなく,PanasonicのトランジスタAM/FMラジオのRF-626です.......(^^;)。

Panasonicと謳っていることからもわかるとおり,松下電器の輸出用ブランドで,iruchanが持っているものも25年ほど前に米国人の友人に譲ってもらったものです。

松下電器がNationalのブランドを使い始めたのはwikiを見ると1927(昭和2)年のことのようです。銀座線が開業した年だな......。

ところが,戦後,米国向けに製品を輸出しようとしたところ,すでにNationalのブランドは商標登録されているため,Panasonicブランドを使用することとなりました。第1号はゲンコツこと,スピーカのコーン紙の真ん中に球形のイコライザがついた,8P-W1のようで,1955年のことのようです。iruchanもこの後継のEAS-20PW55を今も使っています。

このラジオは1970年代前半の製造のようです。もちろん,当時はまだICを使っておらず,フルディスクリート9石の回路になっています。日本ではほとんどの地域でFM局がNHKしかない状況がずっと続いていたし,まもなくICの時代が始まりますから,フルディスクリートのFMラジオ,というのは少ないと思います。

残念ながら,サービスマニュアルが入手できていないので,詳しい回路がわからないのですが,Trのラインナップは2SC429-2SC185-2SC184-2SC469×2-2SB173-2SB175-2SB172×2で9石となっています。

驚いたことに,NPNとPNPの混成であるばかりでなく,NPNはシリコン,PNPはゲルマニウムの構成になっています。

これ,よくあった話で,高周波部に性能がよいシリコンを使い,低周波部は安価なゲルマニウムという組み合わせのラジオが結構ありました。たぶん,シリコンTrは高かったのでしょう。それに,そもそも本機のシリコンTrは全部,NEC製なんですけど.....。ゲルマは松下製でしたけど。たぶん,高周波用シリコンTrはNECから買った方が安く,低周波のゲルマは自社製の方が安かったのでしょう。

ふたを開けてびっくり。

Panasonic RF-626'.jpg 内部

 バリコンの右と左にFM用のコイルがあります。トリマはマークがついていました。

まあ,本当によくこれだけ部品を詰め込んだな~と感心するぐらい,びっしりと部品が詰まっています。出力の2SB172なんて,とうとう居場所がなくてリード線を長く伸ばしたまま,OPTの上に寝かされている始末。ちょっとかわいそう~~。

それに,そもそもTrはどこ? って感じで,TO-1型の2SB172くらいしか見えません。高周波用の2SC184などはHEMTなどと同じマイクロディスク型のため,基板裏についているはずですが,探しても見つからないくらい密集して部品がはんだづけされています。どこかに隠れちゃってるんでしょうけど。

IFT類は7mm角のもので,小型になっています。すべて東光製でした。バリコンはミツミのようです。電解コンデンサやスピーカも松下電工のマークがついているし,本当に純粋の日本製で感心します。抵抗は立てて取りつけてありますし,これも居場所がなくてリード線が長く伸ばしてあったり,これじゃはんだづけするのは大変だったろうな~,という気がします。配線したおばちゃんお姉さんたちは大変だったことでしょう。

調整のためか,バリコンにはFOとか,MOとか書いてありますし,IFTのコア位置もちゃんと印がついていたりして,おばちゃんお姉さんたちの苦労がよくわかります。

さて,久しぶりにスイッチを入れてみて,やはり気になるのがボリウムのガリ。動かすたびにガリ,ガリ大きな音がするし,スイッチが入ったとたん,ガリッとひときわ大きな音がするのは特にいやですよね。

これ,昔のトランジスタラジオによくありますよね~~。突然大きな音がするのでiruchanは大嫌いです。早速,修理したいと思います。

また,例によって米国で売られていたものなので,FMは88~108MHzとなっているので,修正したいと思います。

ところが.....。

おそらく,買ったときに調整したのだと思いますが,FMにしてみるとちゃんとNHK FMが入りますし,ワイドFMの局も入ります。

SGをつないで調べてみると下限が76MHzだし,上限は108MHzくらいになっています。

確か,買ったときにいろいろいじって調整した記憶がありますが,うまくいかなくて放ってあったように思います。でも,ちゃんとうまく調整してあったようで,日本の放送局がちゃんと入ります。

と言う次第で,調整はやめにしました。

というより,基板は▲▼のように,内部はびっしり部品がはんだづけされているので,下手にいじるとどこかの線を切ってしまったりしますから,やめた方がよさそうです。

Panasonic RF-626基板裏'.jpg 基板裏。裏も部品がびっしり。

ただ,バリコンの左側に疎な空芯コイルがあり,右側に密な空芯コイルがありますが,米国だと疎な方がOSCコイルのはずで,こちらをいじった跡がありました。どうやら,25年前にこちらをいじって調整したようです。

もし,米国製のラジオを国内バンドに調整したい,と言う方はこちらこちらをご参考にしてください。本機だと,バリコンのOSC側に10~15pFくらいのセラミックコンデンサをパラにする,前者の方法がよいと思います。

        ☆         ☆          ☆

さて,ボリウムのガリを直しておきましょう。

簡単にやるなら接点復活剤をプシューとしてやればいいのですが,iruchanはよほどのことがない限り,接点復活剤は使いません。

理由はスプレー式なので,いらんところにまでかかっちゃうのと,腐食性なので,プリント基板などを傷めちゃうからです。また,当然ながら導電性なので,バリコンにかかったら大変です。決して接点復活剤はバリコンにかけないでください。

じゃ,ど~~するんだよ,と言うことになりますが,iruchanは接点用グリスを使っています。これだと周囲にかからないし,腐食性もないのでいいと思います。

Panasonic RF-626VRガリ.jpg 接点グリスを塗布します。

ボリウムを分解し,摺動面に接点グリスを塗っておきます。使ったのはタミヤの接点グリスです。

結果は見事!!

スイッチをonにしたときも静かですし,ボリウムを回してもガリ,ガリ言いません。なかなか快適です。

その後,できれば電解コンデンサを交換したいと思います。特に,経年40年以上,と言ったところですからね.....。

真空管アンプだとリークが心配ですが,Trラジオだと容量抜けが心配です。どうにも音が小さい,というラジオはカップリングコンデンサの容量抜けが原因であることが多いです。

ただ,例によってあまりに部品が混んでいる上,裏側にもセラミックコンデンサなどが張り付いているし,簡単に電解コンを交換できません。しかたないので,取り外しやすいのだけ,交換しました。あと,FMの音がひずんでいるようなのでレシオ検波の出力にある,4.7μFの電解コンを交換しておきました。

        ☆         ☆          ☆

さて,鳴らしてみると快適。なかなか感度もよく,AMもFMもきれいに受信できます。ただ,やはりFMは感度不足で,現在のラジオに比べると遜色がありますが,まあ,とても40年以上前のラジオとは思えないくらいです。ワイドFMも入るので,プロ野球中継なども楽しめます。

AMは特筆もので,とても音もよく,感度も十分です。

ICも入っていないのに,非常に小型で,しかもTrラジオには珍しく横動式ダイヤル(本機は縦に動きますけどね......)を採用したのも高得点です。米国ではよく売れたようで,eBayなどでは結構な値段になりますし,人気があるようで,今も割に見かけます。小気味よいハイセンスな優れたデザインは米国人の心に訴えるものがあったのでしょう。よき時代の日本製のラジオを復活できてよかったです。

ただ,日本では売れたのかどうか.....。そもそも日本ではFMの本放送がはじまったばかりだし,東名阪の3大都市圏以外は民放がなくてNHKしか入らない,という状況でしたし,当時,8,500円もしたようですから,新しもの好きのお金持ちが買っただけではないか,という気がします。

Panasonic RF-626 panel.jpg 今のPanasonicのロゴとは違いますけどね。

PANASONICと全角フォントで書いたようなロゴがちょっと笑っちゃえますけど。残念ながら,正面の赤いNのマークにPanasonicと書かれた小さなエンブレムは取れちゃっています。eBayのやつを見てもどれも取れちゃっているので,簡単に取れちゃうものだったのでしょう。

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ゲルマニウムトランジスタ スーパーヘテロダイン方式FMラジオの製作~その4・調整編~  [ラジオ]

2018年5月19日の日記

ようやく局発の動作に成功し,泥沼の西部戦線を脱してパリに向けて進撃中のiruchanです。

局発が動作するとスーパーのラジオは難所を越えています。もう90%完成,という感じなんですけどね。そろそろパリも砲撃する射程距離に入った....という感じなんですが....。

☆局発の動作確認

まずはスーパーのラジオだとAMもFMも局発が動作しているかどうかの確認が必要です。
 
やはりオシロが必要だと思いますが,AMの場合,局発が動作するとスピーカーからガーッと言うAM特有のノイズが聞こえますので,オシロがなくても割に簡単です。それに,AMの場合,配線間違いをしなければまず局発が動作しますしね。
 
AMの場合,たまにものすごい雑音がするか,何にも音がしない場合があります。これはIF段が発振している証拠で,これもオシロを検波のところのDiにつないでみるときれいな正弦波が見えるのですぐにわかります。
 
まあ,何にも音がしない,というのは高周波で発振しているわけなんですか,もちろん,配線ミスでIF段が動作していないということもあります....。
  
IF段が発振している場合,IFTのインピーダンスが高すぎ,IF段のゲインが高くなりすぎて発振しています。正攻法の対策はIF段のTrやIFTの交換なんですが,まあ,普通,そこまでする必要はなく,たいていはIFTの1次側に100kΩくらいの抵抗をつないでIFTのQを下げてやると発振が止まります。また,1次側の配線が逆だと発振する原因になります。
 
Trはインピーダンスが低いので整合を取るため,IFTの1次側の同調回路はタップが入っていて,Vccがそのタップに接続されるようになっています。IFTからコレクタにつながる側のピンを間違えるとインピーダンスの整合が取れず,発振しますのでご注意ください。
 
☆IFTの調整
 
さて,局発が動作したら調整に入ります。
 
ところが,またここで難敵に遭遇し,泥沼にはまってしまいました......orz。
 
局発が動作したらIFTのコアの調整をします。アンテナ入力にIF信号(AMだと455kHz,FMだと10.7MHz)の信号を入れて,検波後のオーディオ出力が最大になるよう,各IFTのコアを回します。信号発生器SG(蒸気発生器じゃありません。EF57やEF58じゃないってば。古~~っ!)には1kHzのAM変調がかけられますので,これでやるとスピーカーからピーッと言う音がするのでこの音が最大になるようにします。
 
そのあと,トラッキング調整をします。
 
FMでも実は同じで,リミッタがついているのでこの音は聞こえないはず.....と思ってもちゃんと聞こえるのでIFTの調整ができます。
 
ところが.....。
 
やっぱり,まだウンともスンとも言いません。
 
おっかし~~なぁ~~。
 
でも,よく考えてみるとFMラジオはAMと違って,高周波増幅段(RF)がついているので,アンテナ入力にIFを加えても同調しないので,音が聞こえてくるわけがありません。
 
なあんだ,考えてみれば当たり前のことなんですが,こんなことすら気づくまでに時間がかかりました。iruchanはいままで,ディスクリートのAMラジオは何度も作りましたが,FMは初めてですしね.....。もっとも,IC式のFMラジオは何度か作りましたが,これらはもちろん,RF段がついていますが,非同調増幅器なので,こういう問題はありません。
 
改めて局発の出力についているIFTに10.7MHzを注入します。IFTの1次側コイルにSGをつなぎます。局発が動作していると調整が面倒なので,▼のように局発のコイルを接地して局発の動作を停止させます。
 
FM IF&トラッキング調整箇所.jpg調整箇所です。
 
こうしてようやくIFTの調整ができました。スピーカーからピーッと言う音が聞こえるので,それが最大になるよう,IFTのコアを回します。
 
☆トラッキング調整
 
さて,ここまで来たらまた局発に戻って発振周波数の範囲を決めます。
 
AMだと上側ヘテロダインですから985~2055kHzで発振すれば,535~1605kHzをカバーできますが,実はかなり難しく,きちんとここまでできることは少ないと思います。やはり範囲が広すぎるんですよね~。どうやっても完全にカバーできないことがあります。
 
FMの場合は世界的には周波数が88~108MHzだし,同じ上側ヘテロダインなので,局発は98.7~118.7MHzで発振させる,と言うことになりますが,日本は下側ヘテロダインなので,この記事の通り,65.3~79.3MHzで発振させます。もっとも,今はワイドFMやってますから,上限は84.3MHzにしたいと思います。こうすると76~95MHzがカバーできます。
 
ところが,ここまで来てiruchanのFMラジオはどうしてもトラッキングが取れません。
 
受信できる範囲は大体,60~75MHzと言ったところで,10MHzほど上でないといけません。
 
一応,▲の図にもあるとおり,局発の発振波形はt.p.と言うところにプローブをつなぐと見ることができますし,周波数カウンタをつなぐと周波数が確認できます。周波数を確認したらちゃんと65MHz以上で発振していましたから,ちゃんと76MHzから受信できるはずなんですが.....。
 
なお,FMはもちろん,AMでも局発の波形は局発コイルや局発のTrのコレクタにプローブをつなぐと観察できますが,プローブをつないだことにより発振周波数が変わるのでご注意ください。直列に数pFのコンデンサをつなぐと影響が軽減できますが,やはりどうしてもつなぐと周波数が変わってしまいます。本機も5pFを直列につなぐように基板上に配置しましたが,プローブをつけると1MHzほどずれました。
 
さて,今回のトラブルは局発の周波数が低いためと考えて,局発コイルをいろいろ変えてみてもダメ。何回トライしても受信範囲はこれくらいです。低いのはイメージを受信しているためのようだと思ったのですが.....。
 
ただ,局発コイルをインダクタンスの小さなものにすると下限が上がってくるのはわかりましたが,今度は上限がまったく変わらないどころか,そもそも受信できなくなってしまいます。
 
う~~ん,なんでこうなるのかわかりません......[雨][雨]
 
でも,よ~く考えてみるとやはりまずいのはFMはRFつきであること。さっきのIFTの調整と同じで,RF段がまずいのですね。RF段の同調周波数と局発の発振周波数がきちんと全帯域で10.7MHzだけずれていないといけないのですが,途中で外れてしまっているようです。
 
つまり,ディスクリートのFMラジオは同調式高周波増幅回路になっているため,当然,負荷が同調コイルになっています。ですから,この部分の同調周波数が一致していないとうまく受信できません。低い方は音がするのに,高い方が出てこない,というのはとりもなおさず,このRF段の同調周波数が上の方でずれているからです。
 
ようやく原因がわかりました。
 
とすると,怪しいのは▲の図のRF段の同調コイルかバリコンの調整が必要です。どちらかを交換しないとダメな感じです。
 
改めてここで使用しているバリコンの同調容量を調べてみました。使っているのは横浜のテーダブリュ電気製のもので,非常に出来がよいものです。背面にTWDと書いてあるものです。さすがは日本製,という感じでiruchanも愛用しているのですが,さすがに数が減ってきて入手困難になってきているのは残念です。
 
改めて容量を測ってみてびっくり。意外に大きいんです。
 
メーカ      型番              min.   max.
TWD   4.43 24.01
20.7 40.72
韓国 CBM-223 3.39 22.78
10.52 30.04
 
それぞれ,上段がトリマ最小,下段がトリマ最大のときの値です。TWD製は最大40pFと言うところで,iruchanはFM用のバリコンは最大20pFと思っていたので驚きです。エアバリコンのFM用のものや,ポリバリコンのミツミ製PVC-2FMなどは最大23pFですので,少しTWD製のは大きめのようです。特にトリマが16pFもあるのは大きいです。まあ,調整しろが大きい,と言うことなのでアマチュアには便利なんですが。
 
キャパシタンス測定.jpg 台湾DER社製のLCRメータDE-5000で測定中
 
秋月で売っている台湾製のLCRメータです。0.1μH程度のFM用の空芯コイルまで測定してくれるので便利です。 
 
最近入手可能なポリバリコンは黒い樹脂製の韓国製CBM-223というバリコンですが,これは少し容量が小さいです。
  
これに交換しようかとも思ったのですけど.....。
 
残念ながら,どう見ても作りがチャチ。ネットを見ると中の絶縁用のポリエチレン樹脂が破ける,と書いている人もいますし,ケースの樹脂も割れやすいポリスチレンのようですし,薄いです。iruchanのもトリマの羽根が傾いていて,間にポリエチレンが入っているのでちゃんと回転するんですけど,羽根が重なるときに樹脂を巻き込む感じなので,そのうち破れてしまうと思います。
 
と言う次第で,やはりTWDのものを使うことにします。
 
となると,調整すべきはコイル,と言うことになります。まずは前回,LTspiceでコンバータをシミュレーションしていますが,RF増幅回路もシミュレーションしてみました。
 
FM RF(2SA56+TWD).jpg 76MHz入力のとき
 
76MHzを受信するとき,必要なインダクタンスは0.085μHであることがわかります。
 
幸い,iruchanはRF段のコイルにはFCZ研究所製の10S144を使っています。これはコア入りのため,インダクタンスを可変できます。普通,FMは空芯コイルを使いますが,これだと調整が厄介だし,特にRF段と局発のコイルのインダクタンスが近いため,結合して発振することがあるので,このようにコア入りだとシールドケースに入っていて,結合しにくいのも便利です。
 
バリコンと同じように台湾製のLCRメータでインダクタンスを測ったら0.084~0.135μHでしたので,ギリギリ範囲に入る,と言うことがわかります。
 
同様に,局発もバリコンの容量が大きいと局発コイルのインダクタンスも変わるので調べておきます。 
 
FM局発(2SA56+TWD)1.jpg 最終的な定数です。
 
FM局発FFT.jpg 
 
  ちゃんと65MHzくらいで発振することがわかりました。
 
局発コイルL3のインダクタンスは0.116μHです。φ5.5mmの塩ビ棒にφ0.5mmのUEW線を6回巻いて作りました。これを伸び縮みしてインダクタンスを調整します。 
 
トラッキング調整.jpg トラッキング調整の様子
 
受信範囲の調整は局発コイルL4とバリコンのトリマCt OSCで行います。下限をL4のインダクタンスで決め,上限をCt OSCで調整します。このとき,SGの発振音が聞こえない場合はCt ANTをいじって聞こえるようにします。
 
ただ,RF段の調整は同様にL2とCt ANTで行います。下限はL2,上限をCt ANTで決めます。順番としては,局発のトラッキング調整の前にやるべきだと思いますが,今回は同時にやっちゃいました。
 
ようやくこれで76~95MHzで強力にSGの発振信号を捉えるようになりました。これで放送が入るはず.....です。
 
と言うことで,トラッキング調整もAMと違ってFMは非常に厄介です。
 
☆ディスクリ調整
 
次は周波数弁別器の調整です。ディスクリミネータというので,日本でもディスクリの調整なんて言うことが多いです。
 
今回,FM検波としてはフォスター・シーリー回路を採用しています。2次側に同調回路を持っていますが,同調曲線がS字状のカーブになるため,入力の周波数に比例した直流電圧(実際は音声信号で変調されているので交流になりますけど)を取り出すことができます。詳しくは前回をご覧ください。 
 
FM検波回路にはレシオ検波がよく使われましたが,フォスター・シーリー同様,コイルの1次側,2次側ともに同調回路になっているので,複同調となっています。
 
真空管のIFTだと複同調が当たり前ですが,Tr用はTrのインピーダンスが低いこともあってほとんどが単同調になっています。ところが,FM検波段だけ,複同調のためコアが2つ必要で,FM検波のIFTは2個使うか,それを1つのケースに収めて細長いケースになっています。後者だとすぐにどれがディスクリIFTかわかるので便利なのですが,前者だとなかなかどれがディスクリかわからないのでちょっと困るのですが,たいていはすぐ並んで配置されていますので,わかります。
 
今回,FCZ研究所の10.7MHz用IFTを2個使用します。1次側,2次側ともに10.7MHzに同調させればよいので,IFTの調整の時と同様,局発から10.7MHzを注入し,オシロで検波出力を観察して最大になるようにコアを回します。
 
       ☆         ☆         ☆
 
1918年3月,西部戦線に巨大な大砲が出現します。列車砲として知られた独クルップ社製の通称パリ砲(Paris Gun)です。その名の通り,パリを砲撃する目的がありました。ドイツ軍ではKaiser Wilhelmと名付けられていました。
 
口径210mm,砲身長21mの巨大砲で,106kgの砲弾を130kmも飛ばしました。最大射高は42000mにも達しました。
 
たぶん,ドイツ領内での試射の時の話だと思いますが,技術者や将校たちは射撃すると奇妙なことに気がつきました。仰角が45゜ではなく,50゜以上にした方が遠くに飛ぶ,と言うのです。実は,砲弾が成層圏に達していて,空気抵抗が減少するので,仰角が高い方が遠くまで飛びました。人類が作ったもので初めて成層圏に達したものとされています。
 
3月21日木曜日の朝7時18分,最初の砲弾が発射され,15分間隔で初日に21発が着弾しました。
 
当初,フランス軍はツェッペリン飛行船からの爆撃と考えたようですが,破片を分析した結果,砲弾であることが判明し,それも前線のはるか後方から発射されているらしいと判明して驚愕します。最初はベルギー・リエージュの12個の要塞をたった2週間で沈黙させた42cm榴弾砲かと考えられましたが,そもそも榴弾砲は迫撃砲の一種ですから砲身が短く,長距離は飛びませんから,何らかの巨大砲と考えられました。
 
パリ砲は8月までに320発以上を発射し,犠牲者は250人に上ったようです。すでにアメリカが参戦していましたが大部隊が到着する前に決着をつけようと,第1次世界大戦最後の大攻勢にあわせ,砲撃を開始しました。ただ,巨大砲弾と言っても中身は7kgのTNT火薬しかないため爆弾の威力としてはそれほど大きくなく,これなら第2次世界大戦中にB17爆撃機がドイツに雨あられと投下した1t爆弾の方が威力は大きいです。フランスを屈服させる新兵器,と言うよりはパリを砲撃して戦意をそぐという意味合いの方が濃かったようです。
 
第2次世界大戦ではさらに巨大なグスタフとドーラと名付けられた2門の巨大砲が作られますが,フランスが予想外に早く屈服したため,実際にパリに向けて砲撃することはありませんでした。
 
いよいよiruchanもゲルマニウムTrを使ったフルディスクリートのFMラジオが完成に近づきました。さあ,パリに向けて砲撃開始!!!!..........してはいけません!!

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ゲルマニウムトランジスタ スーパーヘテロダイン方式FMラジオの製作~その3・IFTとFM検波回路について~  [ラジオ]

2018年5月6日の日記

前回でようやく局発が動作するようになり,泥沼の西部戦線を脱してパリに向けて進撃中のiruchanです。今日から調整に入りました。

さて,ようやく本格的に調整,と行きたいところですが,まだ未設計の箇所があります。

実は,検波段をまだ設計していないのです。

というのも,第1回にも書きましたけど,まずはIFTが問題なのです。そもそも,今どきTrラジオ用のFM IFTを入手しようとすると手に入らないのも問題なのですけど,特に,FM用の場合,検波段用のIFTが特殊で,これを入手できないと組み立てられないのです。

ラジオ部品のお店でも,もう売ってはいないと思います。まだAM用は手に入るのですけどね。と言って,FM用は昔も簡単に手に入ったか,と言うと昔でも売っている店を見かけたことがありません。やはりFMは難しすぎて,作る人もいないので売っていなかったのだと思います。

でも,熊本のFCZ研究所が最近まで10.7MHzのIFTを作っていました。iruchanも大変ありがたくそれを使わせていただいています。

ただ,このIFTは1種類しかありません。

厳密に言うと,IFTは4種類必要なのです。FMは特に,最後の検波段用が面倒で,専用のIFTが必要となります。また,前回も書きましたように,初段用は同調コンデンサがないので,これも特殊です。

そんなこと言うと,AM用も同じで,真空管で2種類,Tr用で3種類あるのです。

これらは使用する位置で決まっていて,AMだと変換管に使うものと,中間周波増幅管に使用するものの2種類があり,たいていはA,Bという記号がついています。Tr用は中間周波2段ですから,A, B, Cの3種類が必要です。コアに色がついていて,それぞれ,黒となっています。順番に,コンバータからこの色のコアのIFTを使います。

ついでに,局発コイルも同じ形状ですが,コアがに塗られています。もちろん,これはIFTじゃありませんが,2次巻線があるのが普通です。

だから,AMのTr用IFTは4種類セットで売られていることが多いです。

とはいえ,真空管もそうですが,今どき全種類のIFTを入手することは難しく,特に真空管だと455kHz用として1種類しか売られてないことも多いです。

で,これらを2ヶ所に使っても問題ないのか,ということですが,ほとんど問題ないと思います。Tr用だって,1種類しか手に入らなくて,全段に同じものを使っても問題になることはないと思います。

なんでこのように種類があるのかというと,微妙に使用するTrにあわせてインピーダンスが変えてあるためで,さらに検波段用の真空管のBとTr用のC(コアは黒)は2次側のインピーダンスも下げてあって,2極管やダイオードの低いインピーダンスに整合するようになっているからです。

ところが,FMの場合はそれだけじゃありません。

真空管用は2種類,Tr用は3~4種類あります。特に最後の検波段用が特殊で,AM用と違ってほかとまったく違う巻線構造になっているのでほかの色のコアのやつを流用することはできません。また,前回も書きましたように,初段(コンバータ)用は同調コンデンサがありません。

検波用が特殊なのは検波回路がAMと違って当たり前ですけどねいるためです。

FMはレシオ検波を使うことがほとんどですが,レシオ検波は巻線構造がほかと違い,3次巻線まで必要な特殊な巻線構造になっています。それに,そもそもTr用のIFTはAM用のも含めて,単同調になっているのが普通ですが,FMの検波段用だけ複同調になっているのでコアが2個必要です。これを1個の箱にまとめて,長方形になっているものもありますし,バラバラで2個になっているものも多いです。

       ☆        ☆        ☆

ということで,やはりFM用のIFTは大変なのです。

それと,もう一つ,iruchanには大きな疑問が.....。

FM用のIFTのコアの色がわからないのです。

確か,ピンクとか,とか,AMとは異なる色だったのですが,何色が何用なのか,わからないのです。

当然,AM/FMの2バンドラジオだと調整時に間違えると危険なため,AMとは違う色が使われているのですが,それが何を意味するのかわかりませんでした。

そこでいろいろ調べたのですが,わかりません。JISで決められているのかと "JIS C6421 放送受信機用中間周波変成器" を見ても色の規定はありません。

そこで,国内某2社にメールで問い合わせてみました。

1社は "型番を特定していただかないとお答えできません" の一点張り,もう1社は ”コアの材質によるものです” とのこと。どちらも答えになっていませんね。

特に前者はどうも若い人らしく,端末を叩いているだけの人のようでした。横のベテランのおじさんに一言聞くか,図書室で古いカタログでも見てくれれば,何かわかるんではないかと思ったのですけど.....。

世界的にどのIFTもこのような色が使われいるので,何か決まりがあるはずだと思ったのですけどね。

それにしても今,日本のメーカに何か問い合わせをしてみると,どこもこのような対応です。めんどくさいことを聞いてくれるな,と言わんばかりの応対ですし,完全に無視で返事が来ないこともきわめて多いです。この2社は答えが来ただけマシ35なのかもしれません。

それどころか,半導体などの規格表をダウンロードしようとしたらいちいち登録しないとダウンロードできないのはもちろん,JIS規格や特許など公的な資料を調べようと思ってもネットには出ていません。JISや公開特許公報くらいはPDFでダウンロードできないといけないと思うのですが,実際,米国特許庁USPTOだと1790年からの公報が見られます。どうやら,日本の場合,これらの資料を販売している業者さんがいるので,無料でPDFで公開できない,と言うことらしいのですが,一体何だかな~って感じです。これじゃ,日本でビジネスをしてみたい,と言う外国企業は日本をパスしてしまうと思います。

ちょっと脱線しちゃいました。

結局,いつも大変お世話になっている河童さんに伺ったところ,1971年発行の東光のカタログをいただきました。

ようやく,FMのIFTはオレンジの順でIF1,IF2となっていて,レシオ検波用のは2個あって,入力側がピンク,出力側がと言うことがわかりました。また,前回も書きましたとおり,はコンバータ用で,これには同調コンデンサが接続されていません。ほかにシリコン用はIF段共通で黒色のものがあるようです。それと,おそらく後述のクォドラチャ検波用のコイルもあるはずで,それはまた別の色に塗られているはずですが,そこまではわかりませんでした。

これでようやく謎が解けました。部品屋さんで見つけたり,ジャンク基板から取り出す際などにご参考にしてください。

ただ,これは必ずしも全社統一されていたわけではなさそうで,検波段はという組み合わせもあるようです。と言う次第で,下手すると今どきディスクリートでFMラジオを作ろうとすると,ジャンクのFMラジオの基板から取り外した方が早い,と言うことなのかもしれません。

       ☆        ☆        ☆

さて,ここまで来たところで,やはり問題は検波段用のIFT。ピンクのコアのIFTが入手できればレシオ検波ができるのですけれど.......。

eBayや海外の部品屋さんやサープラスショップも探してみましたが,無理なようです。

といって,iruchanは実はレシオ検波用のIFTの入手が無理なのは先刻承知で,別の方法を考えていました。

ひとまず,FMの検波についておさらいしておきましょう。

最初のFM検波回路はスロープ検波でしょう。

中心周波数をIFとは少しずらしたIFTを用意します。その中心からずれたところの傾斜したカーブを利用し,その領域にIF信号を通すと周波数に応じて振幅の変わる波に変化します。これをAMみたいにDiで整流してやれば周波数に比例した直流が得られることになりますね。これがスロープ検波です。以後のFM検波はこの方式を踏襲して,やはりFM波を周波数に比例したAM波に変換するのが目的です。周波数弁別器なんていかめしい日本語がありますが,英語ではdiscriminatorで,日本語でもディスクリなんて言ったりします。

スロープ検波の場合,やはり傾斜したカーブが非線形なのでどうしてもひずみが発生するのでHiFi向きじゃありません。

次に考えられたのが,IFTの2次側に2つ,やはり中心周波数のずれた同調回路を設けるものです。複同調検波回路とか,発明者の名前を取ってトラビス回路とか言います。

これも2つの中心周波数がうまく配置されていないとひずみを生じますのですぐに廃れました。

本格的なHiFiのFM用としてはRCAのFosterとSeeleyが発明した,フォスター・シーリー回路が有名です。

ひずみも少なく,本格的なFM用として普及しますが,残念ながら,AM妨害に弱く,どうしてもリミッタが必要なため,この点を改良したのがやはりRCAが開発したレシオ検波です。

これはリミッタ作用があり,安価なセットではリミッタを省略しています。

このレシオ検波はFM検波の主流となり,真空管の時代からTrの時代になっても,さらにはICの時代が来るまで主役でした。チューナーもソニーの名機ST-5000Fがレシオ検波です。このチューナー,Marantzの真空管式10Bを凌駕する,という触れ込みがありました。1971年開発なのでICをまったく使っていないフルディスクリートのチューナーで,とてもあこがれました。う~~ん,昔はよかったな~。

一方,周波数弁別器と異なる原理に基づいたFM検波方式も開発されています。

有名なのはゲーテッドビーム管の6BN6ですね。位相検波と言われます。一種の5極管ですが,グリッドが2種類あり,スクリーングリッドに相当するG2にIFに同調したタンク回路を接続すると,そこに主搬送波と90゜位相がずれた信号が発生し,G1に加えられたIFと積を取ると位相のずれに比例した直流がプレートに出る,と言うものです。

おまけに6BN6はリミッタ作用もあり,また出力電圧は数Vと大きいため,直接出力管をドライブできることもあって,TVで普及しました。TVではトランスレス用の3BN6がよく使われました。ほかにも,6DT6FM1000などの専用管も開発されていますね。ただ,ひずみが多いので,HiFi用としては用いられませんが,リミッタ作用は強力なので米Scott社のチューナにリミッタとして用いられています。

ICの時代になると,同様の乗算器をIC内部に作り,クォドラチャ検波として多用されることになります。今でもラジオ用のICはこのクォドラチャ検波を採用しているものが多いです。なにより,セラミックディスクリミネータが開発されると,これはLCのタンク回路と違って単なるセラミック共振子ですから調整不要というメリットもあり,現在は主流となっています。レシオ検波はコイルを使っている関係上,どうしても調整が必要で,調整をするおばちゃんかどうかしらないけどの人件費がもったいないと言うよりおばちゃんは怖い,というわけです.......。

ほかにも,ICの時代にはPLLが簡単に実用化できるようになり,PLL検波というのもあります。これはIFに追随したVCO(電圧制御発振器)を作り,その制御電圧が音声そのものとなる性質を利用したものです。

そのほか,通信機で用いられたパルスカウント検波なんてのもあります。

これは,IF信号を一定幅のパルス列に置き換え,そのパルスを積分することにより音声信号を取り出すものです。

1980年代に入ると郵政省が各県に1局,民放の設置を許可するようになり,多局化が進められるとにわかにFMブームとなり,チューナーも売れたので,昔から高周波の得意なトリオがチューナーに採用しました。いかにも高級そうだし,音もよさそうなのでiruchanもとてもあこがれました。KT-9900とかL-02Tなんて,いまでも中古価格が10万円を超えるくらいだし,大変な高級チューナーでしたよね。

ただ,パルスカウント検波はそのまま10.7MHzのパルスでやることはほとんどなく,もっと低い周波数に変換してからやるのが普通です。

その1980年代は各社,差別化を図るため,このように検波方式もバラバラで,競っていました。そんな中,関西の某大手家電メーカがレシオ検波をHiFiにぴったりだと売り出して笑っちゃったことがあります。ラジオはともかく,もう当時すでに使われることはない技術だと思いましたけどね......。

さて,こうやってFMの検波にはいろんな方式があるのですけど,ディスクリート回路に使えて,しかも簡単な方式でレシオ検波以外,と言うことだとフォスター・シーリーだと思います。しかも,フォスター・シーリーだと特殊はIFTは不要で,段間用のIFTを流用できるんです。また,昔からフォスター・シーリーの方が直線性がよく,音がよいとされています。確か,80年代のチューナーブームの時もどこかが出したような.....。

       ☆        ☆        ☆

さっそく設計してみたいと思います。

でも,レシオ検波もそうですが,フォスター・シーリー検波の詳しい設計法を書いた資料が見つかりません。原理を書いた本は一杯あるのですけど,具体的に各定数をどうやって決めるか,書いた本がないのです。

ということでやはり困ったときのSpice頼みで回路シミュレータで設計します。

まず,FM変調波は通常の電圧源voltageから変調を選択できますので楽です。

FM変調設定.jpg SSFMを選択します。

Foster Seeley(10S10.7).jpg回路はこうです。

IFTは3個の巻線が必要です。しかも,トランスとして使うので,いずれも結合してないといけません。

これについては,LTspiceの一番右上にあるdirectiveの設定が必要です。

Spice Directive.jpg Spice Directiveボタンはここです。

これをクリックして,

  K L1 L2 L3 結合係数

と記述すると3つのコイルが結合します。回路中に複数のトランスがある場合はK1,K2....と記述すればOKです。

なお,2次側の51pFはIFに同調しないといけないのですが,L2,L3はもちろん,この結合係数によっても同調周波数が変わるので,▼のSカーブを調べて,ちゃんと中心に10.7MHzが来るように決定する必要があります。

また,シリーズにつながっている2個のコイルは本当は1個で,センタータップが出ているだけなので,向きを合わせないと電圧を打ち消しちゃいますので,コイルの記号を右クリックして,show phase dotをチェックして向きを揃えておきます。

なお,L4は単なる独立のインダクタでいいので,結合の設定は必要ありません。レシオ検波だとこれまで結合しないといけなくて,このせいでIFTが特殊な巻線となってしまいます。

IFTはFCZ研究所の10.7MHzのものを使います。

ただ,問題はこのコイル,同調側の真ん中のピンがセンタータップではありません。

これはTr用のIFTには共通のことで,AM用も普通,センターではなく,ずれたところからタップが出ています。

これは接続するTrが低インピーダンスなので,それにあわせて整合を取っているからですが,FM検波に使うには不都合です。

どうしようか迷ったのですが,とりあえず,Spiceでテストしてみてどうするか決めたいと思います。

FCZのIFTの同調コイルの巻数は4Tと6Tなので,インダクタンスとしてはこの2乗に比例しますので,16:36になるようにインダクタンスを決めます。っていうか,4:9だろ。

結果は.....。

Foster Seeley output(10kHz).jpg10kHzが出てくるのがわかります。

10kHzで変調していますので,10kHzが出てこないといけませんが,ちゃんと出てきます。輝線? が太いのは10.7MHzのIFが漏れているからですが,これは簡単なフィルタで消えますので問題ありません。

また,さっきの独立インダクタは100μHくらいないとダメな感じです。意外におおきなのが必要なんですね。

ただ,実を言うと,教科書にはフォスター・シーリー検波だとここがコイルになっていますが,普通の抵抗でもよく,メーカ製のセットだと抵抗で代用している場合があります。LTspiceでシミュレーションしたところ,50~100kΩでよさそうです。

さて,さっきの2次側非平衡の問題ですが,

S curve.jpg Sカーブです。

IFをスイープして2次側の電圧を見てみますとこんな感じでした。いわゆる,Sカーブが出ていますね。この曲線を利用して,IFからずれた周波数に比例したAM波に変換します。

そんなにひずんでいる感じではないし,しょせん,小さなスピーカをつないで鳴らすだけだし,これで十分ではないかと思います。こんな小さなラジオだとスロープ検波でもいいくらいだし,これでいいんじゃない,と思います。

       ☆        ☆        ☆

ついでに,レシオ検波もシミュレーションしてみました。

ratio FM discriminator.jpeg こんな感じです。

レシオ検波は2次側のコイルは3つ(実物は2個で,1個は真ん中にタップがあるんですけどね)必要で,いずれも結合が必要です。

2つあるDiはフォスター・シーリーと違って逆向きで,また,Diの出力に大容量のケミコンがつながっているのがレシオ検波の特徴です。このコンデンサのおかげでリミッタ作用があります。

出力波形はフォスター・シーリーも同様で,起動後しばらくは▲のようにマイナス側に大きく振れます。ちゃんと出力に10kHzが出てくることがわかりますね。

残念ながら,FM用のレシオ検波用IFTを入手することは古いFMラジオを解体でもしない限り,難しいかと思います。

ただ,問題になる3次巻線はやはりFMなので,ほんの数Tの巻数でよいはずだし,FCZのIFTを改造して作ることもできるのではないかと考えています。

つづきはこちらへ。


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ゲルマニウムトランジスタ スーパーヘテロダイン方式FMラジオの製作~その2・ゲルマニウムトランジスタのSpiceモデル~ [ラジオ]

2018年4月18日の日記

前回に引き続いて,ゲルマニウムTrを使ったFMラジオを作ります。

やはり,事前に予想したのですが.....すっかり泥沼にはまり込んじゃって膠着状態です。これじゃ,塹壕掘って西部戦線だな.......。

まずは,前回,基板の組み立てが終わったので,ひと通りチェックしてから通電します。回路については,前回も書いた,吉本猛夫著 "ラジオの組立て" に載っていたFMラジオの回路を踏襲("ふしゅう" じゃありません)します。Trはさすがに東芝の社員が書いただけあって,ラインナップは2SA240(RF,conv)+2SA433(IF)+2SB54(LF)+2SB56(output)とオール東芝です......(^^;)。

なお,低周波部は1段で済ませますし,検波もIFTの関係でレシオ検波じゃなく,フォスター・シーリーにする予定です。また,RF部は非常にクリティカルで,別のTrを使う場合は定数の変更が必要です。

FMラジオ配線図(ラジオの組み立て)1.jpg "ラジオの組立て" から

スピーカからかすかな雑音がすればひとまず安心なのですが.....。

ウンともスンとも言いません.....orz。

これは,低周波部分が動作していない証拠です。どこかに回路ミスがあります。普通は電池をつないだ瞬間にガリッと音がするはずなんですが.....。

ようやく,LFの2SB101のエミッタ配線にミスがあり,ちゃんとGNDにつながっていないことに気がつきました。

はんだづけし直して電池をつないでみるとかすかな雑音がしますし,Trのケースなんかに指を触れてみるとスピーカからビ~ッと音がしますので,低周波部はOKです。

ついでに,出力の2SB163のアイドリング電流を調べておきます。数mAだったらOKです。

ただ,予想していましたけど,FM特有のザーッというホワイトノイズみたいな雑音は聞こえません。

これはやはり高周波部分が動いていない証拠。まだ成功とはとても言えない状況です。

次にチェックするべきは局発。

ここから長い戦いが始まります。

局発コイルの両端にオシロのプローブをつなぎ,波形を観測してみると真っ平ら.....orz。

スーパーヘテロダインのラジオの生命線はやはり局発です。これが動作しないことにははじまりません。

AMでも同じで,局発が動作しているかどうかチェックするところからはじまりますが,比較的,AMは楽で,トランジスタ式はもちろんのこと,真空管式でも変換管に6BE66SA7を使った場合は楽勝です。配線間違いでもしない限り,ちゃんと発振するはずです。

でも,FMはそういうわけにはいきません。特にTr式の場合は大変です。ちょっとした配線のしかたやTrのばらつき,コイルの作り方で発振しないことが多いのです。

さぁ,困ったな~~~[雨][雨][雨]

原因はいくつか考えられます。

まずは帰還コンデンサ。これの容量が足りないと発振しません。今回4pFを使っていましたが,これを10pF程度まで増やしてみますがダメ。

次は,負荷となっているIFTと発振コイルの間のセラミックコンデンサ。小さいと発振が止まりますが,これも容量を変えてみますがダメ。

あとは,発振回路ですから,クローズドゲインが1(0dB)を超えていないと当然,発振しません。ゲインはTrのhFEに依存しますので,できるだけ高hFEのものが望ましいのですが,2SA56は40~80と規格表に書いてありますので,普通は問題ないはずです。

次に疑うのは動作点。

うっかりカットオフするくらいバイアス電流が小さかったり,サチってしまうくらい大きいと当然,発振しません。

一応,局発の2SA56の各電極の電位を調べてみると,コレクタ -8.24V,エミッタ -1.169V,ベース -1.438Vですから,あまりよくありません。もっとベース電位が高くないと,つまりアイドリング電流が大きくないとダメです。

この動作点はベースにつながっている2つの抵抗で決まります。いわゆる電流帰還型のバイアス回路ですね。

これをいろいろいじってみて,ベース電位を-3Vくらいにしてみましたがダメ。

う~~~ん,ここまでくると2SA56をあきらめるしかなさそう,という結論になります。ここで代打登場となります。

FM RF Tr'.jpg FM用高周波Tr

iruchanは東芝の2SA240も2個,持っていました。これでもいいのですが,やっぱりNECにします。

代打はNECの2SA213にしました。前回もスタメン入りしていますね。ベンチで待機していました。

ところが.....。

2SA213の代打は空振り三振。まったく発振しません.......orz。

あとでわかったのですが,2SA213はゲルマニウムTrなのに,VBEが高く,0.5Vくらいありました。そのせいで動作点が狂ったのかもしれません。

        ☆        ☆        ☆

とうとうこちらももう打つ手がない,という感じです。どうして発振しないんだろと頭を抱えてしまいます。

が,やはり困ったときのSpice頼みという諺ほんなもん,あらへんを思い出しました。回路シミュレータSpiceで動作を調べてみたいと思います。リニアテクノロジー社が無料版のLTspiceを出していますので,これで調べてみます。

FMの局発はコルピッツ型が使われます。AMだとハートレー型ですね。ハートレー型の方が可変範囲が広いのですが,高周波ではコルピッツが使われることが多いです。まずはこのコルピッツ発振回路の動作を確かめてみます。

さっそく,今回の回路をLTspiceでモデル化してみます。とりあえず,TrはPNPのデフォルトのTrで実行してみます。

FM局発回路(ラジオの組み立て).jpg ベース接地コルピッツ発振回路

ありゃま,発振しません。本に載っているような回路が動かないようじゃ,問題なんですが.....。

原因はデフォルトのTrがシリコンであることもありますが,やはり特性がオリジナルの2SA240とは違うためと思われます。あとでモデルを作りますが,2SA56だとちゃんと発振しました。

まあ,普通はたいていの回路ではデフォルトの素子でOKなんですけど,MOS-FETなどは個別の素子を指定してやらないとうまく動かないことが多いです。

と言う次第で,2SA56のモデルは.....と思っても,絶対にあるわけありません。

せめてゲルマニウムTrのモデルがあれば....と思ったのですが,これもネットをさんざん探しても2N344AC127があるくらいでした。これじゃ,真空管のモデルの方が多いくらいで,世の中,ゲルマニウムTrのモデルなんて作っている人はいないのですね

でも,真空管に比べれば,比較的TrのSpiceモデルの作成は楽だと思います。

トランジスタ技術2017年9月号に "基本動作から温度テストまで! トランジスタSpiceモデルの作り方" という記事がありますので,参考にさせていただきます。

まずは,LTspiceのトランジスタモデルなんですが,

standard.bjt.jpg standard.bjtの場所

LTspiceをインストールしたホルダ(デフォルトのままだとマイドキュメント¥LTspiceXVII¥lib¥cmp)にある,standard.bjtのファイルに記述します。拡張子が.bjtなんてことになっていますが,単なるテキストファイルなのでメモ帳で編集できます。

standard.bjt-1.jpg 

 2N344AC127はこのようになっています。

このファイルを編集し,次のような文を追加するとLTspiceで使用できます。

.model Tr型番 PNP or NPN(パラメータ1,パラメータ2,パラメータ3......)

複数行に渡る場合は行頭に+をつければOKです。

で,問題はこのパラメータをどのように求めるか,なんですが.....。

とにかく,各Trの規格表,特に特性曲線が必要となります。残念ながら,CQ出版社が出しているトランジスタ規格表のデータだけではモデル化できません。

ところが.....。

2SA56なんて古いTrのデータシートなんてありません[雷][雷]

そりゃ,そうですよね,今どきこんな古いTrを使おう,なんて人はいませんから。ネット上で,真空管やTrなどのデータシートが公開されていますが,どこを探しても見つかりません。古い本に載っているかと図書館も探しましたが見つかりません[雨][雨]

う~~ん,困ったな~~~[雨][雨]

と,思っていたら北陸の実家に帰って本棚を見てみると, "NECハンドブック'64・'65" という本があるではないですか。

なんと,ちゃんと2SA56も載っていました[晴れ][晴れ]

灯台もと暗しとはこのことですね~~。iruchanは割に古い本を持っているので,そこに載っていました。せっかくなので,PDFを載せておきます。


これを見てちょっと気がつきました。2SA56なんて,えらい古いTrだな,と思いましたが,まだAM用のTrですら高周波のものは少ない時代なのに,番号が若すぎます。また,製法もメサ型となっているのでやはり新しいです。FM用の初期のものはドリフト型か合金拡散型のはずです。メサ型はこのあとです。

この規格表を見ると2SA126と同特性で,2SA56は耐圧が高いということがわかります。

おそらく,最初に開発されたのは2SA126の方で,あとから耐圧が高い2SA56を開発したのだと思います。普通は番号は126のあとになるはずなんですが,何かの都合で空いていた56をつけたのでしょう。ちなみに2SA54も同じ理由でこんな若い番号のようです。2SA54も同じ構造ですし,特性もよいので使えます。

2SA56 Vce-Ic特性.jpgエミッタ接地特性

  VCE-IC特性です。これはたいてい載っています。

2SA56のコレクタ電流特性は▲のようなものでした。意外に大きな電流が流れますし,右の方でコレクタ電流が急に跳ね上がって変なことになっています。これは降伏領域と言って,この領域は使用してはいけません。シリコンTrだと,ずっと右の方なので規格表にも載っていないことが多いので,珍しい特性です。

は今回,計算に使用した点です。

LTspiceでモデル化して,この特性曲線を描いてみて比較します。

まず,Trのモデルなんですが,件のトラ技の記事によると,パラメータの数は33も載っています。おそらく,もっとあると思います。

しかし,そんなにたくさんの数のパラメータを決める必要はありません。たいていはデフォルトのままでOKだと思います。特に,逆バイアス時の特性を記述するパラメータなんかもあったりして,真空管だとグリッド電圧がプラスの領域まで記述するようなものですから,使用しない領域であればデフォルトのままでいいと思います。

さて,iruchanはこれらのパラメータのうち,次の3つを決めればあとは何とかなると思っています。

BF  順方向DC特性。いわゆるhFEのことです。

IC  伝達飽和電流。▼の式で求めます。

EG  バンドギャップ電圧。シリコンTrは1.11(eV),ゲルマニウムTrは0.67(eV)です。

そのほか,飽和特性を決めるパラメータがあります。シリコンTrだとデフォルトでいいと思います。

VAF  アーリー電圧。飽和領域のICを決めます。

RB  ベース直列抵抗。デフォルトの10ΩでOKです。

RC  コレクタ直列抵抗。5極管で言うと肩特性を決めます。飽和電圧の大きい古いTrだと結構重要です。VCE(sat)/IBで計算します。

それと,高周波Trだとスイッチング特性が必要なので,次の電極間容量なども決めておきます。

CJC  0バイアス時のCB-CCJC=1.2~2.4×Cob

CJE  0バイアス時ののCB-ECJE=1.5~2.0×CJC

TF  順方向通過時間 TF=1/2πfT

        ☆        ☆        ☆

これくらいでなんとかなるでしょうか。そのほか,MFGというパラメータもあり,製造会社名です。MFG=NECと書いておくと,あとで素子を選択するときにメーカが表示されて便利です。

上記のうち,問題はIC。これの計算はちょっと厄介です。ある特定のVBEのときのICのデータが必要です。

普通のTrだと,IC-VBE特性が載っていますので,そのグラフからどこか1点読み取ればいいのですが,2SA56の規格表には記載されていません。

ただ,なぜか飽和電圧の特性が載っていて,そこから,VBE=-0.4V,VCEsat=-0.35Vの点を読み取りました(点)。

2SA56 Vce_sat-Ib特性.jpgこんなグラフを見るのは初めてですけどね。

先ほどのVCEsatの時のICは▲の図から-10mAですので,これを計算に使います。

Trのコレクタ電流は下式で表されますので,このISを先の数値を使って計算します。

              IS計算式.jpg

ここで,順方向DC特性NFは1です。また,しきい値電圧VTは,

               VT計算式.jpg

なんですが,Kはボルツマン定数,Tは絶対温度,qは電子の電荷ですから,結局は定数で,常温ではVT=0.0258(V)となります。ところで,知りませんでしたけどボルツマンは最後,自殺しているようです。天才なのにとても惜しいことです。天才も悩むことがあるのですね。

また,ICは下記のアーリー電圧VAFにも影響されます。理想的にはIC-VCE特性は飽和領域では水平になるので,SpiceでもほとんどのTrモデルが水平なんですが,初期のTrやゲルマニウムTrではこの部分でも電流が増えます。▲の特性を見ると2SA56なんてそうですよね。シリコンTrや5極管ではほぼ水平なんですけどね。

              VAF.jpg

コンプリメンタリのTrでもPNPのものだけ,この傾向があったりしますのでご注意ください。

と言う次第で,決定したゲルマニウムTrの2SA56のSpiceモデルは,
 
.MODEL 2SA56 PNP(IS=8.91383E-08 BF=68.632 EG=0.67 VAF=12 RB=7
+ RC=20 CJC=12p CJE=12p TF=5.305e-10 MFG=NEC)
 
です。
 
これを先ほどのstandard.bjtのファイルに追加しておきます。
 
こうすると,LTspice上でデフォルトのPNP Trを配置したあと,Pick New Transistorというボタンを押すと選択することができるようになります。

pick new transistor.jpg 使用するTrを決めます。

select bipolar transistor.jpg 2SA56が出てきます。

次に,コレクタ特性曲線を描いて確認します。必要に応じて,先のパラメータを書き換えて何度も修正します。LTspiceで過渡解析を実施します。コレクタ電圧とベース電流を下記のようにスイープして描画します。

PNP Tr特性曲線Spiceモデル.jpgコレクタ特性を描くための回路

2SA56 Vce-Ic特性Spice.jpg2SA56の特性曲線

ちょっと,PNPなので見にくいですね。どうしてもLTspiceはグラフの上限は下限より数値が大きくないといけないので,規格表のグラフと天地が逆になってしまいますが,こんな感じです。▲の規格表のグラフと比較すると似ていると思います。

さて,いよいよLTspiceで今回の回路をシミュレーションしてみます。


ベース接地コルピッツ発振回路.jpgシミュレーション回路

なんと,驚いたことにデフォルトのPNP Trはもちろん,ほかのTrではかなりのものが動きません。2SA562N344とか,シリコンの2SA1015ではちゃんと動くんですけどね。やはり,きちんと周囲の定数を設計しておかないといけませんね。

局発出力(R4=1kΩ).jpg ちゃんと発振しました。

局発出力(R4=1kΩ)-1.jpg 拡大するとこんな感じです。

発振条件としては,閉ループ中のゲインが1(0dB)以上であることが必要ですが,ちゃんとf特を見ると20dB以上のゲインがあることがわかります。そんなに取れるとは思えないんですけどね......。

FM局発f特.jpg 76MHzで20dB以上あります。

LTspiceでいろいろいじれるので調べてみると,やはり帰還コンデンサC5は結構シビアです。2pFでは発振しません。また,IFTと局発コイルの間のC6も20pF以下では発振しません。

そのほか,Trの動作点を決めるR2とR4は重要です。Trのベース電位を見て,ほぼ1/2Vccくらいになるように決めました。原設計とはかなり異なる値になりました。

こうして,再び,基板上の抵抗やコンデンサを取りかえ,発振するかどうか見てみます。

局発波形.jpg なんとか発振しました。

LTspiceではシミュレーションでは9VP-Pくらいの出力となるんですが,せいぜい400mVP-Pくらいと小さいですし,基点もふらふらと移動していて不安定です。もう少し定数を見直してみたいと思います。それに,発振周波数も45MHzくらいと低すぎます。これは発振コイルのインダクタンスが大きいためですが,これも小さくしないといけません。

それにしても2SA56は1950年代末の製品だと思いますが,よくこんな古いTrが動作するものだと感心しました[晴れ][晴れ]


2018年4月30日追記

▲の局発の周波数をもっと高くして,また,波形ももっときれいにしたいと思い,調整を再開しました。

ところが.....。

再度,完全に局発が停まってしまいました。あ~~ぁ.......orz。

こういうの,よくあるんですよね。ほんのわずか,何かをいじったら回路が動作しなくなった,ってよくありますよね~.....。ケースのふたを閉めただけで動かなくなった,なんてのもしょっちゅうですけど.....。

再び泥沼にはまってしまいました。

気を取り直して,いろいろ調べてみますが,うまくいきません。LTspiceでR1の820Ωを大きくすると発振が安定することがわかりましたが,やってみてもダメ。全然,局発は動作しません。

ようやく,再度,"ラジオの組立て" を読み返してみますと.....初段のコンバータ用のIFTの同調コンデンサがないことに気づきました。

実は,気がついていたのですが,てっきり誤植だと思ってしまっていました。この回路,検波段に誤植があり,レシオ検波なんですが,ダイオードの向きが逆でした。それで,これも誤植だろう,と思ってしまいました。

でも,改めて,クラウンのFM-100型ラジオの回路や東光のカタログを見てみると.....,

なんと,やはりコンバータ用のIFTだけ,同調コンデンサがないんです。

Crown FM-100 schematic.jpgクラウンFM-100型回路

やはり,コンバータ用のIFTだけ,同調コンデンサがありません。IF段はついています。

東光FM用IFT結線図.jpg東光カタログ'71から

    中間周波用        コンバータ用

うっかりしていました。FMはすべて同調コイルがついていると思っていました。TV用の場合,真空管やTrの電極間容量を利用して同調コンデンサがないものがありますが,FMもコンバータ用のものだけ,つけられていないんですね。

さすがに同調コンデンサのない,コンバータ用のIFTなんて持っていないので,FCZ研究所の10.7MHzIFTを改造します。同調コンデンサのリード線を切って外しちゃいます。

FCZ 10.7MHz局発用改造.jpg  部分のリード線を切ります。

FCZ 10.7MHz局発用改造1.jpg 同調コンデンサを外しました

ようやくこうやって再度,基板に取りつけてみると発振しました。

今まで,LTspiceでシミュレーションしたときはすべて同調コンデンサがついていましたが,ちゃんと発振していました。

ただ,Spiceで動いたからと言って実際の回路が動くわけじゃありません。この逆は,まずないと思って間違いないんですけど。

この部分は並列共振じゃなく,直列共振になっているんですね。失敗でした。IFTと局発コイルをつなぐコンデンサは10.7MHzに共振しないといけないのでちゃんと容量を決める必要があります。並列にコンデンサが入っているとうまくいかないようです。

局発コイル周辺.jpg 局発周辺

コイルはφ0.5mmのUEW(ポリウレタン)線で何度か試作しました。これはコイル径5mmで,6回巻が適当でした。

局発上限.jpg ようやくきれいに発振するようになりました。

        ☆        ☆        ☆

1914年9月,英仏の宣戦布告から1ヶ月後,事前に入念に策定したシュリーフェン作戦の想定どおり,ベルギーを蹂躙し,パリへ向けて快進撃を続けていた最右翼のドイツ第1軍を率いる将軍クルックは40年前の皇帝ナポレオン3世を捕虜にしたセダンの戦いの大勝利の再現をもくろみ,敵の第5軍を包囲殲滅するべく,東に向きを変えます。
 
その隙を突いて,パリ防衛を任されていた老獪なフランスのガリエニ将軍は敵の右側面と伸びきった補給線を突き,攻撃します。戦況は一進一退を繰り返しますが,とうとう,タクシーまで使って援軍を送り続けたフランスが勝利し,ドイツ軍は越えたばかりのマルヌ川を渡って一気に100kmも後退し,パリを目前にしてドイツ軍は敗北します。有名なマルヌの戦いですね。フランスはガリエニのおかげで危機一髪の窮地を逃れました。一方,補給の軽視はドイツ陸軍ばかりでなく,我が帝国陸軍の悪いところです。
 
シュリーフェンの後任で参謀総長を務めていたモルトケ(普仏戦争の勝利の立役者の大モルトケの甥)は国王のヴィルヘルム2世にこう言ったと伝えられています。"陛下,この戦争は我々の負けです"。
 
こうして1918年11月の休戦にいたるまで,4年にわたる長い塹壕戦が始まることになりました。26年後,この教訓を生かし,今度は独仏国境の森林地帯を機甲部隊が突破してパリが陥落します。フランスはここからは来ないだろう,と高をくくっていました。シュリーフェンは6週間の計画を立てていましたが,今回はわずか1ヶ月でした。1940年6月,ヒトラーがさも愉快そうにエッフェル塔を見上げている映像が残っていますね。
 
        ☆        ☆        ☆
 
iruchanは無事に局発の作動に成功して泥沼の西部戦線を脱出してパリに向けて前進再開です。さっそく,参謀本部に打電します。
 
          "西部戦線異状ナシ"  .......か?       
 
                              つづく かな

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ゲルマニウムトランジスタ スーパーヘテロダイン方式FMラジオの製作~その1~ [ラジオ]

2018年4月11日の日記

先月,米国バンドのFMラジオを日本バンドに変更するのがうまくいったのに気をよくして,自作のFMラジオを調整したいと思います。

iruchanはゲルマニウムトランジスタが大好きで,本ブログでも,Cherryの4石レフレックスラジオキット6石8石スーパーをゲルマニウムTrで作ったり,完全にプリント基板から自作したラジオも2種類作りました。ひとつは国産Trを使ったもので,もう一つは英Mullardのガラス封止の砲弾型Trを使ったものです。

どれもうまくいきました。お気に入りはMullardのTrを使ったもので,OC44OC71を使っています。それこそ,トランジスタ黎明期の本当に初期のTrで,そんなTrが今も使えるのに驚きましたし,感度もよいし,音もよいのにびっくりしました。今もそのラジオでNHKニュースなんかを聴いています。

さて,今日はいよいよFMラジオを作っていきます。フルディスクリートで,しかもゲルマニウムTrを使ったスーパー式のものです。

残念ながら,やはりFMは難しく,過去の製作記事をさんざん探したのですが,ゲルマニウムのスーパーFMラジオの記事は2つの記事しか見つかりませんでした。ひとつは無線と実験に載っていた,カーステレオのクラウンFM-100型と,単行本の "ラジオの組み立て"(吉本猛夫著,元文社1965年刊行)です。

クラウンのは自社の新製品を紹介するための記事ですが,詳しい設計手法や回路も載っていて参考になります。また,"ラジオの組み立て" の方は著者が東芝の柳町工場勤務と奥付に書かれていて,これもどちらかと言えば,東芝のFMラジオの設計記事,みたいな感じです。いずれにしてもプロの技術者が測定器を使って組み立てた内容で,あまりアマチュアが一から作るための記事,という感じではありません。やはり難しいのですね。

おそらく,TrのFMラジオは作るのも調整するのも難しいので,測定器を持たないアマチュア向けの製作記事としては敬遠されたのだと思います。それに,iruchanも記憶が薄れているのですが,ディスクリートのFMラジオキットというのはなかったと思います。AMだとCherryのほか,ACEやHOMERのキットがありましたね~。今,売られているFMラジオのキットはICを使ったものですし,肝心のフロントエンド部分は事前にコイル類を調整してあって,無調整でFM局が受信できる,と言うものですよね。

さすがにFMともなるとSGやディップメータなど,測定器がないと調整できません。おそらく,製作記事もほとんどないし,実際にTrを使ってスーパーのFMラジオを作った人も少なかったと思います。真空管のFMラジオというのはわりに製作記事があるのですけどね。

それに,日本の場合,FM放送の開始は1969年で,すでにTrと言ってもシリコンが当たり前になっていた時代ですから,余計にゲルマニウムの記事が少ないのだと思います。

とはいえ,試験放送は1960年に始まっていたし,69年までにはほぼ全県でNHKの放送が実施されていたので,HiFiマニアの人は作ることを考えていたし,先の記事や本も出たのは60年代に入ってすぐくらいのことですから,実際に作ろうとした人はいたようです。

iruchanはシリコンTrが実用化されてからの生まれなので,ゲルマニウムTr世代じゃないんですが,本にはたくさんゲルマニウムTrの記事が出ていたし,実際,メーカ製のラジオもかなり遅くまで外観はとてもモダンなのに,中身はゲルマニウム,と言う時代が続いたので,とてもゲルマニウムTrには親しみが湧きます。中学になって初めて2SC372(懐かし~~)を使ったラジオを作ったとき,シリコンTrに驚いたことがあります。外形もゲルマニウムだと金属缶なのに,シリコンはモールドになっちゃっていて,例のシルクハットみたいな形状に違和感をおぼえたのを今も思い出します。

もう,あれから30年も経っていますが,ゲルマニウムTrを使ってFMラジオを作ってみたいと思います。

さて,まずは使用するゲルマニウムTrなんですが......

NEC transistors-1.jpg NECのゲルマニウムTrたち

部品箱をひっくり返してかき集めました。黒いNECのTrは河童さんからいただいた中古のものですが,全部生きていました。黒いのはたいてい通信用で,普通は市販されていないものです。通信用=電電公社用と考えてよく,VHF帯の中継器などに使われたものだと思います。

規格を載せておきます。

       VCEO(V)  IC(mA)  Pc(mW)  hFE  fT(MHz)

2SA56    -15     -50     150    40   300  

2SA213    -15     -2       15    -    140

2SA244    -25     -30     200    -    400

2SB101    -30     -50     125    -    1.2

2SB163    -30     -100     125    70    0.8

FM用のTrだと松下の2SA71が有名です。太めの金属缶ケースで,シールド電極を持った4本脚になっています。もとは蘭PhilipsのOC171です。FM用のTrを開発するのに各社苦労していた時期に欧州からカネで技術導入して作ったので,ちょっと反則という気がするのですけどね.....。ということで,2SA71も持っているのですが,反体制派のiruchanはブルジョワは嫌いなのでFA選手は2軍落ちです。実際,2SA71ってデブでおいしいもの食べ過ぎて太った,という感じがしてあまり好きになれないんですよね........(^^;)。

結局,NECのTrを使うことにし,スタメンは2SA56(RF,conv)+2SA244(IF)+2SB101(LF)+2SB163(output)のラインナップで臨みます。ちょっと2SA213は定格が心細く,うっかりすると飛ばしてしまいそうで,ベンチで代打要員です。

さて,次はバリコンやコイル類です。

幸い,まだポリバリコンのFM用は入手可能です。2連の最大20pFくらいのものです。国産のミツミやTWDのものも入手できると思います。黒いプラでできた韓国製のが最近,秋葉で売られていますが,どうも絶縁のポリエチレン樹脂が弱くて破れる,と言う話を聞きました。

問題はコイルやIFT。

コイルは数μHのものが必要です。発振コイルだと0.1μHくらいですので,ほとんどが空芯となります。普通は市販されていないので,エナメル線で自作しないといけません。

これ,大変なんですよね~。

やはり,FMはこれが最大の問題だと思います。

自作すると巻数や直径,線径によりインダクタンスが大幅に変わるので,うっかりすると(しなくても)とんでもないところで発振して,まったく局が受信できない,と言うことになります。せめてオシロか周波数カウンタがあると,発振している周波数が確認できて,調整できるのですけど。

ということで,メーカ製のラジオなどに使われている,コア入りでねじで調整できるやつが入手できると楽ですし,実際,東光やミツミのカタログには載っていたり,メーカ製ラジオには使われているので,こういったのが入手できるといいのですが,市販されていることはほとんどありません。

幸い,熊本のFCZ研究所が長年,ハムバンド用のコイルを販売していて,FM用に使える80MHz帯と144MHz帯のコア入り可変インダクタがありますので,使わせていただきます。アンテナコイルやバンドパスフィルタには80MHzを,発振コイルに144MHzを使うとよいと思います。また,10.7MHzのIFTもあるので,ありがたく使わせていただきます。

ただ,FCZのコイルはもう10年くらい前に製造中止になっています。iruchanもあわてて買いだめしたものです。現在は中国製の互換品が手に入るようですが,品質の面でやはりFCZの方がよいようです。

FCZ 10S10.7.jpg FCZの10.7MHz IFT

非常によくできていて,壺型コアを上からかぶせるようにして調整します。実測したところ,インダクタンスは4.79μH,Q=8.09でした。内蔵されているコンデンサは51pFのようです。

なお,FCZ製じゃなく,ジャンクなどで古いFM用IFTを使う場合はいくつか問題があります。また書きたいと思います。

Ge Tr FMラジオ基板.jpg 基板が完成しました

プリント基板は100×75mmです。ちょっと無理で,もう少し大きな基板にすべきでした。一応,これで低周波部分も入っていて,スピーカを直接つなげます。

次回は調整編です。

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再びFMバンドの変更について [ラジオ]

2018年3月14日の日記

FM dial.jpg 

   このバンドを変更しました。大体,この位置が80MHzです。

6年前に,海外製のFMラジオを国内バンドに変更する方法について書きました。

どうもたくさんお読みいただいているようで,"FMバンド変更" なんて簡単なキーワードでググってみるといきなりトップに表示される始末。ありがたいことですが,前回は簡単にできる方法を書いたので,本当にきちんとFMのバンド変更をやることは書いていないのでちょっとヤバいな......とiruchanは思っていました。どうも申し訳ありません。

前回はFMのバリコンの局発側に15pF程度のコンデンサをパラに接続する,と言うものでした。ごくおおざっぱではありますが,ちゃんと国内のFM局に対応し,今もそのカナダ・Magnasonic社製のFMラジオはiruchanの机の上に鎮座していて,毎日使っています。

ただ,通常の日本のFMバンドに大体,対応していますが,最近はじまったAM局のワイドFMには対応しておらず,改造して受信できた範囲は77.5~90.9MHzです。このように,局発コイルにパラにコンデンサを接続する方法は,日本のFMバンドをほぼカバーできますが,ワイドFMは入りません。

そこで,やはりきちんとトラッキング調整をやり直して海外のFMバンドを日本のバンドに変更する方法について書きたいと思います。ついでに,ワイドFMにも対応させたいと思います。

さて,今回,バンドを変更するラジオは.....

GE 7-4813B.jpg GE 7-4813B

iruchanが20年ほど前に米国へ行ったときに買ってきたもの。GE製のAM/FM2バンドラジオで,アラームクロックが付いています。アナログチューニングのものは日本でもAMだけなら使えますしね。ちなみに,デジタルチューニングのものは米国はAMが10kHzピッチなので,バンドはほぼ同じなんですが,日本では使えませんのでご注意ください。

でも,実を言うと,AMバンドも米国は少し違うのです。

上が1605kHzじゃなくて,AM expanded bandといって1705kHzまでです。1992年に拡大されました。このラジオもダイヤルに1700の表示があります。日本だと上限の表示は1600ですね。大昔は警察無線の帯域で,戦前のRCAのラジオなんかにAMの一番上にPoliceと書かれたところがありました。これって,警察無線が普通のラジオで聴けちゃたの? 犯人が逃げちゃうじゃん。

まあ,当時,FMはあまり聴かないし.....と思ったのですが,時計つきは便利で,今も実家のベッドに置いてあります。AMはさすがに米国製のラジオは音がよいのです。かなりAMも気をつかって設計しているようで,米国でラジオを買うと,AMの音のよいことや感度のよいことに感心させられます。日本製はノイズが多いし,高音が出なくて音が悪いですよね.....。

でも,ワイドFMがはじまったし,日本のFM局が聴けないのも残念なので,これを改造します。

GE 7-4813B 内部.jpg 内部

米国の電気製品らしく,やはりMade in Chinaです。ただ,驚いたことに,AM/FMチューナICは東芝のTA2003Pが使われていますし,出力はTA7368Pです。

これ,よくあることなんですけどね.....。

さすがに,もっと前だとMade in Japanなんでしょうが,この時代,部品だけ日本製で組み立てが中国製,と言うのが多かったです。とはいえ,今だとスマホの中身なんか,日本製はカメラとチップのセラミックコンデンサだけ.......なんて状況なんじゃないでしょうか.......orz。

TA2003Pは今も入手可能で,規格表も手に入るので楽です。使われていたのはDate Codeが9604Uで,M'siaとあるので,1996年のマレーシア製のようです。そういえば,たぶんその頃,このラジオを買った記憶があります。東芝の規格表も2002.10の日付があるものがネットに出ています。

例によって,局発の部分をいじります。問題はどれが局発コイルか.....と言うことです。AMはコア入りでしかも赤と決まっていますので楽です。FMは空芯コイルが普通ですが,大体,2個か3個,空芯コイルがあります。本機は3個ありました。このうち,どれが局発コイルかが問題です。

でも,この点,意外にメーカ製は楽なんですよね。たいてい,基板の裏側,バリコンのトリマにFM OSCなどと書いてありますので,それにつながっているコイルが局発コイルです。高周波の回路なので,すぐ近くに設置してあります。

FM osc VC周辺.jpg 

  バリコン周辺。←→の部分にコイルが入っています。

まあ,こういうアナログチューニングのラジオの場合,最終的に調整しないとラジオとして使えないので,最後に調整をする人がやりやすいよう,必ずシルク印刷してあります。

ここで顔を出しているのがバリコンのトリマで,AM/FM2バンドなので,4個あります。

このうち,いじるのはFM OSCとFM RF(普通のラジオだとFM ANTと書いてあると思います)ですが,主にいじるのはFM OSCですFM RFは最後の最後までいじりませんのでご注意ください。もちろん,AM側はまったくいじらないので,絶対に触らないようにしてください。

さて,前回はこのFM OSCのところにつながっているFM OSCコイルに15pFのセラミックコンデンサをパラってやってバンドを変更していました。こうすると日本のFMが聞こえるようになります。

GE 7-4813B フロントエンド1.jpg フロントエンド周辺

 局発コイルは最初の状態です。これだけ開いていました。

さて,ここでスーパーヘテロダイン方式によるFMラジオと,FMのバンドについて復習しておきませう。

FMフロントエンド.jpgラジオのフロントエンド

AMもFMも原理的にはスーパーなので,ブロック図は同じです。FMの場合,不要電波輻射防止のため,高周波増幅をつけることが義務づけられているので,必ず混合の前に高周波増幅(RF)がついています。TA2003PもRF増幅がついています。AMはディスクリートの場合は面倒なのでRF増幅はつけませんが,ICの場合はたいてい,ついています。ICラジオが高感度なのはこのためです。

TA2003PはFM検波はクォドラチャ検波のようですが,本機はブロック図にあるとおり,セラミックディスクリミネータじゃなく,LCの同調回路になっているようです。

TA2003P ブロック図.jpgTA2003Pのブロック図

スーパーのラジオは内部で別の発振器(局部発振器)を用意し,中間周波数に変換しています。AMの場合は455kHz,FMは10.7MHzというのが世界的に決まっています。
局発の信号を混合器で入力の電波信号との積を取り,例の高校で習う三角関数の積→和の公式に基づいて,出力に中間周波数と,元の信号±中間周波数の信号が出てくるのをフィルタで中間周波だけ取り出して増幅します。
このとき,局発の周波数が元の電波より高い場合を上側ヘテロダイン,低い場合を下側ヘテロダインと言います。
FMは当然VHF帯を使うのですが,日本だけと言っていいくらい変な周波数バンドで,76~90MHzとなっています。海外では,米国など,88~108MHzのところが多いです。

日米正規FMラジオの局発.jpg日米・正規のラジオ

なんで,日本だけこうなのか......いまだによくわからないのですが,すぐ上にアナログTVの1~3ch.があったから,というのが理由ですけど,そもそもそこになぜTVがあるのか,というのもおかしな話で,米国だとすぐ上はTVじゃありません。

どうも,日本は占領の影響を受け,ずっと上に米軍用の周波数があって,TVがかなり下に移動せざるを得ず,とも連れでFMも世界標準より低い位置になった,らしいです。そういえば,最初は日本のTVは6ch.しかなかったのに,12ch.になったのはやはり使用中の米軍向けの周波数帯が開放されたから,だったですよね。

まあ,欧州ではFMやめちゃってデジタル放送に移行する,というくらいですから,いまさら世界標準にする,なんて話もありません。

AMの場合はバリコンの製作上の問題から上側ヘテロダインしかなく,局発は 電波の周波数+455kHz で発振するわけですが,FMの場合はこれも日本だけなんですけど,下側ヘテロダインになっていて, FM電波の周波数-10.7MHz となっています。米国は上側です。

これはなんでか,というと日本の場合はすぐ上にTVのチャンネルがあって,上側ヘテロダインだとTVの映像信号や音声信号を受信してしまって,FMが聴けないとか,FMのアンテナから局発が漏れて周囲のTVに妨害が出る,などの問題を避けるためです。

ということで,結局,▲の図のように,局発が発振しています。

さて,いよいよ米国製のFMラジオを日本のバンドに対応させる場合ですが.....

米国FMバンドを変更する場合.jpg米国製ラジオの改造

米国製のFMラジオは今も書きましたとおり,上側ヘテロダインなので,98.7~118.7MHzで発振します。

これを日本のFMに対応させる場合,下側ヘテロダインとしてしまうと,局発は65.3~69.3MHzとなってしまいますから,かなり周波数を下げないといけません。こうなると局発コイルを交換しないとダメだと思います。

しかたないので,上側ヘテロダインのまま,周波数を約10MHz下げてやれば日本のFM局が受信できます。

まあ,アナログTVはもう終了してしまったし,上側ヘテロダインでも問題ないと思います。

でも,これでも実際にやってみると非常に大変なんですけどね.....。テストオシレータは必須ですし,技術がないと大変難しい作業ですので,自信のない方はやめておいた方が無難です。

今回はワイドFM対応,ということなので,局発を86.7~100.7MHzで発振させます。

           ☆       ☆       ☆

さて,作業に取りかかりましょう。

まず,FMのバリコンを左一杯回し,一番低い周波数に合わせます。

当然ですが,まだ何もしていないので,この場合は88MHzしか受信できません。

次に,局発の周波数を下げるわけですから,局発コイルのインダクタンスを増やします。

この場合,コイルを交換するのが一番ですけど,それをやっちゃうとあとが大変なので,最後の手段とします。FMはVHF帯を使っていますが,局発コイルは数μHしかなく,ちょっとした寸法の違いで,とんでもないところに同調して変な周波数で発振します。となると,もちろん,まったく放送が入りませんし,テストオシレータやディップメータがないと調整できなくなってしまいます。

まずは,元のセットのコイルをいじります。

インダクタンスを増やせばいいので,巻数を増やすといいのですが,それはできないので,局発コイルを密にします

ピンセットでコイルをつまんで,縮めます。なお,トリマを回すドライバ同様,ピンセットも非金属製でないとまずいのですが,セラミックのピンセットはとても高いので,iruchanはステンレスのピンセットでやりました。こうすると,調整中は音が出ませんので,一度,縮めては外し,を繰り返します。

それと,もちろん,一気に縮めてしまうと泥沼にはまっちゃいますので,ちょっとずつです。

テストオシレータで,同調する周波数を確認しながら,ちょっとずつコイルを縮めていきます。うまい具合に,少しずつ,下に下がっていくのがわかります。

ところが....。

残念ながら,もうこれ以上縮められない,と言うくらいにしても受信する周波数は80MHzくらいです。これで,NHKも入ったのですけど,まだ足りません。

困ったな~~~[雨][雨][雨]

でも,iruchanは知っていました。

実は,たいていの場合,メーカ製のFMラジオの局発コイルにはパラにコンデンサがついているんです。

これ,なんでだかわからないのですが,たいていのメーカ製ラジオにはパラに入っています。もし,これがついていれば,前回と同様,このコンデンサを少し,容量upしてやればもっと周波数を下げられます。

案の定,このラジオもバリコンの周辺に22pFのセラミックがあり,局発コイルにパラになっていました。

普通,自作する場合はバリコンとコイルだけで作ってしまいますし,教科書にもこんなコンデンサについては書いていないんですが,メーカ製ラジオには入っていることが多いです。なお,▲の東芝のTA2003Pの規格表にはコンデンサがコイルにパラに入っているように描かれていますが,これはバリコンのトリマのことだと思います。

残念ながら,もしこのコンデンサがない場合は,同様に小容量のセラミックコンデンサをパラにしてやってみてください。

Cosc+Losc.jpg 局発コイル付近。

  一杯に縮めても80MHzまでしか受信できませんでした。隣の22pFを交換します。

理論上,コンデンサの容量は周波数の2乗に比例しますので,約10%周波数を下げるためには30pFくらいになりそうですので,30pFに交換してみました。ついでに,さっきのコイルを少し伸ばして,調整しろを作っておきます。再び,徐々にこのコイルを縮めながら調整します。

ようやくこれで76MHzが受信できるようになりました。

今度は上限が下がってしまいますので,バリコンを一番右に回して,上限をチェックします。当然,108MHzからは下がっているはずです。

この状態で95MHzが受信できるかどうか,確認します。

VC調整.jpg バリコンのトリマを調整します。

このようにセラミック製の調整ドライバで調整すると楽です。セラミックコンデンサは試験中のもので,あとで撤去しました。

iruchanの場合は93MHzくらいでしたので,今度はバリコンのFM OSCと書かれたトリマコンデンサを回して95MHzが受信できるようにします。

その後,再び,下限を調整するため,またコイルを少し伸ばしたり,縮めたりします。

さらにまた上限を......と言う具合で,何回もバリコン,トリマ,コイルを調整します。

まあ,正直なところ,AMラジオの場合も同じなんですが,完全に調整できることはなく,ある程度で妥協しないといけませんけどね.....。

iruchanの場合,大体,76MHz~95MHzとなったはずなんですが....。詳しくはまたあとで。

ここまで来て,ようやくFM RFのトリマを少し調整して,一番音量が大きくなる位置で止めます。

まあ,FMはVHF帯なので,コイルのQが非常に低く,せいぜい10とか20くらいしかないので,同調はシビアじゃなく,このトリマは調整しなくてもいいと思います。AMだと大きく違うんですけどね。

これでいいでしょう。ようやくNHK FMが聴けてゴキゲンです。今もこのラジオで "ミュージックライン" を聴きながらブログを書いています。今日は久しぶりに "ラジオ深夜便" をFMで聴いてみようかな~[晴れ][晴れ][晴れ]

LEADER 17A oscillator.jpg 76MHz付近が入ればOKです。

lubrication.jpg 少しグリスを塗り直してやります。

ついでに,ケースをばらしたので,ツマミなんかのグリスを洗浄剤で落としてから塗り直してやりました。

特に,このラジオは某国産メーカがよく使っていた黄色いグリスを使っています。これ,経年で固まってしまって,そのうち動かなくなりますので,きれいに落として新しいグリスを塗りました。


2018年3月17日追記

ようやく完了したと思ってラジオを聴いていますが,どうにも変な感じ.....。

FMワイドはガンガンはいりますが,どうも通常のFM局が感度が低いです。特に,NHK FMはザー,ザーとノイズが入ります。

やはり可能性としてはトラッキング。

再び調整することにしました。

やはり,上側に少しずれていて,上限が97MHzくらいになっていました。

実は,▲のテストオシレータのダイヤルに頼っていて,周波数カウンタをつながずにやっていました。

残念ながら,ダイヤル自体はあとで調べたらずれてはいなかったのですが,きちんとカウンタかオシロで正確な周波数を確認しながらやらないとまずいですね。

いつも使っているテクトロのオシロをつないで,周波数を見ながら再調整しました。

結局,受信範囲は77.4MHz~94.5MHzくらいとなりました。AMもそうなんですけど,完全にトラッキングをあわせるのは難しい感じです。どうしても下限を合わせると上限が大きくずれてしまいますし,今度は上限を合わせると下限が合わない,という感じで,ある程度で妥協せざるを得ません。

さて,これできちんと合ったはず.......なんですが.....。

これでもNHKの感度が低く,かなりノイズが乗ります。

こういう場合,疑うのは▲のTA2003Pのブロック図にあるとおり,入力にあるバンドパスフィルタ。

自作する場合はほとんど入れたりしないんですけど,メーカ製のものには入っていることが多いです。特に,カーステではノイズが多いので必ず入っていると思います。

ただ,これが実は大きな問題。

メーカ製のセットに入っているのはセラミックフィルタを使ったバンドパスフィルタ。残念ながら,これが手に入らないんですよね~。

閉店した,秋葉のお店で米国向けの88~108MHzというのは買ったことがありますが,国内バンドのものは見かけたことがありません。

幸い,本機をよく見てみると,入力には単なるLCの同調回路が入っているだけで,バンドパスフィルタ,というよりはハイパスフィルタ。バンドパスならあと2個,コイルが必要なはずです。

FM BPF.jpg入力のフィルタ。

残念ながらコイルは空芯コイルなので,外してインダクタンスを調べない限り,インダクタンスがわかりませんが。おそらく,80MHzより下をカットするようになっているはずです。それで日本のFM局が入りにくいと考えました。ただ,これじゃ,減衰率はそれほど高くはないし,このカットオフを下げてもあまり変わらないのでは,と予想しました。

結局は予想どおり,コイルにパラに入っている30pFを少し大きくしてみましたが,現象は変わりません.....orz。

BPF周辺.jpg 入力フィルタ部

 奥のRFコイルと結合しないよう,向きを変えてありますね。

しかたないので,奥の手を......。

米国製のラジオはよく,AC電源コードがアンテナ代わりになっていて,そこから電波を取り込むことが多いです。電灯線アンテナですね......。あ,今はそんなこと言わないか~。

iruchanが使っているBOSEのWave Radioもそうなっています。もっとも,Wave Radioは外部アンテナ端子もついていますけどね。

なんでだかわかりませんが,国内のFMラジオはAC電源を使うものでもたいていはアンテナ線が別についていて,たらりと電線を垂らすものが多いです。これ,邪魔で,いつもWave Radioみたいに電灯線から取りゃいいじゃん,と思っていました。

でも,うちで使っているWave Radioも電灯線じゃ感度が足りず,別にアンテナをつないでいることを思い出し,本機にも▲のLC同調回路のところに電線をつないでみました。

FM antenna.jpg アンテナ線をつけました。

やはり,大正解。感度大幅向上でした[晴れ][晴れ][晴れ]。NHKも雑音なく,きれいに聴けます。

いろいろやったけど,結局はアンテナが重要,という基本的なことを再認識して終わり,でした......。


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ロクタル管の話~オールロクタル管5球スーパーの製作~ [ラジオ]

2018年3月6日の日記

ロクタル管5球スーパー.jpg

ちょっと北陸の実家に帰っておりました。本当に今年は雪がひどく,びっくりでした。iruchanのところはそんなに雪が積もるわけじゃなくて,多い年でも30cmくらいで,それもここ10年くらいはせいぜい15cmくらいだったのに,今年はそれこそ子供の頃以来,という感じの大雪でびっくりしました。被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。

でも,やっぱりiruchanの実家でも確実に春が訪れており,小さな畑をのぞいてみたらたくさんふきのとうが出ていました。

残念ながら,すでに花が開いてしまっていて,食べられません.....。ふきのとうの天ぷらで泡盛を1杯,なんてサイコーなんですけどね.....。

そんなこんなで草刈りしよ.....と思っていたら,もう,種じゃがいもを売っているではないですか!!

あわてて畑を耕して石灰を撒き,肥料を混ぜて土を準備しました。さすがにまだ寒い日もあるので,芋を植えるのは4月になってからですけどね。

種芋看板.jpg いつもお世話になっている園芸屋さんにて。

もう種芋を売っているんですね。びっくりしました。

さて,ついでに実家の部屋に置いてあった5球スーパーを鳴らしてみます。

もう,20年ほど前に組み立てたものです。一時は毎日聴いていたのですが,最近はさっぱりで,しばらく電源を入れていませんでした。工作マニアなので,完成しちゃうと飽きちゃうんですよね~。

でも,あまり電気製品は使わずに置いておくものではありませんね。

やっぱり,スイッチをonしてみてもパイロットランプがつかないし,おかしいなと思ったらしばらくしてバチンと音がしてパイロットが点きました。

どうもトグルスイッチの接点が固まっていて,ちゃんと接点を構成しなかったようです。忘れた頃に力がかかって接点が閉じたようです。

そればかりじゃなく,真空管のヒーターが暖まってもウンともスンとも言いません。

ボリウムを回したらようやく音が出ました。これもボリウムの摺動子が導通不良になっていたみたいです。ヤレヤレ~。

スピーカはTEACの傑作,S-200が遊んでいるのでそれをつなぎます。

これ,コアキシャルスピーカになっていて,12cmウーファーの上にソフトドームツィータがついています。サイズも小さいのに,非常に音がよく,当時,出たときに即買いました。やはりコアキシャル,というのは音の定位もいいし,ウーファーやキャビネットの設計もよいのか,低音もよく出て,いいスピーカーだと思います。それに,普通,このサイズのスピーカーは密閉なんですけど,S-200はバスレフだったのが買った理由です。やはり密閉型SPはいい音がしません。

鳴らしてみると,AMとは思えないくらいのいい音で朗々と鳴ります。ああ,やっぱ真空管ラジオはいいな~[晴れ][晴れ]

       ☆         ☆         ☆

と言う次第で,今日はこの5球スーパーラジオを紹介したいと思います。

20年ほど前,ロクタル管で作りました。

ロクタル管というのは,RCAが開発したメタル管に対抗して,ライバルのPHILCOが真空管の供給元のSYLVANIAに作らせたものです。だから,ロクタル管にはPHILCOと書かれたものが多いのです。

メタル管はRCAが1935年に開発したもので,もちろん,金属でできていますから,割れないという特長があります。

ただ,特長はそればかりではなく,ボタンステムの採用もそのひとつで,従来はバンタムステムと言ってガラスの支柱に一斉に並んですべての電極のリード線が通っている,という構造でしたが,ロクタル管はピン配置と同じ構造で,円形にピンが並んでいて,そこにリード線が通っています。各電極の距離が離れているため,電極間容量が小さく,より高周波まで使用できる,と言う特長があります。

また,ピンも8ピンになり,従来,最大でも7ピンだったのが1本増えて多極管が作りやすくなりました。これがこのあとのGT管の基礎になります。

とは言っても,結局はもう1本必要なことが多かったわけで.....。MT管が登場すると消えていく運命にあります。おまけにメタル管は#1ピンがシールドになっていることが多く,外被を#1ピンに接続してシールドにしています。だからメタル管は#1ピンをGNDに接続しておく必要がありますが,このおかげで,使えるピンが1本,減ってしまうわけですからなおさらです。

一方,1939年にSYLVANIAが開発したロクタル管は,メタル管同様,バンタムステムを採用し,ピン数も同じ8本になっています。

残念ながら,外被はメタルじゃなく,普通のガラスです。これじゃ,割れるのでメタル管に比べると不利なんですが,その代わり,ピン中心のキーがメタル管はGT管同様,縦にはストレートな形状で,何らロック機能はないのに対し,ロクタル管はキーがくびれていて,ソケットのばねにはまり込んで抜けなくなる構造になっています。だから,lock-in-octalの略でLOCTAL管なんですね。もっとも,PHILCOの登録商標はLOKTALです。なお,この金属ベースはこのロックピンを接地して使うのですが,そうすると各ピン間がシールドされるので,より高周波特性がよくなります。この点に目をつけたのか,欧州Philipsが欧州版のロクタル管を作ったので,欧州にも同じロクタル管があります。

メタル管は管全体がシールドされる構造ですが,ロクタル管も電極そのものはもとからあとの6SK7GT6AU6とか6267などと同様,外周がシールドになっていて,ガラス管内でシールドされており,さらにベース部分は金属ベースでシールドされるのでメタル管同等のシールド効果が得られます。名よりも実を取った,と言うわけですね。ロック機能を考えれば,メタル管より優秀かもしれません。

ただ,これはメーカーの宣伝文句で,実際はJohn W. Stokesの "70 Years of Radio Tubes and Valves" にあるとおり,ロクタル管はどういうわけかかなり短足でピンが短く,抜けやすいのでその対策として考えられた,というのが本当のところなのかもしれません。実際,なぜかロクタル管は脚がほかの球に比べて異常に短いんですよね。

残念ながら,真空管は抜けやすく,特にGT管はうっかりすると抜けてしまうんですが,ロクタル管はかなりゴリゴリやらないと抜けないので非常に信頼性が高いです。

その意味で,メタル管もロクタル管も,まもなくはじまる第2次世界大戦中は軍用真空管として多用されるのですが,特に振動の激しい航空機用によくロクタル管は使われたようです。

ところで,iruchanは時代的にこの球はB29にたくさん使われているのでは,と思っています。日本人としては複雑な気持ちです........。

ただ,メタル管もロクタル管も戦後は不遇で,MT管が開発されると消えていきます。

             老兵は死なず,ただ消え去るのみ    (Douglas MacArthur 1880~1964)

.....ってか?

MT管の登場で,より小型軽量,高性能な機器を求める軍の需要が移ったのでしょう。それに,メタル管は中が見えないので,ヒータが切れていてもどの球が切れているかわからない,というのも軍用機器では問題だったでしょう。救援を要請しようとしたら相手が応答しない,どれか真空管が切れているらしいがどれかわからないんじゃどうしようもないですね。

しかし,よほど大量に生産されたのか,戦後は大量に放出され,神田(当時は今の神田須田町あたりが電気街でしたのでこう呼ばれます)で大量に売られていたようです。柴田翔の本ブログと同名の小説が有名ですね~。

iruchanもこの本は読みました。本編の "されど我らが日々" の方はiruchanは全共闘世代じゃないので,全然理解できませんでしたけどね。ただ,今どきの若い人がすっかり保守的で内向きになり,海外にも行かなくなったし興味もない,というのには呆れています。これじゃ,中国やアジアの若者には勝てないし,あの頃の若い人の方がまともじゃないかと思う今日この頃です。

日本ではメタル管は戦争開始前だったので技術が伝わり,東芝とNEC(当時は東京電気と住友真空管ですけどね)が作りました。と言う次第で,国産のメタル管というのは存在するのです。

一方,さすがにロクタル管は日本では製造されませんでした。

そのせいか,日本ではなじみがなく,ソケットも特殊で入手難だったため,製作記事はほとんどありません。浅野勇氏の "魅惑の真空管アンプ" で,7C5 PPの記事があるくらい,だったのですが,ここ20年ほどは海外から球やソケットが輸入できることもあって,たまに製作記事が出ますね。

iruchanはロクタル管のことは浅野氏の本で存在を知りました。メタルベースの小型の真空管で,ゲッターが燦然と輝き,かっこぇ~と思ったものです。いつかはこれでアンプを作りたい,と思っていました。

ただ,実際にこの球でアンプを作るのは大変です。

なにより,ソケットが問題で,今はインターネットなどで入手できますが,昔はピンに直接はんだづけするしかありませんでした。また,最大の球でも米国オリジナルのロクタル管には6V6同等の7C5しかなく,出力はPPで10Wくらいですし,ほかには6K6同等の7B5や低圧用の7A5くらいしか出力管がなく,選択の余地がありません。もちろん,3極の出力管もなく,当時,iruchanは3極管しか興味がなかったので,計画は中止でした。

これはなんでなのか,よくわからないのですが,メタル管は大出力の6L6があったのに,ロクタル管は7C5くらいです。もう少し大型の球があってもよかったのでは,と思います。

でも,ラジオなら7C5で十分ですし,何よりかっこよいので作ってみようと思って作ったのが本機です。

回路はごく簡単で,ロクタル管と言っても特殊な特性を持った球はほとんどなく,旧世代のST管や後のGT管と同じ特性のものばかりなので,通常のGT管5球スーパーと同じ回路でOKです。

ロクタル管5球スーパー.jpg回路図です。

アナログ入力も設けました。昔はここにクリスタルピックアップをつないでレコードを再生しました。米国なんかだとFMチューナをつないだわけですね。

この場合,切替SWで入力を切り替えるだけでは不十分で,レコードを聴いている最中にラジオが聞こえたりします。本当は局発コイルをショートするにしないといけないのですが,iruchanは知らなくてつけませんでした。まあ,今どきレコードプレーヤをつないだりしないので放置プレイです。

なお,ロクタル管は7C514N7など,7とか14と言う数字が頭についていますが,これはヒータ電圧が7Vや14Vという意味ではなく,ロクタル管を意味するためだけの数字で,ともにヒータ電圧は通常どおりの6.3Vと12.6Vですので注意してください。

球のラインナップは次の通りです。

7Q7(周変)-7A7(中間周波)-7C6(検波・低周波増幅)-7C5(出力)-7Y4(整流)

で,それぞれ,GT管だと6SA7-6SK7-6SQ7-6V6-6X5と言うことになります。本当は6SQ7同等管は7B6ですが,入手できなかったので7C6にしました。同じ2極3極管で,特性的にはST管の75と同じです。7C6はRCA製です。本来ならライバルの製品を作るわけはないと思うのですけど.....。軍用かと思ったら例のニッパーが描かれたRCA Victorの箱に入っていて,ラジオや電蓄などの民生用機器の保守用のようです。このあたり,米国はおおらかなんでしょうか。

ただ,iruchanはちょっと困っていました。

実はロクタル管は中が見えない球が多いんですよね~。

特に7C5は中が見えるものは少ないです。どうにもゲッターが飛びすぎていて,ガラスが全面銀色,と言うのが多いです。また,7Q7も中がアクアダックで塗装されていて,これはガラスが灰色で中が見えません。

アクアダックというのはカーボンで,よくGT管でも6SN76SK7などで塗られています。ブラウン管も普通,中が塗られています。シールドの役割をするのが多いようですが,いろんな文献を読んでみると真空管の場合,要は目隠しが本音だったようで......中の電極の仕上がりが悪くてもバレない,と言うのがマジで理由だったところも多いようです。

ということで,実は7C5以外の球はすべて米国のAntique Electronic Supplyから購入したもので,ついでにロクタル管用のウェハータイプソケットもそこで買いました。やはり人気がないのか,今でも安いですね。7C5も$9.90という値段になっています。

ただ,7C5は中身の見えるものを探していたので,これだけ国内で買いました。GEのが透明なガラスでした。

7Y4,7C5.jpg  整流7Y4と出力7C5

7Y4はTung-Solです。7C5はGEです。いずれもGT管の6X5GT6V6GTとほとんど同じ電極です。

バリコンはアルプスの小型2連です。おそらく,一番最後まで製造されたエアバリコンだと思います。90年代くらいまで,普通に部品屋さんで入手できました。

ただ,このバリコン,確か,430pFじゃなくて,少し大きめの440pFくらいだったような.....。トラッキング調整に手間取った記憶があります。

局発7Q7.jpg 局発の7Q7と中間周波7A7

CBSとSYLVANIAです。IFTは古い6BM8 PPの松下製電蓄からの再利用です。

アンテナコイルと局発コイルはトリオです。いまも入手は可能だと思いますし,気合いがあれば自作もできますので,何とかなります。

ロクタル管5球スーパー内部.jpg シャシー内部です。

ロクタル管は中心ピンが接地されるので,ちゃんとGNDに配線しておきませう。もちろん,出力管や整流管はその必要はないですけどね。

ネジ留め式のトリマはパディングコンデンサの代わりです。正規に今どき,パディングコンデンサを買うと大変な目に遭いますが,アマチュア無線の店などでこのようなセラミックを使ったネジ留め式トリマが売られていますので,それを使うとよいです。パディングコンデンサとしては600pF必要です。

もし,親子バリコンとか,トラッキングレスバリコンと呼ばれる,アンテナ用と局発用で容量が異なるバリコンを使う場合は不要です。中古のバリコンを買うときはこちらの方が便利だと思います。

整流7Y4,Fox condenser.jpg ん?

フィルタコンデンサはAESでまとめて安く売っていたものです。ただ,米国の部品屋で買ったのに,送ってきたのはなんと日本のフォックスコンデンサ。これ,ELNAの前身です。たまにこういうサープラス品で日本製というのがあります。米国製のケミコンには不安があり,いきなり高圧をかけてはいけません。内部の絶縁が破壊するものがあります。でも,これは日本製なので安心できます。実際,本機は最初,真空管が米国製だからとケミコンもMalloryを使っていたのですが,いきなりスイッチonしたら整流管の内部で火花が飛び,焦りました。このフォックスコンデンサ製のは何の問題もありませんでした。製造から50年くらい経っていると思いますが,ハムもなく,今も使えます。350V40μF×3という定格です。やっぱ,ケミコンは日本製ですね! もっと買っておけばよかったと後悔しています。

電源トランスはタンゴのPH-70にしました。本当はタンゴが5球スーパー用に販売していたM-60を使いたかったのですけど.....。今も探しているのですが,入手できません。

久しぶりに自作の5球スーパーを聞いて大満足でした。やはりいいスピーカをつないでAMを聴いてみたいですね!

         ☆         ☆         ☆

2018年3月10日追記

どうやら,国産のロクタル管が1種類だけ,存在したようです。

UL-6306, 5B/248M, EF50.jpg 

    左から,UL-63065B/258MEF50

いつも大変お世話になっている,河童さんからいくつか写真をいただきました。

太平洋戦争中に,レーダー用として作られた,UL-6306という球がそれで,驚いたことに双5極管という不思議な構造です。どうも共通カソードになっていて,ともに3結にして使っていたようです。

もっとも,レーダーとは言っても,高射砲による射撃用の電波標定機用だったようです。

電波標定機というのは飛来する爆撃機の位置を測定して高射砲の照準を決めるためのものです。有名なのはウルツブルグレーダーですね。本当はWürzburgなので,ヴュルツブルグと書くのが正しいと思いますが,日本ではウルツブルグレーダーと言われます。B29を撃ち落とした,と言われている五式十五センチ高射砲に使用されていました。

五式十五高は有効射高16,000mで,B29を撃ち落とせる性能を持っており,東京の久我山に配備されました。実際,2機撃墜したと言われていますし,米軍も久我山周辺が危険だとして飛行禁止とした,とされています。五式と言うことからわかるように,制定されたのは昭和20年なのですが,遅すぎました。戦後,米軍が接収したときの写真が残っていて,砲弾は隣に立っている米兵の身長より高い位で,相当大きく,驚きます。

もっと早く作って日本の海岸にずらりと並べておけば,アメリカが日本を焼け野原にすることも,広島,長崎への原爆投下もなかったのではないかと思うんですけどね......。終戦までに実戦配備されたのはわずかに2門のみでした。

今日は奇しくも73年前の東京大空襲の日です。この日未明,300機のB29が東京の下町を空襲し,10万人もの無辜の市民が犠牲になりました。ご冥福をお祈りします。

残念ながら,十五高の実戦配備はこのあとのようですし,当時,すでにB29も本来の目的であった,高空からの軍需工場へのピンポイント爆撃は効果がないと判断し,低空飛行による一般市民に対する無差別爆撃に切り替えていました。迎撃する飛行機も,高射砲も数がほとんどなくなっていることを見越した上での悪辣非道な行為だと思います。のちのキューバ危機に際して,東京大空襲をはじめとして,日本を焼き尽くしたルメイは空軍参謀総長として,核による対ソ先制攻撃を主張しました。"アメリカ人の1/3が死ぬだろうが,我々は勝つ!” 

東京都復興記念館.jpg 東京都復興記念館(横網町公園)

年末に息子と近くへ行く機会があったので立ち寄ってきました。1931年建立で,震災時に火災旋風が起こって多数の犠牲者が出た,陸軍被服廠のあったところに建っています。今は震災と東京大空襲の記憶を残すべく,記念館となっています。すぐ隣の慰霊堂で息子とお祈りしてきました。

もっとも,十五高に使用されていたのはドイツ型真空管ですが,戦時下なので安全に輸入できるわけもなく,国産化しないと実戦配備は難しいのですが,UL-6306は日本版ウルツブルグに用いられた "た号改4" 電波標定機に使用されたようですから,この球も十五高で使われていたのでは,と思います。

UL-6306は東芝が開発した旧海軍用のRH-8 5極管を2つ内蔵したものです。レーダー用の受信機の混合用として用いられたようです。

ただ,やはり問題となるのはソケットなんですけど.....。神田で米軍放出品を買った? んなわけね~だろ。

どうやら専用のクリップみたいな金具があって,ピンに挿して使ったようです。中心のキーは単なる抜け止めだったようです。五式十五センチ高射砲は分厚いコンクリートで隔てられていましたが,すぐ横で高射砲をガンガン撃っているので,ものすごい振動と衝撃だったことでしょう。

河童さんから送っていただいた写真のUL-6306は不動品で,動かないようです。中心の金属製のキーも錆びて取れてしまっているそうです。

また,蘭Philipsが欧州版ロクタル管を開発した,と書きましたが,実物の写真をいただきました。

真ん中の英STC製の5B/258M5B/205Aの一族で,米国系だと807に類似しているようです。ヒーターが19V/0.3Aで,頭にプレートが出ています。米国のロクタル管はシングルエンドであることが特長で,RCAのメタル管が6A86L7など,トップグリッドで使いにくいのを改良したのだと思います。

もっとも,5B/258Mは送信機用のため,トッププレートになっているのだと思いますが,このように,欧州版ロクタル管はこのように送信機の終段で使えるような807並みの大出力管があるのが特徴です。

英国は9本足のロクタルも作っておりEF50が有名です。Stokesの先述の本によると,1939年に英Mullardが開発して,蘭Philipsと同時に発表されました。英MullardはPhilipsの子会社だったので,同時発表となったのでしょう。最初のバージョンはEF37みたいにガラスの表面にアルミを塗ったメタルスプレー管でしたが,のちにアルミのカバーをかぶせたメタルガラス(MG)管になりました。本来はTV向けのGm=6mSの広帯域増幅用の球でしたが,すぐに戦争が始まったため,レーダー用に大量生産されたようです。日本でもよく知られていて,PX4とかDA30とか欧州の出力管のアンプを作るときにドライバとして使う方がいらっしゃいますね。

河童さんのは米SYLVANIA製のようですが,レーダー用に大量に需要があるのに英国だけじゃ生産が足りず,ロクタル管のノウハウがあったSYLVANIAにも作らせたのだと思います。

もっとも,EF50は9本脚で,もはやoctalじゃないので,ロクタル管と呼ぶのは変な気がしますが,ロクタル管の仲間とされています。

5B/255M, CV327-1.jpg 6L6級のの5B/250MEF52CV327

5B/250Mをトッププレートにして耐圧を高め,送信管としたのが5B/258Mのようです。EF52はMG管です。番号から考えて,EF50のあとに開発されたと思いますが,Gm=10mSで,米国が開発した6AC7(Gm=9mS)よりハイGmです。

鉄ちゃんのiruchanはどうしてもEF50とか,EF52とか,ドイツ版メタル管のEF13とかEF15など,こういう番号の真空管は機関車のように思えちゃうんですけどね。English ElectricのEF50は模型が出たらぜひほしいと思っているのですが.....(^^;)。

sonotone EM71.jpg EM71

一方,ドイツではロクタル管のマジックアイが作られました。Stokesの本にはLorenzが開発して,英国でも販売した,と書かれています。河童さんからいただいたこの写真のEM71はMade in Englandと書いてありますので,どこか,英国のメーカもOEM生産したのでしょうか。

EM71はビーム生成電極が中心からずれていて,同調指示が見やすくなっています。

EM71-1.jpg EM71の同調指示部

ほかに,ロクタルで有名なのはPHILCOのFM1000 7極管ですね。6BN66DT6などのように位相検波(ロックドオシレータ検波)をさせるためのものです。製造はSYLVANIAですが,戦後,FMの普及を目指してわざわざ作ったのでしょう。iruchanはFM1000は持っていた気がするので,いずれ,オールロクタル管FMラジオというのを作ってみたい気がします。


2018年4月9日追記

庭の畑にじゃがいもを植えました。今年はアンデス赤とベニアカリを植えました。赤いじゃがいもって,スーパーじゃ売っていないし,珍しいので育てています。味もとてもよいと思います。

シリカ.jpg 連作障害防止のシリカです。

初めて使いますが,果たして効果はどうでしょうか。

じゃがいも植えつけ.jpg 種芋を植えました。

ところどころ,芽が出ているのは去年の取り残しの芋が芽を出しているからです。ちょっと笑っちゃいました。たぶん,取り残したくらいだから梅干しくらいの小さないもだと思いますけど,寒い冬に耐えて芽を出してくれるとはとてもうれしいです。

2018年8月10日追記

7月末にじゃがいもを取り入れました。連作防止剤の効果か,どの芋も割に大きく,ごく普通のサイズでした。今年はコンポストを設置したので,堆肥を撒きました。農薬は一切使わなかったし,有機栽培ですね~~。

皮がむけてしまったり,傷がついたものはすぐに焼いて食べちゃいましたが,それ以外のものは2週間くらい,寝かした方がおいしいそうです。

ということで......。

今日は嫁はんが仕事でいないし[晴れ][晴れ],iruchanは今日から夏休みなので,子供の大好きなカレーを作りました。

アンデス赤.jpg リンゴじゃありません。

アンデス赤は皮は赤いですが中身は黄色いです。中身も赤い品種もありますけどね。

ポテサラ&シーフードカレー.jpg おいしかった~~[exclamation]

カレーはじゃがいものほかは鶏肉とシーフード,カボチャ,にんじん,たまねぎを入れました。ついでに,赤魚の一夜干しもつけました。もう一つはiruchanの大好物のポテサラ。これがまた美味でした.....[晴れ][晴れ]

アンデス赤はポテサラにとても向いているようです。


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水銀入り整流管用遅延スイッチ回路の設計 [ラジオ]

2016年10月22日の日記

先日,サイラトロンの実験をしました。

サイラトロンは水銀入りの整流管で,動作時は内部がボォーッと青く光ってとても美しく,思わず見とれてしまいました。

整流管というのはもちろん,2極管なのですが,検波だけではなく,交流を直流にするという需要が初期のエレクトロニクスの時代からあり,早くから開発が進められましたが,ラジオやアンプなどに使用できるような大容量の整流器は当時の技術では難しく,バイブレータや電解液を使用したものが使用されました。バイブレータは騒音が大きいし,故障も多いし,電解液式のものは取り扱いが面倒ですね。

といって米国は国が広く,電気が来ていないところも多かったし,そもそも家で充電できない,と言うところも多かったのです。逆に自動車は先に普及したので "ウチではよ~,電気が来とりゃあせんけど,バッテリーならあるでよ~" という家も多かったのですが,情報収集するため,また数少ない娯楽として電池式ラジオが普及します。 自動車を持っていなくてもバッテリーは手に入ったので,日曜に馬車で放電したバッテリーを町まで持っていって充電屋で充電してもらって家に持って帰ってラジオを聞く,なんて生活スタイルでした。

蛇足ですけど,欧州では鉄道模型と言えば交流式のメルクリンなのに,米国ではDC12Vというのも同じ理由からです。いまじゃ,メルクリンもDC式ですけどね......。やっぱ,アメリカは強かった......。 

そんな中で,やはり電池式は不自由なのでAC電源式(エリミネーター)ラジオを開発するべく,真空管技術を使用した冷陰極放電整流管や水銀入り整流管が開発されます。並行して高真空の整流管も開発されていきます。亜酸化銅やセレンなどの半導体の利用は戦前からありますが,本格的な半導体式整流器は戦後のことになります。ちなみに英語で "eliminate" は "取り除く", と言う意味ですが,電池を取り除いたのでエリミネーターというわけです。 

もちろん,後に真空技術が向上し,純粋に電子のみで整流を行う,高真空整流管が登場すると,使いやすいし効率もよいのでほかの整流器は姿を消していきます。

ただ,数Aとか,数10Aとか,もっと大きな容量のものになると逆に水銀入りのものは効率がよく,また,整流時の内部の電圧降下が高真空タイプのものより小さく,レギュレーションがよいことから比較的大容量のものは最後まで使用されました。サイラトロンもそのひとつです。最後の用途は溶接機の電源のようです。おまけにサイラトロンはいわば4極整流管で,グリッド位相制御ができるので,今で言えばサイリスタやトライアックのように電圧制御ができたので都合がよかったようです。

冷陰極放電管も姿を消していきますが,シリコン整流器が実用化されるまでは高圧・大容量のものが残り,イグナイトロンやエキサイトロンは機関車で利用されました。ED70やED71がそうですね。 

オーディオ用だと83とか,866(日本では2H66の方がよく知られています)が有名ですね。83は音がよいとか言うことで今も502A3300Bなどのアンプの整流に使う人も多いと思います。iruchanもいずれ,50シングルアンプを作って音を聴いてみたいと思っていますが,その整流に83を使おうと思っています。

ただ,これらの水銀入り整流管にはやっかいな問題があります。

使用時には 予熱 が必要 なんです。

内部の水銀は常温では液化してしまうため,真空管の電極や底部に溜まった状態となります。この状態で通電すると電流が流れず,整流しないのはもちろん,真空管を傷める原因になります。場合によっては液体の水銀が陰極と陽極をショートすることもあるかもしれません。まあ,見ていて粒になっているくらい多くの水銀が入っているわけじゃないのでこれはあまり出ない事象だと思いますが。あくまでも水銀が蒸発してイオン化するまで待つ必要があるのです。

そこで,前回のサイラトロンではヒータ用と高圧用でスイッチをわけ,最初にヒータ用のスイッチを投入して数分~15分程度待ってから高圧を投入しています。

83とかだと2分~3分くらいでいいのですが,それでもスイッチを2つ設けて,時間差で投入しなければいけません。

でも,これは面倒ですよね~~。

これを自動化するのはタイマーリレーを使えばいいんですが,どうにもタイマーリレーは高いし,サイズも大きいので困っちゃいます。シャシーの上に載せるしかないことも多いのですが,トランスや真空管と一緒に並んでいるのはどうにも違和感を覚えます。

ということでいつかは半導体式の遅延スイッチを作ろう,と昔から思ってましたし,また,いつも大変お世話になっている河童さんからKR-1という初期の水銀入整流管を使いたいので,遅延スイッチ回路を考えてもらえませんか,とご要望がありましたので設計しました。

KR-1というのは小型の水銀入り整流管です。1933年,Kentucky Radio社が開発しました。Ken Radのブランドでおなじみです。エリミネーターのラジオに用いられた初期の整流管です。AC電源式ラジオには整流管が必要でしたが,なかなか整流管は難しく,このKR-11-Vや有名な80など,実用になるものができるのは1930年代のことです。KR-1は,RCAが3年後にほとんど同規格の高真空整流管の1-Vを開発したので御用済みになりました。なんか,あと出しじゃんけん,と言う気もするのですけどね......。さすがに真空管の巨人RCAが発売するとどこもほかは売れなくなってしまいます。

KR-1はナス管なのも魅力で,とてもかわいいスタイルをしています。RCAの282なんかも同じナス管の整流管ですね。 といってよく間違えられるのですが,8283は水銀入りですが,8081は水銀入りじゃありません。ついでに83Vというのもあって,これも水銀入りじゃありません。80は最大100mAと大きく,ラジオ用の決定版と言っていい整流管です。これが開発されたことでラジオ用の整流管は勝負あった,という感じです。戦後は5Y3GTとして,真空管の最後の時代まで使われました。iruchanも結構お気に入りで,最新の6G-A4シングルアンプでも使用しています。

ということで,小型の水銀入り整流管KR-1用の遅延スイッチ回路を設計しました。

水銀入整流管用遅延回路(リレー式).jpgリレー式だとこんな感じです。 

リレーを使うと▲のような回路でしょうか。ちょうど,Tr式パワーアンプのミューティング回路そのものです。

でも,リレーを使うんだったらタイマリレーと変わらないわけですし,サイズも大きいので,オール半導体式にしたいと思いました。リレーだと整流管の前に挿入することもできるんですけどね。半導体だと整流管のあとになっちゃいます。 

しかし,これが意外に面倒。最初,制御Trを▲のリレーの代わりに挿入し,そのベースをC-Rの時定数でコントロールすりゃいいや,と思ったのですが,結構,難航してしまいました。

まず,制御Trに普通はNPNを使うのですが,これが NG。なんでかというと,出力をエミッタからとりますが,エミッタ電位は整流管がonした段階で決まるので,▼のように整流管のあとに挿入しちゃうとエミッタ電位がまず決まらないので制御できないんですね。 

iruchanは鉄道模型用のPWM式コントローラなどではいつもNPNを使っているんですけどね......。 

結局,PNPトランジスタを使って制御しました。これを思いつくまで結構時間がかかっちゃいました。一応,NPNを使う回路も考えましたが,すごく回路が複雑になってしまうので,やはりPNPを使う方がよいです。

水銀入整流管用遅延回路(半導体式).jpg設計した遅延回路 

そんならMOS-FETを使えばいいじゃん,と言う話もあるでしょうけど,これはこれでやっかいで,電圧で制御するのでこういう高圧回路に使用すると電流が流れなくても動作してしまうので設計が面倒です。

まずは簡単にヒータ電源(AC6.3V)を整流して制御用の電圧とします。ヒータ電源はメインのスイッチを入れると同時に入ります。

なお,電源はヒータから取っていますが,整流管のヒータ回路は接地しませんので使えません。整流管以外のヒータから取ってください。また,805Y3GTなどの直熱整流管はフィラメントがカソードになって高圧になっていますから,絶対接続しないでください。 5AR4などの傍熱整流管の場合でもH-K耐圧の観点から,普通,ヒータは接地しませんのでご注意ください。

AC6.3Vを整流し,C-Rの時定数に放り込むと,コンデンサの電圧はゆっくり上昇していきます。

それをQ2のベースに入れてやると約0.5VでこのTrがonします。Q2はある程度,電流が取れないといけないのでダーリントン接続にしてあります。何も▲の図のようにインバーテッドダーリントン回路にする必要はないのですが,なぜかそうしちゃいました......(^^;)。

そうするとQ3のエミッタに電流が流れ,1SS133の順方向電圧が0.6V×2で約1.2Vくらいの電圧になりますので,制御Tr Q1 の2SA1924がonし,遅延スイッチが投入されます。 

実際には考案した回路をSpiceでシミュレーションして定数を決めました。

KR-1用遅延回路シミュレーション結果.jpg LTSpiceのシミュレーション結果

約160sec.でTrがonし,その後,約160sec.かかって徐々に電圧が上がってくることがわかります。

そう,ソフトスタートになるんです!!

実はちょっと予想外だったのですが,これはよいことですね。出力管から見るとゆっくり高圧が加わりますので,とても出力管に優しいです。タイマーリレーや▲のリレー式の遅延回路じゃこうはいきません。いきなり高圧が出力管にかかります。

また,フィルタコンデンサも最初からいきなり高圧が加わるわけじゃないので,ゆっくり充電されますので,大容量のものをつないでおいてもOKです。普通,電源のフィルタコンデンサはコンデンサインプット整流の場合,ラッシュカレントが流れるので整流管ごとに制限値があります。大体,80などの直熱タイプで10~20μF,5AR4などの傍熱タイプでも最大47μFくらいに抑えておかないといけません。1-Vなどの古い整流管の場合は10μFくらいにしておきたいところですが,この回路を使うと100μFくらい入れても大丈夫だと思います。

青い線は制御TrのQ1 2SA1924の損失を示しています。最大で11Wにもなりますが,これは瞬時値で,波形は半波整流の波形です。B級アンプの平均コレクタ電流同様,平均電流はIp/πで表されますから,平均のコレクタ損失は最大で3Wほどです。2分ほどは少し熱くなります。定常状態だとこのTrはほとんど電圧降下しませんので,損失はわずかです。なお,I(R1)がずっと上昇を続けていますが,10mAで落ち着きます。

時定数はSpiceでのシミュレーション上は1.6MΩ×470μFでしたが,実際には10MΩ×470μFで約3分でした。実際とは少し違いますね。 

その時定数回路に挿入しているダイオードは1N4007を使っています。わずか,6.3Vを整流するだけに逆耐圧1,000Vの1N4007を使う必要はないんじゃない,と思われるかもしれませんが,もし,Q2,Q3が破壊されるとヒータ回路に高圧がかかっちゃいますのでその用心です。これがあると安心です。

もちろん,Q2が壊れなければ問題なく,1SS133でも十分なんですが,それじゃどこかの発電所みたいに地下に非常用発電機を設置しているようなものなので,高圧用Diを使用しました。

iruchanはどっかの電力会社と違ってこのようにあらゆる事象を考慮に入れて細心の注意を払って設計していますと威張りたいところですが......。 

なお,Q2,Q3にも安全のためじゃなく,マジで高圧Trが必要です。これらには高圧がかかります。制御Trと同じ2SA1924が使ってあるのもそのせいです。一応,特性を下記に記しておきます。

   VCEO(V) IC(mA) PC(W) 

  2SA1924  -400  500  10

  2SC3425    400  800  10

実は,iruchanは最初,うっかりQ2に2SC1815を使っちゃいました。テストしたら思いっきりショートしてエミッタ抵抗の160Ωが火を噴いてメルトダウンしちゃいました。 ダーリントン接続してあるから,Q2には高圧はかからない,と思っちゃったんですね.....。

考えてみりゃ,Q3のエミッタ電圧-0.6VがQ2のコレクタ電圧なので,ほぼ300Vがもろにかかります。2SC1815はVCEO=50Vですからそりゃ即,炉心溶融ですわな......。 おぉ,怖っ!!

水銀入り整流管用遅延回路2.jpg 

できあがった基板です。 写真はテスト用のものでTrとDiが完成版と異なります。完成版の写真は撮り忘れました。ごめんなさい。

基板は27×33mmと小さいです。これならシャシーの中に十分収まりますね! 

使い方はこんな感じです。

水銀入整流管用遅延回路接続.jpg 実際の基板の接続

実際に300Vをかけてテストしたあと,河童さんに基板を送って使用していただいています。無事に動作しているようです。 

後で考えてみると,高圧の出力に470kΩと直列にLEDをつけておけば,高圧onが表示できたな,と思いました。

なお,本回路はあまり大容量の電流は流せません。せいぜい50mAくらいです。というのも制御Trが飽和領域から非飽和領域に入ってしまうため,出力電圧が低下するためです。次に50シングルアンプを作るときはこの点を改良して本格的な83用遅延回路を作りたいと思っています。 それに,50のアンプだと遅延回路も耐圧600Vくらいで設計しておかないといけませんしね。

では,また。