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デジタルアンプLepy(旧Lepai) LP-2020A+の改造~ヘッドホン端子の取り付け~ [オーディオ]

2017年1月31日の日記 

中国Lepai社のデジタルアンプLP-2020A+にヘッドホン端子をつけました。  
 
LP-2020A+ヘッドホン改造.jpg 
 
 ヘッドホンで聴けるようになりました。下は自作のアナログ式専用電源です。
 
デジタルアンプは出力段がBTL方式になっていることもあり,ヘッドホン端子を取り付けるのは難しいのですが,なんとか使用できるようになりましたので,手持ちのLP-2024A+を先に改造しました。先週末は残ったLP-2020A+を改造しました。 
 
改造の中身については,前回のLP-2024A+の改造と同じですので,そちらをご覧ください。
 
LP-2020A+フロントパネル加工.jpg パネルの穴開けのけがき
 
正面のパネルに穴を開けるので慎重にやらないといけませんが,まあ,所詮はアルミだし,きちんとポンチを使って位置決めをし,最初はΦ2~3mmくらいの下穴を開けてΦ6mmの穴を開ければ傷もつかず,きれいに穴開けできると思います。 
 
電源SWの横にヘッドホン用の穴を開けます。ボリウムの左側の穴はスピーカoffのプッシュスイッチ用です。ヘッドホン使用時はそのスイッチを押してスピーカをoffにします。残念ながら,回路はもとからついているミューティングリレーの制御回路を利用してスピーカをoffにしていますが,ヘッドホンを挿したら自動的にスピーカをoffにする,ということはできませんでした。 
 
LP-2020A+ヘッドホン基板.jpg ヘッドホン基板
 
 
ヘッドホン基板は前回作ったLP-2024A+のものですが,LP-2020A+ではやはり放熱器が邪魔をして多少,改造しました。
 
LP-2020A+に使用されているTripathのTA2020は出力がBTL方式ですが,それぞれ,ホットとコールド端子はGNDに対して6Vくらいの直流電圧が出ていて,スピーカから見たら等電位なので問題ないのですが,ヘッドホンは対GNDで動作させるため,これをカットする必要があり,ストッピングコンデンサが必須です。今回,小型のOSコンにしました。 
 
やはり小型なので十分,スペースに収まりました。コンデンサは100μFにしました。
 
なお,OSコンは導電性高分子アルミ固体コンデンサ,と言うのが正式名称ですが,従来の電解コンデンサと異なり,電解液を使っていません。キャリアが重いイオンじゃなく,軽い電子ですので,非常に高周波特性がよく,ESRも低いし,長寿命という特長もあるのですが,陽極と陰極がポリマーを介して接しているため,故障時にショートモードで故障する場合があります。そのため,メーカはカップリングコンデンサとしては非推奨なので本来,こういう使い方はNGなんですけど,問題はないと思います。
 
一方,高周波特性がよいことから電源のデカップリングコンデンサへの使用は推奨されているのですが,iruchanはこっちこそ危ない,と思います。もし故障したら電源をショートすることになりますからね。OSコンじゃないですけど,同じ故障モードになるタンタルコンデンサをデカップリングに使った'80年代の某社製高級プリアンプはトランスが焼ける,と言う故障が出ています。
 
でも,OSコンはやはり音がよいです。今回もヘッドホンで聴いてみて,明らかに従来の電解コンデンサとは異なる音でした。
 
おかげで非常に評判のよいLepai社のデジタルアンプですが,ヘッドホンでも聴けるようになりました。
 

LUXKIT A3600復活への道~その4・調整編~ [オーディオ]

2017年1月14日の日記

Luxkit A3600.jpg 完成しました。 

とうとう,この2年ほど取り組んでいた,ラックスキットのA3600アンプが本日,試運転の日を迎えました!!!

LUXKITのA3600というアンプはNECと共同開発した,大出力3極出力管8045Gをプッシュプルで使った,50W×2のアンプです。発売は1975年のようなので,もう発売から40年経っています。

と言う次第で,いつも大変お世話になっている河童さんからいただいた後,いろいろとメンテナンスと設計変更をしておりました。

まずはコンデンサやソケット,錆びた端子などの老朽化した部品の交換に始まり,トランスやボンネットの塗装や回路の設計変更をして時間がかかってしまいました。

プリント基板.jpg プリント基板改良後

基板ソケットはQQQのものを使いたかったのですが,基板用が手に入らなかったので,中国製の金メッキ品を使っています。

案の定,ソケットが渋くて真空管がスムーズに差さりませんでした。こういうときは無理をすると真空管を割っちゃうので,一度小さなマイナスドライバー(#0)を突っ込んでコンタクト部分を拡げておきます。 

カップリングコンデンサはすべて新品のフィルムコンに変更します。なお,真空管アンプのカップリングコンには必ずフィルムコンを使うようにしてください。オイルコンやペーパーコンは経年劣化でリークしますので不可です。オイルコンは歴史があるし,音がよいから,ということで愛用している方も多いと思うんですが,安全面を考えると要注意です。リークすると出力管の寿命に直結しますので,フィルムコンにしてください。iruchanは独EROを愛用しています。すでに製造中止ですけどね....。A3600はオリジナルは日通工のフィルムコンでした。これなら安心ですけど,やはり年月が経っていますし,リード線が錆びているので交換しました。

そのほか,位相補正用のセラミックはディップマイカに交換しました。出力管の動作点が変更となり,バイアスが少し浅くなったので-C電源も少し定数をいじっています。 

なお,残念ながら,50C-A10PPのKMQ60はオイルコンが使われています。お使いの方はすぐに交換した方がよいと思います。 

このアンプははわざわざ8045Gなんて大出力の真空管を開発したところからもわかるように,大出力指向のアンプで,この前も書きましたように,公称50Wのアンプですけど,実は実測で66Wも取れちゃいます。

そんな大出力はいらん,という気がしますし,何より8045Gは寿命が短いことで知られているので,もっとB電圧を下げて楽をさせてやりたいと思っていました。

今回,トランスの2次側出力にAC用コンデンサを挿入してB電圧を60Vほど下げることにしました。 また,これに伴い,ドライバ段の定数変更が必要となりますので,Spiceでシミュレーションして定数を決定しています。

それに,8045Gドライブ専用として6240Gという真空管も採用されていますが,これも入手困難なため,6FQ7で代用します。 特性が異なりますので,こちらも前回,あわせて検討しました。

回路の変更箇所を示します。赤字が今回の変更箇所です。6240Gがない,と言う方も6FQ7で代用可能ですので,ご参考にしてください。 オリジナルの回路はこちらをご覧ください。また,本機はA3300プリアンプの電源供給用にGTソケットがついていますが,電源のフィルタコンデンサの周辺がすごく混み合っているので廃止しました。もう,A3300プリアンプを入手して使うこともないでしょうしね。 

LUXKIT A3600回路図改造後.jpg 改造後の回路 

なお,電源部は少し,元の状態が変わっていて,オリジナルだと2連の電解コンデンサを使っているのですが,どういうわけか3連のものが使われていました。もとの所有者の方が改造したのか,それともA3600のバージョンのひとつなのかわかりませんけど。もはやブロック電解コンデンサは国産のものはなくなっていますし,テストしてOKだったのでもとのものを使っています。オリジナルの回路はこちらをご参照ください。 

今日はいよいよ通電して調整していきます。

まずは電源部のテスト。一番危険な箇所ですし,回路を間違っていると大変なことになりますので,まずはここからテストします。案の定,フィルタコンデンサのはんだが一部,テンプラになっていてうまく高圧が出ませんでした。ついでに電解コンデンサのテストをしておきます。古いケミコンはリークしたり,容量抜けしたりしてハムが出たりしますので,少し低めの電圧をかけてテストします。

まずはスライダックで1次側にAC10~20Vの電圧をかけ,各電解コンデンサにちゃんと電圧がかかっているか調べます。うっかり,極性を逆に配線していてもこれくらいの電圧なら助かりますので。特に,今回,A3600は固定バイアスのアンプなので,バイアス用のケミコンにちゃんとマイナスの電圧が出ることを確認します。

ダイオードが発熱したりしないかも調べておきます。問題なければAC50Vくらいにしてしばらく放置します。このとき,B電圧は250Vくらいになるはずです。

これで電解コンデンサの絶縁皮膜が回復するのを待ちます。フォーミングというのですが,米国製の電解コンを使った場合などは必ずこの状態で数時間放置してください。日本製のケミコンはいきなり高圧をかけても何の問題もないですけど,MalloryやSpragueなどの米国製の場合,いきなり高圧をかけるとヒューズが飛ぶことがあります。

なお,まだ現在は全く無負荷の状態なので,絶対にAC100Vにしないでください。ドライバ用の電解コンデンサなどの耐圧をオーバしちゃいますので。

さて,次はドライバ用の6AQ86FQ7だけ挿して,また徐々に高圧を加えます。プレート電圧などに異常がなそうならAC90Vくらいまで電圧を上げます。

ここで,一応,出力段のバイアス電圧を調べておきます。

8045Gのカソード(#8ピン)に黒,グリッド(#5)ピンに赤のリードを当ててみて,ちゃんと-90Vくらいの電圧が出るのを確認します。また,各半固定ボリウムを回してみて,スムーズに変化することを確認します。すべての8045Gのバイアスが-90Vくらいになるようにセットしていよいよ出力管を挿します。

さて,いよいよ出力管のプレート電流を調整します。

スライダックで再度,徐々に電圧をかけていきます。カソード~GND間に10Ωが入っていますので,この両端の電圧を計測して750mVとなるようにします。

今回,8045Gの動作点は前回のブログにもあります通り,EP=430V,Eg=-85V,IP=75mAとしましたので,この抵抗の電圧は750mVです。

残念ながら,8045Gの1本が少しエミ減気味で,R ch.はIP=70mAであわさざるを得なかったので,B電流が少し小さく,B電圧は450Vになりました。ほぼSpiceのシミュレーションどおりです。

オリジナルのA3600はEP=495V,Eg=-100V,IP=80mAですので,もう少しプレート電流は流した方がよいのかもしれませんが,プレート損失を抑えて33Wにしました。オリジナルだと39Wですから,▲15%としました。 

プレート電圧も含め,プレート損失も出力管の寿命を考えると,もう少し小さい方がよいと思います。 

これで4本すべてのプレート電流をあわせます。各ch.の上下の出力管のアンバランスは1mAを目標に調整しました。

さて,ここまで来たらf特と出力を見ておきます。

LUXKIT A3600 f特.jpg 周波数特性(1W)です。

ちょっと驚いちゃいました。10Hz~50kHz(-1dB)と言ったところで,非常に広帯域です。特に,低域のレスポンスがよいのはプッシュプルアンプの特長ですけど,それにしても10Hzでも-0.7dBで,実際には-1dBも行っていないのですから。iruchanの持っている低周波発振器は10Hzまでなので,それ以下はわかりませんけど,カットオフは非常に低いはずです。高域も50kHzとは驚きで,手持ちのLUXKITのKMQ60より非常に広帯域です。

出力は53.6Wとなりました。まだ少し大きいですが,まあこんなのものでしょうか。 

10kHz方形波応答.jpg 10kHz方形波応答

  リンギングやオーバーシュートもなく,素直な方形波応答です。  

さあ,いよいよお楽しみ.......。音を聴いてみます。

まずはいつも聴いている,アナ雪。まだはまっちゃってます。

う~~ん,最近は "君の名は。" が大受けで,そろそろアナ雪も抜かされそう,と心配しちゃっているんですけど。それに,昔からiruchanは学園ものが嫌いなので,今年の正月は子供と "君の名は。" じゃなくて, "この世界の片隅に" を見に行きました。これ,本当にいい映画です。悲しい結末だけれど,戦時下にも前向きに生きようとしている主人公に共感を覚えましたし,とても勇気づけられました。それに,悲劇を描いているけれど,妙に明るくて,笑いながら最後まで楽しめます。さすがに,あまりに悲しいと,某戦争アニメみたいに,とても最後まで見ていられないということになっちゃいますので。 日本映画って,誰かもFMで話していましたけど,こういう見たらトラウマになりそうなのが多くて困ります。実は,iruchanはそのチョ~有名な戦争アニメは今まで,一度も最後まで見たことがありません......(^^;)。

アナ雪2.jpg 

松たか子さんの高音の伸びた澄んだ歌声に魅了されます。やっぱ,いい曲だな~~~!!

それにしてもずいぶん寒くなってきましたけど,このアンプはストーブ代わりになります。なにせ200Wもの熱を出しているのですから,小型ストーブ並みです。実際,調整中は寒いので8045Gに手をかざしながらやっていました。火鉢かよって!?。これやったらストーブいらへんやん,と言う次第で,やっぱ....

画像3.jpg

   ♪ 少しも寒くないわ~ (松たか子さんの声で!!) 

アンプはとてもノイズが少なく,ハムが全く聞こえません。こういう点はプッシュプルのアンプですね。シングルのアンプはどうしてもハムが残っちゃいますけど。音も左右の分離がよく,豊かな低音が魅力です。それほど高音は伸びている感じはしませんが,やはり真空管特有の暖かくて柔らかな音だと思います。半導体のアンプじゃ味わえませんね。 

さて,お次はお約束のフルヴェンの第九。本当は年末に完成させて,師走に聴きたかったですけどね.....。

ご存じ,言わずと知れた1951年7月29日のバイロイト音楽祭の初日の演奏録音です。やはりこれしかない!!という感じのチョ~名演です。

聴いたのは東芝EMIがSACDのハイブリッドで出した盤。紙ジャケだし,SACDになったし,と言うことで買ったものです。

ただ,ちょっと驚いたのはフルトヴェングラーが壇上に登場する音が入った,いわゆる "足音入り" の盤なんですけど,なぜか以前の盤に入っていた,第1楽章冒頭の耳障りな聴衆の咳払いや,マスターテープの劣化による第2楽章のドロップアウトがなくなっています。

後者は耳障りなのでなくなってよかったですけど,どうにも冒頭の咳払いがなくなっているのは変。何をやって消したのかわからないんですけど,これがないとフルヴェンじゃない,という感じです。演奏と一体化しちゃっているので,iruchanはちょっと変な感じがします。

やはり一番の聞きどころは第4楽章のバリトンのエーデルマンが歌い出す前後。 おぼろげに低音がこもったような響きのホールにオケの演奏が盛り上がって彼が歌い出すところは秀逸。

     ♪ おお、友よ! このような調べではない!........

と言う次第で,今年はフルヴェンの第九からはじまりました。また本年もどうぞよろしくお願いします。

Furtwangler Beethoven sym.9.jpg 

        Beethoven Symphony No.9 (TOCE-11005) 


デジタルアンプLepy(旧Lepai) LP-2024A+の改造~ヘッドホン端子の取り付け・つづき~ [オーディオ]

2016年12月31日の日記 
 
LP-2024A+ head phone1.jpg
 
とうとう,今年も今日で最後です。一年,ご愛読ありがとうございました。今年,最後の投稿です。
 
今日は前回の続きで,Lepy(旧Lepai)のデジタルアンプLP-2024A+のヘッドホン端子追加についてです。前回はいつもお世話になっている方からの依頼でした。今回は自分のを改造します。
 
まず,前回で課題になったのは,少し改造が大変だと言うことです。回路自体は簡単なんですけど,アンプの出力とスピーカ端子の間にスイッチを挿入しなければならないので,一度,スピーカ端子を外す,と言う大工事が必要でした。
 
回路は簡単なんだけれど,実際にやるのは大変,ということが結構ありますね。
 
今回,もっと簡単にできないかと考えました。
 
また,前回はスピーカ⇔ヘッドホンの切り替えをできるように考えていたため,スイッチは双極双投(DPDT)のスイッチが必要で,その配線が結構面倒でした。
 
でも,よく考えてみると,スピーカとヘッドホンの切り替えが必ずしも必要ではなく,あくまでもスピーカをOFFにできればよいのでは,と思いました。ヘッドホンがつなぎっぱなしで,ヘッドホンから音が出ている状態でも音量が小さければ問題ないし,普通はちゃんとヘッドホンを抜いておけばよいだけの話です。つまり,ヘッドホンを使っているときはスピーカをOFFにすればよいのです。
 
と言う次第で,今回はヘッドホンを使えるようにすると同時に,スピーカをOFFにする回路を追加することにします。
 
スピーカをOFFにする回路,というのはもちろん,ミューティング回路なんですが,もとからLepyのアンプにはミューティング回路がついていて,リレーでスピーカをON/OFFしています。
 
と言うことはこのリレーを別途,制御できればスピーカをOFFにすることができますね! 
 
これを使わない手はありません。 
 
ということから,改めてLP-2020の回路を検討します。LP-2020の回路については,以前も紹介したHamlinさんが発表しておられるので参考にさせていただきました。LP-2024A+も本体のTA2024周辺の回路をのぞけば,ほぼ同じと考えられます。
 
アンプの電源投入時にスピーカからボコッと言う不快な音がするので,その音をシャットダウンするため,アンプにはミューティング回路が入っています。真空管のアンプだともとからスロースタートなので問題になることはないのですが,半導体のアンプは立ち上がりが早いため,この問題が出ます。特にACアンプだと至る所にカップリングコンデンサやデカップリングコンデンサが入っているので過渡特性が悪く,ポップノイズが出ます。デジタル時代になってから,逆にアナログ部分はACアンプになっていることが多く,困ったものです。
 
特にデジタルアンプの時代になるとPWM信号プロセッサの立ち上がり時にノイズが出ることもあり,ミューティングが必要です。LP-2020も初期の頃,このノイズが問題となり,後期のものはかなり改善されています。LP-2024A+はLP-2020の後継機なので,改良点が継承されています。
 
アンプのミューティング回路は次のようなものです。
 
ミューティング回路1.jpg アンプのミューティング回路 
 
CとRの時定数回路が入っていて,この場合,コンデンサの端子電圧は最初は当然0Vですけど,徐々に充電されて電圧が立ち上がっていきます。よく言われるんですが,C×Rが物理的に時間(sec.)の次元となり,おおよそ t=C(F)×R(Ω) のとき,電源電圧の6割くらいの電圧になります。このC×Rの値を時定数と言います。
 
▲の回路ではコンデンサの端子電圧が大体,0.6VになるとTrがONし,リレーを動作させるようになっています。
 
Lepyのアンプのミューティング回路はこの通りとなっています。ついでに,ヘッドホン周辺の回路も一緒に示します。─ 部分が今回の追加部分です。 
 
LP-2024A+スピーカーoff&ミューティング回路.jpg 今回の回路
 
やはり,普通のミューティング回路同様,CとRの時定数でTrをONさせることによってリレーを動作させています。なお,リレーの駆動Tr Q4, Q5はダーリントン接続となっています。
 
ほかに,LepyのアンプはQ1とQ3が付加されています。
 
まず, Q1は過電圧保護で,入力のDC電圧が何Vかわかりませんが,限界を超えるとQ1がONしてアンプ全体をミューティングさせるようになっています。 

Tripathの規格表を見ると,TA2024の#12ピンはミューティングとなっていて,このピンが high の場合はアンプが動作せず,low になるとアンプがONするようになっています。 
 
また,リレーの後ろにQ3がついていますが,これのコレクタ電位は通常は high で,アンプの電源が入ると,ミューティング回路と同じ電圧でQ3がONし,#12ピンを low にするようになっています。
 
なんか,スピーカのミューティング回路と二重になっていてムダな気もするのですが,こうしないとポップ音がひどいのでしょう。初期のLP-2020アンプなんかはこの対策がしていないのではないかと思います。
 
さて,今回,ちょっとこのせいで困った問題が出てしまいます。
 
普通だったら▲の回路でC15をショートしておけば(=Q5のベースを接地する),ミューティング回路が動作せず,リレーが動かないのでスピーカはOFFにできます。
 
ところが,このやりかただと,スピーカはOFFにできるんですが,Q3もONしないのでいつまで経ってもアンプがミューティング状態となってしまい,ヘッドホンから音が出ません。
 
と言う次第で,この方法は使えません。
 
次の手で,Q4が動作してもリレーが動作しないようにします。Q4のコレクタとリレーのコイルの間にパターンを切ってスイッチを挿入します。場所は▼の写真の 部分です。
 
実は実装上はこの方法の方が簡単でした。それに安全です。うっかり,Q5のベースを接地するべく,スイッチを配線しようとしてはんだがブリッジしてしまってQ4やQ5を壊しちゃうこともあり得ますので。小さな表面実装のTrなので,配線をはんだづけするだけでも大変です。
 
SP OFFスイッチ挿入部.jpg ルーターでパターンを切ります。
 
一度,ルーターを持ち出してパターンを切らないといけませんし,切った端の部分の塗装をはがしておかないと配線をはんだづけできないんですが,こちらの方が楽だと思います。
 
また,スイッチは単極単投(SPST)のものがつかえるので配線も簡単です。
 
SP OFFスイッチテスト中.jpg ただいまテスト中。
 
使用したスイッチは6Pのどこ製だかわからないものですが,Lepyのアンプで使われているのとほぼ同じものだと思います。いつもお世話になっているサトー電気さんで見つけました。単極単投でよいので2Pのスイッチでいいのですけど,普通は3Pか6Pのものだと思います。
 
ただ,残念ながら,適当なキャップがありません。一般に売られているものはΦ8mmくらいのものです。LepyのアンプのはΦ7mmなので大きいのです。また,色もシルバーというのはありません。グレーでもいいかとは思ったのですが.....。
 
このスイッチを押すとリレーの接点が外れ,スピーカがOFFとなります。 
 
結局,Ali Expressで割に似たのを見つけたので注文しました。届くのに2週間くらいかかると思いますが届いたら取り付けてみます。
 
さて,実際の工事の様子です。
 
SP OFFスイッチ部.jpg パネルに穴を開けました。
 
ちなみに,ご覧の通り音量調節のボリウムの照明はオリジナルは品の悪そうな? 青色LEDを使っていますが,iruchanはいつも電球色LEDに換装しています。こっちの方がずっと品がいいと思います。 
 
Lepy LP-2024A+フロントパネル加工図.jpg パネル加工図です。
 
ヘッドホン端子はそれほどじゃないですけど,SP OFFスイッチは基板にはりつけるので,慎重に検討しないとうまく基板に載せてパネルから顔を出すようにできないので一度, "花子" で図面を描いて検討しました。が今回の穴開け位置です。 
 
 
ヘッドホン基板.jpg ヘッドホン基板
 
前回は万能基板を使いましたが,今回は基板はきちんとエッチングで作りました。ヘッドホンジャックはICピッチじゃないので万能基板を使っても結局,穴開けをやり直さないといけませんでしたので。
 
回路は▲の図の通りです。今回,ストッピングコンデンサはELNAのシルミック220μF 25Vを使いました。あまりに大きいのに驚き。同じ容量,耐圧のものの倍はあります。でも,音は非常にいい感じです。もう1枚作りました。こちらはニチコンMUSEにしました。
 
 
Lepyアンプヘッドホンジャック基板1.jpg プリント基板 
 
 
プリント基板用ヘッドホンジャックは配線が面倒なのでプリント基板図を示します。これを50mm×15.3mmで感光基板に焼き付けると基板を作ることができます。 
 
本当言うとiruchanはお気に入りのサンヨーのOSコンを使いたいのですが,OSコンは導電性高分子アルミ固体電解コンデンサで,内部に電解液が使われておらず,直接,電子で電荷をチャージする仕組みになっています。電荷を運ぶ素子が普通の電解コンデンサだとイオンですけど,OSコンは電子のため,非常に軽く,そのため高周波特性がよいので音もよいのですが,残念ながら普通の電解コンデンサと違って電解液を使わないので故障時にショートモードで故障するくせがあります。そのため,故障すると直流が漏れてヘッドホンが壊れる可能性があるため,使用は避けました。この故障モードはタンタルコンデンサも同じで,iruchanはタンタルは使わないことにしています。
 
ヘッドホン&スピーカOFF回路配線.jpg 
    
   ヘッドホン基板とスピーカOFFスイッチの取り付け 
 
ヘッドホンの配線はスピーカ端子に行います。前回はスピーカ端子を外さないと配線できませんでしたが,今回は基板の裏にはんだづけするだけなので楽です。
 
ヘッドホン配線はんだづけ1.jpg 2芯シールド線を使いました。
 
前回,ヘッドホンのGNDは電源のフィルタコンデンサを使いましたが,今回はSP端子近くのGNDプレーンに直接ハンダづけしました。ただ,このあたりにある,はんだ部分はとても小さいので,スピーカOFF回路同様,ルーターで塗装をはがしてそこにはんだづけしました。
 
これだと簡単です。
 
ようやくこれでヘッドホンが使えるようになりました。いい音で聴くことができますね。
 
では,今年も皆様,どうもご愛読ありがとうございました。また来年もどうぞよろしくお願いします。よいお年を。 
 
 
 
2017年1月15日追記
 
年末にAli Expressに注文していた,プッシュSWのキャップが届きました。どうしても日本で入手できるプッシュSWはキャップがなかったり,あっても色がシルバーなんてのはなくて,結局,中国から取り寄せました。このキャップは "つば" 部分がΦ9mmで,円筒形の部分がΦ5mmでした。もう少し円筒部分は太くて長い方がいいんですけどね。
 
push switch.jpg 20個で$8.16でした。
 
さっそく,使用しているプッシュSWに取り付けます。残念ながら,このキャップにセットになっているプッシュSWは入手できなかったので,今使っているやつにははまりません。
 
軸をルーターでΦ3mmに削って差し込みました。
 
push switch1.jpg 上面にプラ板を貼りました。
 
普通は端子部を下にしてはんだづけするんですけど,さすがに今のプリント基板に穴を開けて差し込もうとは思いません。危険ですよね~。
 
と言う次第で,普通はあり得ないんですけど,上面を下にして,プリント基板にエポキシ接着剤で貼りつけちゃいました。もちろんこの場合でも絶縁しておかないと危ないので,t1.0mmのプラ板を貼りつけてから接着しました。
 
LP-2024A+ head phone2.jpg こんな感じです。
 
出っ張った部分はΦ5mmなので,もとのフロントパネルに開けた穴が少し大きすぎますけど,まあ,違和感ないと思います。ついでに,インレタで表示を追加しました。
 
これで,無事に正面でスピーカのon/offができるようになりました。非常に便利です。これでLepyのデジタルアンプもヘッドホンで聴くことができるようになりました。
 

 
 

デジタルアンプLepy(旧Lepai) LP-2024A+の改造~ヘッドホン端子の取り付け~ [オーディオ]

2016年12月24日の日記

ヘッドホン端子.jpg ヘッドホンで聴けるようになりました。

どうも今年も押し詰まってきました。昨年の今日は北の果ての雪の遠軽駅で鉄をしておりました......(^^;)。

さて,今日はしばらくぶりで中国製のデジタルアンプLepy(旧Lepai)のLP-2024A+の改造です。前回からほぼ1年ぶりです。

実は,以前からヘッドホンをつなぎたいと思っておりまして,一度,検討したのですが最終的に重大なあることに気がついてあきらめていました。そのあることとはまた後ほど申し上げるとして,今回はいつもお世話になっている方からの依頼で,真剣に検討することにしました。

というのは,このアンプが音がよいと勧めたら,ぜひ,ほしいとのことでさっそくAmazonに注文されたのですが,ヘッドホンで聴くことが多いので改造してほしい,ということでした。確かに,今だとヘッドホンも音がいいのがたくさん出ていますし,スマホも普及したので音楽を聴くのにスピーカよりもヘッドホン,と言う人も多いと思います。 Lepyのデジタルアンプはとても音もよいので,これでヘッドホンで聴ければよい音で音楽が聴けるな,と思います。

ただ,これは非常に面倒な問題なのです。

デジタルアンプは多くの場合,出力upのため,出力段が通常のシングルエンドではなく,BTL接続になっているものが多いのです。

で,これがどういう問題なのか,と言うと,ヘッドホンを接続することができないのです。

理由はスピーカのコールド端子(黒)が普通はグランド(GND)なのですが,BTLのアンプの場合,GNDじゃないのです。そのため,普通のヘッドホンは端子が3つしかなく,GNDが左右共通になっているのですが,こういうヘッドホンをつなぐと▼の図のように,左右のアンプの出力のコールド側をショートしてしまうためなのです。普通のシングルエンドのアンプだとコールドはGNDなので,ショートしてもなんの問題もないのですけど。

       BTLアンプヘッドホン接続誤り.jpg  こんな配線はできません。 

ここで,BTL接続について説明しておきましょう。

BTLとはBridged Transformer Lessの略で,その名からもわかるとおり,アンプの出力段にはその昔,出力トランスが必要だったのですが,これを不要とするための回路の一種です。真空管アンプはもちろん,半導体のアンプでもゲルマニウム時代なんかは出力トランスが必要でした。

BTLアンプは初段に位相反転段が入っていて,入力と逆位相の信号を作り,それぞれ正相と逆相の2組のアンプを使って信号を増幅します。 これをそのまま,スピーカの端子につなぐと出力トランスが不要となり,また,普通のシングルエンドのアンプの4倍の出力が得られるというものです。

回路自身はそもそも出力トランスがあった頃に検討されたくらいですから,かなり古いものです。もちろん,デジタルアンプなんて影も形もない頃から使われていました。特に電源電圧が低い,ラジオやカーステレオの出力段によく利用されていました。

普通はアンプが2組も必要になるので,HiFiオーディオの世界で使われることはほとんどありません。コストも倍かかる,と言うわけですからね。

1980年代にラジオ技術誌に山梨大学? の先生がずっとBTLアンプの記事を連載しておられて,iruchanもいつかは作りたいと思っていましたけど,さすがにディスクリートでBTLアンプというとアンプを4台作ることになるので面倒であきらめました。 

ただ,回路がIC化されてしまうと部品点数が2倍になるわけじゃなし,コストもそれほど変わらないのでアナログ時代のパワーアンプICなどによく利用されていましたし,デジタルアンプもBTLのものが多いです。Lepyのアンプで使われている米Tripath社のTA2020TA2024も出力はBTLとなっています。

BTLアンプ.jpg BTLアンプ回路(片ch.のみ)

このため,もし,ヘッドホンをつなぐ場合は左右のコールドが別々になっている,4端子のものでないと使えません。でも,自分で改造でもしない限り,こんなヘッドホンはありませんから,BTLのアンプにはヘッドホンはつなげないのです。 

ただ,一応,方法としては2つあると思います。

1つはよくネットにも出ている方法で,トランスを使ってバランス→アンバランスの変換をするものです。▼のような接続をすると,BTLのアンプでもヘッドホンが使えます。

       ヘッドホン接続(トランス式)1.jpg トランス方式

しかし,この方法だとせっかく出力トランスがいらなくなったのに,またトランスがいるのか,と思っちゃいますね。

iruchanは真空管アンプマニアなのでよくわかりますが,出力トランスはそれなりにお金をかけていいものを使わないと音が悪いのです。

大きくて思いし,何よりアンプの音や性能が出力トランスで決まってしまうので,できれば出力トランスなんてない方がいい,といつもiruchanは思っています。だから,いつも半導体のアンプはうらやましく思っています。と言って,真空管のOTLアンプはまだ作ったことがないのですけれど.....。

それに,出力トランスを使うと言っても1次側インダクタンスが十分大きくないと低音がカットされてしまうのですが,そのインダクタンスを増やすには巻数を増やさないといけないので,いい出力トランス,というのはサイズが大きくなってしまうのです。かと思うと,今度は逆に高音域は巻線がキャパシタンス分を持つのでカットされてしまので,巻数の多いトランスは不利で,結局,HiFi用の広帯域な出力トランスというのは非常に設計が難しいのです。 

そんなわけで,Lepyのアンプに出力トランスを接続する,というのはなんとか避けたいと思いました。Lepyのアンプは非常にコンパクトにできているのに,いいトランスは大きくて,トランスを外付けにしなくちゃいけないので意味なくなっちゃいます。と言って,この小さなケースに収まるような出力トランスはありません。あっても上記の理由でロクなものじゃないでしょう。LP-2024A+の方は割にケース内にスペースがあるのでなんとかなりそうなんですけどね。LP-2020A+のほうはTA2020の放熱器が邪魔をして絶対に入らないと思います。

と言う次第で,別の方法を考えます。

要は,BTLアンプというのは▲のように正相と逆相のアンプがあるので,正相側だけ出力を利用すればよいのです。こうすればコールド側をGNDに落とせるので,GNDが左右共通となっているヘッドホンでも接続できます。

と言うことで回路は次の通りです。

       ヘッドホン接続(コンデンサ式).jpg 今回の回路

抵抗は普通のスピーカを鳴らすためのアンプにヘッドホンをつなぐための減衰抵抗で,ヘッドホンの保護抵抗です。昔,まだ専用のヘッドホンアンプなんてなかった頃,よくこういう方法が使われました。真空管アンプでも,この前,修理した,三栄無線の6BX7シングルのSA-523もこのようになっています。

また,コンデンサは直流分をカットするためのストッピングコンデンサです。アナログのHiFi用アンプなどだと正負両電源を使用していて,SP端子は直流電位は0Vなので不要なのですが,本機では出力に直流が出てヘッドホンを壊してしまうため,直流をカットしておくためのものです。

今回改造したLepyのアンプは出力端子に5~6Vの直流が出ていますので,必ずコンデンサを入れてください。 

これならヘッドホンが接続できます。 

ところが,ここで前回,重大なことに気がついて,あきらめちゃいました。

なんと,ヘッドホンを挿すと自動的にスピーカがoffにすることができないのです!! 当たり前なんですけどね......。

ラジオやTV,アンプなど,普通のセットではヘッドホンを挿すと自動的にスピーカがoffとなるようになっています。これは,▼のような回路となっています。

      シングルエンドアンプ+ヘッドホン2.jpg 普通のパワーアンプへのヘッドホン接続 

BTLのアンプはスピーカのコールドが左右別々なので,こういうことができないのです。

ヘッドホンで聴いてんのにスピーカも鳴っているんやったらあかんやんか.....ということで前回はヘッドホン取り付けはあきらめちゃいました。

今回もどうしようかと,悩んだのですが......。

いい解決法を思いつきました。

なんのことはない,スピーカとヘッドホンの切替SWをつければええだけやんか,と思いつきました。▲の回路についているスイッチがそれです。なんだ,こんな簡単にできちゃうんですね。 

さて,次に減衰抵抗をいくつにするか,というのはちょっと難しい問題で,真空管のアンプなどに取り付ける場合は数百Ωといったところで,最初,iruchanは100Ωを入れてみました。

ところが......。

ものすごいホワイトノイズで,とても音楽なんて聴けたものじゃありません。

オシロで見てみますと実効値で24mVもあります。普通,アンプの残留雑音は1mV以下にしないとノイズが気になりますから,これじゃダメです。

LP-2024A+ホワイトノイズ.jpg げっ~~!!

原因が最初,思い浮かびませんでした。ハムなら電源に起因するので,電源のリップルやアースラインの引き回し,2点接地なんかが原因ですが,ホワイトノイズというのは原因は半導体や抵抗など,電流が流れる素子が必ず持っている熱擾乱雑音が原因で,ボルツマン定数を使った式で表されます。広帯域のノイズで,フィルタで落とせるものじゃありませんし,対策は面倒です。

ちょっと困ったな~と思ったのですが,以前,AMステレオのラジオのヘッドホンアンプで同じ経験をしたことを思い出し,原因はヘッドホンのインピーダンスが低すぎて感度がよすぎるため,と気がつきました。

と言う次第で,インピーダンスを上げればよいので減衰抵抗を100Ωから1kΩに増量したらホワイトノイズが消え,とても静かになりました。やた~~!!!!!

ついでに,1kΩにしてしまうと低域のカットオフ周波数も低くなるので,好都合です。

低域のカットオフ周波数は1/2πCRで表されます。ちょっと計算が面倒なのでiruchanはいつも下式を使っています。

      カットオフ周波数.jpg

もし,本機に採用するのでしたら47μF~100μFくらいでOKです。iruchanは最初,100Ωで考えていたので,1,000μFを使っています。これじゃ,カットオフ1.59Hzなんでオーバースペックですが,面倒なのでそのままにしています。

ここまで来たらようやく基板を作って実装していきます。ヘッドホン端子はプリント基板用を使います。それにCとRをつなぎますが面倒なので万能基板で済ませました。

ヘッドホン基板.jpg ヘッドホン基板です。 

パネルにΦ6mmの穴を開けて固定します。場所は電源スイッチの横にしました。ボリウムの左側でもよいと思います。

スイッチは6Pのものが必要です。こちらも穴径はφ6mmですので,後ろのパネルに穴開けしました。普段使うスイッチじゃなし,フロントパネルにつけなくてもよいと思います。 

なお,中の配線は結構厄介で,一度,Lepyのスピーカ端子を外してはんだづけしました。L+とR+の端子を外してその間にスイッチの接点が入るようにします。外した端子の跡にφ1mmのスズメッキ銅線をはんだづけして配線をつなぎます。

sp端子.jpg SP端子の改造 

ヘッドホン配線.jpg ヘッドホン配線

スイッチは後面のパネルに取り付けるので,10cmほどコードは余長を持たせておかないと基板が外せなくなってしまいますので,ご注意ください。 

LP-2024A+ヘッドホン基板.jpg ヘッドホン基板の取付 

スペース的にはギリギリですが,何とかなりました。コンデンサは100μFくらいでも十分です。また,もとから直流がかかっているところなので,無極性(バイポーラ)のものでなく,普通の有極性のものでOKです。もちろん,アンプ側が+です。また,基板上には進工業の75Ωが載っていますが,これは実験中のものです。本番? は1kΩにしました。 

この基板から出ている黒い電線がGNDで,基板の裏にある,→ のところにはんだづけしました。 ▲の写真に写っている金色のニチコンの電解コンデンサのマイナス端子です。

GND位置.jpg GND位置

rear panel.jpg パネルにはインレタで表示を追加しました。 

AUDIO INPUTの囲みの中にあるなんて変ですけどね........(^^;)。 

Lepy LP-2024A+.jpg 正面。ヘッドホン端子つき。

照明のLEDは本来は青色ですが,まぶしすぎるし,色もちょっとあまりにも品がない感じなので,いつもの通り,電球色LEDに交換してあります。 

Lepy LP-2024A+1.jpg 背面。スイッチがついてます。

あとはいつもどおりの改造です。

何より最初にやらないといけないのは入力のカップリングコンデンサ。これの容量が小さすぎ,低域が200Hzくらいから下がり始めます。

今回,無極性電解の3.3μFが使われていました。ここはいつもお気に入りのサンヨーのOSコンをつけました。39μF16Vのものをつけました。これ以上の大容量のものはサイズが大きく,基板に取り付けられませんので,これが限界だと思います。

コンデンサ.jpg 交換したコンデンサ 

あと,TA2024の入力にも同じ電解が使われていましたので,ここにはニッセイの積層フィルム3.3μFをつけました。ここはそんな大容量のものは不要ですし,いくらOSコンが音がよいと言っても電解コンデンサの仲間ですから,小さな容量でよいならやはりフィルムコンにした方がよいと思います。

内部基板(コンデンサ取替後).jpg コンデンサの交換

電源のフィルタコンデンサもニチコンのFGに交換しました。ここは一番重要なところですからね。

電源フィルタコンデンサ跡.jpg おや?

ところでもとのコンデンサを取り外してびっくり。端子用の穴が3つも開いています。私のはこんなことありませんでした。

おそらく,前も書きましたけど,Lepai社は部品メーカと直接取引して購入しているわけじゃなくて,スポット市場に大量に安い部品が出たらそれを買い付けているんでしょう。OPアンプが機種によって違うとか,コンデンサも微妙に違っているのもそのためだと思います。ただ,これが悪いかというと,むしろ中国製の質の低い部品を使うよりもスポット市場だと日米欧の高級部品が流れてきたりすることも多いので,そういう部品を買い付けて使ってくれた方がよいと思います。

ここも,2,000μFくらいの大容量電解コンデンサはピン間隔が10mmのものと12.5mmのものがあるので,どちらか合う方にとりつける,なんてことやっているんだろうと思いました。  

お次はこれ。

OPアンプはiruchanのはテキサスのNE5532が使われていましたが,今回のはロームのBA4560が使われていました。 ロームのDIPのICは脚が少し変わったデザインになっているので,これは間違いなくローム製でしょう。ただ,BA4560なんて知らないOPアンプだったので規格表を見てみますと,一応,ローノイズ各種オーディオ用と書いてありましたが,確かにノイズこそ8nV/√Hzと低いのですが,GB積が10MHz,スルーレートが4V/μsと,あまりパッとしない数字が並んでいます。これならNE5532の方がよい感じです。NE5532は音がよいOPアンプとして有名ですよね。

BA4560.jpg ROHMのBA4560

それに,規格表にある内部の等価回路を見てがっかり。初期のOPアンプでも米国製のものはこういう単純な回路構成は少なく,むしろ今も使われているμPC812など日本独自のOPアンプに多い回路です。

アナデバが出しているOPアンプの歴史の本がありますが,OPアンプの設計ができるのは世界でも数えるほどなんて書いてあってホンマか? と思いましたけど,確かに米国製のOPアンプの内部の等価回路はきわめて複雑でびっくりするんですが,案外,本当なのかもしれません。純国産のOPアンプの内部等価回路はシンプルと言えば聞こえはいいですけど,なんかとても貧弱な印象を受けます。iruchanはもちろん,戦後の生まれなんですけど,電子部品,特に半導体に対しては米国製を絶対的に信奉してしまいます。やはり半導体は米国製が一番だと思います。GIたちに "Give me operational amplifier!" なんてねだっていた世代じゃないですけど.....。

BA4560はOPアンプなので,初段は差動アンプなのは当然ですけど,2段目はレベルシフトを兼ねたエミッタフォロア,3段目が実質的な2段目増幅段ですが,定電流負荷のエミッタ接地シングルアンプとなっています。そのあと,SEPPのバッファアンプがつながっています。

シングルアンプはやはり多量の偶数次のひずみを発生するし,OPアンプは2段目がゲインの大半を稼ぎますから,ここは低ノイズの差動アンプにしておかないとアンプのひずみが増えてしまいます。差動アンプは左右ペアになったTrがプッシュプル動作をするので,偶数時のひずみは打ち消してくれるので低ひずみです。実際,LME49720などの規格表に載っているひずみ率のグラフと比較してもBA4560はかなり悪いです。

アンプがACアンプの頃は初段差動,2段目シングルという回路構成が多くて, DCアンプになってから2段目も差動アンプとなりますが,やはり低ひずみのアンプというのは2段差動アンプだと思います。

米国製のOPアンプは最初期のLH0032などから2段差動アンプというのが定石で,3段差動アンプというのもの多いのです。

と言う次第で,依頼者の方の承諾を得て, BA4650は即撤去と決まりました。後継はナショセミのLME49720HAですね。数少ない現行のメタルキャンOPアンプです。音のよいOPアンプというのはたくさんあるのですが,メタルキャンはなかなかありませんので貴重だと思います。メタルキャンの半導体はやはり高音が美しく,澄んだ音が魅力でとてもいい音がします。

改造に当たってはまず,もとのBA4560を撤去しないといけませんが,残念ながらはんだごてで裏から熱して外す,というのは無理で,ニッパーで脚を切って撤去した方が早いです。その後,残った脚をピンセットとはんだごてで外します。

そのあと,うまく穴が開いてくれればいいのですがたいていは穴がふさがったままなので,ドリルで穴を開け直します。このとき,間違ってもΦ0.8mmより大きいドリルは使わないでください。両面スルーホール基板のため,上下面をつなぐように金属製のスリーブが入っています。Φ1mmなどのドリルだとこのスリーブまで削ってしまうのでご注意ください。

DIP穴開け.jpg はんだだけ除去します。

  必ずΦ0.8mmのドリルを使ってください。 

その後,DIP8ピンのソケットを挿して,LME49720HAを挿したらOKです。

LME49720HA.jpg LME49720HAを挿しました(^^)。 

さて,いよいよ音を聴いてみます。

まずはスピーカから。いつものLP-2024A+の音がします。高音まで澄み切った,分離度が高く,ノイズが全くしない,よい音に感心します。

次は背面のスイッチを切り替えてPhonesにします。スピーカから音が切れてヘッドホンに切り替わります。

Lepy LP-2024A+ Sennheiser MX80.jpg SennheiserのMX80と。

ノイズもなく,とてもよい音で聴くことができました。下にあるのはトロイダルトランスを使った自作の専用電源です。

使っているヘッドホンはSennheiserです。最近,MX80を買いました。驚くほど音がよいのにびっくり。結構,ヘッドホンってものによって音が変わりますよね。最近,娘に国産某社のを買ってあげたのですが,本人は満足しているものの,オヤジはとても満足できない音質。 全然,低音が出ないし,音もひずみっぽい。

その点,やはりSennheiserはいいです。こんなコンパクトなボディなのに重低音が出ます。

とはいえ,一方,世間のおばはんたち同様,今,うちの嫁はんが熱を上げている某スケート選手が使っているヘッドホンは30万円もするそうです(驚)。

オヤジなんてたった3,000円のヘッドホンですけど.......。2桁も値段が違うやないか!!!! 

 

2016年12月31日追記 

スピーカの切替SWをフロントパネルに移行させました。こちらをご参考にしてください。 


LUXKIT A3600復活への道~その3・アンプ編~ [オーディオ]

2016年11月23日の日記

今日は勤労感謝の日でお休みです。戦前なら新嘗(にいなめ)祭ですね~~。われわれ下々の者はこの日まで新米を食べちゃいけない,という決まりになっていました。

本当に最近は3連休ばかりで嫌になっていますが,このように週の真ん中にポコンと休みがある方がよっぽど身体が休まっていい,とiruchanは思います。そういえば,3連休にならないのは11月3日の文化の日もそうですけど,この日は戦前は明治節(明治天皇の誕生日)で,戦前の皇室の祭日に関連するものばかり,と気がついたのはiruchanだけでしょうか。 10月10日なんて,東京オリンピックの開催日だから祝日になったのに,と思います。また,晴れの特異日とされ,気象学的にも意味のあるだったんですけどね。だから,最近は体育の日ったって雨の日ばかり,という気がしますけどね。昔は体育の日はほとんど晴れでした。

と言う次第で,ハッピーマンデー法なんて早く廃止して,昔の祝日に戻してほしいと思っています。やはり祝日というのは伝統や歴史があるわけですからね。 

さて,前回に引き続いて,今日はアンプ部の設計変更を試みたいと思います。

ラックスキットのA3600というアンプは大出力の8045Gをプッシュプルで用い,最大出力50W×2と言うアンプです。3極管のアンプでこのような大出力,というのはあり得ないくらいで,845か,英国のDA60くらいしか思い浮かびません。

しかも,前回も書きましたが,MJ'83.2号に森川忠勇氏の記事があり,最大出力は公称50W×2ですが,実測66Wも出るようです。実際はもっと大出力なんですね。

それで,ちょっと調べてみたいと思います。

まず,ラックスが発表した8045Gの規格表にはEbb=500V,RL=3.6kΩで出力60Wと書かれています。ロードラインを引いて調べてみます。と,思ったのですが,見事にロードラインは特性図をはみ出しちゃいました.....。グリッド電圧Ec=0Vの線も延長しています。某美人の科学者? じゃないけど,今は簡単に画像が編集できちゃいますので,データをねつ造正規に利用するのは簡単ですね......(^^;)。

8045G-1.jpg8045Gの500V動作

負荷抵抗は3.6kΩとなっていますが,どういうわけか,プッシュプルのアンプの場合,負荷抵抗は2つの出力管のプレート~プレート(P-P)間の巻線インピーダンスで表すのが長年の習慣? で,出力管1本あたりだとプレート~B電源(P-B)間で,巻線が半分ですから,インピーダンスは巻線の2乗に比例するので,3.6kΩの1/4で900Ωとなります。なんで,こんな習慣なのか,ちょっと昔から疑問に思うのですが,長年の習慣なので仕方ありませんね。

横軸はEbb=500Vのところに起点があり,縦軸の終点は500(V)÷900(Ω)で,555mAのところに来ます。これを合成ロードラインと言います。本当はシングルアンプ同様,真空管1本ずつで考えないといけないのですが,プッシュプルのアンプの場合は2本の出力管の動作を合成した合成ロードラインで考えます。半導体のアンプの場合も同じです。

出力管1本ずつのロードラインは▼の図の  線のように湾曲していて,EC=0Vのところから, 印のある動作原点を通ってすっと右の方へ伸びていきますが,どこかでIP=0となってカットオフするのがAB1級やB級です。A級だと最後までカットオフしません。ちなみに,AB級は真空管の場合,グリッドをマイナスの領域のみで動作させるのがAB1級で,プラスの領域まで動作させるのがAB2級です。半導体はV-FET以外はエンハンスメントモードのものばかりなので,AB級と言います。また,真空管の場合は普通はグリッドをプラス領域まで使うことはないので,ほとんどAB1級です。

一方,反対側の出力管が上下対称の動作をするのでプッシュプル出力段の動作はのように直線となります。AB1級やB級は1本ずつの動作はたくさんのひずみを含んでいますが,合成するとこのようにきれいな直線となり,ひずみが打ち消されます。2本のロードラインを合成した,と言う意味で合成ロードラインと言います。まあ,いちいち,合成ロードラインというのも面倒なので,単にロードラインと言えばプッシュプルのアンプでは合成ロードラインのことを指します。それに,出力を求めるのには合成ロードラインで考えればよいので十分です。 

半導体のアンプの場合は負荷はスピーカですので,一応,純抵抗と考えて1本あたりのロードラインは直線となりますが,真空管は負荷はトランスですからAB1級やB級の場合,このようにゆったりと湾曲します。

時折,縦軸の555mAのところから動作原点を通る, のような直線でロードラインを引いている人を見かけますが,これは誤りです。MJのレギュラー執筆者の方でもこんな描き方をする人がいるので困りますね。昔,iruchanも真空管アンプを勉強し始めた頃,結構,悩んじゃいました。おそらく,このようなロードラインを描く人は出力管1本あたりのロードラインと,合成ロードラインをごっちゃにしてしまっているのでしょう。もちろん,森川氏は技術的にきわめて正確な先生なので,こんなことはありません。 

正しい合成ロードライン.jpg 間違ったロードライン

さて,8045Gに戻ると,実際に真空管が出力するのはEC=0Vまでの領域ですから,▲の図の通り,EP=120V, IP=430mAまでです。半導体だとほぼ,VCE=0Vまで使えますから,やはり真空管は出力が小さくなってしまいます。

さて,このときが最大出力ですが,そのとき,AB1級やB級などのプッシュプル回路では正弦波の半波とみてよいので,これらはピーク値です。実効値にするにはそれぞれ1/√2にしないといけないので,出力は下記となります。さすがに最大出力の時は波形がひずんでくるので正確に1/√2じゃないですけど,誤差は無視できる範囲です。

        出力計算式1.jpg  

結局,よく教科書に書いてあるとおり,Ec=0Vの線と合成ロードラインの交点から垂線を下ろしてできる三角形の面積と同じ,ということになりますね。 

それで,8045Gなんですけど,なんと,81.7Wもの出力が得られることになります。

えぇ~~って感じでびっくりしちゃいました。iruchanは何か間違ったか? と思っちゃったくらいです。

それならなんでラックスの規格表に60Wと書いてあるの? という気がしますが,おそらく,ラックスは真空管メーカじゃなく,セットを作る会社なので,あくまでもスピーカに加えられる正味の出力,ということで60Wと書いているのじゃないかと思います。

真空管の規格表に記されている動作例はあくまでも真空管のプレートに現れた信号電圧をダイレクトに出力に換算したもので,実際には出力トランスの損失だけ出力が減りますし,メーカのテスト時には定電圧電源を使ったりして,500Vなら正確に500Vの電圧がプレートにかけられていますが,実際のアンプではトランスのレギュレーションで電圧が下がってしまいますので,ラックス発表の数値はそういうことも考慮に入れた数値だと思います。 ただ,それにしても80Wと60Wじゃ,OPTの損失がそんなには大きくないので,やはりかなり控えめな数値,という気がします。

A3600の場合は,Ebb=490Vですから,下記のようになります。  の線がA3600のオリジナルの状態です。

出力はやはり,77.3Wにもなります。動作原点● はEC=-100V,I0=75mAです。森川氏も同様にロードラインを引いて,最大出力75Wという計算結果を示しておられます。

8045G-3.jpg 

   森川氏の検証結果と今回のiruchan改造の場合

出力トランスのOY-15-3.6KHPは損失が-0.4dBですので,91.2%です。とすると,出力は70.5Wとなります。実際には真空管のアンプの場合,クリップ点は半導体のアンプのように明確じゃないし,トランスのレギュレーションのこともあるので,もう少し小さく,やはり森川氏の実測結果どおり,66Wくらいが妥当なところでしょう。

それにしてもやはり出力が大きすぎますね。

と言う次第で,前回,8045Gの寿命も考えてB電圧を60Vほど下げることにしましたので,この場合の動作は  線の通りです。出力は58.7W,OPTの損失を考えれば,53Wといったところで,ラックス発表の数値くらいになります。これでよいのではないでしょうか。

なお,動作原点 ● はB電圧が下がった分,若干,左の方へずれますから,EC=-85Vくらいでしょうか。この電圧は重要ですから,覚えておきましょう。これが8045Gの入力電圧,すなわちドライバ段の出力電圧(のピーク値)となります。

オリジナルの状態でドライブ電圧が100VP,今回のiruchanの改造でも85VPもの電圧が必要なのに驚きます。多極管ならせいぜい10~20Vくらいと言ったところですから.....。

これほどの高電圧が必要というのは驚いちゃいますが,このため,ラックスは専用のドライブ管として6240Gを開発しています。実際,ピークで100Vもの電圧を出力させるにはプレートに400Vくらいの電圧をかけないといけないので,高耐圧の真空管が必要となります。

ただ,6240Gはいまじゃ,8045Gより希少なくらいで,Yahoo!などでも1本,7,000円以上するようです。実はiruchanも6240Gは1本しか持っていません。

6240G, NEC 6FQ7.jpg NECの6FQ7 (左)と6240G (右)

ついでに,6240Gを買ったとき,箱の中に入っていた規格表をupしておきます。

6240G規格表.jpg 6240G.pdf

と言う次第で,昔からこの球は代用球として6FQ7が使われています。実は▲の写真をご覧いただいてもおわかりになるとおり,外観もそっくりでした。おそらく,6240Gは電極も6FQ7と同じだと思います。NECの一木吉典氏も電波科学で書いておられましたが,真空管の最後の頃はコストダウンのため,もとからある管種の電極や製造用の金型などを流用することが多かったようです。東芝の6G-A46BX7の電極を流用していますし,6240G6FQ7の電極や金型を流用していたとしてもおかしくありません。

6FQ7は古くはGT管の6SN7と同特性で,昔から6SN7はタフなことで知られ,ドライバ管はもちろん,出力管としても使われました。ただ,A3600で6SN7を代用に使おう,なんて思いもしませんけどね。シャシーが鉄なんでGT管用の穴を開けるのは非常に大変です。

ちなみに特性を比較すると次のような感じです。

EP(V)  PP(W) μ gm(μS)  rp(kΩ)

6240G 800 3 35 3500 10

6FQ7  330 4 20 2600 7.7

6SN7  300 2.5 20 2600 7.7

やはり,耐圧が800Vもあるのに驚かされます。 改めて調べてみると,6SN7より6FQ7の方が耐圧が高いんですね。特性はやはり同じですけど。

特性を比較しておきます。NECやSYLVANIAなどの規格表から手読みしてExcelでプロットしてみました。

6240G特性曲線.jpg 6240G 

6FQ7特性曲線.jpg 6FQ7

う~ん,確かによく似ているような気もするんですけどね......。

6240G, 6FQ7特性曲線.jpg6240G6FQ7

重ねて描いてみるとこんな感じです。何だ,やっぱりよく似ているじゃん,と思ってしまうのですが,よく見ると6FQ7の方が同じバイアスだと倍くらいの電流が流れます。 重なっている曲線の各バイアス電圧は6FQ76240Gの倍くらいの電圧です。

これはとりもなおさず,6240Gの方がgmが3割以上大きいためで,gm=IPECですから,バイアス電圧の変化に対してプレート電流の変化が大きいということで,6240Gの方がゲインが取れることがわかりますが,NFBをかけて使うので,それほど問題ではありません。やはり問題は耐圧と出力電圧です。

まず,真っ先にチェックしないといけないのがプレート損失。A3600は2段目のドライバはEP(プレート~カソード間)=265Vで,損失2.85Wですので問題ありません。

と言うことで次はいくら出力が取れるか,と言うことです。本来なら出力管同様,ここで特性曲線にロードラインを引いて,と言うところだと思います。

でも,iruchanはSpiceで真空管を使う方法を採りました。こちらはひずみ率まで計算してくれるのでとても助かります。昔はロードラインからひずみを読み取ったりしていましたけど......。先日の記事に書いたように,Spiceだとボタン1発でひずみ率が出てきますから,やはりSpiceは楽です。

おまけに,前回ご紹介した,Ayumiさんが6240GのSpiceモデルもご用意してくださっているので簡単です。

A3600 original driver.jpgオリジナル回路

先のMJ '83.2号で,森川氏は6FQ7を代用として使う場合として,共通カソード抵抗を10kΩにするよう,推奨されています。

A3600 driver(森川氏).jpg森川忠勇氏の改良

以上の回路でシミュレーションしてみます。いまはこんなことができちゃうんですね~~(^^;)。

オリジナルの回路と森川氏のモディフィケーションをシミュレーションしてみました。

A3600 original driver THD.jpgオリジナル回路 6240G

A3600 森川氏 driver THD.jpg 森川忠勇氏 6FQ7

6FQ7を使ってもオリジナルと遜色ないどころか,むしろひずみが少ないことがわかります。さすがは森川さん,ですね!! 

さて,オリジナルの状態で6FQ7を代用として使用する場合,森川氏の設計で共通カソード抵抗を10kΩとすればよいことがわかりました。もし,A3600をお持ちの場合,6240Gがない場合はこのように抵抗を1本(ステレオだと2本)交換するだけでOKです。

今回,iruchanはドライバは同じ6FQ7を使うつもりですが,B電圧が60Vほど下がっています。これで問題ないか,確認しておきます。 

A3600 driver(iruchan)1.jpg iruchan改造

実は,少し問題があることがわかりました。

やはりB電圧が下がったことにより,最大出力電圧が80VPくらいになってしまいました。これじゃ,8045Gがクリップする前にドライバがクリップしてしまっている,と言うことになります。まあ,クリップとは言っても,先ほども言いましたように,真空管じゃ本当に頭が平らになってクリップしちゃうわけじゃなく,ひずみが数%になって急上昇してくる,と言う程度なんですけど。

原因はドライバの6FQ7のプレート電圧不足か,と思い,6FQ7のプレート電源の電圧を上げてシミュレーションをしてみたら,全然出力電圧が変わりません。なんと,初段の6AQ8がクリップしていました。何のことはない,初段のプレート電圧が足りないんです。これなら簡単です。

と言う次第で,初段の電圧を少しupしてやりました。 クリップ時のドライバ出力電圧74.1Vrmsでした。ピーク電圧だと104.9VPなので,先ほど,8045Gの新しい動作点はEC=-85Vと決めましたから十分な値です。

A3600 iruchan driver THD.jpgiruchan mod 6FQ7

さて,以上でアンプのすべての回路の設計変更が済みましたので,実際に配線していきます。次回は調整編です。なんとか12月だし,完成したA3600でフルトヴェングラーの第九を聴きたいと思います。


LUXKIT A3600復活への道~その2・電源編~ [オーディオ]

2016年11月19日の日記

前回から1年も経ってしまいました。せっかく,貴重なアンプをいただいたのに申し訳ないことです。

実は少し悩んでおりました。

というのは,電源をどうしようか,と言うことなんです。 

LUXKITのA3600は出力管が8045Gで,最大出力50W×2という強力なアンプです。

ただ,そのためプレートには490Vもかけてあります。8045Gの最大定格は550Vなので,まあ,ぎりぎりというわけではないんですが,この球は寿命が短いことで知られていて,少し電圧を下げてやりたいと思っています。

ラックスの真空管アンプはどれも,設計上の問題としてB電圧が高すぎる,と思っています。少しでも出力を大きくしよう,と考えられたのでしょう。当時は真空管は消耗品で,寿命が来たら取り替えればいい,という時代でしたし,世の中何でも大きいことはいいことだ,と言うことからアンプも大出力のものが人気がありましたからしかたないですが,今だともっと寿命を考えた設計にしたいところです。実際,前回,修理した50C-A10PPのKMQ60は最大定格いっぱいの450Vをプレートにかけています。 これはギリギリ。NECの規格表を見てもEp=450Vの動作例は載っていないくらいです。iruchanも完成して電源を入れたとたん,内部で火花が飛んであわててスイッチを切った記憶があります。その50C-A10は新品でしたけど,新品でもこうなるんじゃ危ないと考え,結局,B電圧を50Vほど下げて使っています。詳しくはKMQ60の記事をご覧ください。

今回のA3600も電圧が高すぎ,次回ご報告しますが,"無線と実験" '83.2号に森川忠勇氏の記事があり,最大出力は公称50W×2ですが,実測66Wも出るようです。両ch.動作時でも62W×2のようです。こんなに大出力はいらない,と言う気もしますので,B電圧は50V程度,下げたいと思います。 

方法としてはいくつか考えられます。

① チョークインプット整流にする

② 抵抗またはコンデンサで電圧を下げる

③ トランスのタップ(1次 or 2次)を切り替える

④ Trによるリップルフィルタを使う 

⑤ 自己バイアスにする 

もちろん,もし,2次側のB巻線に低い電圧のタップが出ていればそれに切り替えればOKです。前回,修理したLUXKITの50C-A10PPのKMQ60はトランスの1次側に117Vの端子があったので,それを使ってB電圧を50Vほど下げています。

ところが,メーカ製真空管パワーアンプはこのようなタップがないことが多いのです。市販もされているトランスを使っているものはいいのですが,メーカ製のアンプの場合は最初から特注のトランスになっているので,あまりタップがありません。実際,KMQ60は後期型は1次側の117V端子がなくなっていて,この方法が使えません。A3600もタップは1次側も2次側も別のタップはなく,この方法が使えません。

②は普通にオームの法則で抵抗で電圧を下げればよいのですが,単純に抵抗でやるとかなりワット数の大きな抵抗となります。実際,A3600だとB電流は320mAなので,抵抗は160Ωほどですが,50V下げるとなると16Wもの熱を発生します。

これを避けるにはコンデンサを使う方法が有効で,下記のように使用するとコンデンサを抵抗の代用に使えます。ご存じの通り,コンデンサだと電流と電圧の位相が90゜ずれますので,理論上,発熱は0です。  

ACコンデンサ挿入1.jpg コンデンサによる電圧降下

もっとも,コンデンサも実際にはESRと呼ばれるわずかな抵抗分があり,電流を流して使用すると発熱するので,実際に電流を流して使用する場合には,最初から電流を流すことを想定して製造されている,AC用コンデンサを使用する必要があります。誘導電動機などの始動用に使われているものです。そのため,スターター用なんて書いてあることが多いです。また, 一般に,電子部品のお店で売られているコンデンサはDC用なので使えません。ご注意ください。

コンデンサによる電圧降下はi/2πfCで表されますが,残念ながら交流に対するもので,直流出力に対しては90゜位相がずれていますので,たとえば,50V低下させるからと言って,この式で50Vになればよいわけではありません。

なお,最近,これらのAC用のコンデンサを真空管アンプのフィルタ用として販売している店があるようです。フィルムコンなので,電解コンデンサより音がよい,と思われるからでしょう。

残念ながら,これらのAC用コンデンサを直流回路で使うことはできません。そもそも,AC用は交流回路専用で,直流に対しての耐圧が規定されていないためです。実際,AC用コンデンサには "AC 450V" とは書いてあっても, "DC ***V" という具合にDC電圧に対する耐圧は記載されていません。だから,そもそも直流回路での耐圧がわかりませんし,また,仮に直流回路で使用しても,メーカは責任を負いません,ということですので,実際にDC回路で使用する場合は自己責任,と言うことになります。もっとも,”AC***V DC○○○V" と言う具合に両論併記で書いてあればもちろんOKです。

なお,コンデンサの電圧の位相が-90゜であることを考慮して計算すれば必要な容量がわかりますが,実際にはSpiceでシミュレーションして決めました。シミュレーション上は15~25μFくらいであればよいとわかります。

ただ,AC用コンデンサは一般に経年変化と容量誤差を考慮してフィルムコンが使われるのですが,AC400V耐圧くらいで25μFものフィルムコンデンサは大きくなります。 前々回,KMQ60を修理したとき,15μFのコンデンサを使うと50V下げられるとわかったのですが,KMQ60はシャシー内のスペースが小さく,これですら収まらない状況でした。幸い,A3600は割にシャシー内にスペースがあるので何とかなりそうです。

⑤の自己バイアスはg1をグリッド抵抗を介して接地し,8045Gのカソード~GND間に620Ωの抵抗を挿入します。ただ,これも損失が15Wにもなります。余裕を見て20Wくらいの抵抗が必要で,やはり大きくなりますし,放熱のことも考えると結構面倒です。やはり,8045Gは固定バイアスで使うことが前提で設計されているようです。

①のチョークインプット整流は一番簡単で,発熱もないし,いい方法です。

チョークインプットはレギュレーションがいいことでも知られていますので,最大出力時の電圧降下を小さくできるのがメリットです。 

しかし,A3600をチョークインプット整流にするとハムが出る,と言う話を聞きました。実際,Spiceでシミュレーションしてみますと,ドライバ段のリップル電圧が300mVP-Pを超えます。B電圧も390Vと,少し下がりすぎ,という気がします。改造が少しで済むのでいい方法だと思うのですけどね.....。もっとも,球の寿命という観点からはこれくらい電圧を下げた方がよいと思いますけど。

ただ,チョークインプットはいい方法なんですが電圧が自由に決められないのがネックです。また,A3600は0.35Hという小さなインダクタンスのチョークコイルが使われていて,B電圧の降下は100Vほどで済むので電圧調整にはいいくらいですが,普通のアンプのように5Hくらいのインダクタンスを持っているものだと電圧降下が大きすぎ,B電圧は250Vくらいになってしまいます。

A3600はプッシュプルのアンプで,出力部に行くB電流はリップルがあっても出力トランスで打ち消されるので問題ありませんが,ドライバ段以前は抵抗結合のアンプなのでリップルの影響を受けますから,この電圧だとハムが出ると思います。

と言う次第で,もし,A3600でチョークインプット整流にする場合はドライバ部の電源フィルタを増強しないといけません。 ついでに,Spiceでシミュレーションしましたが,150μFくらいにするとオリジナルと同じリップル電圧となりました。

最後に,今回は使用しませんでしたが,6G-A4シングルアンプなどで使ったTrを使った④のリップルフィルタはベースに接続した抵抗の値による自由にB電圧を変化させることができますのでよい方法です。ただ,大出力パワーアンプだと制御Trの損失が大きくなりますので,やはり放熱には気をつかう必要があります。実際,今回は16Wもの熱を放熱する必要があるので見送りました。レギュレーションという観点では抵抗と違って非常に優れているのですが,熱については同じです。

以上を勘案し,結局,iruchanはコンデンサを使って電圧を下げる方法を採ることにしました。これならコンデンサの容量で自由にB電圧を設定できますし,リップルの点からも有利です。

さっそく,Spiceでシミュレーションしてみます。まずはオリジナルの状態から。

A3600 original電源回路.jpgオリジナルの電源部

A3600 original.jpg Spiceシミュレーション結果

回路図どおりの電圧となることがわかります。B電源のリップルは4VP-Pくらいで,ドライバ段は119mVP-Pでした。これを目標にします。なお,出力段はプッシュプルなので,シングルアンプならアウトですけど,これくらいのリップルは平気です。ちなみに米国製のアンプなんか,電源部のフィルタにチョークコイルを使っていないものがありますけど,それは出力段がプッシュプルだからです。

挿入するコンデンサは20μFとします。この場合,電圧は431Vで,ドライバ段のリップル電圧は111mVP-Pとなりました。B電圧を60Vほど下げられます。

A3600 20μF.jpg 挿入コンデンサ20μFのとき

ついでに,15μFとすると,もう少し電圧を下げられます。コンデンサのサイズも小さくて済みますので,15μFでもよいと思います。

A3600 15μF.jpg 15μFのとき

ついでにチョークインプットの場合も一応,検討してみます。

A3600 original電源回路(L input改造)1.jpg チョークインプット改造

B電圧は100V程度下げられますが,少し下げすぎ,という感じがします。出力は50W以下に低下するはずです。また,ドライバ段の出力電圧も小さくなっちゃいますので,アンプ部の変更も必要になります。

なお,ドライバ段のフィルタコンデンサを▲のように150μF以上にしないと,オリジナルのリップル電圧と同じになりません。フィルタコンデンサはオリジナルは47μFでしたから,チューブラの電解コンデンサを100~200μFくらい追加してください。

一応,iruchanはAC用コンデンサを挿入する方法としました。 これだと自由に電圧を決められますし,リップル電圧も問題ないようです。

さて,お次はこのコンデンサをどうやって入手するかなんですが.....。

普通に秋葉原を探してもAC用のコンデンサは入手しにくいと思います。また,RSコンポーネンツを探してみたのですが,どれも高いです。

結局,Amazonで買いました。なんでAmazonがこんなの売っとるんや~~!?

UXCELという会社が販売している,AC450V,20μFのポリプロピレンフィルムコンデンサにしました。値段は800円ほどでした。サイズは50×31×44mmです。A3600のシャシー高さは35mmでしたから,中に入ることがわかります。

20μFAC用フィルムコン.jpg SENJUって!?

どうにも日本製みたいなブランド名をつけた,あやしげなブランドの中国製コンデンサですが,作りはとてもしっかりしていて,エポキシ樹脂で固められていて信頼性は高そうです。 

ちなみにフィルムコンデンサは何種類もありますが,普通に入手できるものは大体2種類です。ポリプロピレンフィルムを使ったもの高級品です。そのほか,よくマイラーコンデンサと言われるのはPET樹脂を使っていて,安価なコンデンサです。高信頼のフィルムコンはポリプロピレンを使っています。 

本来は進相コンデンサと呼ばれるもので,誘導モータの始動用です。誘導モータは3相交流のものは自動的に回転磁界ができるので不要ですが,単相の誘導モータの場合はこのコンデンサを使って90゜位相の進んだ電流を作って別の巻線で磁界を生じさせて回転磁界を作ります。起動時のみ必要なので,始動用コンデンサとも言いますが,一般的に始動後も切り離さず,つけっぱなしにしています。数年前,古い扇風機が発火する事故が相次ぎましたが,このコンデンサの劣化が原因です。長年の使用で液漏れしてESRが増大し,発熱したんです。もし,ご使用の扇風機が回らないとか,回転数が低くなった,と言う場合は使用を中止してください。

もともとモータの始動用なので電流を流して使用するのが前提のコンデンサなので,問題ないと思います。Amazonのは洗濯機用と書いてありました。もう,国産の洗濯機はインバータ式なので進相コンデンサは使用してないと思いますけどね。

さて,以上で電源部の設計ができましたので,実際に配線していきます。まずは古い部品の交換から。

電源部 前.jpg B電源の整流Di。オリジン製RA-1

なぜか前回修理した,同じラックスキットのKMQ60でもそうでしたが,古いシリコンDiのリード線は真っ黒になってしまいますね。表面の銀メッキが空気中の硫黄分と反応して硫化銀になるからですが,特に整流用のダイオードはひどいです。 通常は問題にならないと考えていたのですが,三菱のオーディオ用で有名なデュアルの2SA798や,BCLラジオなどに多用されている2SC710などはノイズの原因になるようです。どうも硫化銀がチップ表面まで侵食するようです。

こういう問題があるので表面の銀メッキというのは廃れてしまい,今ではあまりやっていないと思うのですが,どうも整流用ダイオードだけはやっているようですね。もっとも,Trや抵抗などに使われているスズメッキというのも要注意で,これはウィスカとよばれる樹脂状の再結晶が成長して隣の電極とショートしたりする故障が出ますので,問題になっています。昔は少し鉛を加えるとウィスカを抑えられたのでよかったらしいのですが,最近のRoHS指令などで鉛が使えなくなってまたウィスカの問題が出てきています。 

A3600 電源部改良後.jpg 電源部改良後

ブリッジになっているDiをトランスのピンひとつずらして取り付け,部にコンデンサを挿入しました。

使ったのはGeneral Semiconductor(今はVishayのようです)のUF5408です。1kV,3Aで,trr=75nsという優れものです。 やはりファーストリカバリはノイズも少なく,オーディオ用には最適だと思います。なお,ファーストリカバリDiは通常のシリコンDiと違って,若干,順方向電圧が大きめで,発熱が大きくなりますので注意してください。今回のアンプだと負荷電流は0.3Aくらいですが,規格表を見ると,このとき,順方向電圧は0.9Vくらいになりますので,放熱には留意することが必要です。リードを長めに切り,トランスからは浮かせて配置するようにしてください。

また,バイアス設定用およびバランス調整用の半固定抵抗は普通の小型のボリウムが使われていましたので,どちらもコパルのRJ13Bに交換しました。500円もする高価なものですけど,アンプの安全を考えたら安いものです。

RJ13半固定.jpg 半固定抵抗(左:RJ13B,右:オリジナル) 

さて,次はB電圧降下用のコンデンサを追加します。非常にサイズが大きいので苦労しますが,なんとかOPTの隣にスペースがあるのでそこに設置しました。

コンデンサ設置位置.jpg OPTの横に置きました。 

端子部,入力VR.jpg 入力端子は錆びちゃってます

ついでに,入力のRCA端子と音量設定のボリウムを交換しました。

入力端子はKMQ60などだと秋葉でも売られている2Pの端子ですが,A3600はちょっと特殊な端子なので,アルミ板で自作しました。ついでに,黒く塗りました。ボリウムは信頼性の高いJIS規格のRV24YNを使います。 

RCAジャック.jpg アルミ板で固定します。

端子部,入力VR(改良後).jpg 取替後です。

次はアンプ部を修復したいと思います。 B電圧が60Vほど下がりますので,8045Gの出力がどれくらいになるか,事前に検討しておきましょう。また,電圧増幅段も再度,定数の変更を含めて検討が必要です。また,オリジナルの6240Gの代わりに6FQ7を使用したドライバ段の修正についても検討したいと思います。 


ソニーのパワーアンプTA-N86の整備~アンプ部~ [オーディオ]

2016年9月18日の日記

ようやく涼しくなってきましたね~。さすがに夏の間はiruchanも工作はお休みです。 

さて,涼しくなってきたので,今日は前回に引き続いてアンプ部を整備します。

アンプ部は初段2SK97(ソニー),2段目2SC1890(日立),3段目2SB646A(日立),2SA733(NEC)の3段差動アンプで,ドライバは2SB647A(日立)/2SD667(日立)→2SA706(ソニー)/2SC1124(ソニー)で,出力2SA10282SC2398の3段ダーリントンになっています。出力の石はもちろん,ソニーの自社開発のHI fTトランジスタです。

3段目の差動アンプが少し変わっていて,左右のペアが異なる品種になっています。それどころか,メーカも違います。普通,こんなことしないんですけどね~。また,3段目はカレントミラー負荷になっています。 

その上,初段はデュアルなんで大丈夫ですが,2段目以降はいずれも熱結合されていません。メーカ製のDCアンプって大体こうですね。ということは自作アンプでも熱結合しなくてもいいんじゃないかと思っちゃいます。 実際,本機も修理後,オフセットを長時間,見ていましたが,全然ずれませんでした。

また,ドライバ段も2SC1124なんて昔懐かしいTrを使っていますが,相棒の2SA706は同じソニー製だけれど,これのコンプリじゃありません。もともと,2SC1124はコンプリメンタリペアがないので,自社製の特性の似た石を組み合わせているのでしょう。 

あとはA級/AB級の切り替えのためのバイアス切り替え回路やプロテクタ回路がついていて,回路としては比較的簡単な部類だと思います。

DCアンプ構成になっていて,初段はデュアルFETを使っています。2SK97なんて金田式DCプリアンプの定番ですね~。高くてちょっと買えませんでしたけど。

DCアンプ構成のため,アンプ部のコンデンサ類が少ないのが特長です。それでもデカップリング用の電解コンデンサや古いマイラコンがありますので取りかえておきます。位相補正には安価なセラミックが使われているので,速攻でディップマイカに交換します。この辺はコストの問題があったのでしょう。

ついでに,パワーTrはシリコングリスが乾いた歯磨き粉みたいになって固まっているのできれいに外して掃除しておきます。これじゃ,まるでポリデントだな~。 

Tr洗浄中.jpg ホワイトガソリンで入れ歯洗浄中です。

固まったポリデントシリコングリスはホワイトガソリンできれいに落ちます。なお,ホワイトガソリンは普通のガソリンが灯油などと間違えないよう,色がついているのにこれは洗浄用のため無着色で,普通のガソリンと同じです。だから,間違っても頭からかぶって火をつけたりしてはいけません。 

2SA1028/C2398.jpg 少しピカールで磨きました。 

やはりTO-3型のTrはかっこい~~~!!!。ほれぼれしちゃいますね。それに,ソニーのTO-3型は初期の2SC42とかV-FETの2SK60とか,なぜかフランジ部が薄いのが特徴ですが,このTrはフランジはNECの2SA627とか2SD555みたいにかなり分厚くなっています。

でもさすがに30年以上経っていて表面は錆が目立ちます。少しピカールで磨きました。でも,やり過ぎると表記が消えちゃいますので,ほどほどにしておきました。なぜか2SC2398の方が錆がひどいです。プラスに帯電するからかな?

まあ,錆びていると言っても日立の2SJ492SK134みたいに最初から白錆だらけ,と言う訳じゃないのでいいですけどね。どうして日立のMOS-FETやほかのTO-3型のものはこう,最初から錆だらけで汚いんでしょうか。どうもiruchanはMOS-FETが嫌いなのもこの辺からかも。 

シリコングリスを再度,塗布して放熱器に取り付けました。絶縁のマイカは剥離したり,割れたりしていなければ再利用します。デンカシートじゃかっこわるいし,マイカは真空管でも使っているのでiruchanのお友達ですからね~。

固定用のねじは捨てて,非磁性体の真鍮製ねじに交換しました。 

なお,自作マニアの人はよくご存じだと思いますが,TO-3型のTrを取り付けた際は必ず放熱器との絶縁を確認してください。うっかり接触しているとフューズが飛びます。ついでに,iruchanは基板の裏からテスターで各電極間の電圧をチェックしました。半導体なのでP→Nの方向に電流が流れると0.6Vくらいの電圧になります。これを確認しておきました。

コンデンサ類は100μF以上のものはオーディオ用電解,それ以下はOSコン,マイラは積層フィルムコンデンサ,セラミックはディップマイカに交換しました。まあ,マイラコンデンサは品質もよいので,全部取りかえなくてもよいと思います。カップリングに1μFの巨大なフィルムコンが使われていますが,WIMAに交換しました。当時のフィルムコンはこんな大きさなんでしょうが,カップリングコンデンサも大きすぎると誘導をひろってノイズの原因になります。

バランス調整やアイドリング調整用の半固定抵抗はコパルのRJ-13に交換します。iruchanは真空管の固定バイアス回路などに使っています。高信頼の部品で,とても信頼できると思います。

なお,これらの半固定抵抗を取りかえるときは,あらかじめ外した半固定抵抗の抵抗値を測っておいて,その値にセットしてはんだづけしておくとよいです。

では,いよいよ電源を入れます。

まずはバランス調整とアイドリング調整を行います。

バランス調整は2SK97のソースに入っているトリマで,ここを調節して出力につないだ8Ωのダミー抵抗両端の電圧が1mV以下になるようにしました。 

次に,アイドリング電流ですが,本機はA級,AB級に切り替えられるようになっているので,それぞれ別々に行います。

出力の2SC2398のエミッタ抵抗0.33Ωの両端にテスト端子があるので,そこの電圧で調べます。基板上にはT.Pの表示があります。A級の場合,350mV,AB級の場合,20mVに設定するよう,マニュアルに記載がありました。 それぞれ,アイドリング電流は1.06Aと60.6mAですね。個人的にはAB級アンプなら100mA以上に設定したいところですが,マニュアルどおりにしておきます。

L ch. トリマ.jpg L ch.の設定箇所です。

R ch. トリマ.jpg R ch.の設定箇所です。

A級動作時のバイアス設定用可変抵抗はオリジナルは470Ωですが,こんなの今どき売られていないので500Ωで代用しています。 

アイドリング電流調整中.jpg アイドリング調整中です。 

入力部.jpg DCオフセットの調整です。

残念ながら初段は貴重な2SK97が使われていますが,半固定抵抗の調整位置固定用に白いペイントがべったり塗られていて,RJ-13に交換するときにはがれてしまいました.....orz。 

入力部original.jpg オリジナルはこんな状況です。

そのほか,基板上についている位相補正用の1800pFや100pFはディップマイカに交換しました。電解コンデンサもニチコンのオーディオ用に交換してあります。また,初段にはAC/DCアンプ切替用に唯一,大きな1μFのフィルムコンデンサがカップリングコンデンサとして使用してあります。フィルムコンは信頼性が高いし,劣化しにくいので原則,交換しませんが,ここは音質が問題になるところなので,新品の独WIMAの積層フィルムに交換しておきました。

内部(更新後).jpg 部品の交換箇所です。

次にオシロで波形を見ておきます。ついでに,f特も測っておきます。ひずみも測ればよいのですけど,めんどいのでやめました.....(^^;)。

f特(1W).jpg 周波数特性(1W)  

それにしても優秀な特性に驚きます。-1dBで,DC~250kHzと言ったところです。トータルゲインは27.6dB(1kHz)でした。いまだともっと小さめでもよいと思います。ちょっと特性がうねっているのは発振器のせいです。

廃棄部品.jpg 廃棄部品ですが,ほとんど劣化してません。

さて,ここから先はしなくてもよいのですけど,古い部品が気になって30年でどれだけ劣化しているか,調べてみたいと思います。

先日,中国製の電子部品チェッカを買ったので,それで調べてみます。特に大容量の電解コンデンサがどれくらい容量減となっているか,興味があります。

と言って自分でやるのはめんどくさいので息子(小5)を強制徴用し,測定させました......(^^;)。

結果は意外。どれも30年も経っているとはとても思えないくらいで,ほとんどのコンデンサは新品の状態を保っていました。やはり日本製のコンデンサは素晴らしい!

少し容量減だったのは電源のフィルタコンデンサで,1000μFが650~910μF程度になっていましたが,それ以外はほとんど新品の状態でした。 タンタルコンデンサも問題ありませんでした。

さて,お楽しみ。 いよいよ音を聴いてみます。

いつも聴いている,ジャクリーヌ・デュプレのバッハの無伴奏はとてもいい演奏です。当時,彼女は弱冠17歳でした。このアンプはノイズもなく,静寂の彼方から静謐なバッハの調べが流れてくるところは感動します。

それにしても,いま常用しているLepy(旧Lepai)のLP-2020A+アンプと音は変わりません。Lepyは3,000円ほどのチープなアンプですけど,こっちは9万円もしたアンプなんですが......。 

お次は最近,娘が聴きたいと言ってHMVで買った朝比奈隆の "新世界より" 。

新世界.jpg 朝比奈隆の "新世界" (キングKICC3617)

まあ,クラシック初心者の娘が聴くんだし,ということで高くなくても,と思って選んだCDでしたが,聴いてみてびっくり。大変な名演です。

1982年の大阪・フェスティヴァル・ホールのライブ録音ですが,弦の響きの美しいのにも驚かされます。第2楽章の有名な旋律はとても美しく,思わず学校から帰りたくなりました.....(^^;)。

なにより冒頭の静かな開始にはじまって最後のコーダの盛り上がりは素晴らしい!!

あくまでも楽譜に忠実な,外れるところのない,端正な演奏にも感動します。よく,こういう演奏って,教科書的ってバカにされることも多いのですが,あまり奇をてらった演奏というのも困りもの。

"新世界" はiruchanも大好きなので,古くはメンゲルベルク&アムステルダム・コンセルトヘボウのSP録音からフルトヴェングラー? の演奏,クーベリック,フリッチャイなどたくさん持っています。お気に入りはロジンスキーのウェストミンスター盤。常にトランペットが強くて,変わった演奏ですが,実に力強く,とても気に入っています。ただ,残念なのはLP録音なんですけど,モノラルであること。すでにテープで録音する時代だったのでノイズはないし,ひずみもないので聞きやすいのですが,ステレオじゃないと音が広がらないし,面白くありません。

フルトヴェングラーのはCDが出始めた頃,Philipsが出しましたね。ワイヤー録音と思われるノイズの多い演奏でしたが,どうやらフルヴェンじゃなかったようで,今ではフルトヴェングラーじゃない,と言われています。

ステレオ録音だとフリッチャイ&ベルリン放響のがお気に入りでしたけど,朝比奈隆のはもっとすごいと思います!!

そういえば,フリッチャイ盤は最近の雑誌で作家の百田尚樹が特異な演奏と書いてましたが,そんなことありません。ストコフスキーのはともかく,フリッチャイは端正な演奏です。 

この朝比奈隆の演奏はラストの哀しげなヴァイオリンの響きも美しく,演奏が終わってからの聴衆の拍手もひと呼吸おいて静かにはじまるのも感動的。なんか,聴衆が感動しすぎて拍手を忘れた,というような印象を受けます。ブラボー!! ってすぐに大声が入るのも困るので,これはなかなかよいです。 

朝比奈隆は,生前,ブラ4とブル8を聴いたことがありますが,"新世界" は聴いたことがありませんでした。実演をぜひ聴いてみたかったと思います。十八番のブル8は嫁はんと聴きに行きましたが,嫁はんは横でグーグー寝てました.....orz。

このアンプで聴くこの盤はとても美しく,いい音が聴けました。 

さて,最後はちょっとここのところよく聴く井上陽水。よく姉が聴いていました。懐かしくなって最近,ベスト盤を買って聴いています。時代的にも'70年代末なのでこのアンプがぴったりですね~。ベトナム戦争末期の反体制的な歌が結構好きです。あの時代,世の中に旧来の保守的な政治に反発する空気が満ちていました。iruchanはそのとき,子供だったからよくわからなかったけれど,企業優先,弱者切り捨ての今は当時と似ているんではないかと思います。反体制派のiruchanは陽水の反戦の歌にどうも共感してしまいます。

さすがは井上陽水。あらためて聴いてみるといまでも通じるメロディーと音楽性の高さはびっくりです。いまはシンガーソングライターなんてほとんど消えちゃいましたので,昔の歌手はすごかったな~と思います。 いまは単にかわいくて,スタイルがよくて踊れれば誰でもOKですからね......。

息子も幼稚園でピアニカで "少年時代" を演奏していたので,これ知ってる!! なんて言いました。この曲,幼稚園でも演奏するくらいだから大変な名曲だと思います......。

井上陽水.jpg とても懐かしいです。

正面のパネルの緑色のランプは切れていたので緑のLEDに交換しました。

さて,ようやくこれで中学時代にあこがれていたアンプを整備できました。そのうち,本格的なスピーカにつないで大音量で聴いてみたいと思います。いまは小さな借家住まいだからダメですけどね.....orz。 


ソニーのパワーアンプTA-N86の整備~パルスロック電源~ [オーディオ]

2016年8月19日の日記

sony TA-N86.jpg 

毎日暑い日が続いていますが,皆さんくれぐれも体調など崩さないよう,お気をつけてください。

さて,iruchanはこのところソニーのTA-N86パワーアンプを直しています。 6月に購入したものです。

この前修理したパイオニアのC-21プリアンプと同世代です。 あの頃,オーディオは輝いていましたね~。もちろん,日本の電機メーカも輝いていました。世界の電機,半導体業界を牛耳っていたし,それほど数が出るとは思えない,オーディオ用にわざわざ半導体を開発するなんて今じゃ考えられないようなこともしていました。あぁ~,本当にいい時代だったな......(遠い目)。

本機は1978年の発売で,出力段には新開発のハイfTトランジスタを用いています。来たるべきデジタルオーディオの時代に向けて,より広帯域のHiFiアンプを作ろう,という時代で,出力半導体もfTの高さを競っていました。

本当だったら数年前に開発されたV-FETの方がスイッチング速度は速く,これを普及してほしかったと思いますが,V-FETは3極管特性だったのが災いし,飽和領域が広いので出力が取れない,と言う欠点があります。折からアンプの大出力時代が始まり,59,800円のアンプですら100Wの出力は当たり前,と言う時代になるとV-FETでは不利,と言うこともあったのでしょう。 

MOS-FETだと大出力が取れますし,高周波特性も良好ですが,日立に特許料を払うのも何だし,そもそも日立が大宣伝していたので自社のアンプにMOS-FETを使うのは癪だなんてこともあったのでしょう。NECやソニー,山水,ヤマハと言ったメーカはハイfTトランジスタを使ったパワーアンプを発売しました。もっとも,あとでソニーなども自社でMOS-FETを開発してアンプに搭載したりするんですけどね。実はMOS-FETだと素子自体は高いけど,ドライバ段の回路が簡単になるのでコスト的には抑えることができます。熱補償も不要ですしね。

でも,iruchanはどうにもMOS-FETは好きになれません。ゲートが絶縁されているため,真空管に似ている,なんて言われて音も真空管に近いなんていう人も多いのですが,実際,自作して鳴らしてみるとなんか眠い音がします。iruchanはよっぽどバイポーラTrの方が音がよいと思っています。V-FETも聴いてみたいと思いますが,まだ作っていません。 

それにしてもあの時代,いろんなメーカが半導体まで作ったりしてしのぎを削っていたのはマニアとしてもわくわくする時代で,MJやFM雑誌など,毎号,出るのが楽しみな時代でした。

ということで,iruchanもハイfTトランジスタを用いたパワーアンプを作っているのですが,先にソニーのこのアンプを入手しちゃいました。

薄型のパワーアンプで,とてもかっこよく,いつかは手に入れたいと思っていました。

兄貴分でTA-N88というパワーアンプもありますが,こちらはV-FETのパワーアンプです。ただ,残念ながらこのアンプはデジタルアンプになっていて,今でこそデジタルアンプが主流となっていますし,中国製のLEPY(旧Lepai)のアンプなんか,私も2台持っていて,驚くほど音のよいアンプなんですが,ちょっとせっかくV-FETを使っているのにスイッチング動作しかしていない,というのは引っかかります。やはりV-FETは非飽和領域で使用したいものです。

弟分は出力は自社製のハイfTトランジスタ2SA10282SC2398を使っています。 このTr,当時のMJを見ると秋葉原の某通商会社の広告で1ペア5,800円(!)もしています。こんなの買えないってば。当時,カナダ・マルコニ社などの2A3が入ってきていて,1本2,000円くらいでした。こっちの方が安いですね~。そういえば,この2A3,とても品質がよくて今から考えれば,もっと買っておけばよかったと後悔しています。

2SA1028.jpg 本機の出力段です。 

その割に,このTrはVCEOが低く,100Vしかありません。ちょっと100Wのアンプを作るにはしんどく,安全を考えるとパラPPにしないとダメで,そうなるとコストが高くつきますからこのアンプはシングルPPで作ってあり,最大出力も80Wに抑えてあります。

まあ,iruchanもパラPPのアンプは作ったことないし,シングルPPの方が音がよい,なんて話もあるのでこれでよいと思います。

さて,買ったはいいけど,さすがに40年近くも前のアンプなので中の部品を取りかえて整備したいと思います。特にこのアンプはアンプ部はアナログですが,電源はスイッチング電源を採用しています。発熱も大きいでしょうからケミコン類は交換したいと思います。

さて,アンプ自体は故障していなくて音は出る状態です。パワーアンプはジャンクと称するものに手は出さない方がよいと思います。一応,音が出る状態のものを買って整備する方が安全です。特に出力の石が飛んでいると目も当てられませんしね。

また,こういう古いアンプを修理する際には必ずマニュアルを入手してください。幸い,このアンプは英語版のマニュアルが入手できました。 そもそも,下手するとケースの分解方法すらわからなくてマニュアルを読まないとダメ,と言うこともありますので。

service manual.jpg サービスマニュアルを入手しました。

まずはフタを開けてチェックします。上下のフタが簡単に外れるようになっていて,ソニーのアンプとしては珍しく? メンテ性はなかなかよいアンプです。

original inside.jpg 内部 

電源はさっきも書きました通り,スイッチング電源となっています。今じゃごく普通ですけど,当時はスイッチング電源は画期的で,高効率,軽量な電源部となるのが特長です。 ソニーはパルスロック電源と称していました。いったん,AC100Vを整流したあと,再度,スイッチングして高周波のパルスにして高周波トランスを介して電圧を必要な電圧まで下げます。トランスを通るのが高周波の交流なので非常に小型にできます。

パルスロック電源1.jpg 電源のブロック図

ただ,いきなりAC100Vを整流するので結構危険で,また,スイッチング時に盛大なノイズを出しますので,本機も電源部だけアルミのダイカストケースに収められ,シールドされています。

結構面倒ですが,そのダイカストケースを分解します。中は密封されているので高温になりますからケミコン類の劣化が心配です。

original puls lock power supply.jpg オリジナルの電源部

幸いにも中はとてもきれいで,ケミコン類も液漏れや膨れたりして劣化したあとは見られません。ケミコンやコイルの下部に見える茶色い塊は液漏れのあとではなく,接着剤です。大型のコンデンサやコイルは振動で断線することがありますので,このように接着してあることが多いです。 

右奥に電線が集まっているのが高周波用トランスです。 60Hzのトランスなら考えられない小ささです。

S-34.jpg サンケンS-34

スイッチング電源を出たあとの20kHzのパルス電流を整流するDiで,500V,0.8A,trr=300nsの高周波整流用ダイオードです。ノイズを発しますので,ファーストリカバリDiにしたいところですが,このDiは比較的高速ですし,今どきこのような金属ケース入りのDiはほとんど入手不可能ですのでそのままにしました。 

電源部ケミコン.jpg 交換したコンデンサ類

      色はオリジナル交換品です。 

電解コンデンサはすべて105℃品に交換しました。ほとんどはニチコンのKTシリーズにしましたが,一部,入手できなかったので日ケミのKM 105℃品に交換しました。当時はそんなのなくて85℃が最高です。容量もできるだけ大きくしました。30年の時間が経っているため,ずいぶんと小型化しています。 

電源部交換後.jpg コンデンサ交換後です。

電源部フィルタ.jpg AC100V整流後のフィルタです。

このコンデンサはあとで中国製のチェッカで調べたら30年経ってもちゃんと1000μFありました。 

127V フィルタコンデンサ.jpg 容量は倍でもサイズは小さいです。

AC100Vはダイカストケース外で整流され,同じくケースの外に設置された1000μFのコンデンサで平滑化されます。60Hzのブリッジ整流なのでリップルは120Hzで,かなり低いのでもっと大容量のものにしたいところです。最初,同じ1000μFを買ってきましたが,▲の写真のように非常に小さくなっています。そこで,フィルタコンデンサはニチコンのスイッチング電源用KXシリーズ2200μF 200Vを使いました。同じく105℃品なので安全です。 幸い,技術の進歩で容量は倍ですが,サイズは小さくなっています。

実は,これでも30年前の1000μFより少し小さくて,基板にはバンドで固定するのですが,ごそごそだったのでゴム板を挟んで固定しました。 

平滑化後,本機はTrを使ったシリーズレギュレータを通ってDC127Vにしています。その後,20kHzの周波数でスイッチングします。現代のスイッチングレギュレータならICを使うんでしょうけど,本機はトランスを使ったブロッキング発振回路になっています。 よく,自動車のバッテリーで蛍光灯を点灯する,なんて2石式のインバータ回路が本に出ていましたが,それです。

30D4F.jpg 30D4FA(600V,3A)

AC100Vを整流するDiです。なぜか古いDiはこのように脚が真っ黒になっちゃいますね。安全のため,交換しておきます。ここはファーストリカバリですので,VishayのウルトラファーストリカバリDi UF5408にしました。いつも真空管アンプで使っているやつです。1000V,3A,trr=75nsと高速です。

ただ,スイッチング電源の設計時に気をつけないといけないのは電源のインピーダンスで,AC100Vいきなりだとインピーダンスが低いため,突入電流が問題となります。これ,私も頭を悩ますんですけどね~。本来なら入口に数Ω~数10Ωの抵抗を入れたいところですが,レギュレーションや音を考えると入れるわけにいきませんしね。 整流管のときは特にそうですが,ダイオードを使った現代の電源でも問題は同じです。

UF5408-2.jpg VishayのUF5408を使いました。

耐圧は1000Vで,余裕十分です。AC100Vをブリッジ整流していますが,ブリッジの場合,耐圧は電源電圧の2倍でよいので,余裕を見ても普通なら400V級でOKです。

オリジナルはリード線がむき出しになっていましたが,ここはAC100Vを直接,整流しているところですのでリード線の1本に触れただけで感電することがあります。安全のため,スリーブをかぶせておきました。 

基板上にはスイッチング電源で作った±45Vのフィルタコンデンサが並んでいます。20kHzの高周波なので容量は小さくて済み,実際,1000μFをパラにしているくらいで小容量です。 このまま交換してもよいのですが,例によってサイズ的に小さくなりすぎるので許される範囲で大きなものにしておきます。今回,3300μFでも同じサイズ(φ18mm)でした。技術の進歩に驚かされますね。うまくニチコンの105℃オーディオ用が手に入りました。

50V 1000μF,3300μF.jpg こんなに大きさが違います。 

電源部コンデンサ交換後1.jpg これで電源部は終了です。 

パイロットランプ.jpg パイロットランプの修正。LED接着中。

なお,故障箇所としてパイロットランプが切れていました。オリジナルは6.3Vの電球ですけど,さすがに今どきランプでもあるまいし,と言うことで直列に1kΩを入れて緑色のLEDにしました。 本来なら逆耐圧保護用のシリコンDiが必要ですが,電源がAC6Vなので入れませんでした。

さて,ここまで来たら電源をつないでテストしてみます。アンプ部へは3Pのコネクタとなっていますので,このコネクタをまずは外しておいて,電圧の確認をします。±45VくらいならOKです。 

長時間放置して,コンデンサのチャージがなくなってからアンプに接続してください。これを忘れていたiruchanはコネクタをつなごうとしたとたん,目の前で火花が飛んで,久しぶりにビビりました.....(^^;)。

次回はアンプ編です。 


アッテネーターボックスの製作 [オーディオ]

2016年8月13日の日記

アッテネーターボックス.jpg こんなに小さいです。 

このところ,アンプの修理をしています。国鉄型ファンの私は残念ながらとうとう被写体がなくなってしまい,鉄ちゃんの方は休業状態です......。

さて,私は自分で作るパワーアンプの場合は入力にボリウムを入れることにしています。やはりあるととても便利ですからね。

ところが,本来は音質を考えるとない方がよいのです。ボリウムは当然出力インピーダンスがあり,回転角度により異なりますが,中点で一番出力インピーダンスが大きくなり,最大抵抗値の1/4となります。つまり,100kΩのボリウムだと,最大の出力インピーダンスは25kΩと言うことです。

このあとに接続される真空管やFETの入力容量とローパスフィルタを構成してしまいますので,このブログにもありますとおり,12AX7ECC83)の場合で実稼働状態で100pFくらいありますから,カットオフ周波数は60kHzくらいになります。

これなら十分な値ですが,真空管アンプの場合はプリアンプの負荷を軽くするため,100kΩじゃなくて500kΩとか,1MΩのボリウムが使われていることが多いです。 プリアンプの出力が12AX7のプレートから取っている,と言う回路が多いですが,これだとあまり低い負荷にはできません。この場合,上記と同じ計算で,仮に500kΩだと12.7kHz,1MΩだと6.4kHzとなっちゃいます。

まあ,真空管時代だとLPですし,モノラル時代の初期のLPだと高域は10kHzくらいでしょうからこんなf特でもよかったとは思いますが,今だと問題ですね。 

半導体のアンプの場合はFETやTrの入力インピーダンスが低いので高抵抗のボリウムを設置しても意味がないのと,FETの漏れ電流の影響を避けるため,ボリウムは10kΩくらいのことが多いので,カットオフの問題はありません。 

それに,ボリウムは接点ですので,ここを通過すると音が劣化するのは明らかです。

ということで自作マニアの方でもパワーアンプの入力にボリウムをつけない人が多いかと思います。金田式DCアンプにも入っていませんね。メーカ製のアンプにも入っていないことが多いです。

でも,これってやっぱ不便です。調整中に何か音を出そうと思うと入力を何かで絞っておかないといきなり大音量で鳴り出す,と言うことになります。

それでiruchanは外付けのボリウムを作っちゃいました。

回路は簡単なもので,こんなものです。

アッテネーターボックス回路.jpg 

ボリウムは部品箱から出てきた懐かしいVIOLETを使いました。バイオレット電機は真空管時代からの名門で,とてもしっかりした高品質の可変抵抗を作っていましたが,もう今はありません。 品質がよいのに安価だったのでiruchanは愛用していました。消えてしまったのは残念です.....。

ケースは秋葉で見つけた赤いアルミダイカストケースを使います。 とても小さく,53×53×34mmというサイズです。値段は1,000円ほどです。製造は宣叉實業有限公司という中国メーカのようです。いろんな色がありますが,iruchanは赤がお気に入りなので赤にしました。なぜかチヂミ塗装になっていて,表面はでこぼことしています。むかし,カメラとかこんな感じでしたね~。カツミのパワーパックなんかもこんな感じでした。でもチヂミ塗装というのはなかなか自作では難しく,専用のチヂミ塗装用というスプレーもありますが,高いので自作ではあきらめています。

部品.jpg 部品です。 ボリウムはVIOLETです。

内部.jpg 

   中はこんなのです。ちょっとギリギリですけど......(^^;)。

やはり使ってみるとなかなか便利で,これからパワーアンプの調整に使ってみたいと思います。 


6G-A4シングルパワーアンプの製作~その7・真空管テスト~ [オーディオ]

2016年8月7日の日記

暑いですね~。皆さんも体調にはくれぐれもお気をつけください。

さて,北海道から帰ってきてみると,いつも大変お世話になっている河童さんから荷物が届いておりました。またたくさんの貴重な真空管をいただいてしまいました。どうも大変ありがとうございます。

今日はさっそくテストしてみます。

まずは整流管から。

今回,6G-A4のシングルアンプを作るにあたり,最初は整流に6AX5GTを起用しました。これは傍熱管のため,スタートが遅く,6G-A4に優しいですし,使う側としてもフィラメントが見えないので精神的にもよいです。どうも直熱整流管というのはフィラメントが丸見えで,ものによっては電源スイッチをonすると同時にパッと光ったりしてあまり安心して使えませんので....。

といって,この瞬間にフィラメントが切れる,と言うようなことはないと思います。よく,昔の5球スーパーなんかでスイッチonと同時にヒーターがパッと光る球がありましたけど,切れることはなかったと思います。特にトランスレスのセットだとAC電源のインピーダンスが低いのでスイッチonと同時にかなりの大電流が流れ,パッと光りましたが,特に問題はなかったと思います。 

5Y3など,ほかの整流管も使いたい,と言うことで河童さんから6AX55Y3を共用する回路を教えていただいたので,各種の整流管が使えます。

  管名 メーカ 出力電圧 6G-A4プレート電圧(対GND)

5Y3WGTB GE 278.1 270.0

5T4 RCA 303.8 294.2 

5Z4GT Haltron 309.2 300.6

5Z4(メタル) RCA 308.0 298.5 

5W4GT Raytheon 278.9 271.3

5CG4 松下 271.5 265.3

5G-K20 NEC 270.6 262.6

5CG4はもとから5Y3と差し替えができるように考えられた全波傍熱整流管です。 5W4だとmax. 100mAなのでちょっと6G-A4ステレオには厳しいのですが,私のアンプはバイアスが深めで,全電流85mAくらいでしたので大丈夫です。

整流管.jpg 今回テストした整流管

結構,出力電圧がばらつくのに驚きますね。30Vくらいは差が出るようです。6G-A4から見れば電圧が低い方が優しいので,5W45G-K20がいいでしょう。5G-K20だとサイズもぴったりです。本来は5G-K246G-A4用らしいのですが,今まで入手したことはありません。

GEの5Y3WGTB5Y3一族で珍しく,唯一,傍熱管となった球です。軍用なのでベースもマイカノールで茶色になっています。

GE 5Y3WGTB.jpg GEの5Y3WGTB

さて,お次は電圧増幅管。まずはこれから.....。

US Navy 713A.jpg Tungsol製の713A

WEがUHF用に開発した713Aです。Bernard Magers著 "75 Years of Western Electric Tube Manufacturing" によると,1943年開発で,gm=4.3mSです。同じ形態の717Aと同特性です。ドアノブ管と呼ばれている小さな球ですね。Tungsolが製造し,1943年5月に米海軍が納品受け入れをした印刷がしてあります。こういうのが保管期限切れや使用予定なしと言うことでサープラス業者に払い下げられてわれわれが手にするわけですね。

UHF帯だと電極間の容量が問題となるため,電極をMT管のように円形に引き出し,それとともに電極を水平に寝かせた構造になっています。電子が空間を飛ぶ時間も問題になるので,電極全体も非常に小さくできています。もちろん,こんなことやると作るのがめんどくさいので,後にMT管が開発されると消えていき,この球の後継は6AK5のようです。

オーディオ用としてはなによりWEというご威光があるため,とても人気がある球です。値段も高いですね。

iruchanは今まで,この球はFM用と考えて一度も使ったことがありませんでしたが,河童さんによると6SH7の代わりに使えるそうです。

ということで挿してみました。

713A.jpg こんな感じです。電極は寝てます。

思わず,おぉっと思いました。とても音がよいです。 高周波用と思っていましたが,オーディオ用としての素質も十分です。

さて,お次は赤球。RCAが開発した高信頼管のシリーズで,5690番台の番号がついています。56916SL7同等ですが,有名なのは6SN7同等の5692です。ほかに傍熱整流管の56906SJ7同等の5693があり,このシリーズ唯一のメタル管ですでも.....。 

RCA 5693, Philips 6SH7.jpg 6SH75693

今回,6SH7の赤球をいただきました。おまけに,なぜか背面にPhilipsと書かれています.....。色もミョ~に明るい赤色です。

実はこれ,真っ赤なニセ球!? らしく,おそらくもとは黒い6SH7をどこかの業者がいつの時代かに高く売りつけようと赤く塗ったもののようで,一時出回ったそうです。 どうも頭にすこしはちまき巻いたみたいにへこみがあるのはGEのメタル管の特徴ですから,もとはGEの黒いメタル管でしょう。

Philips 6SH7 NEC 5G-K20.jpg 6SH7赤球を挿しました

   整流管はNECの5G-K20です。なにかやっぱりしっくりきますね。 

ところが,今回のテストで一番音がよかったのはこの6SH7でした。前回,米国製の6SH7はハムが出るので要注意,と書いていますが,この球はなんともありませんでした。低音から高音までバランスがよく,一番いい音がしたと思います。

5693はかっちりとした音が出ますが,よく言われるように高信頼管は音が硬いと言われ,実際,そんな感じです。そんなの先入観だと思うんですけどね......。 

と言う次第で,本当に河童さん,どうもありがとうございました。おかげでいろんな真空管を楽しむことができました。 


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