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オールWE真空管式DCプリアンプの製作~その2・アンプ編~ [オーディオ]

2017年10月7日の日記

先週に引き続いて,今回はオールWE真空管式プリアンプのアンプ部についてです。

オリジナルは真空管はWEの5極管403Aと双3極の396Aの組み合わせになっています。WEではMTの双3極管といえば396A420Aくらいだし,420Aは直流増幅器用ということなので,オーディオ用には396Aが使いやすいので人気がありますね。

WE 408A.jpg  WE 407A.jpg

     WE 408A            WE 407A

iruchanはWEの真空管はとても高いので,こんなので作っていたらかなりお金もかかっちゃうので,ヒータ電圧違いの408A407Aの組み合わせにしました。

ちなみに,右の407Aは前回の最後で書いていた,ベルマークと呼ばれるWestern Electricの新ロゴで,1966年から使用されています。ということで,右の407Aは1966年以降の製造です。やっぱ,どうしても雷ロゴと言われる,Western Electricの旧ロゴの方が音がよさそうな感じがしますけどね。.......(^^;)。

408Aは原型管が6AK5で,これは本来はシャープカットオフの高周波用の球なのでオーディオには使わないので今でも安く,どこかの6AK5を使うととても安く作れると思います。それこそ,6AK5なら,世界中のありとあらゆる真空管メーカが作っていますからね。

ちなみに中国製の6J1pという真空管は6AK5同等管のようです。これで作れば非常に安価にできると思いますけど.....。

また,396Aも他社製があり,iruchanもSYLVANIAやTung-Sol,Raytheonのも持っています。確か,RCAもあったはずです。ほかに,2C51が同等ですが,こちらは世界中にたくさんあります。日本だとNECがWE同等管を作っていて,Hi gm404Aの同等で6R-R8417A同等の6R-H2なんかが有名ですが,396Aに対応する同等管はないようです。比較的,Ef=19Vの19R-LL1がピン配置も同じで407Aに近いようですが,サイズが異なります。いずれも音を比べてみたいと思っていますがヒータ電圧違いなのでちょっと面倒です。

iruchanは,まだ396Aを持っていなかった頃,どんどん値が高くなっていくので,安いうちに,と思ってMJに広告を出していた,当時は首都圏にあった(どうも今はもっと北の方に引っ越したらしい)某店に注文したことがあります。

ところが,来てみるとゲッターが薄く,頭がスケスケになった球でした。新品未使用と言うことでしたけど,明らかな中古品でした。

今だったら,

この,ハゲ~~~~!!! 新品とち~が~うだろ~~っ!!!

って言ってブン投げちゃうんでしょうけど.....。

怒ったiruchanは返品して返金してもらいました。確か,1本,3,500円で,まだ安かった頃の話です。15年前はこんなくらいの値段でしたけど,今だと1万円近い値になっていると思います。

と言うことで,396Aを見るといつもこのことを思い出しちゃいますので,と言うわけでもないですけど,今回は407Aを使いました.....(^^;)。


前回,放送と通信で棲み分けがあり,真空管もお互いに互換性のない球を使っていて,製造会社も日ソ中立条約みたいに相互不可侵の協定がある,と書きましたが,実は需要の都合からか,たまに共通の球があります。

403Aの場合,最初に開発された傍熱MT管だったと思いますが,戦時中にWEがUHF帯で使用できる真空管と言うことで開発したドアノブ管の717Aの電極をMTのガラスチューブに納めたもので,レーダーなど,軍用に大量に使用されたようです。

UHF帯など,高周波になってくると電極間容量や電子が走行する時間が問題になり,どちらも最小にしないとうまく動作しません。

717AはGT管なのに非常に小型の電極を作った上,電極の引き出しにも工夫があり,この写真のように電極を水平に設置して,細い銅線? でガラスの外に出しています。そこからGTのベースに配線されているのですが,こうしておくとMT管のボタンステムみたいにリード線が円形に離れて設置されるので,電極間の容量が小さくできます。

2A3とか300BなどのST管でおなじみの,従来のツマミステムとかバンタムステムと呼ばれる引き出し方法だと各電極のリード線が一直線に平行して並ぶところができちゃうので,電極間容量が減りません。

そこで,ボタンステムが開発されるのですが,ベース部分が不要になるためオールガラス管ができます。GT管は製造年代により,バンタムステムのものとボタンステムの両方が存在する球があり,こういうのは身長が全然違うのですぐわかります。バンタムステムの方はツマミの部分だけ長くなります。もっとも,ボタンステムにしてしまうとベース部分は不要となり,GT管だとキーの機能だけあればよいので,いわゆるハカマなしの不細工な? GT管が存在するわけです。MT管だとキーは不要ですし,オールガラスのメリットを活かせます。こうして誕生したのがMT管ですね。

一方,717Aもそうでしたけど,403Aは軍の莫大な需要があったようで,大量に生産され,おそらくWEだけでは需要がまかなえなかったのだと思いますが,民間他社も大量に製造しました。たぶん,最初の高周波用MT管として,他社から作ってみたいという話があったのでしょうし,WEも特許料が入るので積極的に外販したのでしょう。396Aもおそらく同様ですね。403AのRETMA型番は6AK5です。後の6AU6などと同じ7ピンMT管ですが,ひと回り小さく,内部の電極も非常に凝った作りで,さすがはWEという球ですが,高周波用だし,7ピンMTというのが災いし,オーディオ用としては普通は使われません。

ちなみに717A403Aと同特性なので,今回のDCプリアンプにも使えるはずで,実際,金田氏は2007年10月号でこの球を使ったDCプリアンプを発表しておられます。

iruchanも717Aは同等の713A6G-A4シングルアンプでテストして,音がよいのを確認していますが,でも,だからといって金田氏のようにプリアンプでは使う気がしません。

GT管などの大型管をプリアンプでは使っちゃいけない,というのは真空管マニアの間では常識なんですよね~。これを無視しちゃうとひどい目に遭います。

というのは,実際にやってみるとわかるのですが,マイクロフォニックノイズ(いわゆるハウリングですね)がものすごく,サブシャシーに取り付けて防振しないとそれこそボリウムに手を触れただけでスピーカーからボヮ~~~んと音がしちゃうくらいだし,下手すると周囲の人の声までスピーカーから聞こえちゃったりします。

やはりプリアンプはこのようなノイズ対策がしてあるMT管でないとまずいと思います。

さて,と言うことで今日はLTspiceでシミュレーションをしてみたいと思います。

特にそんなこと必要ないんですけど,ちょっと興味がありますので....。

そのためにはまずは真空管のSpiceモデルを入手しないといけません。

幸い,今年のトラ技5月号の付録DVDにAyumi氏が作った国内外の多数の真空管モデルが収録されています。iruchanもお世話になっています。

ただ,残念なことに前回の412A整流管もそうでしたけど,403Aのモデルはありません。396Aはあるんですけどね.....。

と言うことで本当だったら412Aのように,規格表から作らないといけないのですが,2極管は特性曲線が1本だけなので簡単ですが,3極管や5極管は楽じゃありません。

そんなわけで,ネットを探します......手抜き~!

ICの74HC123TL494のモデルもネットに出ていたのでありがたく使わせてもらって鉄道模型のコントローラを作ったりしていますので,403Aも探してみます。

と,さすがに403Aと言うことでは見つかりませんでしたが,6AK5のモデルはカナダのMcLean氏が作ったものがありました。

さっそく,このモデルを使わせていただきます。

シンボルファイルはLTspiceでpentodeと言うのがありますので,これを使います。サブサーキットで,上記のモデルファイルを指定すれば使えます。pin tableなどはサブサーキットの登録順にあわせて並び替えておきます。

ただ,正直言ってあまりいいモデルじゃなさそうです。そもそもサプレッサグリッド(G3)がなく,Spice上は必要ないのでシンボルファイルでG3を削除しておけばよかっただけなんですけど......。

やはり特性曲線を描いてみると様子が変です。

6AK5特性曲線.jpg 6AK5モデルを使います。

6AK5特性曲線1.jpg おゃ,おゃ~~?????

なにか,そもそもEb=0V付近で,プレート電流がマイナスになっちゃっていますし,5極管は飽和特性になるので,ニーポイント(肩特性)から曲線が水平になるのですが,といって,こんな風にそこから先,プレート電流が下がったりはしません。これじゃ,負性特性を示すので,物理的におかしいです。

まあ,スクリーングリッドを持つ4極管以上の多極管ではEsg>Epの領域でこのような特性を示し,ダイナトロン現象といいますが,スクリーングリッドの方がカソードに近いし,電圧も高いとプレートよりたくさん電流を取っちゃうための現象です。▼のSYLVANIAの6AK5のプレート特性でもEb=25V以下の領域で曲線がゆがんでいますが,その影響です。SpiceのシミュレーションはこのSYLVANIAの規格表と同じ条件(Ebb=250V,Ec2=130V)で実施しています。

0V付近の現象はG3がモデルにないからか,と言う気もしますが,まあ,こんな領域は使わないので問題は小さいとしても,負性特性はおかしいです。

408A特性曲線SYLVANIA.jpgSYLVANIAの6AK5の規格表から。

SYLVANIAの規格表のプレート特性はこんな感じで,普通はこうだろ,と言う特性です。

ただ,まあ,よく見てみるとそんなに大きくプレート電流は違わないし,なんとか使えるだろう,と言うことでシミュレーションしてみました。

WE DCプリアンプEQアンプ回路.jpgシミュレーション回路です

真空管式DCプリf特408A.jpg EQアンプのf特です。

それにしてもまずはこんなことができちゃうことに驚き!! ちゃんとイコライザアンプの周波数特性が一発で表示されちゃうのには感動します。

きれいな特性で,1kHzでのゲインも41dBを確保してあり,金田氏の設計どおりだと思います。

WE DCプリEQアンプ特性.jpgEQアンプの入出力&ひずみ率特性です。

ひずみ率もSpiceは計算してくれます。こんなことまでできちゃうんだな~と感心します。Spiceでひずみを計算する方法はこちらで解説しております。耐入力は100mVと言ったところで,MCカートリッジに対しては十分すぎるくらいです。

なお,iruchanはひずみ率特性は入力電圧に対してプロットするのが正しいと思っているので,そうしています。普通,EQアンプにしろ,フラットアンプにしろ,出力電圧に対してプロットするものですけど.....。

ただ,それじゃ,フラットアンプの場合,1Vからプロットすることになりますが,パワーアンプは感度が1Vくらいなので,パワーアンプの方がとうにサチっちゃってからの特性を議論するのはおかしいと思っています。まあ,歪率計の入力が1Vから,と言うのもありますけど.....。

特にEQアンプの場合はカートリッジの出力がサチらないことを確認するのが目的なので,入力電圧に対してプロットするのが正しいと思います。本機は耐入力100mVくらいなので,十分サチらない範囲で,OKだと思います。

気をよくして今度はフラットアンプもシミュレーションしてみます。

WE DCプリFlatアンプ回路.jpg

  Spiceによるフラットアンプのシミュレーション回路

こちらはもっと驚き。素晴らしいf特でした。

WE DCプリアンプFLATアンプspice結果.jpg

一見,高域がかなり下がっているな,と思っちゃうのですが,目盛りが非常に小さくなっていて,100kHzでも-1dBにならない,と言う結果で,非常に広帯域です。

ゲインは金田氏はボリウムの調整にNFBを変化させる,と言う設計になっていて,ゲインは不定ですが,iruchanは昔ながらの入力にボリウムを入れる方式でやるつもりですので,帰還抵抗は20kΩ固定にしちゃいました。こうするとゲインは約20dBです。その通りの結果になっていますね。

iruchanはNF抵抗を可変させて音量を変化させる,というのはどうも,という気がしますので昔ながらの入力を絞る方式にしました。これだとバランス抵抗も入っちゃうので,音の悪い可変抵抗が2つもいるのですが,こちらの方がやはり便利だと思います。

WE DCプリFLATアンプ特性AOC付.jpgフラットアンプの特性です。

最大出力は50Vを超え,非常に大出力です。ひずみも少なく,0.1%以下です。

ただ,本当言うと,実物のアンプだと出力電圧が低いところはノイズが主体となり,ひずみ率は悪化します。Spiceのシミュレーションではノイズまでシミュレーションしたわけじゃないので,こんな特性になりますが,実物だと左側の方も悪化してきます。

WE DCプリFLATアンプ特性AOC付VRなし.jpg最初のシミュレーション結果ですが.....。

ただ,最初にiruchanがシミュレーションしたらこんな結果でした。なにこれ~?

何かがおかしいのですが,こんな特性です。入力が小さいときにひずみ率が悪化するのは普通のアンプでもノイズのせいでこんな感じになるのでいいかと思ったのですが,100mV~1V付近が非常に悪いです。こんなはずはありません。

よく調べてみると,AOCがないときでもこんな結果となるので,ようやくオフセットのせい,と気がつきました。直流分を計算しちゃっているのですね。

だから,初段の407Aのカソードに入っている,定電流回路の抵抗を微妙に変化させて,出力オフセットがほぼ0Vとなるまで追い込んでからAOCを作用させると,上の方のグラフとなりました。最初,この抵抗を0Ωでシミュレーションしていました。実機が完成したら,まずはAOCを切って,オフセットを調節してから測定したいと思います。

と,言う次第で,オールWE真空管式プリアンプのiruchan版回路です。

WE真空管式プリアンプ回路AOC.jpg

                   WE真空管式プリiruchan版です

EQアンプの出力には,初期の金田式DCプリアンプにはケースマイカが使われていました。やはりカップリングコンデンサにはマイカが最高だと思います。でも,ゼウスのケースマイカなどははるか昔に製造中止で,金田氏もSEコンに代わりました。でも,SEコンは非常に高価ですよね~。1個で2万円もするようじゃ,とても買えません。

と思っていたら,いつも大変お世話になっている河童さんから長野日本無線製の0.08μFのケース入りマイカコンを譲っていただきました。70-7の製品番号がついていますが,1970年の製造でしょうか。マイカコンは非常に安定だし,ケース入りのものは通信機で使われるくらいなので信頼性も高いし,なにより真空管の時代の製品なので真空管と使用するのが前提で高温に対しても強いです。本当にありがとうございました。

A2型雲母蓄電器.jpgA2型雲母蓄電器です

  大変貴重なケースマイカです。耐圧1kVなので十分です。音もよいと思います。

イコライザ素子は普通はiruchanは銅箔スチコンかディップマイカですけど,奮発してSEコンにしました。真空管アンプに使うには熱が問題で,SEコンはあまり高温だと破裂する,と言う話なので要警戒です。整流に412Aを使っていますが,両方でヒータ電力だけで12Wも消費するので,夏は代用のシリコンに変更しようかと思っています。

抵抗類は進のRE55と,ニッコームです。金田式の定番ですね。ただ,EQアンプのAOCに使われている6.8MΩはもとからありません。困ったな~と思っていたのですが,ようやく1個だけ,進の6.8MΩが手に入りました。非常に大きいのにびっくり!

さすがにもう1個はないので,普通の金属皮膜抵抗です。

あとは部品で苦労することはないのですが,意外にないのがプリント基板用のソケット。いつもだと中央無線QQQのモールドソケットを使いますが,同社の基板用は製造中止のようです。ソケットは同社製が一番だと思っていたので残念です。

しかたないので,7ピンは手持ちのQQQを使いましたが,9ピンは中国製のもの。金メッキされていて見かけはいいのですが,粗悪なタイト製はソケットが堅く,無理に真空管を差し込むと割れますのでご注意ください。#0のマイナスドライバで少し,ピン内部のコンタクト部品を広げておくとよいと思います。

EQ,FLATアンプ基板.jpg 完成した基板

    フラットアンプ       EQアンプ

まだ少し部品がついていませんが,回路をチェックして通電します。

☆ヒータ回路について

今回,ヒータ電圧が20Vの408A407Aを起用したのは,もちろん,値段のこともありますけど,もう一つ,ヒータ~カソード間耐圧の問題もあるからです。

今回,金田氏の原設計では403A396Aの組み合わせで,どちらもヒータ電圧が6.3Vなので,5Aの3端子レギュレータLM338を使っています。また,普通のアンプ同様,ヒータの片側をシャシーに接地してあるようです。

普通だったら,何の問題もないと思うのですけど.....。

DCアンプやOTLアンプのような,±電源を使用する回路の場合,ヒータとカソードの間の絶縁耐圧Eh-kをチェックしておく必要があります。

もちろん,従来のアンプでも,特にプッシュプルパワーアンプの2段目のドライバの真空管の耐圧は必ずチェックしておかないといけません。これは真空管マニアだと常識です。というのも,普通のPPアンプは初段と2段目の位相反転段を直結にすることが多く,ドライバ段のカソード電位が100Vを超えることが多いので,必ずチェックします。

先日,iruchanが調整した,LUXKITのA3600アンプもそうで,初段が6AQ8のシングルアンプですが,2段目はオリジナルは6240Gのカソード結合(ムラード)型位相反転回路になっていて,初段の6AQ8のプレートと6240Gのグリッドが直結されています。

iruchanはドライバの6240Gの手持ちが1本しかなかったため,6FQ7で代用しましたが,このとき,ちゃんと6FQ7のEh-kもちゃんと調べています。6240Gは±200Vですが,6FQ7も同じ電圧だったし,A3600ではカソード電位は85Vなので問題ありませんでした。

今回,金田氏のWE真空管プリでは,フラットアンプの2段目,下側のV6 396Aの耐圧が危ないのです。

驚いたことに,396AのEh-kは低く,90Vしかありません。一方,WEの407Aだと130Vあり,余裕ができます。もっとも,Tung-SolやSYLVANIAの規格表には100Vと書いてあり,メーカによっても差があるようです。

Eh-kは普通は12AU7A6FQ7などのように200Vくらいはあるのですが,EF86 DCプリアンプのフラットアンプで使用される12AT7も90Vですのでご注意ください。

本機はカソード電位が-90Vくらいとなり,ちょっと396Aの場合はギリギリです。もっとも,整流に412Aを使っている場合はウォームアップに1分くらいかかるので,-90Vを超えることはないと思いますが,整流にDiを使った場合は,396Aがウォームアップするまで,-140V位かかることになって危ないです。実際,金田氏も後のアンプで396Aを壊してしまったようです。

iruchanはヒータ電圧を-40Vで点火することにし,▼のように配線することにしました。

WE真空管式プリアンプヒータ配線.jpgヒータ配線です。

問題になる,V6のヒータ~カソード間電圧は最大でも70Vくらいに抑えることができます。シリコンDiを使った場合でも90Vくらいで済みますので,安全です。

もし,396Aをお使いでしたら,ヒータ回路は直接接地せず,-50Vくらいのバイアスをかけて使うとよいと思います。-B電源から分圧し,ヒータ用のトランスの巻線の片方につなぎます。この場合,ヒータはもちろん,直流的にシャシーから浮いちゃってノイズをひろいやすくなりますが,コンデンサで交流的に接地しておけばOKです。

なお,EQアンプの408AのEh-kは120V(ただし,WEの規格表には寿命を考慮して90Vを超えないこと,と言う注意書きがあります)ですし,カソード電位も数Vくらいなので大丈夫です。


☆ Western Electric 403A, 408AのLTspice用モデルについて

2017年10月15日追記

どうにも今回使用した6AK5のLTspice用モデルの特性が変なので,なんとか改良したいと思いました。また,以前から思っているのですが,モデル化されてない真空管も多いので,なんとか自分でSpice用の真空管モデルを作ってみたいと思いました。

ということでこのところ真空管のSpiceモデルについていろいろ勉強しているのですが,とりあえず,今まで発表されているモデルのうち,やはりAyumi氏のモデルが,最新のものだし,何より日本語なので採用することにしました....(^^;)。

海外だと,米国のNorman Koren氏のモデルが有名で,今回,最初にシミュレーションしたMcLean氏の6AK5のモデルもKoren氏のモデルを用いていると思います。でも,▲で示したように,どうもプレートの特性曲線が変だし,もっといいモデルにしたいと思います。

とはいえ,Ayumi氏のモデルを使うには,Rと言うソフトを使わないといけません。

それなに? って感じのソフトなんですけど......。Koren氏はMATLABを使っています。これならiruchanも使えるんですけどね~。

Rは米国のベル研が開発した統計用言語のSを改良したもので,フリーです。ベクトルや行列を効率的に使えるようになっていて,実際,Ayumi氏のモデル作成ソフトも関数に引数としてベクトルを渡せるので,1回の関数呼び出して一括して複数の点を計算できたり,非常に便利なソフトのようです。

でも,iruchanは一度,インストールして取り組んでみたのですが.....。

残念ながら一瞬で断念しました.....orz。

一応,WindowsライクなGUIがついていて,グラフも表示できるのですが,基本的にMS-DOSソフトのような,コマンドベースのソフトですし,言語も独特で,C言語みたいな感じなんですけど,これは理解するのが大変です。そもそも,変数への代入がa=bとかじゃなくて,a<-bという表記も非常に気になります。おそらく,開発者はa=a+1のような数学的におかしな表現になるFORTRANとか,BASICなどの表記が気に入らなかったのだと思いますが。でも,a<-bだと,a=-b と間違いやすくてあきまへん。

ということで.....。

またもっと改良してしっかりしたモデルが作れるようになったら詳しく書きたいと思いますが,iruchanはExcelのVBAマクロを使ってExcelでやれるようにしちゃいました!!

LTSpice真空管モデル作成Excel408A.jpg 真空管モデル作成用Excel

Ayumi氏のモデル作成のためのソースコードが公表されていますので,Excelに移植しました。残念ながら,オリジナルのAyumi氏のソフトはパラメータの最適化を自動的に行ってくれますが,iruchanのExcel版は完全手動で,パラメータはユーザが決めます。だから何回もパラメータを変更して規格表に近いグラフになるようにやらないといけないんですけど,なんとか,こんな風にWEの408Aのモデルが作れました。━━ がこのマクロによるシミュレーション結果で,■ が規格表のデータです。Eg1=0Vのところが若干,規格表の値より大きめですが,それ以外はほぼ,規格表どおりだと思います。

ということで,世界初公開!! かな? WEの408A用LTspice用モデルです。Here is the LTSpice model for Western Electric 403A & 408A RF pentode.


これをメモ帳にコピーし,408A.libと名前をつけてLTspiceがインストールされている\lib\subホルダにコピーしてください。また,シンボルはLTspice付属のpentodeシンボルを使います。ただ,Ayumi氏の5極管モデルはg3がないので,LTspiceのpentodeシンボルおよびPin Tableからg3を削除し,また,ModelFileにはサブサーキットとして上記のモデルファイルを指定してください。

408A特性曲線1.jpg

   特性曲線です。グリッド電圧は-0.5vピッチで描画してあります。

先ほどの6AK5同様,LTspiceでプレート特性曲線を描いてみました。非常にきれいな曲線だと思います。ニーポイント以後,IPが下がる,と言う傾向はありません。

ということで,いよいよ金田式オールWE真空管式プリアンプのEQアンプの特性をこのモデルで再計算してみたいと思います。

ところが.....。

予想どおりエラー頻発。なかなか計算してくれません。f特を出そうかとAC解析を実施してみると,

   Damped Pseudo-Transient Analysis. 2.05523times.....

というメッセージが出て,いつまで経っても結果が出ません。

これ,どうも調べてみると計算しても答えが収束しない,ということらしく,結局,どれだけ待っても終了しないようです。DC過渡応答解析を実行してみても同じ現象です。

やはりモデルがまずいのかと調べてみてもおかしくありません。念のため,簡単なシングル増幅器の回路を作って計算したらちゃんと一発で周波数特性が出ますので,どうも真空管モデルのせいではないようです。

Spiceで計算が非常に遅い,と言う場合は結構多くて,よくあるのが,ノードが浮いていると言う場合で,あちこち10MΩくらいの抵抗を接続して接地して計算してもダメです。

また,特にMOS-FETを使った回路のシミュレーションの時は非常に悩まされるので,これも注意ポイントです。

結局,定電流回路が怪しいと思い,すべて定電流回路を取っ払って,2段目の408Aにカソードに10kΩを入れてGNDに直接,接続したらちゃんとf特が表示されました。

やはり,どうも定電流回路がおかしいようです。疑うのは2SK117の発振です。おそらく,だからいつまで経ってもLTspiceが計算が終わらないのですね。実際,実機でもこの2SK117が発振した,と言う報告があるようです。2SK117はJ-FETですが,Spiceでのシミュレーションでも実際の回路でも,やはりFETは要注意です。

MOS-FETは寄生発振防止のため,よく,ゲートに100Ωくらいの抵抗を入れますが,今回も▼のように2SK117のゲートに100Ωを入れたら止まりました。R13がそれです。

WE DCプリEQアンプ回路408A.jpg408A用シミュレーション回路

これでようやくシミュレーションができるようになりました。

結果は次の通りです。

WE DCプリEQアンプ特性(408A).jpg408Aの新モデルでの計算結果

う~~ん,なんのことはない,先ほどの6AK5のモデルでの計算結果とほとんど同じでした。1週間もかかったのに.....。

と言う次第で,ほとんど徒労に終わっちゃいましたが,真空管のモデルをExcelで作れる,と言うことはわかったので,これからいろんな真空管をモデル化したいと思います。



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オールWE真空管式DCプリアンプの製作~その1・電源編~ [オーディオ]

2017年9月30日の日記

MJ無線と実験'02年2月号に掲載された金田明彦氏設計のオールWE真空管式DCプリアンプの製作を再開することにしました。

実を言うと,雑誌に掲載されてからしばらく経って製作に取りかかったんですが.....。

どうにも昔から飽きっぽい性格のiruchanは途中で肝心の部品が手に入らなくなったり,失敗したりするとやる気をなくして途中で放置してしまう,と言う悪いクセがあります。

今回も進のプレート抵抗が一部,手に入らなかったり 6.8MΩなんてない!,引っ越ししたりして部品をどこに片付けたか忘れて探すのが面倒になったりして途中で放置してしまっていました。

そこで,ようやく15年ぶりくらいになりますけど,再開することにしました。

前回の時点で,基板はほぼ完成している状況で,部品も80%くらいははんだづけしてある状態でした。シャシー加工も済んでいて,レタリングをするくらいで終わっています。そういえば,インスタントレタリングがなくなってどうしようかと思っているうちに引っ越しもあってやめちゃった記憶があります。

インレタはサンハヤトが製造中止してしまい,非常に困っています。文具用のが手に入るのでいいや,と思っていたらこちらも手に入らなくなってしまっていますね。本当に困ったものだと思います。

あと,いくつか困った課題があり,それをなんとかしたいと思っていました。

その課題とは.....。

ひとつはコストですね~。昔から金田式は半導体式のものでも本当にお金がかかります。また,今回,すべての真空管が米Western Electric社製のものなので余計です。本当にWEの真空管は高いんですよね~。

WEはRCA系の真空管と異なり,独自の高信頼管となっています。電話用の高信頼管を作るのが仕事だったので当然ですが,確かに出来が全然違うし,音も素晴らしいことは周知の事実なんですけど.....。

電話=通信,ラジオ=放送ということで米国では運営会社,機器製造会社で棲み分けが行われ,本来なら自由主義の原則に基づくとおかしな話なのですが,通信をセキュリティ上,国家の主管事項として管理下に置くため,国営か,1社独占を認めるというのは米国だけでなく全世界共通で,こうしておくことは国家にとって好都合だったので,このような棲み分けが認められました。日本でも電話は戦前は逓信省,戦後は電電公社が運営していたことは記憶に新しい? ですね~。もう,若い人は知らへんて。

機器も純然と製造会社は分けられていて,真空管も電話用はWEが独占して製造し,ラジオ用はRCAやSYLVANIAなど,民間各社が製造しましたが,原則的に相互乗り入れはしない,という協定があり,独自に発達しました。

だからWE系の真空管はRCA系の球とは品種も規格も違い,まったく異なる球が製造されていました。特に通信用はAT&Tや軍が買ってくれるので高くてもよいわけですから,高品質なのも当然です。

しかし,さすがに親方日の丸じゃなかった,親方星条旗のWEも1930年代の大恐慌の時代は苦しく,映画用の音響機器の製造をして糊口をしのいだ時代がありました。300B350Bなどはそれですね。だからWEのオーディオ用の球,と言うのが存在するわけです。これらの球の音のよさはよく知られていますし,iruchanも泣く子も黙る? そんなくらいじゃ,赤ん坊は泣き止まへんて WEの真空管を使ったプリアンプを作りたいと思っていました。

金田氏は最初にEF86を使ったDCプリを発表しておられますが,ネットを見ても断然,WE系の球を使ったプリアンプの方が記事が多く,おそらくEF86のプリアンプより人気があったのだと思います。やはりWEの威光はすごいんだな,と思いました。iruchanはEF86は好きな球なので,いずれこちらでも作りたいと思っているのですが.....。

WEの396Aはプリアンプとしても人気があり,何年か前に4球式の完成品のプリアンプが発表されましたが,こんなの,オレだったら簡単に作れるな,と言う回路で,値段が10万円でした。こんなんやったら部品代を含めても5万で作れるよな.....と思ってよく見てみたら価格は0がひとつ多くて100万円でした!! それでも買う人がいるんでしょうから,やはりWEというとそれだけで音がいいと思ってしまうんでしょうね~。

ちょっと脱線しちゃいました。本題に戻ります。

金田式真空管DCプリアンプのもうひとつの課題は電源です。

金田氏の設計では,WEのMT整流管412Aを使っていますが,それをコンデンサインプットで使っているのはいいんですけど,2,200μFなんて巨大な容量を使っています。

WE 412A.jpg WEの412A

 時代により箱が異なります。右のはよく見かけますが,左のはiruchanも1本だけです。

iruchanは昔から真空管マニアなので,やっぱこんな巨大な容量のコンデンサを使うことはできません。整流管が傷んでしまいますからね。これはなんとかしたいと思います。

と言うことで,いくつか設計を変更して取り組みます。

まずは真空管。

オリジナルはEQアンプにはWEの403A,フラットアンプの396Aを使っています。

まあ,403AはRCA系の6AK5と同特性で,普通,6AK5はオーディオには使わない球なので403Aも需要がなく,比較的403Aは安いのですが,双3極管の396Aはオーディオ用に多用され,昔から高い球です。iruchanが製作に取りかかった15年ほど前ですら,1本9,000円とかしていました。今だといくらするでしょうか。

ということで,iruchanはヒータ電圧違いの同等管を使うことにしました。Ef=20Vの408A407Aがそれです。それぞれ,403A396Aのヒータ電圧違いです。407A12AX7などと同じく,ヒータを並列,直列で使い分けて20V,40Vの両方で使えます。

普通,ヒータ電圧が6.3Vか,12.6Vじゃない球はトランスレス用で,6BM8同等の8B8とか,6AQ8同等の17EW8とかがそれです。でも,396A407Aはそれではなさそうです。

WEはAT&T傘下の電話機製造子会社なので,これらの真空管は電話用ですが,なぜか電話局では20Vというヒータ電圧を使うのでしょうか。基地局か何かで電源がなくて鉛バッテリーを2個直列にして,レギュレータで20Vにしているのか,と言う気もしますけど.....。あるいは停電時のバックアップ用にバッテリーを使っているのでこうなっているのかもしれません。日本でも19R-LL3とか,19R-P11とかありますけど,407Aなどと同じ理由だと思います。

15年前はこれらの球は安く,特にiruchanは海外から真空管を個人輸入していたので,安く手に入りました。でも今は408A407Aもどちらも高くなってしまっています.......orz。

と言う次第で,ヒータは40Vで配線することにします。408Aは2本直列にし,407Aはヒータは40Vで使うことにします。当然,40Vのレギュレータも必要になるので,新たに設計する必要があります。ただ,これには別のメリットもありますが,それはまた次回で。

さて,次はその電源をどうするかです。

☆ 電源部の設計

B電源は金田氏は412Aをコンデンサインプットで使い,±120Vを作ってそれをフラットアンプで使用し,さらに+120Vからレギュレータで+100Vを作ってEQアンプで使う設計になっています。フラットアンプ用は単なるコンデンサインプット整流のままで,半導体式のパワーアンプみたいなレギュレータなしの非安定化電源になっています。

ここで金田氏は412Aのあとに平滑化のため,2,200μFという大容量のコンデンサを接続しています。これはちょっとあまりに大容量で心配です。

iruchanは真空管マニアなので,ちょっとこれはできないな~という感じです。

iruchanは一応,目安として,805Y3などの直熱整流管で20μF,6X4などの傍熱整流管で47μFが最大容量だと考えています。もっとも,80は古い真空管なので,10μFくらいに抑えておいた方がよいと思います。

これはなんでか,というと電源投入直後はコンデンサの電荷は0で,インピーダンスもほぼ0Ωです。当然ラッシュカレントが流れ(整流管の場合はホットスイッチング電流と言います),整流管を傷めますので,メーカが最大値を決めています。

ただ,今回,あらためて規格表を調べてみたのですが,"○○μF以上はダメ" と具体的に書いてあるのはPhilipsがGZ34の規格表で60μFと明記している以外は具体的な数値の記載はありませんでした。

Philips GZ34 datasheet.jpg PhilipsのGZ34データシートから

    PhilipsのGZ34は最大60μFです。

ただ,Tung-SolやSYLVANIAなどは▼のように,最大のホットスイッチング電流を規定し,これを超えないようにしなさい,という書き方がしてありました。

6X4 sylvania datasheet.jpgSYLVANIA 6X4データシートから

コンデンサインプット整流時の典型的動作例も記載されていて,コンデンサ容量は10μFとなっています。

ちょっと,あまりにも小さな値で驚いちゃうんですけど.....。これじゃ,80とか1-Vとかの古典管並みです。

実際には6X4はMTの整流管ですから,戦後の製造で,もっと大きな容量でもいいはずです。実際,iruchanも47μFで使ったりしていますが,問題はありません。

このデータシートには,最大のホットスイッチング電流は別のページに1Aと記載があります。これを超える場合は整流管のプレートとトランスの巻線の間に直列に抵抗を挿入して1A以下となるようにする必要があります。

さて,では,実際に412Aに2,200μFを接続した場合のホットスイッチング電流はいくらか? と言うことになりますが,ちょっと怖くて実験できません.....。

と言う次第で,LTspiceでシミュレーションしています。

まあ,わざわざこんなことを調べるためだけにSpiceでシミュレーションするわけじゃなく,iruchan考案の新しいB電源回路の検証をするついでに調べてみたいと思います。

☆ WE 412AのSpiceモデルについて

と言うことで,412AのSpiceモデルを探したいと思います。

真空管については,トランジスタ技術2017年5月号でも紹介されているAyumiさんがたくさんの真空管モデルを発表しておられます。幸い,396Aのモデルはありましたので,フラットアンプはシミュレーション可能です。

ただ,整流管も5Y3とか5Z3はあるのですが,さすがに412Aはありませんでした。ついでに,403Aもありませんので,こちらも探したいと思います。

残念ながら,ネットを探しても412Aのモデルはありません。それどころか,WEの規格表すら見つかりません。iruchanも規格表はたくさん集めてあるのですが,WEの規格表というのは持っていません。規格表すらないんじゃ,お手上げなんですけど.....。ひょっとして,規格表は国家機密だから,ないとか......。

でも幸い,同特性のBENDIXの6754の規格表は見つけることができました。また,プレート特性曲線も載っていたので,これを使ってモデルを作りたいと思います。412A同等管で,差し替えもできます。音もよいようで,412Aが手に入らない場合は6754でもよいと書かれていますが,6754も入手しにくいんですけどね......。

BENDIX社は最初のパーソナルコンピュータと言われる? G-15で有名ですけど,RED BANKと呼ばれるスーパーラギッドなシリーズの真空管でも知られています。航空用と称していますが,おそらく軍向けだと思います。B-29とかB-52に使われていたんではないかと言う気がするんですけどね.....。きわめて頑丈で丈夫な高信頼管を作りました。6V6同等の5992とか,5Y3同等の6106がよく知られています。ちなみにWEの396A同等の2C51のRED BANKシリーズの球もあります。フラットアンプに使ってみてもよいと思います。

WE 412A, Bendix 6754.jpg WE 412AとBENDIX 6754

何か,はるかに6754の方が出来がいいんですけど.....。ダブルマイカで振動を抑えた上,ガラスも普通の真空管よりも頑丈な耐熱ガラスになっています。ピンも金メッキされていますね。6754と比べると412Aの電極は5V4-Gにそっくり,という感じで貧弱です。

Bendix 6754プレート特性曲線.jpg Bendix 6754データシートから

EP-IP特性曲線です。整流管の場合,これがあれば何とかなります。

これを手読みして,Excelでグラフを描いてみます。

WE 412A特性曲線1.jpgこんな感じです。

━ はiruchanが推定した曲線です。あとでこれは説明します。

真空管にはラングミュアの法則,と言うのがあり,一言で言うと,プレート電流はプレート電圧の3/2乗に比例します。つまり,IP=G・EP^(3/2)と言うことですね。ここで,Gは各真空管固有の定数で,パービアンスといいます。このGが求められればよいと言うことになります。

3/2乗に比例する,ということは両対数曲線でグラフを描けば,直線に乗るはずなので乗則と定数を求められるはず......なんですが......。

WE 412A特性曲線3.jpg なんやこれ~~!?

Excelで手読みした値を両対数でプロットし,線形近似したグラフなんですけど......。

      なんで,そうなるの~っ!? 欣ちゃんの声で。古~っ

線形近似を選択しているのに思いっきりカーブしちゃってます。おぃおぃ。

WE 412A特性曲線2.jpg

しかたないので,プレート電圧とプレート電流をそれぞれ,常用対数を取って,それをグラフにしてみました。

これなら線形近似するときれいに直線になりました。当たり前だっちゅ~の。

ここで,近似式はy=1.3967x+0.2474と出ましたが,これで指数関数の乗則とパービアンスが求められます。

乗則は1.3967です。ラングミュアの法則だと1.5ですから,ほぼ近い値だと思います。

一方,パービアンスは10^0.2474で0.00167865となります。これはxが log Eだからです。したがって,BENDIXの6754のプレート電流特性は,IP=0.00167865×10^1.3967となります。先ほどのグラフの この式によるものです。

412A spice model.jpg LTSpiceの6754のモデルです。

6X4のモデルファイルをコピーし,サブサーキットの6X4.subファイルを書き換えて,これをWEの412Aのモデルとしました。あっているかな?。

WE 412A特性曲線.jpg LTspiceで特性曲線を描きました。

プレート特性をLTspiceで描画するとこんな感じです。大体,先ほどのBENDIXの6754の規格表にあっていると思います。

さて,ようやくここまで来たら金田氏の回路をシミュレーションしてみたいと思います。

WE DCプリアンプ電源回路original.jpgオリジナル電源回路

オリジナルは先に書きましたとおり,2,200μFのコンデンサインプット整流になっていて,フラットアンプにはこのまま供給されています。

WE DCプリアンプ電源波形original1.jpg オリジナル回路の出力波形です。

ほぼオリジナルの設計どおり,出力電圧は123Vとなりました。

WE DCプリアンプ電源波形original.jpg 拡大です。リップルが乗っています。

波形を拡大してみるとこんな感じで,約36mVP-Pのリップルが出ています。非安定化電源なのでこんなものでしょう。

ただ,これをそのままフラットアンプの供給するとハムが出ると思います。実際,真空管式DCプリを作った人はハムが出る,と書いていますね。

残念ながら,パワーアンプでもB電源のリップルは十数mVくらいにしないといけません。前回,6G-A4のシングルアンプを設計したときに書いていますが,6G-A4のアンプを10Hのチョークを使ったπ型フィルタを入れてもリップルは34mVP-Pというという結果が出て,チョークコイルは結局あきらめています。プリアンプならなおさらで,何か改良が必要だと思います。

また,問題となっている412Aのラッシュカレントですが....,

412A plate current(original).jpg 412Aの電流波形です。

最大で,1.4Aもの電流が流れていることがわかりました。

で,これが問題なのか,ということなのですが......。

一木吉典氏の "全日本真空管マニュアル" によれば,整流管のホットスイッチング電流は整流管が規定する値までであれば,0.2秒間は耐えることになっていて,これはメーカの保証範囲です。

WEの412Aのホットスイッチング電流がいくらか,というのは調べてもわからなかったのですが,BENDIXの6754の規格表には,Peak surge currentの項目があり,1.1Aと記載されていました。

つまり,6754の場合,起動時に1.1Aまでなら0.2秒間はOKと言うことになります。

規格表の記述どおり解釈すると,このピーク電流はアウト,と言うことになります。

しかし,LTspiceのシミュレーションを見ると,最大5波程度で,時間的には0.1秒程度です。真空管は丈夫ですし,半導体のように一瞬で死んでしまうことはありません。412Aも瞬間的にパッと光って昇天する,と言うことはありません。これくらいなら許容範囲,という気がしますし,金田氏も後の号で問題ないと書かれていますが,おそらくその通りだと思います。

で,iruchanも,そうとは思うのですけど.....。

やはり,こういう結果を見てしまうともう少し,412Aには楽をさせてやりたいですし,先ほどのリップルについても対策が必要だと思います。このままではハムが出てしまいます。

と言う次第で,やはりiruchanはリップルフィルタを使用することにしたいと思います。

人によってはチョークコイルを使われたりしているようですが,iruchanはもう,チョークコイルは使わないことにしました。重いし,値段もかなりしますからね~。それに,性能はリップルフィルタに劣ります。先日の6G-A4のパワーアンプでも,10Hものチョークコイルを入れてもスピーカ端子で1mVを超える残留ハムとなる計算結果になり,あきらめています。

プリアンプの場合は,昔からチョークコイルは使いません。

確かに,チョークコイルはプリアンプのような小容量の負荷の場合は完璧にリップルを取り除いてくれますが,今度はチョークコイルが磁界を発生し,ハムの原因になるからです。

また,真空管式プリアンプは電流が小さいことから,CRを使ったπ型フィルタを普通使うのですが,さすがに古い,という感じがしますので別の回路にします。iruchanも中学生の時に最初に作った4球式プリアンプとか,昔からずっと使っているのですけどね。

と言うことで,iruchanは今回,いつもどおりTrを使ったリップルフィルタにします。

これは,非常にメリットが大きいのです。

まずは完璧にリップルを退治してくれます。

それに,CRの時定数がTrのベースに入っているため,非常にB電圧の立ち上がりが遅くなります。真空管にとっては非常によいことですね!

おまけに出力電圧はベースに入っている抵抗の値を変えることで簡単に変えられます。もし,あとで金田氏のようにSBDを整流に使う場合はB電圧が高くなりすぎますが,トランスの2次側端子電圧を下げなくてもこのベース抵抗を変えるだけでB電圧を低くできます。

ノイズについても完璧で,ハムだけでなく,半導体や抵抗の発するノイズも小さく,数nV/√Hzくらいにできます。3端子レギュレータでもこの10倍以上のノイズを発しますが,リップルフィルタは非常に広帯域ノイズも小さいのです。

と言うことで,さっそく,LTspiceを使って本DCプリアンプ用の電源を設計したいと思います。

WE DCプリアンプ電源回路iruchan.jpgDCプリアンプ用電源iruchan版

同じくコンデンサインプット整流ですが,コンデンサは47μFにします。これだと412Aも普通の値だと思います。

その後,Trによるリップルフィルタを入れ,出力電圧が120Vになるようにします。

WE DCプリアンプ電源波形iruchan1’.jpg  LTspiceによるシミュレーション結果

━ 412Aのカソードやインプットコンデンサの端子電圧です。やはりリップルが乗っています。━ が出力電圧で,見事にリップルが消えているのがおわかりいただけると思います。出力のDC電圧は119.5Vで,リップルは1mV以下です。さっきの1/30ですね!

次に412Aの電流を見てみると....

412A plate current(iruchan).jpg 電流波形です。

ピークの電流は900mAとなりました。peak surge current以下です。それも1波だけですから,問題ありません。

う~ん,それにしても整流管(ダイオードの場合も同じです)の整流回路を流れる電流はこのようにヒゲ状のパルス電流なんですね~。教科書に載っていますけど,実際にシミュレーションしてそのような結果になるのにちょっと感動です。

このパルス状の電流がノイズになります。真空管の場合,内部抵抗が大きいので,パルス状の電流は比較的小さいです。

さて,こうしてようやくB電源が設計変更できました。改良後の回路を▼に示します。

オールWE真空管式プリアンプ電源部回路2.jpg電源回路です。

トランスは残念ながら特注せざるを得なかったのですが,長野のフェニックス電子さんが非常に安価で特注を受けてくださいます。実は,本来のこのプリアンプ用の既製品より安いくらいでした。あまりに安かったので,思わず,座布団2枚! ということで2台注文しちゃいました。もう1台はEF86プリに使いたいと思っています。どうもその節は大変お世話になりました。

なお,ヒータ回路は407AのH-K間耐圧の関係で-40Vで点火します。ヒータ耐圧の問題については詳しくは次回ご報告しますが,フラットアンプ2段目マイナス側の407AのH-K耐圧が厳しく,-40Vで点火することにしています。

B電源フィルタ用のTrは最初は2SA6532SC1161で考えていましたが,どちらもVCEO=120Vでギリギリなので,NPNの方だけ,2SC1864に変更しました。VCEO=250Vなので安心です。同じNECだし,エピタキシャルメサ型ですので音もよいはずです。ちなみに規格は,

           VCEO     IC     PC  hFE

2SA653/C1161    120V   1A  15W  80

2SC1864      250V   7A  40W  >20

です。残念ながら,hFEが小さめで,リップル低減効果は小さくなります。一般的に,高圧TrはhFEが小さいので,真空管アンプなどでリップルフィルタを使う場合はhFEにご注意ください。今回,完成後にテストしてみてハムが出る場合は2SC1161に交換するつもりでしたけど,実測してみると手持ちの2SC1161はhFEが38~50で,2SC1864が28~32と言ったところでしたので,あまり変わらないと思います。

ちなみにPNPの方はVCEO=-160Vの東芝の2SA969がよいと思いましたが持っていませんので断念です。メタルキャンのTO-66の高圧Trは品種が少ないです。今だったらTO-220で結構,多数の高圧Trがあるので,メタルキャンにこだわらなければ選択肢はたくさんあるのですけどね。

あと,回路はもう一工夫してあって,Trの保護用にポリスイッチを起用しました。さすがに2SA6532SC1161はとても貴重ですから,飛ばしちゃうと泣きたくなっちゃいますからね.....。

一般的にポリスイッチは耐圧が50Vくらいまでですが,今回,250Vというものを入手できたので使用してみました。トリップ電流120mAなので,本機に最適だと思います。

本当は先ほどのSpiceのシミュレーションにあるとおり,Trを使った電流制限型保護回路にしたかったのですが,ポリスイッチの方が配線が簡単なので,そっちにしちゃいました。Trの方が高速だし,確実に保護できるのでいいんですけどね.....(^^;)。

と言う次第ですが,15年前にこのリップルフィルタは設計してありました。当時はまだSpiceは使えなかったので,手作業でしたけど,よくやったと思います。さすがにポリスイッチはありませんでしたので,時代が進んだな,と思います。

☆ヒータ回路用電源の設計

これは先にも述べましたとおり,-40Vの電源を用意します。403A396Aの組み合わせなら6.3Vか,12.6Vの電源を用意すればよいのですが,それだったら簡単には3端子レギュレータで十分です。実際,金田氏はLM338を使った6.3Vのレギュレータとなっています。

ただ,これは12.6V系で使用した方がよいと思います。というのは6.3V系の時の電流が半分で済みますので,LM338の発熱も小さいからなんですけどね....。403Aは2本直列にし,396Aは12.6Vで使用するよう,#1ピンと#9ピンに12.6Vを供給すればよいのです。

今回は40Vで点火します。407AのH-K耐圧の関係で,極性を逆にして,-40Vで点火します。

この場合,3端子レギュレータは24Vまでなので使えません。まあ,LM317Tなどの可変出力電圧のレギュレータを使えば済む話なんですけど.....。

と言うことで,まずはディスクリートの定電圧電源を考えました。

-40V定電圧電源.jpg Spiceのシミュレーション回路

誤差増幅器にシングルのTrを使ったごく一般的な負電圧の定電圧電源回路です。

でも,結果はいまいちでした......orz。

-40V定電圧電源出力波形.jpg

きちんと定電圧出力となっていて,よさそうなんですけど.....。

残留リップルが8.5mVもあります。ヒータ電源なんだから,これがハムになるわけじゃなし,問題ないと思うのですが.....。

ちょっと予想より悪かったので,もっと性能のよいものにしたいと思います。

と言うことで,やはりリップルフィルタに戻ってしまいました。

-40Vリップルフィルタ電源.jpg リップルフィルタの場合

-40Vリップルフィルタ出力波形.jpg

出力電圧は-38.9Vと少し低めですが,リップル電圧は0.7mVです。見事です。

残念ながら?,こちらの方が残留リップルは低い結果となりました。

それに,リップルフィルタのメリットとして,電圧の立ち上がり(マイナス電源なんだから,立ち下がりなのかもしれませんけど)が非常にゆっくりなんです。

真空管のヒータは冷めているときは非常に小さく,電源投入時に大きなラッシュカレントが流れます。

まあ,白熱電灯なんかと違って,電源投入時にパッと光ってヒータが切れる,と言うことはまずないので問題ないのですが,やはりゆっくり立ち上がった方がよいかと思います。もっとも,PX4PX25など,欧州の直熱3極管は電源投入時に切れる,という話を聞きますので,これらの球を直流点火するときは定電圧電源じゃなく,リップルフィルタがよいと思います。たまに定電流回路で点火する人がいますが,確かに3端子レギュレータよりよいと思いますが,これは一定電流を流し続けるので,電源投入時も一定の電流を流そうとするので,リップルフィルタの方がよいと思います。

定電圧電源の場合,ほぼ瞬間的に定格電圧がかかりますが,リップルフィルタだとゆっくり0Vから立ち上がっていきます

今回の場合,定電圧電源は-40Vまでにかかる時間は12msでしたが,リップルフィルタだと約2.5sでした。ベース抵抗やコンデンサを変更すればもっと遅くできます。

と言う次第で,ヒータ電源もリップルフィルタにすることにしました。

なお,今回,制御Trの損失は約2.1Wと比較的大きいです。裸のままでは触れないほど熱くなると思いますので,シャシーに固定して放熱させることにします。


完成した基板を載せておきます。

電源基板1.jpg 完成したB電源基板

2SA653はかなり前に海外から取り寄せたものです(近くの大きな国からではありません)。

ただ,ロゴはNECの旧ロゴで,iruchanは本物と信じているのですが,本体が金色をしていて,ニセ物,と指摘する方がいて,アンプじゃなくてこちらに使用することにしました。確かにオリジナルの2SA653はクロームメッキで銀色をしているのですが....。これは何か宇宙用とか,特殊な仕様だとiruchanは思っているのですけど.....。

ポリスイッチ.jpg 

     ポリスイッチを挿入してあります。

次回はアンプ編です。


閑話休題。

ヒータ用の直流電源回路には制御Trに2SB600を使おうかと思っています。シャシーに取り付けないといけないので,外から見えるし,TO-3型だとかっこよいよな,と思って起用するつもりですけど,ようもこんな貴重な石を使いやがって,とお思いの方も多いと思います。

実は本物じゃなく,ニセ物を使います。

iruchanはWEの407A408など,真空管はインターネットなんてない頃から個人輸入していますし,半導体も2SA627D188などは国内の在庫がなくなって海外から取り寄せました。

おかげで,真空管も半導体も安く手に入ったのですけど.....。

でも,結構,痛い目にも遭っています。

まあ,真空管の場合はメーカ名を書き換えるくらい訳ないので,こちらも警戒していてニセ物をつかむことはないし,たとえリマーキングしてあるものでもさすがに真空管じゃすぐにばれちゃうので,ごまかしてもメーカ名くらいですが,半導体はそういうわけにはいきません。

何度,NECの2SA649を入手するのにニセ物をつかまされたことか......。

残念ながら,2SD218はまだ海外にも本物があって入手可能だと思いますが,2SA649の場合はほぼ絶望だと思います。間違いなくニセ物だと思います。

もっとも,最初から悪意があってニセ物を作っているわけではない,と思います。日本で2SA649が高いと思ってリマーキングしているわけじゃないでしょうしね。たぶん,何かの日本製品の保守用に,本来の2SA649がなくなったので,別の似た特性の石をリマーキングして売っている,という程度の話だと思います。

今回起用する予定の2SB600はこんなやつです。

2SB600, D555?.jpg こんなの真っ赤ニセ物~~~っ!!

そもそもロゴが雷ロゴと言われる昔のNECなのはいいのですが,形状も本来なら2SA649などと同様,NEC特有の平べったいTO-3なのに,これは普通に背が高く,頭が丸い,東芝みたいなTO-3です。2SD555は新ロゴになっていますが,ロゴが小さいし,プリントもずれていて怪しい感じは明らかです。

ロゴについては,2SB600/D555のコンプリは割に最近まで製造されたので,NECの新ロゴのも存在するのですが,形状は昔のままで,平べったいやつのはずです。

クソ~~っ! と思ったのですけど,割にきれいなNECの旧ロゴのがあったので起用します。まあ,単なるヒータの電源回路だし,音は関係ないでしょうしね。

            ☆      ☆      ☆

NECのロゴは1992年に,昔のNECから,ゴシック体のNECに変わりました。ですから,2SA649/D2182SA627/D188は旧ロゴのものしかありません。バブルの頃から,今じゃほとんど死語ですけど,CI(corporate identity)とかで,いろんな企業がロゴを変えました。実際,ロゴ変更を契機として会社の業績が上昇する,と言う現象が見られて,プラスの効果があったように思いますが,一見,業績が向上したと言ってもそれは日本経済全体がよかったからにすぎなかったのかもしれません。

でも,最近話題の半導体メーカは昔はToshibaだったのに これじゃどこかわかっちゃうな,やはりバブルの真っ最中の1982年にTOSHIBAに変更しています。サザエさんのエンディングでこのロゴが大写しになりますけど,新しいロゴに変わって非常に違和感をおぼえたのを思い出します。そんなの古いって。

まあ,個人的にはどちらもiruchanは古い方が好きで,特にNECは技術提携元のWEのロゴにそっくりで(というより,最初から真似してますよね~),真空管なんかはNECと書かずにNippon Electricと書いてあることも多く,WEとそっくりでしたね。ちなみに東芝の前身の東京電気時代からのマツダロゴは提携元のGEにそっくりです。

そのWEも1969年にいわゆるベルマークと言われる,これもゴシック体みたいなWestern Electricに変わっています。これもiruchanを含め,マニアには評判が悪いですね。昔の雷ロゴの方がよかった,と言うわけです。

まあ,これらのおかげで真空管や半導体の年代が推定できるのですけど,件の日本の半導体会社の最近の事例を見ると,ロゴを変えるというのは会社経営にとっては非常に悪いことのように思えてきました。

思い出すのはRCAですね。

RCAはロシア移民のデビッド・サーノフが一代で作り上げた米国の巨大電機メーカで,NBCを設立したりして放送も支配していました。戦後も引き続き,半導体で世界をリードしました。いまだにC-MOSの4000番シリーズなんかが定番のICで残っているのもRCAの遺産ですね。

しかし,1966年に息子のロバート・サーノフが経営を引き継ぎ,ロゴも変えてしまいます。それまでは雷ロゴ(英語でもlightning logoと言います)と言われたロゴを変更し,デザイン的なものに変えてしまいますが,彼自身の経営のまずさにくわえて時代の変化に取り残されたRCAは1986年にGEに吸収されて消滅します。

最後の頃は保険会社も経営し,牛乳とか食品を販売する会社もあったようで,なんかどこかの国の電機メーカとそっくり,と言う気もします。その会社はロゴを変えていませんけどね~。とはいえ,一時,新聞広告を出してロゴを変えると言って大騒ぎした上,結局,や~めた,と言う話もiruchanはよくおぼえていますけど.......(^^;)。

また,WEも親会社AT&Tの分割が決まると一気に斜陽化し,1984年にAT&T Technologyになったあと,95年にLucent Technologyとなって消滅しています。ルーセントはWEの直系に当たるわけで,iruchanはコンピュータのルーターなんかでルーセントの名前を見ると懐かしく思い出します。

正直言って,ロゴを変えると会社が傾くんじゃないか,と思っています。ロゴを変更するくらい,カリスマ経営者がいる,ということはある意味,その経営者が独裁的になり,誰の話も聞かなくなるとか,社員も意識が尊大になり,上ばかり見て顧客を顧みなくなるとか,そういう現象があるのだと思います。なんで例の半導体会社は米国でも斜陽化していた原子力に手を出したのか.....。誰もご注進できなかったのか,という気がします。

そんなわけで,ロゴ変更後,10年くらいで会社がなくなることが多いんじゃないかとiruchanは最近,思っています。


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デジタルアンプLepy(旧Lepai) LP-2020A+の改造~ヘッドホン端子の取り付け~ [オーディオ]

2017年1月31日の日記 

中国Lepai社のデジタルアンプLP-2020A+にヘッドホン端子をつけました。  
 
LP-2020A+ヘッドホン改造.jpg 
 
 ヘッドホンで聴けるようになりました。下は自作のアナログ式専用電源です。
 
デジタルアンプは出力段がBTL方式になっていることもあり,ヘッドホン端子を取り付けるのは難しいのですが,なんとか使用できるようになりましたので,手持ちのLP-2024A+を先に改造しました。先週末は残ったLP-2020A+を改造しました。 
 
改造の中身については,前回のLP-2024A+の改造と同じですので,そちらをご覧ください。
 
LP-2020A+フロントパネル加工.jpg パネルの穴開けのけがき
 
正面のパネルに穴を開けるので慎重にやらないといけませんが,まあ,所詮はアルミだし,きちんとポンチを使って位置決めをし,最初はΦ2~3mmくらいの下穴を開けてΦ6mmの穴を開ければ傷もつかず,きれいに穴開けできると思います。 
 
電源SWの横にヘッドホン用の穴を開けます。ボリウムの左側の穴はスピーカoffのプッシュスイッチ用です。ヘッドホン使用時はそのスイッチを押してスピーカをoffにします。残念ながら,回路はもとからついているミューティングリレーの制御回路を利用してスピーカをoffにしていますが,ヘッドホンを挿したら自動的にスピーカをoffにする,ということはできませんでした。 
 
LP-2020A+ヘッドホン基板.jpg ヘッドホン基板
 
 
ヘッドホン基板は前回作ったLP-2024A+のものですが,LP-2020A+ではやはり放熱器が邪魔をして多少,改造しました。
 
LP-2020A+に使用されているTripathのTA2020は出力がBTL方式ですが,それぞれ,ホットとコールド端子はGNDに対して6Vくらいの直流電圧が出ていて,スピーカから見たら等電位なので問題ないのですが,ヘッドホンは対GNDで動作させるため,これをカットする必要があり,ストッピングコンデンサが必須です。今回,小型のOSコンにしました。 
 
やはり小型なので十分,スペースに収まりました。コンデンサは100μFにしました。
 
なお,OSコンは導電性高分子アルミ固体コンデンサ,と言うのが正式名称ですが,従来の電解コンデンサと異なり,電解液を使っていません。キャリアが重いイオンじゃなく,軽い電子ですので,非常に高周波特性がよく,ESRも低いし,長寿命という特長もあるのですが,陽極と陰極がポリマーを介して接しているため,故障時にショートモードで故障する場合があります。そのため,メーカはカップリングコンデンサとしては非推奨なので本来,こういう使い方はNGなんですけど,問題はないと思います。
 
一方,高周波特性がよいことから電源のデカップリングコンデンサへの使用は推奨されているのですが,iruchanはこっちこそ危ない,と思います。もし故障したら電源をショートすることになりますからね。OSコンじゃないですけど,同じ故障モードになるタンタルコンデンサをデカップリングに使った'80年代の某社製高級プリアンプはトランスが焼ける,と言う故障が出ています。
 
でも,OSコンはやはり音がよいです。今回もヘッドホンで聴いてみて,明らかに従来の電解コンデンサとは異なる音でした。
 
おかげで非常に評判のよいLepai社のデジタルアンプですが,ヘッドホンでも聴けるようになりました。
 

LUXKIT A3600復活への道~その4・調整編~ [オーディオ]

2017年1月14日の日記

Luxkit A3600.jpg 完成しました。 

とうとう,この2年ほど取り組んでいた,ラックスキットのA3600アンプが本日,試運転の日を迎えました!!!

LUXKITのA3600というアンプはNECと共同開発した,大出力3極出力管8045Gをプッシュプルで使った,50W×2のアンプです。発売は1975年のようなので,もう発売から40年経っています。

と言う次第で,いつも大変お世話になっている河童さんからいただいた後,いろいろとメンテナンスと設計変更をしておりました。

まずはコンデンサやソケット,錆びた端子などの老朽化した部品の交換に始まり,トランスやボンネットの塗装や回路の設計変更をして時間がかかってしまいました。

プリント基板.jpg プリント基板改良後

基板ソケットはQQQのものを使いたかったのですが,基板用が手に入らなかったので,中国製の金メッキ品を使っています。

案の定,ソケットが渋くて真空管がスムーズに差さりませんでした。こういうときは無理をすると真空管を割っちゃうので,一度小さなマイナスドライバー(#0)を突っ込んでコンタクト部分を拡げておきます。 

カップリングコンデンサはすべて新品のフィルムコンに変更します。なお,真空管アンプのカップリングコンには必ずフィルムコンを使うようにしてください。オイルコンやペーパーコンは経年劣化でリークしますので不可です。オイルコンは歴史があるし,音がよいから,ということで愛用している方も多いと思うんですが,安全面を考えると要注意です。リークすると出力管の寿命に直結しますので,フィルムコンにしてください。iruchanは独EROを愛用しています。すでに製造中止ですけどね....。A3600はオリジナルは日通工のフィルムコンでした。これなら安心ですけど,やはり年月が経っていますし,リード線が錆びているので交換しました。

そのほか,位相補正用のセラミックはディップマイカに交換しました。出力管の動作点が変更となり,バイアスが少し浅くなったので-C電源も少し定数をいじっています。 

なお,残念ながら,50C-A10PPのKMQ60はオイルコンが使われています。お使いの方はすぐに交換した方がよいと思います。 

このアンプははわざわざ8045Gなんて大出力の真空管を開発したところからもわかるように,大出力指向のアンプで,この前も書きましたように,公称50Wのアンプですけど,実は実測で66Wも取れちゃいます。

そんな大出力はいらん,という気がしますし,何より8045Gは寿命が短いことで知られているので,もっとB電圧を下げて楽をさせてやりたいと思っていました。

今回,トランスの2次側出力にAC用コンデンサを挿入してB電圧を60Vほど下げることにしました。 また,これに伴い,ドライバ段の定数変更が必要となりますので,Spiceでシミュレーションして定数を決定しています。

それに,8045Gドライブ専用として6240Gという真空管も採用されていますが,これも入手困難なため,6FQ7で代用します。 特性が異なりますので,こちらも前回,あわせて検討しました。

回路の変更箇所を示します。赤字が今回の変更箇所です。6240Gがない,と言う方も6FQ7で代用可能ですので,ご参考にしてください。 オリジナルの回路はこちらをご覧ください。また,本機はA3300プリアンプの電源供給用にGTソケットがついていますが,電源のフィルタコンデンサの周辺がすごく混み合っているので廃止しました。もう,A3300プリアンプを入手して使うこともないでしょうしね。 

LUXKIT A3600回路図改造後.jpg 改造後の回路 

なお,電源部は少し,元の状態が変わっていて,オリジナルだと2連の電解コンデンサを使っているのですが,どういうわけか3連のものが使われていました。もとの所有者の方が改造したのか,それともA3600のバージョンのひとつなのかわかりませんけど。もはやブロック電解コンデンサは国産のものはなくなっていますし,テストしてOKだったのでもとのものを使っています。オリジナルの回路はこちらをご参照ください。 

今日はいよいよ通電して調整していきます。

まずは電源部のテスト。一番危険な箇所ですし,回路を間違っていると大変なことになりますので,まずはここからテストします。案の定,フィルタコンデンサのはんだが一部,テンプラになっていてうまく高圧が出ませんでした。ついでに電解コンデンサのテストをしておきます。古いケミコンはリークしたり,容量抜けしたりしてハムが出たりしますので,少し低めの電圧をかけてテストします。

まずはスライダックで1次側にAC10~20Vの電圧をかけ,各電解コンデンサにちゃんと電圧がかかっているか調べます。うっかり,極性を逆に配線していてもこれくらいの電圧なら助かりますので。特に,今回,A3600は固定バイアスのアンプなので,バイアス用のケミコンにちゃんとマイナスの電圧が出ることを確認します。

ダイオードが発熱したりしないかも調べておきます。問題なければAC50Vくらいにしてしばらく放置します。このとき,B電圧は250Vくらいになるはずです。

これで電解コンデンサの絶縁皮膜が回復するのを待ちます。フォーミングというのですが,米国製の電解コンを使った場合などは必ずこの状態で数時間放置してください。日本製のケミコンはいきなり高圧をかけても何の問題もないですけど,MalloryやSpragueなどの米国製の場合,いきなり高圧をかけるとヒューズが飛ぶことがあります。

なお,まだ現在は全く無負荷の状態なので,絶対にAC100Vにしないでください。ドライバ用の電解コンデンサなどの耐圧をオーバしちゃいますので。

さて,次はドライバ用の6AQ86FQ7だけ挿して,また徐々に高圧を加えます。プレート電圧などに異常がなそうならAC90Vくらいまで電圧を上げます。

ここで,一応,出力段のバイアス電圧を調べておきます。

8045Gのカソード(#8ピン)に黒,グリッド(#5)ピンに赤のリードを当ててみて,ちゃんと-90Vくらいの電圧が出るのを確認します。また,各半固定ボリウムを回してみて,スムーズに変化することを確認します。すべての8045Gのバイアスが-90Vくらいになるようにセットしていよいよ出力管を挿します。

さて,いよいよ出力管のプレート電流を調整します。

スライダックで再度,徐々に電圧をかけていきます。カソード~GND間に10Ωが入っていますので,この両端の電圧を計測して750mVとなるようにします。

今回,8045Gの動作点は前回のブログにもあります通り,EP=430V,Eg=-85V,IP=75mAとしましたので,この抵抗の電圧は750mVです。

残念ながら,8045Gの1本が少しエミ減気味で,R ch.はIP=70mAであわさざるを得なかったので,B電流が少し小さく,B電圧は450Vになりました。ほぼSpiceのシミュレーションどおりです。

オリジナルのA3600はEP=495V,Eg=-100V,IP=80mAですので,もう少しプレート電流は流した方がよいのかもしれませんが,プレート損失を抑えて33Wにしました。オリジナルだと39Wですから,▲15%としました。 

プレート電圧も含め,プレート損失も出力管の寿命を考えると,もう少し小さい方がよいと思います。 

これで4本すべてのプレート電流をあわせます。各ch.の上下の出力管のアンバランスは1mAを目標に調整しました。

さて,ここまで来たらf特と出力を見ておきます。

LUXKIT A3600 f特.jpg 周波数特性(1W)です。

ちょっと驚いちゃいました。10Hz~50kHz(-1dB)と言ったところで,非常に広帯域です。特に,低域のレスポンスがよいのはプッシュプルアンプの特長ですけど,それにしても10Hzでも-0.7dBで,実際には-1dBも行っていないのですから。iruchanの持っている低周波発振器は10Hzまでなので,それ以下はわかりませんけど,カットオフは非常に低いはずです。高域も50kHzとは驚きで,手持ちのLUXKITのKMQ60より非常に広帯域です。

出力は53.6Wとなりました。まだ少し大きいですが,まあこんなのものでしょうか。 

10kHz方形波応答.jpg 10kHz方形波応答

  リンギングやオーバーシュートもなく,素直な方形波応答です。  

さあ,いよいよお楽しみ.......。音を聴いてみます。

まずはいつも聴いている,アナ雪。まだはまっちゃってます。

う~~ん,最近は "君の名は。" が大受けで,そろそろアナ雪も抜かされそう,と心配しちゃっているんですけど。それに,昔からiruchanは学園ものが嫌いなので,今年の正月は子供と "君の名は。" じゃなくて, "この世界の片隅に" を見に行きました。これ,本当にいい映画です。悲しい結末だけれど,戦時下にも前向きに生きようとしている主人公に共感を覚えましたし,とても勇気づけられました。それに,悲劇を描いているけれど,妙に明るくて,笑いながら最後まで楽しめます。さすがに,あまりに悲しいと,某戦争アニメみたいに,とても最後まで見ていられないということになっちゃいますので。 日本映画って,誰かもFMで話していましたけど,こういう見たらトラウマになりそうなのが多くて困ります。実は,iruchanはそのチョ~有名な戦争アニメは今まで,一度も最後まで見たことがありません......(^^;)。

アナ雪2.jpg 

松たか子さんの高音の伸びた澄んだ歌声に魅了されます。やっぱ,いい曲だな~~~!!

それにしてもずいぶん寒くなってきましたけど,このアンプはストーブ代わりになります。なにせ200Wもの熱を出しているのですから,小型ストーブ並みです。実際,調整中は寒いので8045Gに手をかざしながらやっていました。火鉢かよって!?。これやったらストーブいらへんやん,と言う次第で,やっぱ....

画像3.jpg

   ♪ 少しも寒くないわ~ (松たか子さんの声で!!) 

アンプはとてもノイズが少なく,ハムが全く聞こえません。こういう点はプッシュプルのアンプですね。シングルのアンプはどうしてもハムが残っちゃいますけど。音も左右の分離がよく,豊かな低音が魅力です。それほど高音は伸びている感じはしませんが,やはり真空管特有の暖かくて柔らかな音だと思います。半導体のアンプじゃ味わえませんね。 

さて,お次はお約束のフルヴェンの第九。本当は年末に完成させて,師走に聴きたかったですけどね.....。

ご存じ,言わずと知れた1951年7月29日のバイロイト音楽祭の初日の演奏録音です。やはりこれしかない!!という感じのチョ~名演です。

聴いたのは東芝EMIがSACDのハイブリッドで出した盤。紙ジャケだし,SACDになったし,と言うことで買ったものです。

ただ,ちょっと驚いたのはフルトヴェングラーが壇上に登場する音が入った,いわゆる "足音入り" の盤なんですけど,なぜか以前の盤に入っていた,第1楽章冒頭の耳障りな聴衆の咳払いや,マスターテープの劣化による第2楽章のドロップアウトがなくなっています。

後者は耳障りなのでなくなってよかったですけど,どうにも冒頭の咳払いがなくなっているのは変。何をやって消したのかわからないんですけど,これがないとフルヴェンじゃない,という感じです。演奏と一体化しちゃっているので,iruchanはちょっと変な感じがします。

やはり一番の聞きどころは第4楽章のバリトンのエーデルマンが歌い出す前後。 おぼろげに低音がこもったような響きのホールにオケの演奏が盛り上がって彼が歌い出すところは秀逸。

     ♪ おお、友よ! このような調べではない!........

と言う次第で,今年はフルヴェンの第九からはじまりました。また本年もどうぞよろしくお願いします。

Furtwangler Beethoven sym.9.jpg 

        Beethoven Symphony No.9 (TOCE-11005) 


デジタルアンプLepy(旧Lepai) LP-2024A+の改造~ヘッドホン端子の取り付け・つづき~ [オーディオ]

2016年12月31日の日記 
 
LP-2024A+ head phone1.jpg
 
とうとう,今年も今日で最後です。一年,ご愛読ありがとうございました。今年,最後の投稿です。
 
今日は前回の続きで,Lepy(旧Lepai)のデジタルアンプLP-2024A+のヘッドホン端子追加についてです。前回はいつもお世話になっている方からの依頼でした。今回は自分のを改造します。
 
まず,前回で課題になったのは,少し改造が大変だと言うことです。回路自体は簡単なんですけど,アンプの出力とスピーカ端子の間にスイッチを挿入しなければならないので,一度,スピーカ端子を外す,と言う大工事が必要でした。
 
回路は簡単なんだけれど,実際にやるのは大変,ということが結構ありますね。
 
今回,もっと簡単にできないかと考えました。
 
また,前回はスピーカ⇔ヘッドホンの切り替えをできるように考えていたため,スイッチは双極双投(DPDT)のスイッチが必要で,その配線が結構面倒でした。
 
でも,よく考えてみると,スピーカとヘッドホンの切り替えが必ずしも必要ではなく,あくまでもスピーカをOFFにできればよいのでは,と思いました。ヘッドホンがつなぎっぱなしで,ヘッドホンから音が出ている状態でも音量が小さければ問題ないし,普通はちゃんとヘッドホンを抜いておけばよいだけの話です。つまり,ヘッドホンを使っているときはスピーカをOFFにすればよいのです。
 
と言う次第で,今回はヘッドホンを使えるようにすると同時に,スピーカをOFFにする回路を追加することにします。
 
スピーカをOFFにする回路,というのはもちろん,ミューティング回路なんですが,もとからLepyのアンプにはミューティング回路がついていて,リレーでスピーカをON/OFFしています。
 
と言うことはこのリレーを別途,制御できればスピーカをOFFにすることができますね! 
 
これを使わない手はありません。 
 
ということから,改めてLP-2020の回路を検討します。LP-2020の回路については,以前も紹介したHamlinさんが発表しておられるので参考にさせていただきました。LP-2024A+も本体のTA2024周辺の回路をのぞけば,ほぼ同じと考えられます。
 
アンプの電源投入時にスピーカからボコッと言う不快な音がするので,その音をシャットダウンするため,アンプにはミューティング回路が入っています。真空管のアンプだともとからスロースタートなので問題になることはないのですが,半導体のアンプは立ち上がりが早いため,この問題が出ます。特にACアンプだと至る所にカップリングコンデンサやデカップリングコンデンサが入っているので過渡特性が悪く,ポップノイズが出ます。デジタル時代になってから,逆にアナログ部分はACアンプになっていることが多く,困ったものです。
 
特にデジタルアンプの時代になるとPWM信号プロセッサの立ち上がり時にノイズが出ることもあり,ミューティングが必要です。LP-2020も初期の頃,このノイズが問題となり,後期のものはかなり改善されています。LP-2024A+はLP-2020の後継機なので,改良点が継承されています。
 
アンプのミューティング回路は次のようなものです。
 
ミューティング回路1.jpg アンプのミューティング回路 
 
CとRの時定数回路が入っていて,この場合,コンデンサの端子電圧は最初は当然0Vですけど,徐々に充電されて電圧が立ち上がっていきます。よく言われるんですが,C×Rが物理的に時間(sec.)の次元となり,おおよそ t=C(F)×R(Ω) のとき,電源電圧の6割くらいの電圧になります。このC×Rの値を時定数と言います。
 
▲の回路ではコンデンサの端子電圧が大体,0.6VになるとTrがONし,リレーを動作させるようになっています。
 
Lepyのアンプのミューティング回路はこの通りとなっています。ついでに,ヘッドホン周辺の回路も一緒に示します。─ 部分が今回の追加部分です。 
 
LP-2024A+スピーカーoff&ミューティング回路.jpg 今回の回路
 
やはり,普通のミューティング回路同様,CとRの時定数でTrをONさせることによってリレーを動作させています。なお,リレーの駆動Tr Q4, Q5はダーリントン接続となっています。
 
ほかに,LepyのアンプはQ1とQ3が付加されています。
 
まず, Q1は過電圧保護で,入力のDC電圧が何Vかわかりませんが,限界を超えるとQ1がONしてアンプ全体をミューティングさせるようになっています。 

Tripathの規格表を見ると,TA2024の#12ピンはミューティングとなっていて,このピンが high の場合はアンプが動作せず,low になるとアンプがONするようになっています。 
 
また,リレーの後ろにQ3がついていますが,これのコレクタ電位は通常は high で,アンプの電源が入ると,ミューティング回路と同じ電圧でQ3がONし,#12ピンを low にするようになっています。
 
なんか,スピーカのミューティング回路と二重になっていてムダな気もするのですが,こうしないとポップ音がひどいのでしょう。初期のLP-2020アンプなんかはこの対策がしていないのではないかと思います。
 
さて,今回,ちょっとこのせいで困った問題が出てしまいます。
 
普通だったら▲の回路でC15をショートしておけば(=Q5のベースを接地する),ミューティング回路が動作せず,リレーが動かないのでスピーカはOFFにできます。
 
ところが,このやりかただと,スピーカはOFFにできるんですが,Q3もONしないのでいつまで経ってもアンプがミューティング状態となってしまい,ヘッドホンから音が出ません。
 
と言う次第で,この方法は使えません。
 
次の手で,Q4が動作してもリレーが動作しないようにします。Q4のコレクタとリレーのコイルの間にパターンを切ってスイッチを挿入します。場所は▼の写真の 部分です。
 
実は実装上はこの方法の方が簡単でした。それに安全です。うっかり,Q5のベースを接地するべく,スイッチを配線しようとしてはんだがブリッジしてしまってQ4やQ5を壊しちゃうこともあり得ますので。小さな表面実装のTrなので,配線をはんだづけするだけでも大変です。
 
SP OFFスイッチ挿入部.jpg ルーターでパターンを切ります。
 
一度,ルーターを持ち出してパターンを切らないといけませんし,切った端の部分の塗装をはがしておかないと配線をはんだづけできないんですが,こちらの方が楽だと思います。
 
また,スイッチは単極単投(SPST)のものがつかえるので配線も簡単です。
 
SP OFFスイッチテスト中.jpg ただいまテスト中。
 
使用したスイッチは6Pのどこ製だかわからないものですが,Lepyのアンプで使われているのとほぼ同じものだと思います。いつもお世話になっているサトー電気さんで見つけました。単極単投でよいので2Pのスイッチでいいのですけど,普通は3Pか6Pのものだと思います。
 
ただ,残念ながら,適当なキャップがありません。一般に売られているものはΦ8mmくらいのものです。LepyのアンプのはΦ7mmなので大きいのです。また,色もシルバーというのはありません。グレーでもいいかとは思ったのですが.....。
 
このスイッチを押すとリレーの接点が外れ,スピーカがOFFとなります。 
 
結局,Ali Expressで割に似たのを見つけたので注文しました。届くのに2週間くらいかかると思いますが届いたら取り付けてみます。
 
さて,実際の工事の様子です。
 
SP OFFスイッチ部.jpg パネルに穴を開けました。
 
ちなみに,ご覧の通り音量調節のボリウムの照明はオリジナルは品の悪そうな? 青色LEDを使っていますが,iruchanはいつも電球色LEDに換装しています。こっちの方がずっと品がいいと思います。 
 
Lepy LP-2024A+フロントパネル加工図.jpg パネル加工図です。
 
ヘッドホン端子はそれほどじゃないですけど,SP OFFスイッチは基板にはりつけるので,慎重に検討しないとうまく基板に載せてパネルから顔を出すようにできないので一度, "花子" で図面を描いて検討しました。が今回の穴開け位置です。 
 
 
ヘッドホン基板.jpg ヘッドホン基板
 
前回は万能基板を使いましたが,今回は基板はきちんとエッチングで作りました。ヘッドホンジャックはICピッチじゃないので万能基板を使っても結局,穴開けをやり直さないといけませんでしたので。
 
回路は▲の図の通りです。今回,ストッピングコンデンサはELNAのシルミック220μF 25Vを使いました。あまりに大きいのに驚き。同じ容量,耐圧のものの倍はあります。でも,音は非常にいい感じです。もう1枚作りました。こちらはニチコンMUSEにしました。
 
 
Lepyアンプヘッドホンジャック基板1.jpg プリント基板 
 
 
プリント基板用ヘッドホンジャックは配線が面倒なのでプリント基板図を示します。これを50mm×15.3mmで感光基板に焼き付けると基板を作ることができます。 
 
本当言うとiruchanはお気に入りのサンヨーのOSコンを使いたいのですが,OSコンは導電性高分子アルミ固体電解コンデンサで,内部に電解液が使われておらず,直接,電子で電荷をチャージする仕組みになっています。電荷を運ぶ素子が普通の電解コンデンサだとイオンですけど,OSコンは電子のため,非常に軽く,そのため高周波特性がよいので音もよいのですが,残念ながら普通の電解コンデンサと違って電解液を使わないので故障時にショートモードで故障するくせがあります。そのため,故障すると直流が漏れてヘッドホンが壊れる可能性があるため,使用は避けました。この故障モードはタンタルコンデンサも同じで,iruchanはタンタルは使わないことにしています。
 
ヘッドホン&スピーカOFF回路配線.jpg 
    
   ヘッドホン基板とスピーカOFFスイッチの取り付け 
 
ヘッドホンの配線はスピーカ端子に行います。前回はスピーカ端子を外さないと配線できませんでしたが,今回は基板の裏にはんだづけするだけなので楽です。
 
ヘッドホン配線はんだづけ1.jpg 2芯シールド線を使いました。
 
前回,ヘッドホンのGNDは電源のフィルタコンデンサを使いましたが,今回はSP端子近くのGNDプレーンに直接ハンダづけしました。ただ,このあたりにある,はんだ部分はとても小さいので,スピーカOFF回路同様,ルーターで塗装をはがしてそこにはんだづけしました。
 
これだと簡単です。
 
ようやくこれでヘッドホンが使えるようになりました。いい音で聴くことができますね。
 
では,今年も皆様,どうもご愛読ありがとうございました。また来年もどうぞよろしくお願いします。よいお年を。 
 
 
 
2017年1月15日追記
 
年末にAli Expressに注文していた,プッシュSWのキャップが届きました。どうしても日本で入手できるプッシュSWはキャップがなかったり,あっても色がシルバーなんてのはなくて,結局,中国から取り寄せました。このキャップは "つば" 部分がΦ9mmで,円筒形の部分がΦ5mmでした。もう少し円筒部分は太くて長い方がいいんですけどね。
 
push switch.jpg 20個で$8.16でした。
 
さっそく,使用しているプッシュSWに取り付けます。残念ながら,このキャップにセットになっているプッシュSWは入手できなかったので,今使っているやつにははまりません。
 
軸をルーターでΦ3mmに削って差し込みました。
 
push switch1.jpg 上面にプラ板を貼りました。
 
普通は端子部を下にしてはんだづけするんですけど,さすがに今のプリント基板に穴を開けて差し込もうとは思いません。危険ですよね~。
 
と言う次第で,普通はあり得ないんですけど,上面を下にして,プリント基板にエポキシ接着剤で貼りつけちゃいました。もちろんこの場合でも絶縁しておかないと危ないので,t1.0mmのプラ板を貼りつけてから接着しました。
 
LP-2024A+ head phone2.jpg こんな感じです。
 
出っ張った部分はΦ5mmなので,もとのフロントパネルに開けた穴が少し大きすぎますけど,まあ,違和感ないと思います。ついでに,インレタで表示を追加しました。
 
これで,無事に正面でスピーカのon/offができるようになりました。非常に便利です。これでLepyのデジタルアンプもヘッドホンで聴くことができるようになりました。
 

 
 

デジタルアンプLepy(旧Lepai) LP-2024A+の改造~ヘッドホン端子の取り付け~ [オーディオ]

2016年12月24日の日記

ヘッドホン端子.jpg ヘッドホンで聴けるようになりました。

どうも今年も押し詰まってきました。昨年の今日は北の果ての雪の遠軽駅で鉄をしておりました......(^^;)。

さて,今日はしばらくぶりで中国製のデジタルアンプLepy(旧Lepai)のLP-2024A+の改造です。前回からほぼ1年ぶりです。

実は,以前からヘッドホンをつなぎたいと思っておりまして,一度,検討したのですが最終的に重大なあることに気がついてあきらめていました。そのあることとはまた後ほど申し上げるとして,今回はいつもお世話になっている方からの依頼で,真剣に検討することにしました。

というのは,このアンプが音がよいと勧めたら,ぜひ,ほしいとのことでさっそくAmazonに注文されたのですが,ヘッドホンで聴くことが多いので改造してほしい,ということでした。確かに,今だとヘッドホンも音がいいのがたくさん出ていますし,スマホも普及したので音楽を聴くのにスピーカよりもヘッドホン,と言う人も多いと思います。 Lepyのデジタルアンプはとても音もよいので,これでヘッドホンで聴ければよい音で音楽が聴けるな,と思います。

ただ,これは非常に面倒な問題なのです。

デジタルアンプは多くの場合,出力upのため,出力段が通常のシングルエンドではなく,BTL接続になっているものが多いのです。

で,これがどういう問題なのか,と言うと,ヘッドホンを接続することができないのです。

理由はスピーカのコールド端子(黒)が普通はグランド(GND)なのですが,BTLのアンプの場合,GNDじゃないのです。そのため,普通のヘッドホンは端子が3つしかなく,GNDが左右共通になっているのですが,こういうヘッドホンをつなぐと▼の図のように,左右のアンプの出力のコールド側をショートしてしまうためなのです。普通のシングルエンドのアンプだとコールドはGNDなので,ショートしてもなんの問題もないのですけど。

       BTLアンプヘッドホン接続誤り.jpg  こんな配線はできません。 

ここで,BTL接続について説明しておきましょう。

BTLとはBridged Transformer Lessの略で,その名からもわかるとおり,アンプの出力段にはその昔,出力トランスが必要だったのですが,これを不要とするための回路の一種です。真空管アンプはもちろん,半導体のアンプでもゲルマニウム時代なんかは出力トランスが必要でした。

BTLアンプは初段に位相反転段が入っていて,入力と逆位相の信号を作り,それぞれ正相と逆相の2組のアンプを使って信号を増幅します。 これをそのまま,スピーカの端子につなぐと出力トランスが不要となり,また,普通のシングルエンドのアンプの4倍の出力が得られるというものです。

回路自身はそもそも出力トランスがあった頃に検討されたくらいですから,かなり古いものです。もちろん,デジタルアンプなんて影も形もない頃から使われていました。特に電源電圧が低い,ラジオやカーステレオの出力段によく利用されていました。

普通はアンプが2組も必要になるので,HiFiオーディオの世界で使われることはほとんどありません。コストも倍かかる,と言うわけですからね。

1980年代にラジオ技術誌に山梨大学? の先生がずっとBTLアンプの記事を連載しておられて,iruchanもいつかは作りたいと思っていましたけど,さすがにディスクリートでBTLアンプというとアンプを4台作ることになるので面倒であきらめました。 

ただ,回路がIC化されてしまうと部品点数が2倍になるわけじゃなし,コストもそれほど変わらないのでアナログ時代のパワーアンプICなどによく利用されていましたし,デジタルアンプもBTLのものが多いです。Lepyのアンプで使われている米Tripath社のTA2020TA2024も出力はBTLとなっています。

BTLアンプ.jpg BTLアンプ回路(片ch.のみ)

このため,もし,ヘッドホンをつなぐ場合は左右のコールドが別々になっている,4端子のものでないと使えません。でも,自分で改造でもしない限り,こんなヘッドホンはありませんから,BTLのアンプにはヘッドホンはつなげないのです。 

ただ,一応,方法としては2つあると思います。

1つはよくネットにも出ている方法で,トランスを使ってバランス→アンバランスの変換をするものです。▼のような接続をすると,BTLのアンプでもヘッドホンが使えます。

       ヘッドホン接続(トランス式)1.jpg トランス方式

しかし,この方法だとせっかく出力トランスがいらなくなったのに,またトランスがいるのか,と思っちゃいますね。

iruchanは真空管アンプマニアなのでよくわかりますが,出力トランスはそれなりにお金をかけていいものを使わないと音が悪いのです。

大きくて思いし,何よりアンプの音や性能が出力トランスで決まってしまうので,できれば出力トランスなんてない方がいい,といつもiruchanは思っています。だから,いつも半導体のアンプはうらやましく思っています。と言って,真空管のOTLアンプはまだ作ったことがないのですけれど.....。

それに,出力トランスを使うと言っても1次側インダクタンスが十分大きくないと低音がカットされてしまうのですが,そのインダクタンスを増やすには巻数を増やさないといけないので,いい出力トランス,というのはサイズが大きくなってしまうのです。かと思うと,今度は逆に高音域は巻線がキャパシタンス分を持つのでカットされてしまので,巻数の多いトランスは不利で,結局,HiFi用の広帯域な出力トランスというのは非常に設計が難しいのです。 

そんなわけで,Lepyのアンプに出力トランスを接続する,というのはなんとか避けたいと思いました。Lepyのアンプは非常にコンパクトにできているのに,いいトランスは大きくて,トランスを外付けにしなくちゃいけないので意味なくなっちゃいます。と言って,この小さなケースに収まるような出力トランスはありません。あっても上記の理由でロクなものじゃないでしょう。LP-2024A+の方は割にケース内にスペースがあるのでなんとかなりそうなんですけどね。LP-2020A+のほうはTA2020の放熱器が邪魔をして絶対に入らないと思います。

と言う次第で,別の方法を考えます。

要は,BTLアンプというのは▲のように正相と逆相のアンプがあるので,正相側だけ出力を利用すればよいのです。こうすればコールド側をGNDに落とせるので,GNDが左右共通となっているヘッドホンでも接続できます。

と言うことで回路は次の通りです。

       ヘッドホン接続(コンデンサ式).jpg 今回の回路

抵抗は普通のスピーカを鳴らすためのアンプにヘッドホンをつなぐための減衰抵抗で,ヘッドホンの保護抵抗です。昔,まだ専用のヘッドホンアンプなんてなかった頃,よくこういう方法が使われました。真空管アンプでも,この前,修理した,三栄無線の6BX7シングルのSA-523もこのようになっています。

また,コンデンサは直流分をカットするためのストッピングコンデンサです。アナログのHiFi用アンプなどだと正負両電源を使用していて,SP端子は直流電位は0Vなので不要なのですが,本機では出力に直流が出てヘッドホンを壊してしまうため,直流をカットしておくためのものです。

今回改造したLepyのアンプは出力端子に5~6Vの直流が出ていますので,必ずコンデンサを入れてください。 

これならヘッドホンが接続できます。 

ところが,ここで前回,重大なことに気がついて,あきらめちゃいました。

なんと,ヘッドホンを挿すと自動的にスピーカがoffにすることができないのです!! 当たり前なんですけどね......。

ラジオやTV,アンプなど,普通のセットではヘッドホンを挿すと自動的にスピーカがoffとなるようになっています。これは,▼のような回路となっています。

      シングルエンドアンプ+ヘッドホン2.jpg 普通のパワーアンプへのヘッドホン接続 

BTLのアンプはスピーカのコールドが左右別々なので,こういうことができないのです。

ヘッドホンで聴いてんのにスピーカも鳴っているんやったらあかんやんか.....ということで前回はヘッドホン取り付けはあきらめちゃいました。

今回もどうしようかと,悩んだのですが......。

いい解決法を思いつきました。

なんのことはない,スピーカとヘッドホンの切替SWをつければええだけやんか,と思いつきました。▲の回路についているスイッチがそれです。なんだ,こんな簡単にできちゃうんですね。 

さて,次に減衰抵抗をいくつにするか,というのはちょっと難しい問題で,真空管のアンプなどに取り付ける場合は数百Ωといったところで,最初,iruchanは100Ωを入れてみました。

ところが......。

ものすごいホワイトノイズで,とても音楽なんて聴けたものじゃありません。

オシロで見てみますと実効値で24mVもあります。普通,アンプの残留雑音は1mV以下にしないとノイズが気になりますから,これじゃダメです。

LP-2024A+ホワイトノイズ.jpg げっ~~!!

原因が最初,思い浮かびませんでした。ハムなら電源に起因するので,電源のリップルやアースラインの引き回し,2点接地なんかが原因ですが,ホワイトノイズというのは原因は半導体や抵抗など,電流が流れる素子が必ず持っている熱擾乱雑音が原因で,ボルツマン定数を使った式で表されます。広帯域のノイズで,フィルタで落とせるものじゃありませんし,対策は面倒です。

ちょっと困ったな~と思ったのですが,以前,AMステレオのラジオのヘッドホンアンプで同じ経験をしたことを思い出し,原因はヘッドホンのインピーダンスが低すぎて感度がよすぎるため,と気がつきました。

と言う次第で,インピーダンスを上げればよいので減衰抵抗を100Ωから1kΩに増量したらホワイトノイズが消え,とても静かになりました。やた~~!!!!!

ついでに,1kΩにしてしまうと低域のカットオフ周波数も低くなるので,好都合です。

低域のカットオフ周波数は1/2πCRで表されます。ちょっと計算が面倒なのでiruchanはいつも下式を使っています。

      カットオフ周波数.jpg

もし,本機に採用するのでしたら47μF~100μFくらいでOKです。iruchanは最初,100Ωで考えていたので,1,000μFを使っています。これじゃ,カットオフ1.59Hzなんでオーバースペックですが,面倒なのでそのままにしています。

ここまで来たらようやく基板を作って実装していきます。ヘッドホン端子はプリント基板用を使います。それにCとRをつなぎますが面倒なので万能基板で済ませました。

ヘッドホン基板.jpg ヘッドホン基板です。 

パネルにΦ6mmの穴を開けて固定します。場所は電源スイッチの横にしました。ボリウムの左側でもよいと思います。

スイッチは6Pのものが必要です。こちらも穴径はφ6mmですので,後ろのパネルに穴開けしました。普段使うスイッチじゃなし,フロントパネルにつけなくてもよいと思います。 

なお,中の配線は結構厄介で,一度,Lepyのスピーカ端子を外してはんだづけしました。L+とR+の端子を外してその間にスイッチの接点が入るようにします。外した端子の跡にφ1mmのスズメッキ銅線をはんだづけして配線をつなぎます。

sp端子.jpg SP端子の改造 

ヘッドホン配線.jpg ヘッドホン配線

スイッチは後面のパネルに取り付けるので,10cmほどコードは余長を持たせておかないと基板が外せなくなってしまいますので,ご注意ください。 

LP-2024A+ヘッドホン基板.jpg ヘッドホン基板の取付 

スペース的にはギリギリですが,何とかなりました。コンデンサは100μFくらいでも十分です。また,もとから直流がかかっているところなので,無極性(バイポーラ)のものでなく,普通の有極性のものでOKです。もちろん,アンプ側が+です。また,基板上には進工業の75Ωが載っていますが,これは実験中のものです。本番? は1kΩにしました。 

この基板から出ている黒い電線がGNDで,基板の裏にある,→ のところにはんだづけしました。 ▲の写真に写っている金色のニチコンの電解コンデンサのマイナス端子です。

GND位置.jpg GND位置

rear panel.jpg パネルにはインレタで表示を追加しました。 

AUDIO INPUTの囲みの中にあるなんて変ですけどね........(^^;)。 

Lepy LP-2024A+.jpg 正面。ヘッドホン端子つき。

照明のLEDは本来は青色ですが,まぶしすぎるし,色もちょっとあまりにも品がない感じなので,いつもの通り,電球色LEDに交換してあります。 

Lepy LP-2024A+1.jpg 背面。スイッチがついてます。

あとはいつもどおりの改造です。

何より最初にやらないといけないのは入力のカップリングコンデンサ。これの容量が小さすぎ,低域が200Hzくらいから下がり始めます。

今回,無極性電解の3.3μFが使われていました。ここはいつもお気に入りのサンヨーのOSコンをつけました。39μF16Vのものをつけました。これ以上の大容量のものはサイズが大きく,基板に取り付けられませんので,これが限界だと思います。

コンデンサ.jpg 交換したコンデンサ 

あと,TA2024の入力にも同じ電解が使われていましたので,ここにはニッセイの積層フィルム3.3μFをつけました。ここはそんな大容量のものは不要ですし,いくらOSコンが音がよいと言っても電解コンデンサの仲間ですから,小さな容量でよいならやはりフィルムコンにした方がよいと思います。

内部基板(コンデンサ取替後).jpg コンデンサの交換

電源のフィルタコンデンサもニチコンのFGに交換しました。ここは一番重要なところですからね。

電源フィルタコンデンサ跡.jpg おや?

ところでもとのコンデンサを取り外してびっくり。端子用の穴が3つも開いています。私のはこんなことありませんでした。

おそらく,前も書きましたけど,Lepai社は部品メーカと直接取引して購入しているわけじゃなくて,スポット市場に大量に安い部品が出たらそれを買い付けているんでしょう。OPアンプが機種によって違うとか,コンデンサも微妙に違っているのもそのためだと思います。ただ,これが悪いかというと,むしろ中国製の質の低い部品を使うよりもスポット市場だと日米欧の高級部品が流れてきたりすることも多いので,そういう部品を買い付けて使ってくれた方がよいと思います。

ここも,2,000μFくらいの大容量電解コンデンサはピン間隔が10mmのものと12.5mmのものがあるので,どちらか合う方にとりつける,なんてことやっているんだろうと思いました。  

お次はこれ。

OPアンプはiruchanのはテキサスのNE5532が使われていましたが,今回のはロームのBA4560が使われていました。 ロームのDIPのICは脚が少し変わったデザインになっているので,これは間違いなくローム製でしょう。ただ,BA4560なんて知らないOPアンプだったので規格表を見てみますと,一応,ローノイズ各種オーディオ用と書いてありましたが,確かにノイズこそ8nV/√Hzと低いのですが,GB積が10MHz,スルーレートが4V/μsと,あまりパッとしない数字が並んでいます。これならNE5532の方がよい感じです。NE5532は音がよいOPアンプとして有名ですよね。

BA4560.jpg ROHMのBA4560

それに,規格表にある内部の等価回路を見てがっかり。初期のOPアンプでも米国製のものはこういう単純な回路構成は少なく,むしろ今も使われているμPC812など日本独自のOPアンプに多い回路です。

アナデバが出しているOPアンプの歴史の本がありますが,OPアンプの設計ができるのは世界でも数えるほどなんて書いてあってホンマか? と思いましたけど,確かに米国製のOPアンプの内部の等価回路はきわめて複雑でびっくりするんですが,案外,本当なのかもしれません。純国産のOPアンプの内部等価回路はシンプルと言えば聞こえはいいですけど,なんかとても貧弱な印象を受けます。iruchanはもちろん,戦後の生まれなんですけど,電子部品,特に半導体に対しては米国製を絶対的に信奉してしまいます。やはり半導体は米国製が一番だと思います。GIたちに "Give me operational amplifier!" なんてねだっていた世代じゃないですけど.....。

BA4560はOPアンプなので,初段は差動アンプなのは当然ですけど,2段目はレベルシフトを兼ねたエミッタフォロア,3段目が実質的な2段目増幅段ですが,定電流負荷のエミッタ接地シングルアンプとなっています。そのあと,SEPPのバッファアンプがつながっています。

シングルアンプはやはり多量の偶数次のひずみを発生するし,OPアンプは2段目がゲインの大半を稼ぎますから,ここは低ノイズの差動アンプにしておかないとアンプのひずみが増えてしまいます。差動アンプは左右ペアになったTrがプッシュプル動作をするので,偶数時のひずみは打ち消してくれるので低ひずみです。実際,LME49720などの規格表に載っているひずみ率のグラフと比較してもBA4560はかなり悪いです。

アンプがACアンプの頃は初段差動,2段目シングルという回路構成が多くて, DCアンプになってから2段目も差動アンプとなりますが,やはり低ひずみのアンプというのは2段差動アンプだと思います。

米国製のOPアンプは最初期のLH0032などから2段差動アンプというのが定石で,3段差動アンプというのもの多いのです。

と言う次第で,依頼者の方の承諾を得て, BA4650は即撤去と決まりました。後継はナショセミのLME49720HAですね。数少ない現行のメタルキャンOPアンプです。音のよいOPアンプというのはたくさんあるのですが,メタルキャンはなかなかありませんので貴重だと思います。メタルキャンの半導体はやはり高音が美しく,澄んだ音が魅力でとてもいい音がします。

改造に当たってはまず,もとのBA4560を撤去しないといけませんが,残念ながらはんだごてで裏から熱して外す,というのは無理で,ニッパーで脚を切って撤去した方が早いです。その後,残った脚をピンセットとはんだごてで外します。

そのあと,うまく穴が開いてくれればいいのですがたいていは穴がふさがったままなので,ドリルで穴を開け直します。このとき,間違ってもΦ0.8mmより大きいドリルは使わないでください。両面スルーホール基板のため,上下面をつなぐように金属製のスリーブが入っています。Φ1mmなどのドリルだとこのスリーブまで削ってしまうのでご注意ください。

DIP穴開け.jpg はんだだけ除去します。

  必ずΦ0.8mmのドリルを使ってください。 

その後,DIP8ピンのソケットを挿して,LME49720HAを挿したらOKです。

LME49720HA.jpg LME49720HAを挿しました(^^)。 

さて,いよいよ音を聴いてみます。

まずはスピーカから。いつものLP-2024A+の音がします。高音まで澄み切った,分離度が高く,ノイズが全くしない,よい音に感心します。

次は背面のスイッチを切り替えてPhonesにします。スピーカから音が切れてヘッドホンに切り替わります。

Lepy LP-2024A+ Sennheiser MX80.jpg SennheiserのMX80と。

ノイズもなく,とてもよい音で聴くことができました。下にあるのはトロイダルトランスを使った自作の専用電源です。

使っているヘッドホンはSennheiserです。最近,MX80を買いました。驚くほど音がよいのにびっくり。結構,ヘッドホンってものによって音が変わりますよね。最近,娘に国産某社のを買ってあげたのですが,本人は満足しているものの,オヤジはとても満足できない音質。 全然,低音が出ないし,音もひずみっぽい。

その点,やはりSennheiserはいいです。こんなコンパクトなボディなのに重低音が出ます。

とはいえ,一方,世間のおばはんたち同様,今,うちの嫁はんが熱を上げている某スケート選手が使っているヘッドホンは30万円もするそうです(驚)。

オヤジなんてたった3,000円のヘッドホンですけど.......。2桁も値段が違うやないか!!!! 

 

2016年12月31日追記 

スピーカの切替SWをフロントパネルに移行させました。こちらをご参考にしてください。 


LUXKIT A3600復活への道~その3・アンプ編~ [オーディオ]

2016年11月23日の日記

今日は勤労感謝の日でお休みです。戦前なら新嘗(にいなめ)祭ですね~~。われわれ下々の者はこの日まで新米を食べちゃいけない,という決まりになっていました。

本当に最近は3連休ばかりで嫌になっていますが,このように週の真ん中にポコンと休みがある方がよっぽど身体が休まっていい,とiruchanは思います。そういえば,3連休にならないのは11月3日の文化の日もそうですけど,この日は戦前は明治節(明治天皇の誕生日)で,戦前の皇室の祭日に関連するものばかり,と気がついたのはiruchanだけでしょうか。 10月10日なんて,東京オリンピックの開催日だから祝日になったのに,と思います。また,晴れの特異日とされ,気象学的にも意味のあるだったんですけどね。だから,最近は体育の日ったって雨の日ばかり,という気がしますけどね。昔は体育の日はほとんど晴れでした。

と言う次第で,ハッピーマンデー法なんて早く廃止して,昔の祝日に戻してほしいと思っています。やはり祝日というのは伝統や歴史があるわけですからね。 

さて,前回に引き続いて,今日はアンプ部の設計変更を試みたいと思います。

ラックスキットのA3600というアンプは大出力の8045Gをプッシュプルで用い,最大出力50W×2と言うアンプです。3極管のアンプでこのような大出力,というのはあり得ないくらいで,845か,英国のDA60くらいしか思い浮かびません。

しかも,前回も書きましたが,MJ'83.2号に森川忠勇氏の記事があり,最大出力は公称50W×2ですが,実測66Wも出るようです。実際はもっと大出力なんですね。

それで,ちょっと調べてみたいと思います。

まず,ラックスが発表した8045Gの規格表にはEbb=500V,RL=3.6kΩで出力60Wと書かれています。ロードラインを引いて調べてみます。と,思ったのですが,見事にロードラインは特性図をはみ出しちゃいました.....。グリッド電圧Ec=0Vの線も延長しています。某美人の科学者? じゃないけど,今は簡単に画像が編集できちゃいますので,データをねつ造正規に利用するのは簡単ですね......(^^;)。

8045G-1.jpg8045Gの500V動作

負荷抵抗は3.6kΩとなっていますが,どういうわけか,プッシュプルのアンプの場合,負荷抵抗は2つの出力管のプレート~プレート(P-P)間の巻線インピーダンスで表すのが長年の習慣? で,出力管1本あたりだとプレート~B電源(P-B)間で,巻線が半分ですから,インピーダンスは巻線の2乗に比例するので,3.6kΩの1/4で900Ωとなります。なんで,こんな習慣なのか,ちょっと昔から疑問に思うのですが,長年の習慣なので仕方ありませんね。

横軸はEbb=500Vのところに起点があり,縦軸の終点は500(V)÷900(Ω)で,555mAのところに来ます。これを合成ロードラインと言います。本当はシングルアンプ同様,真空管1本ずつで考えないといけないのですが,プッシュプルのアンプの場合は2本の出力管の動作を合成した合成ロードラインで考えます。半導体のアンプの場合も同じです。

出力管1本ずつのロードラインは▼の図の  線のように湾曲していて,EC=0Vのところから, 印のある動作原点を通ってすっと右の方へ伸びていきますが,どこかでIP=0となってカットオフするのがAB1級やB級です。A級だと最後までカットオフしません。ちなみに,AB級は真空管の場合,グリッドをマイナスの領域のみで動作させるのがAB1級で,プラスの領域まで動作させるのがAB2級です。半導体はV-FET以外はエンハンスメントモードのものばかりなので,AB級と言います。また,真空管の場合は普通はグリッドをプラス領域まで使うことはないので,ほとんどAB1級です。

一方,反対側の出力管が上下対称の動作をするのでプッシュプル出力段の動作はのように直線となります。AB1級やB級は1本ずつの動作はたくさんのひずみを含んでいますが,合成するとこのようにきれいな直線となり,ひずみが打ち消されます。2本のロードラインを合成した,と言う意味で合成ロードラインと言います。まあ,いちいち,合成ロードラインというのも面倒なので,単にロードラインと言えばプッシュプルのアンプでは合成ロードラインのことを指します。それに,出力を求めるのには合成ロードラインで考えればよいので十分です。 

半導体のアンプの場合は負荷はスピーカですので,一応,純抵抗と考えて1本あたりのロードラインは直線となりますが,真空管は負荷はトランスですからAB1級やB級の場合,このようにゆったりと湾曲します。

時折,縦軸の555mAのところから動作原点を通る, のような直線でロードラインを引いている人を見かけますが,これは誤りです。MJのレギュラー執筆者の方でもこんな描き方をする人がいるので困りますね。昔,iruchanも真空管アンプを勉強し始めた頃,結構,悩んじゃいました。おそらく,このようなロードラインを描く人は出力管1本あたりのロードラインと,合成ロードラインをごっちゃにしてしまっているのでしょう。もちろん,森川氏は技術的にきわめて正確な先生なので,こんなことはありません。 

正しい合成ロードライン.jpg 間違ったロードライン

さて,8045Gに戻ると,実際に真空管が出力するのはEC=0Vまでの領域ですから,▲の図の通り,EP=120V, IP=430mAまでです。半導体だとほぼ,VCE=0Vまで使えますから,やはり真空管は出力が小さくなってしまいます。

さて,このときが最大出力ですが,そのとき,AB1級やB級などのプッシュプル回路では正弦波の半波とみてよいので,これらはピーク値です。実効値にするにはそれぞれ1/√2にしないといけないので,出力は下記となります。さすがに最大出力の時は波形がひずんでくるので正確に1/√2じゃないですけど,誤差は無視できる範囲です。

        出力計算式1.jpg  

結局,よく教科書に書いてあるとおり,Ec=0Vの線と合成ロードラインの交点から垂線を下ろしてできる三角形の面積と同じ,ということになりますね。 

それで,8045Gなんですけど,なんと,81.7Wもの出力が得られることになります。

えぇ~~って感じでびっくりしちゃいました。iruchanは何か間違ったか? と思っちゃったくらいです。

それならなんでラックスの規格表に60Wと書いてあるの? という気がしますが,おそらく,ラックスは真空管メーカじゃなく,セットを作る会社なので,あくまでもスピーカに加えられる正味の出力,ということで60Wと書いているのじゃないかと思います。

真空管の規格表に記されている動作例はあくまでも真空管のプレートに現れた信号電圧をダイレクトに出力に換算したもので,実際には出力トランスの損失だけ出力が減りますし,メーカのテスト時には定電圧電源を使ったりして,500Vなら正確に500Vの電圧がプレートにかけられていますが,実際のアンプではトランスのレギュレーションで電圧が下がってしまいますので,ラックス発表の数値はそういうことも考慮に入れた数値だと思います。 ただ,それにしても80Wと60Wじゃ,OPTの損失がそんなには大きくないので,やはりかなり控えめな数値,という気がします。

A3600の場合は,Ebb=490Vですから,下記のようになります。  の線がA3600のオリジナルの状態です。

出力はやはり,77.3Wにもなります。動作原点● はEC=-100V,I0=75mAです。森川氏も同様にロードラインを引いて,最大出力75Wという計算結果を示しておられます。

8045G-3.jpg 

   森川氏の検証結果と今回のiruchan改造の場合

出力トランスのOY-15-3.6KHPは損失が-0.4dBですので,91.2%です。とすると,出力は70.5Wとなります。実際には真空管のアンプの場合,クリップ点は半導体のアンプのように明確じゃないし,トランスのレギュレーションのこともあるので,もう少し小さく,やはり森川氏の実測結果どおり,66Wくらいが妥当なところでしょう。

それにしてもやはり出力が大きすぎますね。

と言う次第で,前回,8045Gの寿命も考えてB電圧を60Vほど下げることにしましたので,この場合の動作は  線の通りです。出力は58.7W,OPTの損失を考えれば,53Wといったところで,ラックス発表の数値くらいになります。これでよいのではないでしょうか。

なお,動作原点 ● はB電圧が下がった分,若干,左の方へずれますから,EC=-85Vくらいでしょうか。この電圧は重要ですから,覚えておきましょう。これが8045Gの入力電圧,すなわちドライバ段の出力電圧(のピーク値)となります。

オリジナルの状態でドライブ電圧が100VP,今回のiruchanの改造でも85VPもの電圧が必要なのに驚きます。多極管ならせいぜい10~20Vくらいと言ったところですから.....。

これほどの高電圧が必要というのは驚いちゃいますが,このため,ラックスは専用のドライブ管として6240Gを開発しています。実際,ピークで100Vもの電圧を出力させるにはプレートに400Vくらいの電圧をかけないといけないので,高耐圧の真空管が必要となります。

ただ,6240Gはいまじゃ,8045Gより希少なくらいで,Yahoo!などでも1本,7,000円以上するようです。実はiruchanも6240Gは1本しか持っていません。

6240G, NEC 6FQ7.jpg NECの6FQ7 (左)と6240G (右)

ついでに,6240Gを買ったとき,箱の中に入っていた規格表をupしておきます。

6240G規格表.jpg 6240G.pdf

と言う次第で,昔からこの球は代用球として6FQ7が使われています。実は▲の写真をご覧いただいてもおわかりになるとおり,外観もそっくりでした。おそらく,6240Gは電極も6FQ7と同じだと思います。NECの一木吉典氏も電波科学で書いておられましたが,真空管の最後の頃はコストダウンのため,もとからある管種の電極や製造用の金型などを流用することが多かったようです。東芝の6G-A46BX7の電極を流用していますし,6240G6FQ7の電極や金型を流用していたとしてもおかしくありません。

6FQ7は古くはGT管の6SN7と同特性で,昔から6SN7はタフなことで知られ,ドライバ管はもちろん,出力管としても使われました。ただ,A3600で6SN7を代用に使おう,なんて思いもしませんけどね。シャシーが鉄なんでGT管用の穴を開けるのは非常に大変です。

ちなみに特性を比較すると次のような感じです。

EP(V)  PP(W) μ gm(μS)  rp(kΩ)

6240G 800 3 35 3500 10

6FQ7  330 4 20 2600 7.7

6SN7  300 2.5 20 2600 7.7

やはり,耐圧が800Vもあるのに驚かされます。 改めて調べてみると,6SN7より6FQ7の方が耐圧が高いんですね。特性はやはり同じですけど。

特性を比較しておきます。NECやSYLVANIAなどの規格表から手読みしてExcelでプロットしてみました。

6240G特性曲線.jpg 6240G 

6FQ7特性曲線.jpg 6FQ7

う~ん,確かによく似ているような気もするんですけどね......。

6240G, 6FQ7特性曲線.jpg6240G6FQ7

重ねて描いてみるとこんな感じです。何だ,やっぱりよく似ているじゃん,と思ってしまうのですが,よく見ると6FQ7の方が同じバイアスだと倍くらいの電流が流れます。 重なっている曲線の各バイアス電圧は6FQ76240Gの倍くらいの電圧です。

これはとりもなおさず,6240Gの方がgmが3割以上大きいためで,gm=IPECですから,バイアス電圧の変化に対してプレート電流の変化が大きいということで,6240Gの方がゲインが取れることがわかりますが,NFBをかけて使うので,それほど問題ではありません。やはり問題は耐圧と出力電圧です。

まず,真っ先にチェックしないといけないのがプレート損失。A3600は2段目のドライバはEP(プレート~カソード間)=265Vで,損失2.85Wですので問題ありません。

と言うことで次はいくら出力が取れるか,と言うことです。本来なら出力管同様,ここで特性曲線にロードラインを引いて,と言うところだと思います。

でも,iruchanはSpiceで真空管を使う方法を採りました。こちらはひずみ率まで計算してくれるのでとても助かります。昔はロードラインからひずみを読み取ったりしていましたけど......。先日の記事に書いたように,Spiceだとボタン1発でひずみ率が出てきますから,やはりSpiceは楽です。

おまけに,前回ご紹介した,Ayumiさんが6240GのSpiceモデルもご用意してくださっているので簡単です。

A3600 original driver.jpgオリジナル回路

先のMJ '83.2号で,森川氏は6FQ7を代用として使う場合として,共通カソード抵抗を10kΩにするよう,推奨されています。

A3600 driver(森川氏).jpg森川忠勇氏の改良

以上の回路でシミュレーションしてみます。いまはこんなことができちゃうんですね~~(^^;)。

オリジナルの回路と森川氏のモディフィケーションをシミュレーションしてみました。

A3600 original driver THD.jpgオリジナル回路 6240G

A3600 森川氏 driver THD.jpg 森川忠勇氏 6FQ7

6FQ7を使ってもオリジナルと遜色ないどころか,むしろひずみが少ないことがわかります。さすがは森川さん,ですね!! 

さて,オリジナルの状態で6FQ7を代用として使用する場合,森川氏の設計で共通カソード抵抗を10kΩとすればよいことがわかりました。もし,A3600をお持ちの場合,6240Gがない場合はこのように抵抗を1本(ステレオだと2本)交換するだけでOKです。

今回,iruchanはドライバは同じ6FQ7を使うつもりですが,B電圧が60Vほど下がっています。これで問題ないか,確認しておきます。 

A3600 driver(iruchan)1.jpg iruchan改造

実は,少し問題があることがわかりました。

やはりB電圧が下がったことにより,最大出力電圧が80VPくらいになってしまいました。これじゃ,8045Gがクリップする前にドライバがクリップしてしまっている,と言うことになります。まあ,クリップとは言っても,先ほども言いましたように,真空管じゃ本当に頭が平らになってクリップしちゃうわけじゃなく,ひずみが数%になって急上昇してくる,と言う程度なんですけど。

原因はドライバの6FQ7のプレート電圧不足か,と思い,6FQ7のプレート電源の電圧を上げてシミュレーションをしてみたら,全然出力電圧が変わりません。なんと,初段の6AQ8がクリップしていました。何のことはない,初段のプレート電圧が足りないんです。これなら簡単です。

と言う次第で,初段の電圧を少しupしてやりました。 クリップ時のドライバ出力電圧74.1Vrmsでした。ピーク電圧だと104.9VPなので,先ほど,8045Gの新しい動作点はEC=-85Vと決めましたから十分な値です。

A3600 iruchan driver THD.jpgiruchan mod 6FQ7

さて,以上でアンプのすべての回路の設計変更が済みましたので,実際に配線していきます。次回は調整編です。なんとか12月だし,完成したA3600でフルトヴェングラーの第九を聴きたいと思います。


LUXKIT A3600復活への道~その2・電源編~ [オーディオ]

2016年11月19日の日記

前回から1年も経ってしまいました。せっかく,貴重なアンプをいただいたのに申し訳ないことです。

実は少し悩んでおりました。

というのは,電源をどうしようか,と言うことなんです。 

LUXKITのA3600は出力管が8045Gで,最大出力50W×2という強力なアンプです。

ただ,そのためプレートには490Vもかけてあります。8045Gの最大定格は550Vなので,まあ,ぎりぎりというわけではないんですが,この球は寿命が短いことで知られていて,少し電圧を下げてやりたいと思っています。

ラックスの真空管アンプはどれも,設計上の問題としてB電圧が高すぎる,と思っています。少しでも出力を大きくしよう,と考えられたのでしょう。当時は真空管は消耗品で,寿命が来たら取り替えればいい,という時代でしたし,世の中何でも大きいことはいいことだ,と言うことからアンプも大出力のものが人気がありましたからしかたないですが,今だともっと寿命を考えた設計にしたいところです。実際,前回,修理した50C-A10PPのKMQ60は最大定格いっぱいの450Vをプレートにかけています。 これはギリギリ。NECの規格表を見てもEp=450Vの動作例は載っていないくらいです。iruchanも完成して電源を入れたとたん,内部で火花が飛んであわててスイッチを切った記憶があります。その50C-A10は新品でしたけど,新品でもこうなるんじゃ危ないと考え,結局,B電圧を50Vほど下げて使っています。詳しくはKMQ60の記事をご覧ください。

今回のA3600も電圧が高すぎ,次回ご報告しますが,"無線と実験" '83.2号に森川忠勇氏の記事があり,最大出力は公称50W×2ですが,実測66Wも出るようです。両ch.動作時でも62W×2のようです。こんなに大出力はいらない,と言う気もしますので,B電圧は50V程度,下げたいと思います。 

方法としてはいくつか考えられます。

① チョークインプット整流にする

② 抵抗またはコンデンサで電圧を下げる

③ トランスのタップ(1次 or 2次)を切り替える

④ Trによるリップルフィルタを使う 

⑤ 自己バイアスにする 

もちろん,もし,2次側のB巻線に低い電圧のタップが出ていればそれに切り替えればOKです。前回,修理したLUXKITの50C-A10PPのKMQ60はトランスの1次側に117Vの端子があったので,それを使ってB電圧を50Vほど下げています。

ところが,メーカ製真空管パワーアンプはこのようなタップがないことが多いのです。市販もされているトランスを使っているものはいいのですが,メーカ製のアンプの場合は最初から特注のトランスになっているので,あまりタップがありません。実際,KMQ60は後期型は1次側の117V端子がなくなっていて,この方法が使えません。A3600もタップは1次側も2次側も別のタップはなく,この方法が使えません。

②は普通にオームの法則で抵抗で電圧を下げればよいのですが,単純に抵抗でやるとかなりワット数の大きな抵抗となります。実際,A3600だとB電流は320mAなので,抵抗は160Ωほどですが,50V下げるとなると16Wもの熱を発生します。

これを避けるにはコンデンサを使う方法が有効で,下記のように使用するとコンデンサを抵抗の代用に使えます。ご存じの通り,コンデンサだと電流と電圧の位相が90゜ずれますので,理論上,発熱は0です。  

ACコンデンサ挿入1.jpg コンデンサによる電圧降下

もっとも,コンデンサも実際にはESRと呼ばれるわずかな抵抗分があり,電流を流して使用すると発熱するので,実際に電流を流して使用する場合には,最初から電流を流すことを想定して製造されている,AC用コンデンサを使用する必要があります。誘導電動機などの始動用に使われているものです。そのため,スターター用なんて書いてあることが多いです。また, 一般に,電子部品のお店で売られているコンデンサはDC用なので使えません。ご注意ください。

コンデンサによる電圧降下はi/2πfCで表されますが,残念ながら交流に対するもので,直流出力に対しては90゜位相がずれていますので,たとえば,50V低下させるからと言って,この式で50Vになればよいわけではありません。

なお,最近,これらのAC用のコンデンサを真空管アンプのフィルタ用として販売している店があるようです。フィルムコンなので,電解コンデンサより音がよい,と思われるからでしょう。

残念ながら,これらのAC用コンデンサを直流回路で使うことはできません。そもそも,AC用は交流回路専用で,直流に対しての耐圧が規定されていないためです。実際,AC用コンデンサには "AC 450V" とは書いてあっても, "DC ***V" という具合にDC電圧に対する耐圧は記載されていません。だから,そもそも直流回路での耐圧がわかりませんし,また,仮に直流回路で使用しても,メーカは責任を負いません,ということですので,実際にDC回路で使用する場合は自己責任,と言うことになります。もっとも,”AC***V DC○○○V" と言う具合に両論併記で書いてあればもちろんOKです。

なお,コンデンサの電圧の位相が-90゜であることを考慮して計算すれば必要な容量がわかりますが,実際にはSpiceでシミュレーションして決めました。シミュレーション上は15~25μFくらいであればよいとわかります。

ただ,AC用コンデンサは一般に経年変化と容量誤差を考慮してフィルムコンが使われるのですが,AC400V耐圧くらいで25μFものフィルムコンデンサは大きくなります。 前々回,KMQ60を修理したとき,15μFのコンデンサを使うと50V下げられるとわかったのですが,KMQ60はシャシー内のスペースが小さく,これですら収まらない状況でした。幸い,A3600は割にシャシー内にスペースがあるので何とかなりそうです。

⑤の自己バイアスはg1をグリッド抵抗を介して接地し,8045Gのカソード~GND間に620Ωの抵抗を挿入します。ただ,これも損失が15Wにもなります。余裕を見て20Wくらいの抵抗が必要で,やはり大きくなりますし,放熱のことも考えると結構面倒です。やはり,8045Gは固定バイアスで使うことが前提で設計されているようです。

①のチョークインプット整流は一番簡単で,発熱もないし,いい方法です。

チョークインプットはレギュレーションがいいことでも知られていますので,最大出力時の電圧降下を小さくできるのがメリットです。 

しかし,A3600をチョークインプット整流にするとハムが出る,と言う話を聞きました。実際,Spiceでシミュレーションしてみますと,ドライバ段のリップル電圧が300mVP-Pを超えます。B電圧も390Vと,少し下がりすぎ,という気がします。改造が少しで済むのでいい方法だと思うのですけどね.....。もっとも,球の寿命という観点からはこれくらい電圧を下げた方がよいと思いますけど。

ただ,チョークインプットはいい方法なんですが電圧が自由に決められないのがネックです。また,A3600は0.35Hという小さなインダクタンスのチョークコイルが使われていて,B電圧の降下は100Vほどで済むので電圧調整にはいいくらいですが,普通のアンプのように5Hくらいのインダクタンスを持っているものだと電圧降下が大きすぎ,B電圧は250Vくらいになってしまいます。

A3600はプッシュプルのアンプで,出力部に行くB電流はリップルがあっても出力トランスで打ち消されるので問題ありませんが,ドライバ段以前は抵抗結合のアンプなのでリップルの影響を受けますから,この電圧だとハムが出ると思います。

と言う次第で,もし,A3600でチョークインプット整流にする場合はドライバ部の電源フィルタを増強しないといけません。 ついでに,Spiceでシミュレーションしましたが,150μFくらいにするとオリジナルと同じリップル電圧となりました。

最後に,今回は使用しませんでしたが,6G-A4シングルアンプなどで使ったTrを使った④のリップルフィルタはベースに接続した抵抗の値による自由にB電圧を変化させることができますのでよい方法です。ただ,大出力パワーアンプだと制御Trの損失が大きくなりますので,やはり放熱には気をつかう必要があります。実際,今回は16Wもの熱を放熱する必要があるので見送りました。レギュレーションという観点では抵抗と違って非常に優れているのですが,熱については同じです。

以上を勘案し,結局,iruchanはコンデンサを使って電圧を下げる方法を採ることにしました。これならコンデンサの容量で自由にB電圧を設定できますし,リップルの点からも有利です。

さっそく,Spiceでシミュレーションしてみます。まずはオリジナルの状態から。

A3600 original電源回路.jpgオリジナルの電源部

A3600 original.jpg Spiceシミュレーション結果

回路図どおりの電圧となることがわかります。B電源のリップルは4VP-Pくらいで,ドライバ段は119mVP-Pでした。これを目標にします。なお,出力段はプッシュプルなので,シングルアンプならアウトですけど,これくらいのリップルは平気です。ちなみに米国製のアンプなんか,電源部のフィルタにチョークコイルを使っていないものがありますけど,それは出力段がプッシュプルだからです。

挿入するコンデンサは20μFとします。この場合,電圧は431Vで,ドライバ段のリップル電圧は111mVP-Pとなりました。B電圧を60Vほど下げられます。

A3600 20μF.jpg 挿入コンデンサ20μFのとき

ついでに,15μFとすると,もう少し電圧を下げられます。コンデンサのサイズも小さくて済みますので,15μFでもよいと思います。

A3600 15μF.jpg 15μFのとき

ついでにチョークインプットの場合も一応,検討してみます。

A3600 original電源回路(L input改造)1.jpg チョークインプット改造

B電圧は100V程度下げられますが,少し下げすぎ,という感じがします。出力は50W以下に低下するはずです。また,ドライバ段の出力電圧も小さくなっちゃいますので,アンプ部の変更も必要になります。

なお,ドライバ段のフィルタコンデンサを▲のように150μF以上にしないと,オリジナルのリップル電圧と同じになりません。フィルタコンデンサはオリジナルは47μFでしたから,チューブラの電解コンデンサを100~200μFくらい追加してください。

一応,iruchanはAC用コンデンサを挿入する方法としました。 これだと自由に電圧を決められますし,リップル電圧も問題ないようです。

さて,お次はこのコンデンサをどうやって入手するかなんですが.....。

普通に秋葉原を探してもAC用のコンデンサは入手しにくいと思います。また,RSコンポーネンツを探してみたのですが,どれも高いです。

結局,Amazonで買いました。なんでAmazonがこんなの売っとるんや~~!?

UXCELという会社が販売している,AC450V,20μFのポリプロピレンフィルムコンデンサにしました。値段は800円ほどでした。サイズは50×31×44mmです。A3600のシャシー高さは35mmでしたから,中に入ることがわかります。

20μFAC用フィルムコン.jpg SENJUって!?

どうにも日本製みたいなブランド名をつけた,あやしげなブランドの中国製コンデンサですが,作りはとてもしっかりしていて,エポキシ樹脂で固められていて信頼性は高そうです。 

ちなみにフィルムコンデンサは何種類もありますが,普通に入手できるものは大体2種類です。ポリプロピレンフィルムを使ったもの高級品です。そのほか,よくマイラーコンデンサと言われるのはPET樹脂を使っていて,安価なコンデンサです。高信頼のフィルムコンはポリプロピレンを使っています。 

本来は進相コンデンサと呼ばれるもので,誘導モータの始動用です。誘導モータは3相交流のものは自動的に回転磁界ができるので不要ですが,単相の誘導モータの場合はこのコンデンサを使って90゜位相の進んだ電流を作って別の巻線で磁界を生じさせて回転磁界を作ります。起動時のみ必要なので,始動用コンデンサとも言いますが,一般的に始動後も切り離さず,つけっぱなしにしています。数年前,古い扇風機が発火する事故が相次ぎましたが,このコンデンサの劣化が原因です。長年の使用で液漏れしてESRが増大し,発熱したんです。もし,ご使用の扇風機が回らないとか,回転数が低くなった,と言う場合は使用を中止してください。

もともとモータの始動用なので電流を流して使用するのが前提のコンデンサなので,問題ないと思います。Amazonのは洗濯機用と書いてありました。もう,国産の洗濯機はインバータ式なので進相コンデンサは使用してないと思いますけどね。

さて,以上で電源部の設計ができましたので,実際に配線していきます。まずは古い部品の交換から。

電源部 前.jpg B電源の整流Di。オリジン製RA-1

なぜか前回修理した,同じラックスキットのKMQ60でもそうでしたが,古いシリコンDiのリード線は真っ黒になってしまいますね。表面の銀メッキが空気中の硫黄分と反応して硫化銀になるからですが,特に整流用のダイオードはひどいです。 通常は問題にならないと考えていたのですが,三菱のオーディオ用で有名なデュアルの2SA798や,BCLラジオなどに多用されている2SC710などはノイズの原因になるようです。どうも硫化銀がチップ表面まで侵食するようです。

こういう問題があるので表面の銀メッキというのは廃れてしまい,今ではあまりやっていないと思うのですが,どうも整流用ダイオードだけはやっているようですね。もっとも,Trや抵抗などに使われているスズメッキというのも要注意で,これはウィスカとよばれる樹脂状の再結晶が成長して隣の電極とショートしたりする故障が出ますので,問題になっています。昔は少し鉛を加えるとウィスカを抑えられたのでよかったらしいのですが,最近のRoHS指令などで鉛が使えなくなってまたウィスカの問題が出てきています。 

A3600 電源部改良後.jpg 電源部改良後

ブリッジになっているDiをトランスのピンひとつずらして取り付け,部にコンデンサを挿入しました。

使ったのはGeneral Semiconductor(今はVishayのようです)のUF5408です。1kV,3Aで,trr=75nsという優れものです。 やはりファーストリカバリはノイズも少なく,オーディオ用には最適だと思います。なお,ファーストリカバリDiは通常のシリコンDiと違って,若干,順方向電圧が大きめで,発熱が大きくなりますので注意してください。今回のアンプだと負荷電流は0.3Aくらいですが,規格表を見ると,このとき,順方向電圧は0.9Vくらいになりますので,放熱には留意することが必要です。リードを長めに切り,トランスからは浮かせて配置するようにしてください。

また,バイアス設定用およびバランス調整用の半固定抵抗は普通の小型のボリウムが使われていましたので,どちらもコパルのRJ13Bに交換しました。500円もする高価なものですけど,アンプの安全を考えたら安いものです。

RJ13半固定.jpg 半固定抵抗(左:RJ13B,右:オリジナル) 

さて,次はB電圧降下用のコンデンサを追加します。非常にサイズが大きいので苦労しますが,なんとかOPTの隣にスペースがあるのでそこに設置しました。

コンデンサ設置位置.jpg OPTの横に置きました。 

端子部,入力VR.jpg 入力端子は錆びちゃってます

ついでに,入力のRCA端子と音量設定のボリウムを交換しました。

入力端子はKMQ60などだと秋葉でも売られている2Pの端子ですが,A3600はちょっと特殊な端子なので,アルミ板で自作しました。ついでに,黒く塗りました。ボリウムは信頼性の高いJIS規格のRV24YNを使います。 

RCAジャック.jpg アルミ板で固定します。

端子部,入力VR(改良後).jpg 取替後です。

次はアンプ部を修復したいと思います。 B電圧が60Vほど下がりますので,8045Gの出力がどれくらいになるか,事前に検討しておきましょう。また,電圧増幅段も再度,定数の変更を含めて検討が必要です。また,オリジナルの6240Gの代わりに6FQ7を使用したドライバ段の修正についても検討したいと思います。 


ソニーのパワーアンプTA-N86の整備~アンプ部~ [オーディオ]

2016年9月18日の日記

ようやく涼しくなってきましたね~。さすがに夏の間はiruchanも工作はお休みです。 

さて,涼しくなってきたので,今日は前回に引き続いてアンプ部を整備します。

アンプ部は初段2SK97(ソニー),2段目2SC1890(日立),3段目2SB646A(日立),2SA733(NEC)の3段差動アンプで,ドライバは2SB647A(日立)/2SD667(日立)→2SA706(ソニー)/2SC1124(ソニー)で,出力2SA10282SC2398の3段ダーリントンになっています。出力の石はもちろん,ソニーの自社開発のHI fTトランジスタです。

3段目の差動アンプが少し変わっていて,左右のペアが異なる品種になっています。それどころか,メーカも違います。普通,こんなことしないんですけどね~。また,3段目はカレントミラー負荷になっています。 

その上,初段はデュアルなんで大丈夫ですが,2段目以降はいずれも熱結合されていません。メーカ製のDCアンプって大体こうですね。ということは自作アンプでも熱結合しなくてもいいんじゃないかと思っちゃいます。 実際,本機も修理後,オフセットを長時間,見ていましたが,全然ずれませんでした。

また,ドライバ段も2SC1124なんて昔懐かしいTrを使っていますが,相棒の2SA706は同じソニー製だけれど,これのコンプリじゃありません。もともと,2SC1124はコンプリメンタリペアがないので,自社製の特性の似た石を組み合わせているのでしょう。 

あとはA級/AB級の切り替えのためのバイアス切り替え回路やプロテクタ回路がついていて,回路としては比較的簡単な部類だと思います。

DCアンプ構成になっていて,初段はデュアルFETを使っています。2SK97なんて金田式DCプリアンプの定番ですね~。高くてちょっと買えませんでしたけど。

DCアンプ構成のため,アンプ部のコンデンサ類が少ないのが特長です。それでもデカップリング用の電解コンデンサや古いマイラコンがありますので取りかえておきます。位相補正には安価なセラミックが使われているので,速攻でディップマイカに交換します。この辺はコストの問題があったのでしょう。

ついでに,パワーTrはシリコングリスが乾いた歯磨き粉みたいになって固まっているのできれいに外して掃除しておきます。これじゃ,まるでポリデントだな~。 

Tr洗浄中.jpg ホワイトガソリンで入れ歯洗浄中です。

固まったポリデントシリコングリスはホワイトガソリンできれいに落ちます。なお,ホワイトガソリンは普通のガソリンが灯油などと間違えないよう,色がついているのにこれは洗浄用のため無着色で,普通のガソリンと同じです。だから,間違っても頭からかぶって火をつけたりしてはいけません。 

2SA1028/C2398.jpg 少しピカールで磨きました。 

やはりTO-3型のTrはかっこい~~~!!!。ほれぼれしちゃいますね。それに,ソニーのTO-3型は初期の2SC42とかV-FETの2SK60とか,なぜかフランジ部が薄いのが特徴ですが,このTrはフランジはNECの2SA627とか2SD555みたいにかなり分厚くなっています。

でもさすがに30年以上経っていて表面は錆が目立ちます。少しピカールで磨きました。でも,やり過ぎると表記が消えちゃいますので,ほどほどにしておきました。なぜか2SC2398の方が錆がひどいです。プラスに帯電するからかな?

まあ,錆びていると言っても日立の2SJ492SK134みたいに最初から白錆だらけ,と言う訳じゃないのでいいですけどね。どうして日立のMOS-FETやほかのTO-3型のものはこう,最初から錆だらけで汚いんでしょうか。どうもiruchanはMOS-FETが嫌いなのもこの辺からかも。 

シリコングリスを再度,塗布して放熱器に取り付けました。絶縁のマイカは剥離したり,割れたりしていなければ再利用します。デンカシートじゃかっこわるいし,マイカは真空管でも使っているのでiruchanのお友達ですからね~。

固定用のねじは捨てて,非磁性体の真鍮製ねじに交換しました。 

なお,自作マニアの人はよくご存じだと思いますが,TO-3型のTrを取り付けた際は必ず放熱器との絶縁を確認してください。うっかり接触しているとフューズが飛びます。ついでに,iruchanは基板の裏からテスターで各電極間の電圧をチェックしました。半導体なのでP→Nの方向に電流が流れると0.6Vくらいの電圧になります。これを確認しておきました。

コンデンサ類は100μF以上のものはオーディオ用電解,それ以下はOSコン,マイラは積層フィルムコンデンサ,セラミックはディップマイカに交換しました。まあ,マイラコンデンサは品質もよいので,全部取りかえなくてもよいと思います。カップリングに1μFの巨大なフィルムコンが使われていますが,WIMAに交換しました。当時のフィルムコンはこんな大きさなんでしょうが,カップリングコンデンサも大きすぎると誘導をひろってノイズの原因になります。

バランス調整やアイドリング調整用の半固定抵抗はコパルのRJ-13に交換します。iruchanは真空管の固定バイアス回路などに使っています。高信頼の部品で,とても信頼できると思います。

なお,これらの半固定抵抗を取りかえるときは,あらかじめ外した半固定抵抗の抵抗値を測っておいて,その値にセットしてはんだづけしておくとよいです。

では,いよいよ電源を入れます。

まずはバランス調整とアイドリング調整を行います。

バランス調整は2SK97のソースに入っているトリマで,ここを調節して出力につないだ8Ωのダミー抵抗両端の電圧が1mV以下になるようにしました。 

次に,アイドリング電流ですが,本機はA級,AB級に切り替えられるようになっているので,それぞれ別々に行います。

出力の2SC2398のエミッタ抵抗0.33Ωの両端にテスト端子があるので,そこの電圧で調べます。基板上にはT.Pの表示があります。A級の場合,350mV,AB級の場合,20mVに設定するよう,マニュアルに記載がありました。 それぞれ,アイドリング電流は1.06Aと60.6mAですね。個人的にはAB級アンプなら100mA以上に設定したいところですが,マニュアルどおりにしておきます。

L ch. トリマ.jpg L ch.の設定箇所です。

R ch. トリマ.jpg R ch.の設定箇所です。

A級動作時のバイアス設定用可変抵抗はオリジナルは470Ωですが,こんなの今どき売られていないので500Ωで代用しています。 

アイドリング電流調整中.jpg アイドリング調整中です。 

入力部.jpg DCオフセットの調整です。

残念ながら初段は貴重な2SK97が使われていますが,半固定抵抗の調整位置固定用に白いペイントがべったり塗られていて,RJ-13に交換するときにはがれてしまいました.....orz。 

入力部original.jpg オリジナルはこんな状況です。

そのほか,基板上についている位相補正用の1800pFや100pFはディップマイカに交換しました。電解コンデンサもニチコンのオーディオ用に交換してあります。また,初段にはAC/DCアンプ切替用に唯一,大きな1μFのフィルムコンデンサがカップリングコンデンサとして使用してあります。フィルムコンは信頼性が高いし,劣化しにくいので原則,交換しませんが,ここは音質が問題になるところなので,新品の独WIMAの積層フィルムに交換しておきました。

内部(更新後).jpg 部品の交換箇所です。

次にオシロで波形を見ておきます。ついでに,f特も測っておきます。ひずみも測ればよいのですけど,めんどいのでやめました.....(^^;)。

f特(1W).jpg 周波数特性(1W)  

それにしても優秀な特性に驚きます。-1dBで,DC~250kHzと言ったところです。トータルゲインは27.6dB(1kHz)でした。いまだともっと小さめでもよいと思います。ちょっと特性がうねっているのは発振器のせいです。

廃棄部品.jpg 廃棄部品ですが,ほとんど劣化してません。

さて,ここから先はしなくてもよいのですけど,古い部品が気になって30年でどれだけ劣化しているか,調べてみたいと思います。

先日,中国製の電子部品チェッカを買ったので,それで調べてみます。特に大容量の電解コンデンサがどれくらい容量減となっているか,興味があります。

と言って自分でやるのはめんどくさいので息子(小5)を強制徴用し,測定させました......(^^;)。

結果は意外。どれも30年も経っているとはとても思えないくらいで,ほとんどのコンデンサは新品の状態を保っていました。やはり日本製のコンデンサは素晴らしい!

少し容量減だったのは電源のフィルタコンデンサで,1000μFが650~910μF程度になっていましたが,それ以外はほとんど新品の状態でした。 タンタルコンデンサも問題ありませんでした。

さて,お楽しみ。 いよいよ音を聴いてみます。

いつも聴いている,ジャクリーヌ・デュプレのバッハの無伴奏はとてもいい演奏です。当時,彼女は弱冠17歳でした。このアンプはノイズもなく,静寂の彼方から静謐なバッハの調べが流れてくるところは感動します。

それにしても,いま常用しているLepy(旧Lepai)のLP-2020A+アンプと音は変わりません。Lepyは3,000円ほどのチープなアンプですけど,こっちは9万円もしたアンプなんですが......。 

お次は最近,娘が聴きたいと言ってHMVで買った朝比奈隆の "新世界より" 。

新世界.jpg 朝比奈隆の "新世界" (キングKICC3617)

まあ,クラシック初心者の娘が聴くんだし,ということで高くなくても,と思って選んだCDでしたが,聴いてみてびっくり。大変な名演です。

1982年の大阪・フェスティヴァル・ホールのライブ録音ですが,弦の響きの美しいのにも驚かされます。第2楽章の有名な旋律はとても美しく,思わず学校から帰りたくなりました.....(^^;)。

なにより冒頭の静かな開始にはじまって最後のコーダの盛り上がりは素晴らしい!!

あくまでも楽譜に忠実な,外れるところのない,端正な演奏にも感動します。よく,こういう演奏って,教科書的ってバカにされることも多いのですが,あまり奇をてらった演奏というのも困りもの。

"新世界" はiruchanも大好きなので,古くはメンゲルベルク&アムステルダム・コンセルトヘボウのSP録音からフルトヴェングラー? の演奏,クーベリック,フリッチャイなどたくさん持っています。お気に入りはロジンスキーのウェストミンスター盤。常にトランペットが強くて,変わった演奏ですが,実に力強く,とても気に入っています。ただ,残念なのはLP録音なんですけど,モノラルであること。すでにテープで録音する時代だったのでノイズはないし,ひずみもないので聞きやすいのですが,ステレオじゃないと音が広がらないし,面白くありません。

フルトヴェングラーのはCDが出始めた頃,Philipsが出しましたね。ワイヤー録音と思われるノイズの多い演奏でしたが,どうやらフルヴェンじゃなかったようで,今ではフルトヴェングラーじゃない,と言われています。

ステレオ録音だとフリッチャイ&ベルリン放響のがお気に入りでしたけど,朝比奈隆のはもっとすごいと思います!!

そういえば,フリッチャイ盤は最近の雑誌で作家の百田尚樹が特異な演奏と書いてましたが,そんなことありません。ストコフスキーのはともかく,フリッチャイは端正な演奏です。 

この朝比奈隆の演奏はラストの哀しげなヴァイオリンの響きも美しく,演奏が終わってからの聴衆の拍手もひと呼吸おいて静かにはじまるのも感動的。なんか,聴衆が感動しすぎて拍手を忘れた,というような印象を受けます。ブラボー!! ってすぐに大声が入るのも困るので,これはなかなかよいです。 

朝比奈隆は,生前,ブラ4とブル8を聴いたことがありますが,"新世界" は聴いたことがありませんでした。実演をぜひ聴いてみたかったと思います。十八番のブル8は嫁はんと聴きに行きましたが,嫁はんは横でグーグー寝てました.....orz。

このアンプで聴くこの盤はとても美しく,いい音が聴けました。 

さて,最後はちょっとここのところよく聴く井上陽水。よく姉が聴いていました。懐かしくなって最近,ベスト盤を買って聴いています。時代的にも'70年代末なのでこのアンプがぴったりですね~。ベトナム戦争末期の反体制的な歌が結構好きです。あの時代,世の中に旧来の保守的な政治に反発する空気が満ちていました。iruchanはそのとき,子供だったからよくわからなかったけれど,企業優先,弱者切り捨ての今は当時と似ているんではないかと思います。反体制派のiruchanは陽水の反戦の歌にどうも共感してしまいます。

さすがは井上陽水。あらためて聴いてみるといまでも通じるメロディーと音楽性の高さはびっくりです。いまはシンガーソングライターなんてほとんど消えちゃいましたので,昔の歌手はすごかったな~と思います。 いまは単にかわいくて,スタイルがよくて踊れれば誰でもOKですからね......。

息子も幼稚園でピアニカで "少年時代" を演奏していたので,これ知ってる!! なんて言いました。この曲,幼稚園でも演奏するくらいだから大変な名曲だと思います......。

井上陽水.jpg とても懐かしいです。

正面のパネルの緑色のランプは切れていたので緑のLEDに交換しました。

さて,ようやくこれで中学時代にあこがれていたアンプを整備できました。そのうち,本格的なスピーカにつないで大音量で聴いてみたいと思います。いまは小さな借家住まいだからダメですけどね.....orz。 


ソニーのパワーアンプTA-N86の整備~パルスロック電源~ [オーディオ]

2016年8月19日の日記

sony TA-N86.jpg 

毎日暑い日が続いていますが,皆さんくれぐれも体調など崩さないよう,お気をつけてください。

さて,iruchanはこのところソニーのTA-N86パワーアンプを直しています。 6月に購入したものです。

この前修理したパイオニアのC-21プリアンプと同世代です。 あの頃,オーディオは輝いていましたね~。もちろん,日本の電機メーカも輝いていました。世界の電機,半導体業界を牛耳っていたし,それほど数が出るとは思えない,オーディオ用にわざわざ半導体を開発するなんて今じゃ考えられないようなこともしていました。あぁ~,本当にいい時代だったな......(遠い目)。

本機は1978年の発売で,出力段には新開発のハイfTトランジスタを用いています。来たるべきデジタルオーディオの時代に向けて,より広帯域のHiFiアンプを作ろう,という時代で,出力半導体もfTの高さを競っていました。

本当だったら数年前に開発されたV-FETの方がスイッチング速度は速く,これを普及してほしかったと思いますが,V-FETは3極管特性だったのが災いし,飽和領域が広いので出力が取れない,と言う欠点があります。折からアンプの大出力時代が始まり,59,800円のアンプですら100Wの出力は当たり前,と言う時代になるとV-FETでは不利,と言うこともあったのでしょう。 

MOS-FETだと大出力が取れますし,高周波特性も良好ですが,日立に特許料を払うのも何だし,そもそも日立が大宣伝していたので自社のアンプにMOS-FETを使うのは癪だなんてこともあったのでしょう。NECやソニー,山水,ヤマハと言ったメーカはハイfTトランジスタを使ったパワーアンプを発売しました。もっとも,あとでソニーなども自社でMOS-FETを開発してアンプに搭載したりするんですけどね。実はMOS-FETだと素子自体は高いけど,ドライバ段の回路が簡単になるのでコスト的には抑えることができます。熱補償も不要ですしね。

でも,iruchanはどうにもMOS-FETは好きになれません。ゲートが絶縁されているため,真空管に似ている,なんて言われて音も真空管に近いなんていう人も多いのですが,実際,自作して鳴らしてみるとなんか眠い音がします。iruchanはよっぽどバイポーラTrの方が音がよいと思っています。V-FETも聴いてみたいと思いますが,まだ作っていません。 

それにしてもあの時代,いろんなメーカが半導体まで作ったりしてしのぎを削っていたのはマニアとしてもわくわくする時代で,MJやFM雑誌など,毎号,出るのが楽しみな時代でした。

ということで,iruchanもハイfTトランジスタを用いたパワーアンプを作っているのですが,先にソニーのこのアンプを入手しちゃいました。

薄型のパワーアンプで,とてもかっこよく,いつかは手に入れたいと思っていました。

兄貴分でTA-N88というパワーアンプもありますが,こちらはV-FETのパワーアンプです。ただ,残念ながらこのアンプはデジタルアンプになっていて,今でこそデジタルアンプが主流となっていますし,中国製のLEPY(旧Lepai)のアンプなんか,私も2台持っていて,驚くほど音のよいアンプなんですが,ちょっとせっかくV-FETを使っているのにスイッチング動作しかしていない,というのは引っかかります。やはりV-FETは非飽和領域で使用したいものです。

弟分は出力は自社製のハイfTトランジスタ2SA10282SC2398を使っています。 このTr,当時のMJを見ると秋葉原の某通商会社の広告で1ペア5,800円(!)もしています。こんなの買えないってば。当時,カナダ・マルコニ社などの2A3が入ってきていて,1本2,000円くらいでした。こっちの方が安いですね~。そういえば,この2A3,とても品質がよくて今から考えれば,もっと買っておけばよかったと後悔しています。

2SA1028.jpg 本機の出力段です。 

その割に,このTrはVCEOが低く,100Vしかありません。ちょっと100Wのアンプを作るにはしんどく,安全を考えるとパラPPにしないとダメで,そうなるとコストが高くつきますからこのアンプはシングルPPで作ってあり,最大出力も80Wに抑えてあります。

まあ,iruchanもパラPPのアンプは作ったことないし,シングルPPの方が音がよい,なんて話もあるのでこれでよいと思います。

さて,買ったはいいけど,さすがに40年近くも前のアンプなので中の部品を取りかえて整備したいと思います。特にこのアンプはアンプ部はアナログですが,電源はスイッチング電源を採用しています。発熱も大きいでしょうからケミコン類は交換したいと思います。

さて,アンプ自体は故障していなくて音は出る状態です。パワーアンプはジャンクと称するものに手は出さない方がよいと思います。一応,音が出る状態のものを買って整備する方が安全です。特に出力の石が飛んでいると目も当てられませんしね。

また,こういう古いアンプを修理する際には必ずマニュアルを入手してください。幸い,このアンプは英語版のマニュアルが入手できました。 そもそも,下手するとケースの分解方法すらわからなくてマニュアルを読まないとダメ,と言うこともありますので。

service manual.jpg サービスマニュアルを入手しました。

まずはフタを開けてチェックします。上下のフタが簡単に外れるようになっていて,ソニーのアンプとしては珍しく? メンテ性はなかなかよいアンプです。

original inside.jpg 内部 

電源はさっきも書きました通り,スイッチング電源となっています。今じゃごく普通ですけど,当時はスイッチング電源は画期的で,高効率,軽量な電源部となるのが特長です。 ソニーはパルスロック電源と称していました。いったん,AC100Vを整流したあと,再度,スイッチングして高周波のパルスにして高周波トランスを介して電圧を必要な電圧まで下げます。トランスを通るのが高周波の交流なので非常に小型にできます。

パルスロック電源1.jpg 電源のブロック図

ただ,いきなりAC100Vを整流するので結構危険で,また,スイッチング時に盛大なノイズを出しますので,本機も電源部だけアルミのダイカストケースに収められ,シールドされています。

結構面倒ですが,そのダイカストケースを分解します。中は密封されているので高温になりますからケミコン類の劣化が心配です。

original puls lock power supply.jpg オリジナルの電源部

幸いにも中はとてもきれいで,ケミコン類も液漏れや膨れたりして劣化したあとは見られません。ケミコンやコイルの下部に見える茶色い塊は液漏れのあとではなく,接着剤です。大型のコンデンサやコイルは振動で断線することがありますので,このように接着してあることが多いです。 

右奥に電線が集まっているのが高周波用トランスです。 60Hzのトランスなら考えられない小ささです。

S-34.jpg サンケンS-34

スイッチング電源を出たあとの20kHzのパルス電流を整流するDiで,500V,0.8A,trr=300nsの高周波整流用ダイオードです。ノイズを発しますので,ファーストリカバリDiにしたいところですが,このDiは比較的高速ですし,今どきこのような金属ケース入りのDiはほとんど入手不可能ですのでそのままにしました。 

電源部ケミコン.jpg 交換したコンデンサ類

      色はオリジナル交換品です。 

電解コンデンサはすべて105℃品に交換しました。ほとんどはニチコンのKTシリーズにしましたが,一部,入手できなかったので日ケミのKM 105℃品に交換しました。当時はそんなのなくて85℃が最高です。容量もできるだけ大きくしました。30年の時間が経っているため,ずいぶんと小型化しています。 

電源部交換後.jpg コンデンサ交換後です。

電源部フィルタ.jpg AC100V整流後のフィルタです。

このコンデンサはあとで中国製のチェッカで調べたら30年経ってもちゃんと1000μFありました。 

127V フィルタコンデンサ.jpg 容量は倍でもサイズは小さいです。

AC100Vはダイカストケース外で整流され,同じくケースの外に設置された1000μFのコンデンサで平滑化されます。60Hzのブリッジ整流なのでリップルは120Hzで,かなり低いのでもっと大容量のものにしたいところです。最初,同じ1000μFを買ってきましたが,▲の写真のように非常に小さくなっています。そこで,フィルタコンデンサはニチコンのスイッチング電源用KXシリーズ2200μF 200Vを使いました。同じく105℃品なので安全です。 幸い,技術の進歩で容量は倍ですが,サイズは小さくなっています。

実は,これでも30年前の1000μFより少し小さくて,基板にはバンドで固定するのですが,ごそごそだったのでゴム板を挟んで固定しました。 

平滑化後,本機はTrを使ったシリーズレギュレータを通ってDC127Vにしています。その後,20kHzの周波数でスイッチングします。現代のスイッチングレギュレータならICを使うんでしょうけど,本機はトランスを使ったブロッキング発振回路になっています。 よく,自動車のバッテリーで蛍光灯を点灯する,なんて2石式のインバータ回路が本に出ていましたが,それです。

30D4F.jpg 30D4FA(600V,3A)

AC100Vを整流するDiです。なぜか古いDiはこのように脚が真っ黒になっちゃいますね。安全のため,交換しておきます。ここはファーストリカバリですので,VishayのウルトラファーストリカバリDi UF5408にしました。いつも真空管アンプで使っているやつです。1000V,3A,trr=75nsと高速です。

ただ,スイッチング電源の設計時に気をつけないといけないのは電源のインピーダンスで,AC100Vいきなりだとインピーダンスが低いため,突入電流が問題となります。これ,私も頭を悩ますんですけどね~。本来なら入口に数Ω~数10Ωの抵抗を入れたいところですが,レギュレーションや音を考えると入れるわけにいきませんしね。 整流管のときは特にそうですが,ダイオードを使った現代の電源でも問題は同じです。

UF5408-2.jpg VishayのUF5408を使いました。

耐圧は1000Vで,余裕十分です。AC100Vをブリッジ整流していますが,ブリッジの場合,耐圧は電源電圧の2倍でよいので,余裕を見ても普通なら400V級でOKです。

オリジナルはリード線がむき出しになっていましたが,ここはAC100Vを直接,整流しているところですのでリード線の1本に触れただけで感電することがあります。安全のため,スリーブをかぶせておきました。 

基板上にはスイッチング電源で作った±45Vのフィルタコンデンサが並んでいます。20kHzの高周波なので容量は小さくて済み,実際,1000μFをパラにしているくらいで小容量です。 このまま交換してもよいのですが,例によってサイズ的に小さくなりすぎるので許される範囲で大きなものにしておきます。今回,3300μFでも同じサイズ(φ18mm)でした。技術の進歩に驚かされますね。うまくニチコンの105℃オーディオ用が手に入りました。

50V 1000μF,3300μF.jpg こんなに大きさが違います。 

電源部コンデンサ交換後1.jpg これで電源部は終了です。 

パイロットランプ.jpg パイロットランプの修正。LED接着中。

なお,故障箇所としてパイロットランプが切れていました。オリジナルは6.3Vの電球ですけど,さすがに今どきランプでもあるまいし,と言うことで直列に1kΩを入れて緑色のLEDにしました。 本来なら逆耐圧保護用のシリコンDiが必要ですが,電源がAC6Vなので入れませんでした。

さて,ここまで来たら電源をつないでテストしてみます。アンプ部へは3Pのコネクタとなっていますので,このコネクタをまずは外しておいて,電圧の確認をします。±45VくらいならOKです。 

長時間放置して,コンデンサのチャージがなくなってからアンプに接続してください。これを忘れていたiruchanはコネクタをつなごうとしたとたん,目の前で火花が飛んで,久しぶりにビビりました.....(^^;)。

次回はアンプ編です。 


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