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LUXKIT A3600復活への道~その3・アンプ編~ [オーディオ]

2016年11月23日の日記

今日は勤労感謝の日でお休みです。戦前なら新嘗(にいなめ)祭ですね~~。われわれ下々の者はこの日まで新米を食べちゃいけない,という決まりになっていました。

本当に最近は3連休ばかりで嫌になっていますが,このように週の真ん中にポコンと休みがある方がよっぽど身体が休まっていい,とiruchanは思います。そういえば,3連休にならないのは11月3日の文化の日もそうですけど,この日は戦前は明治節(明治天皇の誕生日)で,戦前の皇室の祭日に関連するものばかり,と気がついたのはiruchanだけでしょうか。 10月10日なんて,東京オリンピックの開催日だから祝日になったのに,と思います。また,晴れの特異日とされ,気象学的にも意味のあるだったんですけどね。だから,最近は体育の日ったって雨の日ばかり,という気がしますけどね。昔は体育の日はほとんど晴れでした。

と言う次第で,ハッピーマンデー法なんて早く廃止して,昔の祝日に戻してほしいと思っています。やはり祝日というのは伝統や歴史があるわけですからね。 

さて,前回に引き続いて,今日はアンプ部の設計変更を試みたいと思います。

ラックスキットのA3600というアンプは大出力の8045Gをプッシュプルで用い,最大出力50W×2と言うアンプです。3極管のアンプでこのような大出力,というのはあり得ないくらいで,845か,英国のDA60くらいしか思い浮かびません。

しかも,前回も書きましたが,MJ'83.2号に森川忠勇氏の記事があり,最大出力は公称50W×2ですが,実測66Wも出るようです。実際はもっと大出力なんですね。

それで,ちょっと調べてみたいと思います。

まず,ラックスが発表した8045Gの規格表にはEbb=500V,RL=3.6kΩで出力60Wと書かれています。ロードラインを引いて調べてみます。と,思ったのですが,見事にロードラインは特性図をはみ出しちゃいました.....。グリッド電圧Ec=0Vの線も延長しています。某美人の科学者? じゃないけど,今は簡単に画像が編集できちゃいますので,データをねつ造正規に利用するのは簡単ですね......(^^;)。

8045G-1.jpg8045Gの500V動作

負荷抵抗は3.6kΩとなっていますが,どういうわけか,プッシュプルのアンプの場合,負荷抵抗は2つの出力管のプレート~プレート(P-P)間の巻線インピーダンスで表すのが長年の習慣? で,出力管1本あたりだとプレート~B電源(P-B)間で,巻線が半分ですから,インピーダンスは巻線の2乗に比例するので,3.6kΩの1/4で900Ωとなります。なんで,こんな習慣なのか,ちょっと昔から疑問に思うのですが,長年の習慣なので仕方ありませんね。

横軸はEbb=500Vのところに起点があり,縦軸の終点は500(V)÷900(Ω)で,555mAのところに来ます。これを合成ロードラインと言います。本当はシングルアンプ同様,真空管1本ずつで考えないといけないのですが,プッシュプルのアンプの場合は2本の出力管の動作を合成した合成ロードラインで考えます。半導体のアンプの場合も同じです。

出力管1本ずつのロードラインは▼の図の  線のように湾曲していて,EC=0Vのところから, 印のある動作原点を通ってすっと右の方へ伸びていきますが,どこかでIP=0となってカットオフするのがAB1級やB級です。A級だと最後までカットオフしません。ちなみに,AB級は真空管の場合,グリッドをマイナスの領域のみで動作させるのがAB1級で,プラスの領域まで動作させるのがAB2級です。半導体はV-FET以外はエンハンスメントモードのものばかりなので,AB級と言います。また,真空管の場合は普通はグリッドをプラス領域まで使うことはないので,ほとんどAB1級です。

一方,反対側の出力管が上下対称の動作をするのでプッシュプル出力段の動作はのように直線となります。AB1級やB級は1本ずつの動作はたくさんのひずみを含んでいますが,合成するとこのようにきれいな直線となり,ひずみが打ち消されます。2本のロードラインを合成した,と言う意味で合成ロードラインと言います。まあ,いちいち,合成ロードラインというのも面倒なので,単にロードラインと言えばプッシュプルのアンプでは合成ロードラインのことを指します。それに,出力を求めるのには合成ロードラインで考えればよいので十分です。 

半導体のアンプの場合は負荷はスピーカですので,一応,純抵抗と考えて1本あたりのロードラインは直線となりますが,真空管は負荷はトランスですからAB1級やB級の場合,このようにゆったりと湾曲します。

時折,縦軸の555mAのところから動作原点を通る, のような直線でロードラインを引いている人を見かけますが,これは誤りです。MJのレギュラー執筆者の方でもこんな描き方をする人がいるので困りますね。昔,iruchanも真空管アンプを勉強し始めた頃,結構,悩んじゃいました。おそらく,このようなロードラインを描く人は出力管1本あたりのロードラインと,合成ロードラインをごっちゃにしてしまっているのでしょう。もちろん,森川氏は技術的にきわめて正確な先生なので,こんなことはありません。 

正しい合成ロードライン.jpg 間違ったロードライン

さて,8045Gに戻ると,実際に真空管が出力するのはEC=0Vまでの領域ですから,▲の図の通り,EP=120V, IP=430mAまでです。半導体だとほぼ,VCE=0Vまで使えますから,やはり真空管は出力が小さくなってしまいます。

さて,このときが最大出力ですが,そのとき,AB1級やB級などのプッシュプル回路では正弦波の半波とみてよいので,これらはピーク値です。実効値にするにはそれぞれ1/√2にしないといけないので,出力は下記となります。さすがに最大出力の時は波形がひずんでくるので正確に1/√2じゃないですけど,誤差は無視できる範囲です。

        出力計算式1.jpg  

結局,よく教科書に書いてあるとおり,Ec=0Vの線と合成ロードラインの交点から垂線を下ろしてできる三角形の面積と同じ,ということになりますね。 

それで,8045Gなんですけど,なんと,81.7Wもの出力が得られることになります。

えぇ~~って感じでびっくりしちゃいました。iruchanは何か間違ったか? と思っちゃったくらいです。

それならなんでラックスの規格表に60Wと書いてあるの? という気がしますが,おそらく,ラックスは真空管メーカじゃなく,セットを作る会社なので,あくまでもスピーカに加えられる正味の出力,ということで60Wと書いているのじゃないかと思います。

真空管の規格表に記されている動作例はあくまでも真空管のプレートに現れた信号電圧をダイレクトに出力に換算したもので,実際には出力トランスの損失だけ出力が減りますし,メーカのテスト時には定電圧電源を使ったりして,500Vなら正確に500Vの電圧がプレートにかけられていますが,実際のアンプではトランスのレギュレーションで電圧が下がってしまいますので,ラックス発表の数値はそういうことも考慮に入れた数値だと思います。 ただ,それにしても80Wと60Wじゃ,OPTの損失がそんなには大きくないので,やはりかなり控えめな数値,という気がします。

A3600の場合は,Ebb=490Vですから,下記のようになります。  の線がA3600のオリジナルの状態です。

出力はやはり,77.3Wにもなります。動作原点● はEC=-100V,I0=75mAです。森川氏も同様にロードラインを引いて,最大出力75Wという計算結果を示しておられます。

8045G-3.jpg 

   森川氏の検証結果と今回のiruchan改造の場合

出力トランスのOY-15-3.6KHPは損失が-0.4dBですので,91.2%です。とすると,出力は70.5Wとなります。実際には真空管のアンプの場合,クリップ点は半導体のアンプのように明確じゃないし,トランスのレギュレーションのこともあるので,もう少し小さく,やはり森川氏の実測結果どおり,66Wくらいが妥当なところでしょう。

それにしてもやはり出力が大きすぎますね。

と言う次第で,前回,8045Gの寿命も考えてB電圧を60Vほど下げることにしましたので,この場合の動作は  線の通りです。出力は58.7W,OPTの損失を考えれば,53Wといったところで,ラックス発表の数値くらいになります。これでよいのではないでしょうか。

なお,動作原点 ● はB電圧が下がった分,若干,左の方へずれますから,EC=-85Vくらいでしょうか。この電圧は重要ですから,覚えておきましょう。これが8045Gの入力電圧,すなわちドライバ段の出力電圧(のピーク値)となります。

オリジナルの状態でドライブ電圧が100VP,今回のiruchanの改造でも85VPもの電圧が必要なのに驚きます。多極管ならせいぜい10~20Vくらいと言ったところですから.....。

これほどの高電圧が必要というのは驚いちゃいますが,このため,ラックスは専用のドライブ管として6240Gを開発しています。実際,ピークで100Vもの電圧を出力させるにはプレートに400Vくらいの電圧をかけないといけないので,高耐圧の真空管が必要となります。

ただ,6240Gはいまじゃ,8045Gより希少なくらいで,Yahoo!などでも1本,7,000円以上するようです。実はiruchanも6240Gは1本しか持っていません。

6240G, NEC 6FQ7.jpg NECの6FQ7 (左)と6240G (右)

ついでに,6240Gを買ったとき,箱の中に入っていた規格表をupしておきます。

6240G規格表.jpg 6240G.pdf

と言う次第で,昔からこの球は代用球として6FQ7が使われています。実は▲の写真をご覧いただいてもおわかりになるとおり,外観もそっくりでした。おそらく,6240Gは電極も6FQ7と同じだと思います。NECの一木吉典氏も電波科学で書いておられましたが,真空管の最後の頃はコストダウンのため,もとからある管種の電極や製造用の金型などを流用することが多かったようです。東芝の6G-A46BX7の電極を流用していますし,6240G6FQ7の電極や金型を流用していたとしてもおかしくありません。

6FQ7は古くはGT管の6SN7と同特性で,昔から6SN7はタフなことで知られ,ドライバ管はもちろん,出力管としても使われました。ただ,A3600で6SN7を代用に使おう,なんて思いもしませんけどね。シャシーが鉄なんでGT管用の穴を開けるのは非常に大変です。

ちなみに特性を比較すると次のような感じです。

EP(V)  PP(W) μ gm(μS)  rp(kΩ)

6240G 800 3 35 3500 10

6FQ7  330 4 20 2600 7.7

6SN7  300 2.5 20 2600 7.7

やはり,耐圧が800Vもあるのに驚かされます。 改めて調べてみると,6SN7より6FQ7の方が耐圧が高いんですね。特性はやはり同じですけど。

特性を比較しておきます。NECやSYLVANIAなどの規格表から手読みしてExcelでプロットしてみました。

6240G特性曲線.jpg 6240G 

6FQ7特性曲線.jpg 6FQ7

う~ん,確かによく似ているような気もするんですけどね......。

6240G, 6FQ7特性曲線.jpg6240G6FQ7

重ねて描いてみるとこんな感じです。何だ,やっぱりよく似ているじゃん,と思ってしまうのですが,よく見ると6FQ7の方が同じバイアスだと倍くらいの電流が流れます。 重なっている曲線の各バイアス電圧は6FQ76240Gの倍くらいの電圧です。

これはとりもなおさず,6240Gの方がgmが3割以上大きいためで,gm=IPECですから,バイアス電圧の変化に対してプレート電流の変化が大きいということで,6240Gの方がゲインが取れることがわかりますが,NFBをかけて使うので,それほど問題ではありません。やはり問題は耐圧と出力電圧です。

まず,真っ先にチェックしないといけないのがプレート損失。A3600は2段目のドライバはEP(プレート~カソード間)=265Vで,損失2.85Wですので問題ありません。

と言うことで次はいくら出力が取れるか,と言うことです。本来なら出力管同様,ここで特性曲線にロードラインを引いて,と言うところだと思います。

でも,iruchanはSpiceで真空管を使う方法を採りました。こちらはひずみ率まで計算してくれるのでとても助かります。昔はロードラインからひずみを読み取ったりしていましたけど......。先日の記事に書いたように,Spiceだとボタン1発でひずみ率が出てきますから,やはりSpiceは楽です。

おまけに,前回ご紹介した,Ayumiさんが6240GのSpiceモデルもご用意してくださっているので簡単です。

A3600 original driver.jpgオリジナル回路

先のMJ '83.2号で,森川氏は6FQ7を代用として使う場合として,共通カソード抵抗を10kΩにするよう,推奨されています。

A3600 driver(森川氏).jpg森川忠勇氏の改良

以上の回路でシミュレーションしてみます。いまはこんなことができちゃうんですね~~(^^;)。

オリジナルの回路と森川氏のモディフィケーションをシミュレーションしてみました。

A3600 original driver THD.jpgオリジナル回路 6240G

A3600 森川氏 driver THD.jpg 森川忠勇氏 6FQ7

6FQ7を使ってもオリジナルと遜色ないどころか,むしろひずみが少ないことがわかります。さすがは森川さん,ですね!! 

さて,オリジナルの状態で6FQ7を代用として使用する場合,森川氏の設計で共通カソード抵抗を10kΩとすればよいことがわかりました。もし,A3600をお持ちの場合,6240Gがない場合はこのように抵抗を1本(ステレオだと2本)交換するだけでOKです。

今回,iruchanはドライバは同じ6FQ7を使うつもりですが,B電圧が60Vほど下がっています。これで問題ないか,確認しておきます。 

A3600 driver(iruchan)1.jpg iruchan改造

実は,少し問題があることがわかりました。

やはりB電圧が下がったことにより,最大出力電圧が80VPくらいになってしまいました。これじゃ,8045Gがクリップする前にドライバがクリップしてしまっている,と言うことになります。まあ,クリップとは言っても,先ほども言いましたように,真空管じゃ本当に頭が平らになってクリップしちゃうわけじゃなく,ひずみが数%になって急上昇してくる,と言う程度なんですけど。

原因はドライバの6FQ7のプレート電圧不足か,と思い,6FQ7のプレート電源の電圧を上げてシミュレーションをしてみたら,全然出力電圧が変わりません。なんと,初段の6AQ8がクリップしていました。何のことはない,初段のプレート電圧が足りないんです。これなら簡単です。

と言う次第で,初段の電圧を少しupしてやりました。 クリップ時のドライバ出力電圧74.1Vrmsでした。ピーク電圧だと104.9VPなので,先ほど,8045Gの新しい動作点はEC=-85Vと決めましたから十分な値です。

A3600 iruchan driver THD.jpgiruchan mod 6FQ7

さて,以上でアンプのすべての回路の設計変更が済みましたので,実際に配線していきます。次回は調整編です。なんとか12月だし,完成したA3600でフルトヴェングラーの第九を聴きたいと思います。


LUXKIT A3600復活への道~その2・電源編~ [オーディオ]

2016年11月19日の日記

前回から1年も経ってしまいました。せっかく,貴重なアンプをいただいたのに申し訳ないことです。

実は少し悩んでおりました。

というのは,電源をどうしようか,と言うことなんです。 

LUXKITのA3600は出力管が8045Gで,最大出力50W×2という強力なアンプです。

ただ,そのためプレートには490Vもかけてあります。8045Gの最大定格は550Vなので,まあ,ぎりぎりというわけではないんですが,この球は寿命が短いことで知られていて,少し電圧を下げてやりたいと思っています。

ラックスの真空管アンプはどれも,設計上の問題としてB電圧が高すぎる,と思っています。少しでも出力を大きくしよう,と考えられたのでしょう。当時は真空管は消耗品で,寿命が来たら取り替えればいい,という時代でしたし,世の中何でも大きいことはいいことだ,と言うことからアンプも大出力のものが人気がありましたからしかたないですが,今だともっと寿命を考えた設計にしたいところです。実際,前回,修理した50C-A10PPのKMQ60は最大定格いっぱいの450Vをプレートにかけています。 これはギリギリ。NECの規格表を見てもEp=450Vの動作例は載っていないくらいです。iruchanも完成して電源を入れたとたん,内部で火花が飛んであわててスイッチを切った記憶があります。その50C-A10は新品でしたけど,新品でもこうなるんじゃ危ないと考え,結局,B電圧を50Vほど下げて使っています。詳しくはKMQ60の記事をご覧ください。

今回のA3600も電圧が高すぎ,次回ご報告しますが,"無線と実験" '83.2号に森川忠勇氏の記事があり,最大出力は公称50W×2ですが,実測66Wも出るようです。両ch.動作時でも62W×2のようです。こんなに大出力はいらない,と言う気もしますので,B電圧は50V程度,下げたいと思います。 

方法としてはいくつか考えられます。

① チョークインプット整流にする

② 抵抗またはコンデンサで電圧を下げる

③ トランスのタップ(1次 or 2次)を切り替える

④ Trによるリップルフィルタを使う 

⑤ 自己バイアスにする 

もちろん,もし,2次側のB巻線に低い電圧のタップが出ていればそれに切り替えればOKです。前回,修理したLUXKITの50C-A10PPのKMQ60はトランスの1次側に117Vの端子があったので,それを使ってB電圧を50Vほど下げています。

ところが,メーカ製真空管パワーアンプはこのようなタップがないことが多いのです。市販もされているトランスを使っているものはいいのですが,メーカ製のアンプの場合は最初から特注のトランスになっているので,あまりタップがありません。実際,KMQ60は後期型は1次側の117V端子がなくなっていて,この方法が使えません。A3600もタップは1次側も2次側も別のタップはなく,この方法が使えません。

②は普通にオームの法則で抵抗で電圧を下げればよいのですが,単純に抵抗でやるとかなりワット数の大きな抵抗となります。実際,A3600だとB電流は320mAなので,抵抗は160Ωほどですが,50V下げるとなると16Wもの熱を発生します。

これを避けるにはコンデンサを使う方法が有効で,下記のように使用するとコンデンサを抵抗の代用に使えます。ご存じの通り,コンデンサだと電流と電圧の位相が90゜ずれますので,理論上,発熱は0です。  

ACコンデンサ挿入1.jpg コンデンサによる電圧降下

もっとも,コンデンサも実際にはESRと呼ばれるわずかな抵抗分があり,電流を流して使用すると発熱するので,実際に電流を流して使用する場合には,最初から電流を流すことを想定して製造されている,AC用コンデンサを使用する必要があります。誘導電動機などの始動用に使われているものです。そのため,スターター用なんて書いてあることが多いです。また, 一般に,電子部品のお店で売られているコンデンサはDC用なので使えません。ご注意ください。

コンデンサによる電圧降下はi/2πfCで表されますが,残念ながら交流に対するもので,直流出力に対しては90゜位相がずれていますので,たとえば,50V低下させるからと言って,この式で50Vになればよいわけではありません。

なお,最近,これらのAC用のコンデンサを真空管アンプのフィルタ用として販売している店があるようです。フィルムコンなので,電解コンデンサより音がよい,と思われるからでしょう。

残念ながら,これらのAC用コンデンサを直流回路で使うことはできません。そもそも,AC用は交流回路専用で,直流に対しての耐圧が規定されていないためです。実際,AC用コンデンサには "AC 450V" とは書いてあっても, "DC ***V" という具合にDC電圧に対する耐圧は記載されていません。だから,そもそも直流回路での耐圧がわかりませんし,また,仮に直流回路で使用しても,メーカは責任を負いません,ということですので,実際にDC回路で使用する場合は自己責任,と言うことになります。もっとも,”AC***V DC○○○V" と言う具合に両論併記で書いてあればもちろんOKです。

なお,コンデンサの電圧の位相が-90゜であることを考慮して計算すれば必要な容量がわかりますが,実際にはSpiceでシミュレーションして決めました。シミュレーション上は15~25μFくらいであればよいとわかります。

ただ,AC用コンデンサは一般に経年変化と容量誤差を考慮してフィルムコンが使われるのですが,AC400V耐圧くらいで25μFものフィルムコンデンサは大きくなります。 前々回,KMQ60を修理したとき,15μFのコンデンサを使うと50V下げられるとわかったのですが,KMQ60はシャシー内のスペースが小さく,これですら収まらない状況でした。幸い,A3600は割にシャシー内にスペースがあるので何とかなりそうです。

⑤の自己バイアスはg1をグリッド抵抗を介して接地し,8045Gのカソード~GND間に620Ωの抵抗を挿入します。ただ,これも損失が15Wにもなります。余裕を見て20Wくらいの抵抗が必要で,やはり大きくなりますし,放熱のことも考えると結構面倒です。やはり,8045Gは固定バイアスで使うことが前提で設計されているようです。

①のチョークインプット整流は一番簡単で,発熱もないし,いい方法です。

チョークインプットはレギュレーションがいいことでも知られていますので,最大出力時の電圧降下を小さくできるのがメリットです。 

しかし,A3600をチョークインプット整流にするとハムが出る,と言う話を聞きました。実際,Spiceでシミュレーションしてみますと,ドライバ段のリップル電圧が300mVP-Pを超えます。B電圧も390Vと,少し下がりすぎ,という気がします。改造が少しで済むのでいい方法だと思うのですけどね.....。もっとも,球の寿命という観点からはこれくらい電圧を下げた方がよいと思いますけど。

ただ,チョークインプットはいい方法なんですが電圧が自由に決められないのがネックです。また,A3600は0.35Hという小さなインダクタンスのチョークコイルが使われていて,B電圧の降下は100Vほどで済むので電圧調整にはいいくらいですが,普通のアンプのように5Hくらいのインダクタンスを持っているものだと電圧降下が大きすぎ,B電圧は250Vくらいになってしまいます。

A3600はプッシュプルのアンプで,出力部に行くB電流はリップルがあっても出力トランスで打ち消されるので問題ありませんが,ドライバ段以前は抵抗結合のアンプなのでリップルの影響を受けますから,この電圧だとハムが出ると思います。

と言う次第で,もし,A3600でチョークインプット整流にする場合はドライバ部の電源フィルタを増強しないといけません。 ついでに,Spiceでシミュレーションしましたが,150μFくらいにするとオリジナルと同じリップル電圧となりました。

最後に,今回は使用しませんでしたが,6G-A4シングルアンプなどで使ったTrを使った④のリップルフィルタはベースに接続した抵抗の値による自由にB電圧を変化させることができますのでよい方法です。ただ,大出力パワーアンプだと制御Trの損失が大きくなりますので,やはり放熱には気をつかう必要があります。実際,今回は16Wもの熱を放熱する必要があるので見送りました。レギュレーションという観点では抵抗と違って非常に優れているのですが,熱については同じです。

以上を勘案し,結局,iruchanはコンデンサを使って電圧を下げる方法を採ることにしました。これならコンデンサの容量で自由にB電圧を設定できますし,リップルの点からも有利です。

さっそく,Spiceでシミュレーションしてみます。まずはオリジナルの状態から。

A3600 original電源回路.jpgオリジナルの電源部

A3600 original.jpg Spiceシミュレーション結果

回路図どおりの電圧となることがわかります。B電源のリップルは4VP-Pくらいで,ドライバ段は119mVP-Pでした。これを目標にします。なお,出力段はプッシュプルなので,シングルアンプならアウトですけど,これくらいのリップルは平気です。ちなみに米国製のアンプなんか,電源部のフィルタにチョークコイルを使っていないものがありますけど,それは出力段がプッシュプルだからです。

挿入するコンデンサは20μFとします。この場合,電圧は431Vで,ドライバ段のリップル電圧は111mVP-Pとなりました。B電圧を60Vほど下げられます。

A3600 20μF.jpg 挿入コンデンサ20μFのとき

ついでに,15μFとすると,もう少し電圧を下げられます。コンデンサのサイズも小さくて済みますので,15μFでもよいと思います。

A3600 15μF.jpg 15μFのとき

ついでにチョークインプットの場合も一応,検討してみます。

A3600 original電源回路(L input改造)1.jpg チョークインプット改造

B電圧は100V程度下げられますが,少し下げすぎ,という感じがします。出力は50W以下に低下するはずです。また,ドライバ段の出力電圧も小さくなっちゃいますので,アンプ部の変更も必要になります。

なお,ドライバ段のフィルタコンデンサを▲のように150μF以上にしないと,オリジナルのリップル電圧と同じになりません。フィルタコンデンサはオリジナルは47μFでしたから,チューブラの電解コンデンサを100~200μFくらい追加してください。

一応,iruchanはAC用コンデンサを挿入する方法としました。 これだと自由に電圧を決められますし,リップル電圧も問題ないようです。

さて,お次はこのコンデンサをどうやって入手するかなんですが.....。

普通に秋葉原を探してもAC用のコンデンサは入手しにくいと思います。また,RSコンポーネンツを探してみたのですが,どれも高いです。

結局,Amazonで買いました。なんでAmazonがこんなの売っとるんや~~!?

UXCELという会社が販売している,AC450V,20μFのポリプロピレンフィルムコンデンサにしました。値段は800円ほどでした。サイズは50×31×44mmです。A3600のシャシー高さは35mmでしたから,中に入ることがわかります。

20μFAC用フィルムコン.jpg SENJUって!?

どうにも日本製みたいなブランド名をつけた,あやしげなブランドの中国製コンデンサですが,作りはとてもしっかりしていて,エポキシ樹脂で固められていて信頼性は高そうです。 

ちなみにフィルムコンデンサは何種類もありますが,普通に入手できるものは大体2種類です。ポリプロピレンフィルムを使ったもの高級品です。そのほか,よくマイラーコンデンサと言われるのはPET樹脂を使っていて,安価なコンデンサです。高信頼のフィルムコンはポリプロピレンを使っています。 

本来は進相コンデンサと呼ばれるもので,誘導モータの始動用です。誘導モータは3相交流のものは自動的に回転磁界ができるので不要ですが,単相の誘導モータの場合はこのコンデンサを使って90゜位相の進んだ電流を作って別の巻線で磁界を生じさせて回転磁界を作ります。起動時のみ必要なので,始動用コンデンサとも言いますが,一般的に始動後も切り離さず,つけっぱなしにしています。数年前,古い扇風機が発火する事故が相次ぎましたが,このコンデンサの劣化が原因です。長年の使用で液漏れしてESRが増大し,発熱したんです。もし,ご使用の扇風機が回らないとか,回転数が低くなった,と言う場合は使用を中止してください。

もともとモータの始動用なので電流を流して使用するのが前提のコンデンサなので,問題ないと思います。Amazonのは洗濯機用と書いてありました。もう,国産の洗濯機はインバータ式なので進相コンデンサは使用してないと思いますけどね。

さて,以上で電源部の設計ができましたので,実際に配線していきます。まずは古い部品の交換から。

電源部 前.jpg B電源の整流Di。オリジン製RA-1

なぜか前回修理した,同じラックスキットのKMQ60でもそうでしたが,古いシリコンDiのリード線は真っ黒になってしまいますね。表面の銀メッキが空気中の硫黄分と反応して硫化銀になるからですが,特に整流用のダイオードはひどいです。 通常は問題にならないと考えていたのですが,三菱のオーディオ用で有名なデュアルの2SA798や,BCLラジオなどに多用されている2SC710などはノイズの原因になるようです。どうも硫化銀がチップ表面まで侵食するようです。

こういう問題があるので表面の銀メッキというのは廃れてしまい,今ではあまりやっていないと思うのですが,どうも整流用ダイオードだけはやっているようですね。もっとも,Trや抵抗などに使われているスズメッキというのも要注意で,これはウィスカとよばれる樹脂状の再結晶が成長して隣の電極とショートしたりする故障が出ますので,問題になっています。昔は少し鉛を加えるとウィスカを抑えられたのでよかったらしいのですが,最近のRoHS指令などで鉛が使えなくなってまたウィスカの問題が出てきています。 

A3600 電源部改良後.jpg 電源部改良後

ブリッジになっているDiをトランスのピンひとつずらして取り付け,部にコンデンサを挿入しました。

使ったのはGeneral Semiconductor(今はVishayのようです)のUF5408です。1kV,3Aで,trr=75nsという優れものです。 やはりファーストリカバリはノイズも少なく,オーディオ用には最適だと思います。なお,ファーストリカバリDiは通常のシリコンDiと違って,若干,順方向電圧が大きめで,発熱が大きくなりますので注意してください。今回のアンプだと負荷電流は0.3Aくらいですが,規格表を見ると,このとき,順方向電圧は0.9Vくらいになりますので,放熱には留意することが必要です。リードを長めに切り,トランスからは浮かせて配置するようにしてください。

また,バイアス設定用およびバランス調整用の半固定抵抗は普通の小型のボリウムが使われていましたので,どちらもコパルのRJ13Bに交換しました。500円もする高価なものですけど,アンプの安全を考えたら安いものです。

RJ13半固定.jpg 半固定抵抗(左:RJ13B,右:オリジナル) 

さて,次はB電圧降下用のコンデンサを追加します。非常にサイズが大きいので苦労しますが,なんとかOPTの隣にスペースがあるのでそこに設置しました。

コンデンサ設置位置.jpg OPTの横に置きました。 

端子部,入力VR.jpg 入力端子は錆びちゃってます

ついでに,入力のRCA端子と音量設定のボリウムを交換しました。

入力端子はKMQ60などだと秋葉でも売られている2Pの端子ですが,A3600はちょっと特殊な端子なので,アルミ板で自作しました。ついでに,黒く塗りました。ボリウムは信頼性の高いJIS規格のRV24YNを使います。 

RCAジャック.jpg アルミ板で固定します。

端子部,入力VR(改良後).jpg 取替後です。

次はアンプ部を修復したいと思います。 B電圧が60Vほど下がりますので,8045Gの出力がどれくらいになるか,事前に検討しておきましょう。また,電圧増幅段も再度,定数の変更を含めて検討が必要です。また,オリジナルの6240Gの代わりに6FQ7を使用したドライバ段の修正についても検討したいと思います。 


Spiceによる真空管のシミュレーション [電子工作]

2016年11月8日の日記

最近はiruchanはなんとかLTspiceの使い方を覚えて,アンプやラジオのほか,電子回路の設計に活用させていただいています。 実際に基板を作って回路を作らなくてもシミュレーションができるし,何か不具合があってもSpiceで検証できるのでとても助かっています。

そこで,以前から思っていたことを実行しよう,と思いました。

実は,Spiceは半導体だけじゃなく,真空管もシミュレーションできるのです。

もちろん,リニアテクノロジー社が提供しているフリーのLTspiceや,本格的なSynopsis社のHSpiceなど,有料のものでも真空管はモデルとして含まれていません。まあ,今どき,プロで真空管をSpiceで設計し,製品を販売する会社も人もいませんしね。

でも,Spice自体は1973年に米カリフォルニア大バークレー校で開発されたもので,世界中のエンジニアやマニアたちが開発に携わっていますし,中には凝った人もいて,すでに1990年代に私が読んでいた米誌 "Glass Audio" にも真空管のシミュレーション記事が載っていたので,いつかやってみたいと思っていました。でも当時はLTspiceのようなフリーのものはなく,まだとてもシミュレーションできる状態ではありませんでした。

ただ,今でもSpiceで真空管をシミュレーションするのはなにやら難しそうで,LTspiceを使い始めたのに,まだ取り組んでいませんでした。

一応,LTspiceにはtriodeというモデルがあり,呼び出すことができます。

triode.jpg おっ!?

  一応,3極管のモデルはあるのですけど......。 

ただ,これはtriode.asyというファイルなんですが,単なるシンボルだけで,シミュレーションをするための内部のサブサーキットは含まれていません。ですから,このモデルを回路図に貼りつけて配線しても,シミュレーション実行をするとエラーが出てシミュレーションできません。

unknown subcircuit error.jpg 何じゃ,これ!?

これは,回路計算をするためのサブサーキットが入っていないと言う意味で,単なる図形のデータしか入っていないから計算できません,と言う意味です。

と言う次第で,問題はやはり,真空管のモデリングです。以下は,真空管式ギターアンプ製作センターに載っている方法を使わせていただきました。とてもわかりやすく解説してあり,本当にどうもありがとうございます。あわせてご参照ください。

真空管のSpiceモデル化はしかし,大変です。要は特性曲線を数式化してすべて記述しておけばいいのですが,そもそも特性曲線はメーカが数式化しているわけじゃなく,単に図表として発表しているだけなのでこれを読み取って数式化する必要があります。

ちょっとこれは大変。とても自力でやろうとは思いません。

でも,世の中,とても奇特な方がいて,全世界の真空管をモデル化し,ネット上で発表している方がいます。Ayumiさんという方のAyumi's labというページで,そこで真空管のモデルをダウンロードできます。

これはもう,驚いちゃいます。2A3にはじまって3C33(まあ,特性的には2A3×2と言うような球ですけど),6BQ5などの出力管から5AR4などの整流管も含まれています。 出力管も3C33がそうですけど,ポジティブグリッドの6AC5や欧州管のPX4などの珍しい出力管も含まれています。おまけに6G-A46R-A8などの純国産真空管も含まれているのはとても驚きます。

と言う次第で,ありがたくこのAyumiさんのお仕事を使わせていただきます。残念ながらコメント欄なんかでリンクの連絡ができませんでしたので,勝手にリンクを貼らせていただいています。

では,このモデルファイルを使ってLTspiceで真空管のシミュレーションをしていきましょう。もちろん,LTspiceをインストールしないといけませんが,ここでダウンロードできます。

まずはAyumiさんのファイルを少し,改造します。

おそらくはAyumiさんはプロの電子回路設計者なのでSpiceもLTspiceのようなフリーのものじゃなく,HSpiceなどの有料版をお使いなのだと思いますが,そのため,少し文法がLTspiceと異なるのです。

と言っても大したことじゃなく,累乗の演算子 ^ ** となっているくらいのものです。

まずは12AU7をモデルとしてインポートします。

AyumiさんのWEBからモデルファイルをダウンロードして,12AU7.incファイルを開きます。

単なるテキストファイルなんでメモ帳でいいのですが,一応,Windowsに標準でついているワードパッドで開く方が便利です。なんでかというと,ワードパッドだと文字列の置換ができるからです.....っと思ったのですが,メモ帳で置換機能がなかったのはWindows98まででした。古っ~~!! 

と言う次第で,別にワードパッドじゃなくてもメモ帳でOKです。 

上記の通り,演算子の ^ ** に置換しておきます。

12AU7.inc書き換え.jpg ^ を ** に書き換えます。

それにしても^1.5と言うのがよく出てきますが,これはラングミュアの法則ですね!!

3極管のプレート電流は電圧の3/2乗に比例します。iP=G・VP^(3/2)です。ここで比例定数Gはパービアンスと呼ばれますが,昔習ったよな~と思い出しました。もちろん,私が電子工学を勉強していた頃にはとうに真空管は姿を消していましたけど,大学の実験では真空管をやりました。 

そうやって変換した12AU7.incをLTspice所定のモデルファイルの場所にコピーしておきます。LTspiceをデフォルトのまま,インストールするホルダを変更していなければ,C:\Program Files\LTC\LTspice**\lib\sub です。**の部分はLTspiceのバージョンです。 

inc.ファイルコピー場所.jpg 真空管モデルのコピー先です。

ただ,このファイルは内部の特性を記述しただけのものなので,今度は図形としてのシンボルファイルを作っておきます。

次は先ほどの,troiode.asyと言うシンボルファイルをコピーして12AU7.asyという風に名前を変えておきます。 場所はC:\Program Files\LTC\LTspice**\lib\sym\Misc です。 

triode_asy.jpg 

ただ,これだけじゃもちろんダメで,サブサーキットとして先ほど作った.incファイルを読込むよう,指示しないといけないのでファイルの中身を書き換えます。

単にダブルクリックしちゃうと違う画面になって編集できないので,"プログラムから開く" → "メモ帳" で開きます(今回はワードパッドじゃなくても大丈夫です)。  

triode.asy普通にダブルクリック.jpg ダブルクリックするとこうなっちゃいます。

これは図形データの編集画面で,今回,いじるのはこれじゃありません。メモ帳で開くと, 

12AU7.asy.jpg 書き換え箇所です。

こうなります。ここで, SYMATTR Value triode とあるところを書き換えて 12AU7 とし,さらに,次の1行を追加しておきます。

  SYMATTR ModelFile 12AU7.inc   ※ "ModelFile" はこの通りででないとエラーになります。

さて,これでようやくシミュレーションができるようになります。

まずは普通に半導体を使ったLTspiceのシミュレーション同様,回路図を描いてきます。

12AU7 test circuit.jpgこんな回路をシミュレーションします。

12AU7 f特.jpg f特です。

まずはごく普通にAC解析を行います。▲のようなf特が得られます。

これだけでまずは感動しちゃいます。スゲェ~~!!

でもよく見ると変。フラットになっている部分は20dBくらいなので,12AU7のごく標準的なゲインだと思いますけど,f特は-3dBで16Hz~5.4MHzとなっています。ほんなアホ な!!!

最初,ミラー効果がシミュレーションされていないのだ,と思っちゃいましたが,12AU7.incファイルを見るとちゃんとCg-pが記述されていますので,そうではないようです。

実は,実際の回路に含まれる浮遊容量を考慮していないためです。実際にはCg-pのほか,真空管の入力部にはソケットや配線の容量があり,20~50pFくらいはありますので,もっと入力の容量が大きく,高周波の特性は悪くなります。この辺はこの記事をご参照ください。

それに,入力の信号源も出力インピーダンス0Ωの理想音源で,これでは入力容量によるハイパスフィルタ効果がありません。 

だから,この結果はあくまでも理想状態の結果です。それにしても,もし,そうだったら真空管ってこんな広帯域なのか,と思いました。実際には12AU7のシングル増幅器だと上限はせいぜい50~70kHzくらいのものです。

実際には,各配線に数十pFの浮遊容量がありますから,▼こんなものでしょう。

12AU7 f特1.jpg 

さて,お次は最大出力電圧とひずみ。いったい,クリップする電圧は何Vなのか,ということと,ひずみ率がどうなるか,と言うことに興味が出てきます。

SpiceはFFTの機能がありますが,意外にひずみ率を出すのは面倒なことになります。 

iruchanもFFTがあるのは知っていましたし,単純に各高調波を全部合計するとOKなんですけれど,各高調波は単位がdBなので和の計算をするのはチョ~面倒で,暗澹としていましたが,flipflopさんのHPで一発で表示させる方法を知りました。ありがとうございました。 

ひずみの算出はAC解析ではなく,過渡応答解析(transient analysis)となります。1kHzで解析しますが,この場合,1秒とか,長い時間を計算する必要はなく,せいぜい10msec.くらいで結構です。フーリエ変換を用いて計算するので,10波程度,計測時間に入るようにstop timeを設定します。

また,フーリエ変換をさせるためのコマンドをシミュレーションに記述しておきます。

Edit simulation command.jpg シミュレーション条件

.Four 1k v(n***) がフーリエ変換のコマンドです。これを書いておかないと,▼のログファイルに出力されません。 n*** はデータを出力するノード番号です。テキストボックスの中に手で入力します。改行はctrl+ENTER です。 

入力にある,電圧源V1の出力電圧を1mVくらいから変化させて出力の波形を見ていきます。

12AU7 1kHz, 1Vp.jpg 入力1Vの時です。

きちんと入力と出力の位相が反転していることがわかります.....。当たり前ですけどね.....。 

12AU7 1kHz, 10Vp.jpg 10Vになるとひずみます。

さすがに,入力電圧が10Vともなると出力波形はクリップ近くなり,上下非対称の波形となります。奇数次の高調波がすごく増えてきているんですね。 

出力波形のひずみ率については,ログファイルに記載されています。ctrl+L で表示されます。 

Fourier result.jpg

各高調波ごとのパーセンテージが表示され,最後に全高調波ひずみ率が表示されます。 

ついでに,FFTの波形を見ることもできます。viewコマンド中にFFTというのがあります。 特にひずみ率を調べたいだけなら表示する必要はありません。

view→FFT.jpg FFTコマンドです。

12AU7 1kHz, 1Vp FFT.jpg 入力1Vの時の出力FFT結果

12AU7 1kHz, 10Vp FFT.jpg 入力10Vの時の出力FFT結果

さて,こうやって求めた出力電圧とひずみ率をExcelでグラフにするとこうなりました。

12AU7入出力特性1.jpg12AU7のシングルアンプ特性

う~~ん,と思わずうなっちゃいました。こんなことができちゃうんですね~~。 これ,実験データじゃないんですからね!!!!

シミュレーションなんだから,ジグザグと誤差を含んだあやしげなグラフになってもよさそうですけど,まるで実測したみたいなきれいなグラフとなりました。

■ はNECのC-R結合増幅データにあるデータです。出力電圧はほぼデータどおりですが,ひずみは3倍くらい違います。まあ,これは実測の方が正しいと思います。当時のひずみ率計が真空管式で性能が悪くて雑音が多い,と言うことも考えられますけどね。 

結果として,最大95Vでクリップします。そのとき,ひずみ率は8%を超えちゃいますが,パワーアンプだと入力は最大で1Vですから,そのときのひずみ率は0.1%くらいです。やはり12AU7は優秀なんですね。

実はiruchanは真空管マニアだけれど,真空管アンプが音がよいなんて話はウソっぱちで,人間の耳は1%以下のひずみは検知できないし,半導体のアンプの方が音はよいと思っています。2%くらいになると明らかにわかりますけどね。

だから,真空管アンプが音がよいって言うのはいつも音楽を聴くレベルで人間の耳にひずみが感じられるかどうかのギリギリのあたりにひずみ率が来て,真空管によってひずみが検知できたり,できなかったりする微妙なあたりのひずみ率になるからだ,と思っています。また,ひずみ率によっては1%とか,2%とか,音がよいと思われるくらいの微妙なひずみ率があって,その辺で音のいい球,と言うのが決まるんじゃないかと思います。 

さて,これで無事にLTspiceで真空管のシミュレーションができるようになりました。今後,真空管アンプの設計にも使ってみたいと思います。 

 

2016年11月12日追記 ~整流管のシミュレーション~

AyumiさんのSpiceモデル集を見ていて,気がつきました。5Y35AR4などの整流管も載っています。 さっそく,実験してみます。

ただ,LTspiceは3極管triodeや5極管pentodeのモデル(と言っても単なるシンボルだけですけどね)がありますが,2極管diodeは出ていません。

と言う次第で,モデルのサブサーキット部分はAyumiさんのモデルが使えますが,LTspice上で使うにはシンボルデータの書き換えが必要となります。

まずは5Y3GTのモデルを作っていきませう。 

Ayumiさんの真空管モデル集から5Y3.incというファイルをメモ帳で開き,

5Y3.inc.jpg 5Y3.incの書き換え

例によって演算子の書き換えをします。** の部分です。2極管は特性曲線が1本だけなのでファイルは簡単です。 

次にシンボルデータの書き換えです。今度はシンボルデータtriode.asyをメモ帳で開き, 

triode→5Y3asy.jpg triode.asyのテキスト書き換え

12AU7.asyの時と同様,▲のように書き換えます。SYMATTR ModelFile 5Y3.inc を追加するのも同じです。

また,整流管は2極管なので,当然,グリッドは不要なので最後の部分でgridについての記述は削除し,PINATTR SpiceOrder3 とあるのを SpiceOder2 に書き換えます。最後に 5Y3.asy という名前で保存します。

つぎに,シンボルデータを書き換えます。 次は同じ5Y3.asyをダブルクリックして開くと,

triode.asy書き換え.jpg シンボルデータの書き換え

はさみのアイコンでグリッドを削除しておきます。

こうやるといよいよシミュレーションができるようになります。

6G-A4電源部(5Y3GT).jpg 

 この前作った6G-A4シングルアンプ電源部のシミュレーション結果。

なんと,本当にちょっと恐ろしいくらい,簡単にシミュレーションができちゃいます。なんて素晴らしいんでしょ!!

AC○○Vを両波整流し,コンデンサ○○μFに突っ込んだら出力のDC電圧は○○Vで,リップル率は○○%になるか,というのはとても難しい問題なのです。 といって,これ,いろんなところで必要だし,きわめて重要な問題なのですけどね。

コンデンサインプット整流の場合の直流出力電圧とリップル電圧については図表があり,負荷電圧/負荷電流で求めた負荷抵抗と入力電圧のほか,コンデンサの容量,トランスの直列抵抗の関数で求めることができます。でも面倒だし,実際やってみると違う,なんてことも多く,多くの場合,実際に組み上がってから調整,なんてなことになると思いますが,こうやると簡単にシミュレーションできちゃいます。 

まずはコンデンサインプットの出力電圧が出力が291Vでリップルが8.8VP-P,なんてことがすぐにわかっちゃいます。これ,ホントにめんどくさい話なんですけどね~~。 

さらに,Spiceだとリップルフィルタの出力が271Vで,リップル電圧が13.2mVP-Pなんてことがすぐにわかっちゃいます。それにしてもリップルフィルタの効果にも驚きます。リップル低減率実に-56.5dBですね!

また,5AR4を使ってみると出力が320Vくらいになって,大幅upなんてこともわかりました。実験でやると結構大変ですが,実際の通りの結果になって驚いちゃいます。実測データはこの記事をご覧ください。

なお,本モデルは整流管の立ち上がり時間までは考慮していません。シリコンDiみたいにインスタントONですのでご注意ください。▲のグラフで電圧の立ち上がりが遅いのはリップルフィルタのせいです。 

と言う次第で,整流管までシミュレーションできちゃうなんて本当に素晴らしいです。


けふの収穫

2016年11月6日の日記

今日は朝は少し曇っていましたが,昼からいい天気だったので,芋掘りをしました。

わが家では昨今の周辺事情を勘案し,軍備の増強とともに国民の糧食の確保を図るべく,庭で芋の増産をしています。前回は,芋を植えた話でしたが,今日はとうとう,芋の収穫です。

なぜか,わが家の前には2坪ほどの土の部分があり,草刈りをするのが大変なのでそれなら,と言うことでいろいろ植えて畑にしています。

ところが.....。

昨年のある日,すっかり太ってうまそうになったとうもろこしは収穫前になぎ倒され,さてはネコかたぬきの仕業かと思いましたが,収穫前のトマトも目の前の駐車場に穴が開いた状態で捨てられていて,ようやく原因がわかりました。カア公の仕業ですね!!

カア公はちゃんと収穫直前の熟れた頃を見計らって襲ってくるらしく,以後,空中に実のなるものはダメ,と考え,今年はさつまいもを植えました。ついでに,嫁はんが去年,料理し忘れて芽が出てきた,というさといもを植えました。ちゃんと忘れずに料理してくれェ~.....!!

芋畑.jpg 収穫前の様子

よく茂ってますけど.......。しかし......。

さつまいも&さといも.jpg これだけ芋が穫れました。

残念ながらさつまいもは1株,5個~6個程度,大きなものが穫れるらしいのですが,わが家ではせいぜい1個。どうもインターネット上には "さつまいもは肥料はいらない" と書いてあるので鵜呑みにしてしまい,肥料をやらなかったせいのようです。

農業に詳しい河童さんに伺ったら,確かにさつまいもはそれほど肥料はいらないが,やはり肥料は必要,とのこと。やはり詳しい方にちゃんと伺う必要がありますね。

それにしてもカラスのこともありますけど,苦労した割にさつまいもは大して穫れず,本当に農業をしておられるお宅のご苦労がとてもよくわかりました。 

と言う次第で,来年こそはリベンジ,と考えているiruchanでした。とりあえず,芋の後にはハツカダイコンを植えておきました。年末には収穫できるでしょう。これはサラダですかね。

嫁はんが料理し忘れたさといもは割にたくさん穫れました。しばらく寝かせておでんにして食べようと思っています。

沖縄天ぷら粉.jpg 沖縄天ぷら粉をAmazonで買いました。

iruchanは2年前にさよなら747ツアーと称して沖縄に行ってから,沖縄の食べ物にはまってしまいました。現地で食べた沖縄天ぷらが気に入って粉をAmazonで買って自宅で作って食べています。

沖縄天ぷら1.jpg 氷水で冷やしてから揚げるとおいしいです。

沖縄天ぷら.jpg 沖縄ではもっと衣が厚いですけどね....。

ついでにおいしい沖縄天ぷらを作りました。野菜はほとんど頂き物のカボチャ,さつまいも,インゲン,ピーマンです。後は鶏肉のささみとエビです。ホントはメカジキがほしかったのですが,近くのスーパーじゃ売っていませんでした。

でも,沖縄天ぷらは本当においしいです。普通の天ぷらと何が違うのかよくわからないんですけどね.....。子供たちも大好きです。 

泡盛.jpg  今晩は泡盛と天ぷらだ~~!!

沖縄で泡盛を飲んでからすっかりはまってしまい,毎晩,泡盛の水割りで晩酌をしています。本当に泡盛はさらりとしていて飲みやすくておいしいです。むしろ,芋焼酎や麦焼酎の方がプンと臭いがして飲みにくい感じです。  

なぜかAmazonで泡盛も売っているんですね。今までは別のお店で買っていたのですが,送料が高くて今回はAmazonにしました。送料も無料だったので助かります。今回は宮古島の請福酒造さんの泡盛と,いつも飲んでいる定番の残波を買いました。

ついでにスケーターさんのアナ雪ステンレスタンブラーも買っちゃいました。300ml入りのは前,買ったので今回は250mlです。アナがかわい~~!!

せっかくなので300mlと250mlでイラストが変わっているとよかったんですけどね....。著作権の関係か,同じイラストです。裏側は錦織圭がそっくりのオラフなのでいつもアナとエルサの方をこっちに向けています......。

でも大好きなアナ雪グラスで飲む泡盛はサイコ~......!!(^^;)。

それに,このステンレスタンブラーは真空保温なので驚くほどいつまでも冷たい飲み物が飲めます。夏でも30分以上,氷が溶けないのは驚き。それに,グラスの壁が水滴で濡れないのでコースターがくっついて持ち上がったりしないのもゴキゲン。これ,不愉快ですよね~。水割りを飲むといつまでも冷たくてとてもおいしいです。お酒のお供にぜひおすすめします。 ホントは子供が冷たいジュースを飲むためのものなんでしょうけど.....(^^;)。