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6G-A4シングルパワーアンプの製作~その5・改良編~5極管ドライバの高周波特性の改良 [オーディオ]

2016年7月2日の日記

前回でひとまず完成としましたが,宿題が残りました。

どうにも高域のf特が悪く,10kHzで-1dBとなっています。

原設計は武末数馬氏ですが,モノラルアンプということからも設計年代としては1950年代と思います。実際,"パワーアンプの設計と製作" 上巻の巻末にある出典を見ると,ラジオ技術 '59.5月号のようですから,ステレオのLPが出始めた直後ですが,まだモノラルのLPが主流だった時代です。もちろん,当時としては広帯域で,LPの再生帯域から考えても十分です。ただ,現代のCDやそのほかのデジタルソースの再生を考えるともっと広帯域にしたいところです。

と言う次第で,最低でも30kHzくらいまでフラットなアンプにしたいと思います。と言って,もちろん,もとの設計のままでも十分な音質であると思います。仮に10kHzで1dB落ちているからと言って,耳で聴いてわかるものじゃないことくらい,十分にわかってはいるのですが,一度,f特を見てしまうともっとよくしたいと思いました。

原因は武末氏も書いていますが,ドライバ管の6AU6の出力インピーダンスが高い上,入力の6G-A4が3極管のため,入力容量が大きく,この2つの要素で構成するローパスフィルタのカットオフ周波数が低くなってしまうためです。

ちょっと試算してみましょう。

まず,今回のアンプのドライバ~出力管の回路は次のようになります。

5極管増幅回路記号.jpg 

5極管は出力インピーダンスとしては内部抵抗Pのほか,プレートの負荷抵抗RPと次段のグリッド抵抗Rgの並列抵抗となりますが,内部抵抗Pが高いので,後の2つの並列抵抗と考えてよいです。また,この図にあるように,3極管の周りには3つ,コンデンサがついている格好となります。これはもちろん,5極管や半導体も同じで,すべての素子には必ず電極間の容量があります。

一方,3極管の等価入力容量Cin’ はもとからあるグリッド~カソード間の容量Cin に加え,グリッド~プレート間の容量Cg-p の和になります。 

ところが,単純に和になるだけならいいのですけど......。

増幅素子なので,3極管のゲイン倍の容量も加わってしまうのです。結局,グリッド~プレート間の容量は(1+A)・Cg-pとなります。悪名高いミラー効果ですね!!

このせいで周波数特性が悪くなります。 

真空管増幅等価回路2.jpg

    5極管ドライバの出力回路の等価回路

結局5極管で増幅させると,等価回路は▲のようになり,出力電圧には等価入力容量Cin’ が入ります。出力インピーダンスとこの容量でローパスフィルタを形成するので,高域が低下します。 

実際,6G-A4の各電極間容量は東芝の規格表から,

Cg-p 6.5PF

Cin 5.0PF

であることがわかります。シングルA1級増幅回路ではゲインA=8なので,結局,6G-A4の等価入力容量Cin’ は63.5pFと求められます。

ところが,多極管だと小さくて,Cg-p 6BQ5だと0.5pFで,6V6だと0.7pFです。これは,グリッドとプレートの間にスクリーングリッドがあり,直流的には数百Vかかっていますが,交流的には接地して使うので,グリッド~プレート間が容量結合しないためです。だから高域特性の面からは多極管の方が有利です。

これだけじゃなく,実装上はソケットや配線の容量も加わりますので,6G-A4の場合はトータル100pFくらいとなるはずです。

一方,武末氏の回路で使用されている6AU6の負荷抵抗RPは270kΩ,次段の6G-A4のグリッド抵抗は500kΩですので, 6AU6の出力インピーダンスは175kΩです。となると,このローパスフィルタのカットオフ周波数は1/2πC・Rで表されますから,9.0kHzとなります。

iruchanは前段に6SH7を使用し,RP=270kΩ,Rg=360kΩですから,出力インピーダンスはカットオフ周波数は10.3kHzとなり,実測とほぼ合います。

で,これをどうしようか,と言うと......。

出力管のCg-p は真空管固有の値なので変えることはできません。が,何らかの方法でキャンセルできればよいので,よく高周波回路では中和コンデンサというのを使用します。実際,高周波回路だとカットオフが10kHzなんてことじゃ使えませんのでね。

ただ,この方法はオーディオのアンプじゃ使えません。高周波回路だと同調増幅回路となっていて,負荷はコイルとコンデンサを使った単同調回路になっています。このコイルの一端から逆相の信号をグリッドに戻すのですが,コイルを使わない低周波回路では使えません。

と言う次第で,結局,プレート負荷抵抗とグリッド抵抗を下げるしか,方法はありません。

仮に,RP=100kΩ,Rg=100kΩにしてみると出力インピーダンスは50kΩですからカットオフは31.8kHzとなり,十分な値です。

これを目指すことにしますが,いろいろ問題が出てきます。

そもそも,6SH7がこの負荷に耐えられるか,と言うことがまず第一です。直流的には100kΩの負荷ですが,交流的には50kΩというかなり低い抵抗値となってしまいます。

まあ,一応,SYLVANIAやNECなど真空管メーカが発表しているC-R結合増幅データにはEbb=250Vのときのデータがあり,RP=100kΩ,Rg2=270kΩという場合のデータが発表されているので,おそらくは問題ないと考えられます。

次に,ちゃんと次段の出力管をドライブできるだけの電圧を出力できるか,と言うこともチェックしないといけません。6G-A4のバイアスは-18Vなのでドライブ電圧はこれの1/2√2ということで6.36Vrmsで十分ですが,能力として30Vrmsくらいはほしいところです。 こちらも実測で確かめないといけませんが,先のSYLVANIAのデータからは50V以上出力できるようなのでこちらも問題ありません。

ということで実際に抵抗を取りかえ,実測してみます。

まずは出力電圧は6SH7で最大64.8V,6SJ7で33.4Vということで十分です。

懸案の周波数特性も測ってみました。予想どおり,30kHzまでフラットなのでOKのようです。

ところが......。

うっかり6SJ7のときの電極電圧を測定し忘れていました。なんと,プレート電圧EP=25.1Vなのに対し,スクリーングリッド電圧Esg=51.6Vとなっています。 こりゃあかん......orz。

6SH7のときはそれぞれ60.2V,63.2Vなのでいいや,と思って6SJ7のときに測定するのを忘れていました。

普通,5極管はEP≧Esgで使用します。この逆だと特性がでたらめになります。 フッターマンのOTLアンプなどは大量にプレート電流を流すため,スクリーングリッド電圧の方がプレート電圧より大幅に高い電圧で使っていますが,普通の電圧増幅管ではこのようなことはしてはいけません。

どおりでオシロで波形を見ていたら波形がひずんでいて,これはあかんな.....と思っていました。

結局,RP=100kΩ,Rg2=270kΩという組み合わせはダメで,Rg2=560kΩにしました。これだと,6SH76SJ7で,プレート電圧131.6/109.5V,スクリーングリッド電圧77.0/57.4Vとなりました。 

これでようやく試聴ができます。

ところが.....。

なんとも音が力強くないのです。

どうにも力の強さなんて,科学的じゃない表現なんですけど.....。でも,実際にそんな感じなんです!!

原因としてはダンピングファクタが小さいんだと思いました。だから低音が弱くて力強く聞こえないんだと思いました。

実際,ダンピングファクタを測ってみると5程度です。前回だと8くらいはありましたから。

原因はドライバの負荷抵抗を下げたことにより,ドライバのゲインが不足し,NF量が減ったからですね。

NF量は今回,8dB程度になってしまいました。前回は14dBもありましたから,6dBほど低下したことになります。

まあ,事前にこんなことは予想していたわけで....。以上の検討中に,7dBくらいNF量が低下するだろうと考えていました。

さすがに本機はMLF回路になっているので,もっとNFBをかけたいところです。8dB程度の負帰還ならMLF回路にする必要もないくらいですし,ダンピングファクタも8くらいはほしいところです。

と言う次第で,まずはNFBを取っているのが16Ω端子からでしたが,H-5Sは32Ω端子もありますので,ここから取ればNF量は3dBほどupするはずです。

残り3dBは外側ループのNF抵抗を減らすことで対処しました。原設計は8.2kΩでしたが,これを4.3kΩにしました。 

ただ,これでいいや,と思ったのですが,スピーカをつないでみてびっくり。6SH7のときだけ,ハムが出るんです。6SJ7のときは問題ありません。残留電圧を測ってみると4~5mVの値になっています。もっとも,ハムが出るのは手持ちのRaytheonの軍用のもので,国産のNECや東芝のものは出ません。  

Raytheon 6SH7GT.jpg 

 Raytheonの6SH7GT(米国製の6SH7のガラス管は珍しいです)

東芝6SH7GT-1.jpg 東芝の6SH7GTのクローズアップ

どちらもハム防止のため,カソードの上部に覆い被さるようにマイカが設けられています。それで,本来ならハムなんて出ないはずなんですが.....。

ゲッターはマグネシウムなど,導電性の物質なので,ヒータに付着すると電子を放出してハムの原因になるので,カソードスリーブの中に入り込まないよう,低雑音管はこのような配慮がなされています。松下の12AX7(T)とか,TENの6AU6Lなどがそうですね。 なんでRaytheonだけハムが出るのかわかりません。

実は,設計段階でGEの規格表を見て,このことは気がついていました。GEの規格表にだけ,"The 6SH7 is not recommended for use as a high-gain audio amplifier, because undesirable hum may be encountered." とあり,6SH7をハイゲインの低周波増幅に使用するとハムが出ることがある,という記述があるのです。

6SH7を前段に使ったアンプというのは数は少ないですが,上杉佳郞氏の "管球式ステレオアンプ製作80選" に載っている300Bシングルアンプなどでも使用例がありますし,普通に使えるものだと思っていました。

ところが,実際に聴いてみるとハムが出るのです。前回はこんなことがありませんでした。GEの6SH7はメタル管しか持っていませんが,今度,試験してみようと思います。おそらく,米国製の6SH7で,ある特定のプレート電圧やスクリーングリッド電圧のときだけ,ハムが出るようです。お気をつけください。なお,国産のものはハムが出ませんが,どうも国産のものはなにか改良してあるのではないか,といつも大変お世話になっている河童さんからご意見をいただきました。

あと,入力の可変抵抗を100kΩに変更しました。原設計では500kΩですし,真空管の時代,500kΩ~1MΩの抵抗を使うのが普通でした。  

これは,パワーアンプの入力インピーダンスを大きくしてプリアンプの負荷を小さくするためです。実際,管球式プリアンプの出力は12AX7ECC83)のプレートから取っているものが多いのですが,12AX7は高出力が得られる代わり,負荷抵抗が大きいのでパワーアンプの入力インピーダンスが低いと合成負荷抵抗が小さくなって,出力電圧が小さくなってしまってまずいのです。歪も増えます。

パワーアンプに真空管を使い,プリに半導体アンプを使っている場合は問題ないのですが,逆をやるときは半導体のパワーアンプの入力インピーダンスは10kΩくらいなのでプリアンプの出力電圧に気をつけてください。どうにも音が小さい,と言う場合は回路のチェックが必要です。そういう意味でも真空管式プリアンプの出力にはカソードフォロアが必要だと思います。 

その意味で,真空管式プリアンプもカソードフォロアを入れて出力インピーダンスを下げた方がよいのですが,そういうプリアンプは少ないです。

といって,パワーアンプの入力に500kΩのボリウムをいれ,そのまま初段の12AX7に入れる,と言うような前回の三栄無線のSA-523型パワーアンプのような設計は当時としては普通ですが,現代の広帯域アンプとしては不適です。

可変抵抗は中点のときに出力インピーダンスが最大で,500kΩの可変抵抗の場合,中点だと250kΩの抵抗がパラになっている状態ですので,500kΩの可変抵抗の最大出力インピーダンスは125kΩです。

初段入力回路.jpg 初段に3極管を使用したとき

初段に12AX7を使ったアンプの場合,▲の議論と同じで,12AX7のCg-pは1.6PFで,Cin=1.7PF,A=57ですから等価入力容量はやはり100pFくらいとなります。 こうなると高域のカットオフはやはり12.7kHzとなります。

と言う次第で,入力の可変抵抗は100kΩにしました。これだとカットオフは63kHzだから十分です。

パワーアンプの初段に12AX7のような高μ3極管を使うときはボリウムの値にも気をつけてください。  

f特と入出力特性を測定しておきます。 

6G-A4 f特(6SH7).jpg6SH7のとき

6G-A4 f特(6SJ7).jpg 6SJ7のとき

周波数帯域は-1dBで20Hz~50kHzといったところです。予想より広帯域となりました。ただ,引き替えにトータルゲインは8~9dBといったところで,パワーアンプは20dBくらいのゲインはあった方が使いやすいので,トータルゲインは不足気味です。

感度が低下したため,約1Vで1Wの出力です。一般的に1V入力のときにフルパワーが出るように設計しますので,ちょっと感度不足ですね。

でも,最近のデジタル機器は2Vrmsの出力がありますし,実際にはプリアンプを使用しますから問題ありません。プリアンプもこの前修理したパイオニアのC-21プリアンプでは最大出力電圧は12Vもありましたから,十分だと思います。 

ダンピングファクタも改善されて7~8と言ったところです。 

10kHz方形波応答(最終).jpg 10kHz方形波応答

10kHzの方形波応答は,前回までだと過補償気味で,肩も非常になだらかな特性になっていましたが,今回は少しオーバーシュート気味で,これくらいがベストな状態です。 

最終的な回路を▼に示します。いくつか抵抗を取りかえていますし,OPT2次側の配線を変更しています。

6G-A4シングルアンプ5.jpg最終的な回路です。

電極の電圧はドライバが6SH7のときのものです。 

閑話休題。 

iruchanは今週,かやうなところへ行つてをりました。

北海道庁.jpg

札幌市電.jpg 札幌市電241号

すすき野付近は市電が環状化しました。学生時分からそんな話がありましたが,ようやくです。でも,素晴らしいことですね。お客さんもたくさん乗っていました。

この車両は1960年製です。6G-A4とほぼ同世代だと思います。 この電車も末永く頑張ってほしいと思います。それにしても札幌市電というと非電化区間があってディーゼルカーが走っていた,というのには驚きです。それを知ったとき,仰天しましたけど......(^^;)。

がんてつ 半ちゃんセット.jpg 

    札幌駅のらあめんがんてつの半ちゃんセット

やはり札幌に来たらラーメン。半チャーハンがついて950円とはとても助かります。とてもおいしかったです。今回の一番かな?

お土産.jpg

こんなお土産を買ってきました。昨年末に旧白滝駅を訪問できたことをうれしく思います。あの駅はもうないんですね.....。

 

ん!?,自分でリンクをクリックして気づきました。

▲の駅名標はしらたきとしもしらたきが実物と逆です。せっかく,しみじみしていたのに.....。気がつかなきゃよかった~。 


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6G-A4シングルパワーアンプの製作~その4・調整編~ [オーディオ]

2016年6月21日の日記

6G-A4シングルアンプ.jpg 完成しました! 

長年,夢であった,東芝の3極出力管6G-A4のシングルアンプを作っています。前回は製作編でしたが,今回はいよいよ火入れを行います。

さて,先週の間にほぼ配線が完了したので,何度もチェックしてスライダックで加圧していきます。やはりスライダックがあると便利で,慎重に加圧できるので安心です。

大体,AC80Vくらいになると整流管が動作して回路に電流が流れ始めます。B電圧も180Vくらいです。この時点で,6G-A4のカソード抵抗の電圧を測って6G-A4のプレート電流を計算します。50mA以下でないといけないので,これ以上流れていれば即電源を切ります。そのほか6SH7などの各電極の電圧を測っておきます。

これで問題ないようなら正規にAC100Vとします。再度,各電極の電圧を測定してみて,異常なければOKです。時折,6G-A4のプレートや整流管の電極内部などをチェックしておきましょう。6G-A4のプレートが赤くなっていたり,整流管内部でスパークしているようなことがないよう,確認します。

プレート供給電圧は273.1Vでした。OPTの1次巻線分と自己バイアスなので,バイアス電圧約18V分を引いて,プレート電圧としてはほぼ250Vです。ちょっと予想より低すぎました。本来ならプレート電圧280Vのつもりだったんですけどね。どうも整流管の6AX5GTの電圧降下が大きいようです。実際,カソード端で289.2Vでした。タンゴのカタログにあるように,6CA4の場合は350V出るはずなので,ちょっと残念です。 

プレート電圧は245V~250Vと言ったところで,出力は2.5Wでした。規格表どおりです。 

何も異常がなければほっと一安心で,可能でしたらオシロと発振器をつないで1kHzの正弦波を観測してみます。なければ実際にスピーカをつないで音を出してみましょう。

ついでにiruchanはここでf特を測定しておきました。特に,今回はMLF回路となっていて,NFB量が多いので,発振することもありますので,きちんと測定しておきました。

6G-A4, NEC 6SH7GT.jpg 

   NECの6SH7GTだとこっちを向いてくれるんですけど。

東芝の6SH7GTはプリント面が90゜ずれてそっぽ向いちゃいました。これ,結構困るんですよね~。みっともないのでNECにしました。というより,最初,NECでシャシー設計をして,あとから東芝を入手したので仕方ありません。NECの送信管4P55を持っているので,いずれアンプを作りたいと思っていますが,これも東芝のとプリント位置が異なります。 

6G-A4シングルアンプ-1.jpg 

 東芝の6G-A4と米Hewlett Packerd(RCA製)の6AX5GT

6AX5GT6G-A4にぴったりです。ちょっと背が低いですけどね。傍熱整流管だと立ち上がりも遅いので安心ですし。

さて,無事に完成したので特性を調べておきます。特に,今回MLF回路となっていて多重帰還回路となっているので発振しないか,きちんと測っておきます。

6G-A4シングルパワーアンプ特性.jpg周波数特性です。

NFBループは通常のSP~初段カソードの外側ループに加え,出力管のプレートから初段のカソードに帰還する内側ループの二重になっていますので,それぞれ特性を測ってみました。

内側ループで7.8dB,外側ループで5.7dBの帰還量となっていて,合計で約14dBとなっています。これだけ負帰還をかけているので,ダンピングファクタも良好で,8.6@1kHzとなりました。

ただ,どうも周波数帯域はあまり広くなく,せいぜい20Hz~10kHz(-1dB)と言ったところです。-3dBでも10Hz~30kHzと言ったところです。タンゴのH-5Sは古い設計の割に広帯域なトランスで,タンゴ発表のデータでは60Hz~80kHz(-2dB)とのことなのでもっと広帯域でもよいはずです。

原因は武末氏も書いていますが,出力管が3極管であるためミラー効果で入力容量が大きく,実配線状態で100pFくらい,また前段の出力インピーダンスも5極管を使っているため大きく,160kΩくらいです。となるとカットオフ周波数は10kHzくらいなので,これはどうしようもありません。やはり前段は3極管の方がよかったと思います.....。

といって,GT管だとハイμの3極管と言えば6SL7くらいしかないし,双3極管なのでちょっと面白くありません。SRPPにして2本使う,と言うことも考えられますが,どうもSRPPは好きじゃないので....。 

そこで,少しでも高周波特性をよくしようと考え,位相補償用の400pFを減らしてみます。武末氏の設計では外側のループの400pFというかなり大きめの位相補償用コンデンサが入っています。まず,10kHzの方形波を再生してみます。

400pF.jpg ちょっと過補償気味のようです。 

これほど肩がなだらかなのならもっと補償用のCの容量は小さくてもよさそうです。

そこで,120pFや50pFを試してみてもそんなに波形は変わらず,最終的に取っちゃいました.....。

0pF.jpg 0pFのとき。レンジが違ってごめんなさい。

わずかにリンギングが出るくらいでOKなんですけど,0pFにしてもこんな波形で,結局,位相補償は0pFでOKでした。H-5Sの高周波特性がよく,十分に高域時定数のスタガ比が取れているようです。 

そんなこんなで,今取るべき対策はなさそうなので,また宿題にしておきます。 

最終的な回路を▼に示します。位相補償用コンデンサを取っ払ったほか,B電流測定用に1Ωの抵抗を電源部に追加しました。

6G-A4シングルアンプ2.jpg 

と言う次第ですけど,これでようやく音を聴けますね!!!

まずは最近入手したフォーレのレクイエムのCDから。CDプレーヤはもちろん,最近修理したPhilipsの名機CD104です。これ,日本ではマランツのCD-34です。

faure requiem.jpg 

  マルタン指揮サン・トゥスタッシュ管弦楽団&合唱団のフォーレ・レクイエム(徳間 TKCZ-79221)

ダミーヘッドを使ったワンポイント録音で有名なアンドレ・シャルランが録音してレコードをシャルランレーベルで出していましたが,音がよいことで有名でした。いずれも1960年代の録音なので,マイクはもちろん,テープレコーダもステューダやルボックスの真空管でしょう。キングからレコードで出ていたほか,最近だと徳間からCDで出ていたようです。ただ,この盤のCD復刻はどれもあまり音がよくないと評判がよくありません。マスターからじゃなく板起こしという話もあります。それに,なぜかこの徳間盤はリベラ・メが曲名から抜けています。あれっと思ったらちゃんと入っています。5曲目のアニュス・デイとくっついちゃってるんですね。変なの!? LPはとても高く,eBayを見てみたら24ユーロの値段がついているものが出てました。

残念ながら今では絶版で入手できませんが,いずれまたどこかから出るでしょう。iruchanはAmazonのマーケットプレイスで格安で入手しました。送料の方が高かったです。 

おもわず,おぉっ!?と思っちゃいました。フォーレのレクイエム自体,名盤がひしめいていて,iruchanも何枚も持っていますけど,お気に入りはアンセルメ指揮スイス・ロマンド管のDECCA盤ですが,やはりクリュイタンス&パリ・音楽院のEMI盤が一番でしょうね。バリトンがフィッシャー・ディースカウなんて,いつも反則!! と思いますけどね。 あまり知られていませんが,クリュイタンスはモノ盤もあり,以前,EMIから出たのでそちらも持っています。

マルタン盤はどうにもアンサンブルがばらばらで,意外にいろんな人が探している割に演奏そのもののネットでの評判はいまいちのようです。実際,どうにもトランペットが出しゃばりすぎだし,ホールもどこか田舎の教会らしく,そんなに響きがよくありません。

でも,実際,フォーレのレクイエムって本来はこういう感じの演奏なんじゃないでしょうか。スタジオで有名指揮者と著名オケによる,ある意味形式的な演奏じゃなく,キリスト教に帰依した信者たちが地元の教会で演奏した,というのが本来の姿のような気がします。

そういう意味で聴くと,実に意義深い演奏で,とても感動します。オケ自体はちょっといまいちですが,合唱はとてもうつくしいです。 特に,ソプラノのアン・マリー・ブランザっていう人(全然知らん!!)がとてもうつくしいです。

さて,音の方ですが,もちろん,多重NFBの効果で非常にノイズと歪が少ないので半導体アンプのような透明な音です。スピーカに耳をつけても全くハムが聞こえないのはリップルフィルタの効果ですね! 音の分離もよく,左右のセパレーションもばっちりです。

音は3極管らしい,豊かな低音に驚きます。 

さて,お次はいつも聴いているこれ!

アナ雪.jpg まだアナ雪にはまっちゃってます。

なにげに後ろのカーテンがアナ雪ですけど....。パソコンのモニターカバーです。この前ではんだづけやっているのではんだが飛んでモニターを傷めちゃうといけないので嫁はんに作ってもらいました.....(^^;)。

やっぱ,松たか子さんの歌唱力にも感動しますけど,3極管で聴く "Let it go ~ありのままで~" は素晴らしい!!! 

さて,前段は武末氏の原設計ではMTの6AU6になっていて,本機ではGT管でそろえたいので同特性の6SH7GTにしています。本来は高周波用の真空管なので,オーディオ用? の6SJ7にしてみたいと思います。どちらかと言えば6SH7は業務用(通信用) で,米国だと軍用なんでしょうけど,6SJ7は民生用で,ラジオやアンプで多用されました。製造された数も多いので,今でも入手は容易だと思います。

意外なことに,6SH7の方が設計としてはこちらで設計したのでぴったりなんでしょうけど,音的には6SJ7の方がよい感じです。音の広がりや雰囲気は断然6SJ7という感じです。

6SJ7(マツダ,松下).jpg マツダと松下の6SJ7GT

試聴はいずれも国産で行いました。マツダのは1本しかないので松下と合弁? です。とうとう東芝もフラッシュメモリ以外の半導体事業を売却せざるを得ないようですが,真空管の時代だったら松下に売却,と言うことだったんじゃないでしょうか......。

やはり,と言うべきか,断然,マツダの方が出来がよいですね~。 やっぱ松下さんは安物,と言う雰囲気ありありなんですけど。これじゃまるで戦時中のソラですね~.....。

でもどちらもとても音がよかったです。やはりGTの5極管と言うことだと6SJ7で決まり,なんでしょうか.....。 

ようやくこれで中学以来の念願だった6G-A4のシングルアンプを完成することができました。次回はなんとか高周波特性の改善をしてみたいと思います。


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6G-A4シングルパワーアンプの製作~その3・製作編~ [オーディオ]

2016年6月14日の日記
 
中学の頃からあこがれていた,東芝の6G-A4を使ったシングルアンプを今ごろになって作っています。また,タンゴのトランスを作っていたアイ・エス・オーさんもとうとう解散してしまったので,長年の感謝の念を込めてタンゴのトランスを使ってアンプを作っています。
 
さて,今回は前回にひきつづいて製作編です。
 
シャシーは小坂井電子のKS-270にしました。これを見つけたから作った,という感じがするくらい,本機にぴったりだと思いました。
 
昔,伊藤喜多男氏が自作のアンプに用いられていたような天板がアルミ,フレームが鉄というシャシーで,大きさは270mm(W) x155mm(D)x40mm(H)と非常に小さいです。
 
KS-270.jpg 小坂井電子のKS-270 
 
iruchanはどうにもだだっ広いシャシーにまばらにトランスや真空管が載っている,というアンプが嫌いです。作りやすいし,放熱の観点からは大きい方がいいんですけど,ただでさえ真空管のアンプは大きくなるので,小さく作りたいと思っています。
 
このシャシーはとてもデザインがよく,気に入りました。
 
ただ,残念ながら普通のシングルアンプには小さすぎると思います。実は,チョークコイルを載せられません。
 
iruchanはリップルフィルタを使うことにして,もう,チョークコイルは使わないことにしたので,いいんですけどね。普通にチョークコイルを使ったフィルタ回路を用いたアンプは作れません。
 
と言う次第で,本来ならこのシャシーは6BQ5シングルとか,6V6プッシュプルのモノラルアンプとか,そういった小型アンプ用のシャシーです。
 
なお,フレームが鉄なので頑丈なのはいいんですが,やはり工作は大変です。丸穴なら何とかなりますが,角穴を開ける,となると大変です。ということで,四角い穴を開ける必要のない部品を使います。
 
その割に天板はアルミ製なんで加工が楽なのはいいですけど,板厚が薄すぎ。t1.2mmでなく,最低でもt1.5mmはほしい感じです。加工中に変形しちゃいますので,気をつけて加工します。
 
さて,まずは図面を描いて部品配置を検討します。本来ならCADのソフトを使うべきなんでしょうが,本格的な2次元CADはとても高く,買うと大変です。むしろ3次元CADの安いのを買った方がいいくらいだと思います。
 
そんな感じなのでiruchanはいつも花子で図面を描いています。ちゃんと実寸で描けるので花子で十分です。プリントアウトしてシャシーに貼れば,それだけでけがきしなくてもポンチが打てますので正確に穴開けができます。よく,トランスの四隅の穴がうまく合わなくて苦労しますけど,こんな風にやれば一発でOKです。
 
6G-A4シングルアンプシャシー加工図.jpg シャシー加工の検討
 
蛇足ですけど,PH-100とPH-100Sは寸法が異なりますので,気をつけてください。単にシールドがついただけと思っていましたが,形状が違うようです。すぐに気がついてよかったです。 
 
さて,ここまで来て問題発生!
 
フューズホルダ用の穴が開けられません。
 
普通,フューズホルダにはφ16mmの穴をシャシーパンチを使って開けますが,フレームが鉄のため,シャシーパンチが使えません。まあ,無理すりゃ使えないことはない厚さなんですけどね......。
 
困ったな~と考えていたところ,ひょっとしたら海外製は大丈夫なんじゃないか,と思い調べてみたら米国製はφ1/2"ということで,φ13mmの穴でいいことに気づきました。これならボール盤で開けられますね!
 
米Littelfuse社のフューズホルダを使いました。米軍用ですから頑丈です。困ったときの米軍頼みどっかの国と同じですね......(^^;)。 
 

Littel fuse.jpg 米Littelfuse社のフューズホルダ 

ついでに,米国製の部品でそろえようと,トグルスイッチもArrow Hartにしました。ハンドルの頭がボールみたいに丸くなっているアンティークなスイッチが手に入りました。ついでにこれも米軍用です。結構,気に入っています。

Arrow Hart.jpg Arrow Hartのトグルスイッチ

pilot+power switch.jpg こんな感じです。

パイロットはこのところ気に入っているマルツで売っているピンクのLEDにしました。往年の名CDプレーヤPhilipsのCD104でも使いました。 ピンクなんて真空管アンプに合わないんじゃないの~? って思ってましたけど,意外にきれいでよくマッチしました。 

さて,これでトランス1次側の配線用部品がそろっちゃいましたので,さっそく,トランスの1次側とヒータ回路だけ配線しちゃいます。

ここまで来たらヒータの点灯テストです。真空管アンプの場合,必ずこれをやりましょう。 

6G-A4, HP 6AX5GT.jpg ヒータ点灯テストです。

整流の6AX5GTは国産はないのか,米Hewlett Packerdのものにしました。国産だと5G-K20くらいですかね。いずれ差し替えたいと思います。

この会社は今でこそパソコンメーカですが,以前は計測器メーカでした。自社のオシロなんかに使っていたのでしょう。もちろん真空管までは製造していませんでしたから,RCAやGEのOEMだろうと思ってみてみたら,Manufactured by RCAと書いてありました。 

すべての真空管を挿し,コンセントにつないで点灯テストをします。全部の真空管が無事に点灯したら,以後,ヒータ関係の配線には一切,手を加えないことにしておきます。

あとは残りの配線を片付けちゃいます。シングルアンプなので2日あれば終わっちゃうでしょう。 

全回路図を▼に示します。基本的に武末数馬氏の "パワーアンプの製作" 上巻に載っている6G-A4シングルアンプの回路です。ただ,電源は原設計はチョークコイル使用のLCπ型フィルタですが,iruchanはTrを使ったリップルフィルタにしています。これだと前回のブログにもある通り効果絶大で,ハムを根絶できます。

6G-A4シングルアンプ.jpg全回路図です。 

また,原設計は前段はMT管の6AU6ですが,オールGT管にしよう,ということで前段は6SH7にしました。そのほか,原設計はモノラルですが,本機はステレオなので,ドライバ段用の供給回路の抵抗など,いくつか定数を変更しました。

位相補正用の400pFは完成後,調整する必要がありますね。また,6G-A4のグリッドに入っている1kΩは寄生発振防止用で,MOS-FETでもよく使われます。これはできるだけ真空管のグリッドに近接してはんだづけする必要があります。

ところで,この回路,どうも変だと思いました。

MLF回路になっていて,NFBループが二重になっているんですが,内側の6G-A4のプレートから6SH7(原設計では6AU6)のカソードに還る回路にストッピングコンデンサが入っていません。最初は誤植か,と思いましたが後半の多極管シングルアンプの解説のところ(p.436)に解説があり,ない方が低域の位相回転がなくなり特性がよくなるとのことです。 直流成分もフィードバックされちゃいますが,分圧されて小さな電圧になってしまうので問題ありません。

なお,6G-A4は放熱のため,g1の#1と#5ピンを太めの銅線でつないでおく必要があります。iruchanはついでに5mmの銅板をはんだづけして放熱フィンとしちゃいました........(^^)。

放熱板加工.jpg 6G-A4のグリッド放熱用銅板

放熱板加工1.jpg こんな風に取りつけました。

鉄道模型で使う,幅5mm,t0.5mmの銅板をはんだづけしました。フラックスを塗ってヤニなしハンダではんだづけするときれいに行きます。 鉄道模型ではヤニは使いません。

実は,秋葉原などでヤニなしのハンダを買おうとすると結構大変で,どのお店も電子工作用のヤニ入りしか置いていませんでした。模型屋さんか,Amazonで買った方が早いと思います。模型屋さんだとほんのちょっとの長さのやつしか売っていなくて,巻のやつを探していたらHAKKOがヤニなしの缶を売っています。 

ついでに,6SH76SJ7の#1ピンは必ず接地しておきます。これはメタル管だと金属外被,ガラス管だと内部シールドにつながっていて,内部の電極をシールドします。まあ,オーディオ回路だと接地しなくても少しノイズが出るくらいで問題なく動作しちゃいますし,製作記事でも接地するようになっている回路図は少ないです。でも,高周波回路では接地しないと動作しません。以前,ラジオに使ったとき,接地を忘れて発振しちゃったので忘れたことに気がついたことがあります。また,#3ピンと#5ピンも接続しておきます。g3とKですが,6SH7は内部接続されているので本来は接続不要ですが,6SJ7は外部接続なので,接続しておかないといけませんし,最初から接続しておくと6SJ7と差し替えができます。

6SH7.jpg 6SJ7.jpg 

    6SH7         6SJ7 

なお,メタル管の場合は#1ピンを接地しておかないと静電誘導で高圧が生じ,梅雨時などビリッときますのでご注意ください。静電気と同じなので死んだりすることはないですけど.....。  

コンデンサはカップリングのフィルムコンはASCのもの,電源の電解コンデンサはニチコンやルビコンなど国産を使いました。

なお,6SH7のカソードに入っている100μFは音のよいOSコンにしましたが,6G-A4の方はニチコンのファインゴールドにしました。

というのも,OSコンは正式名称は導電性高分子アルミ固体電解コンデンサというのですが,内部に電解液がなく,固体のポリマーを使っているため,故障時に普通のケミコンだとオープンモードですが,ショートモードで故障することが多いためです。タンタルコンデンサも同じです。OSコンを真空管の自己バイアス回路のパスコンに使用して,故障するとカソード抵抗をショートすることになりますからバイアスが0Vになっちゃいます。危険なので普通の電解コンデンサにしました。前段の6SH7のパスコンの場合はNFB用にまだ470Ωがもう1個入っていますし,そもそも6SH7では大きな電流は流れないので安全です。

やはりコンデンサは適材適所で,音質よりも安全性の高いものにしておく方がよいと思います。カップリングコンデンサはフィルムコンが最適で,オイルやペーパーコン,MPコンなど,ペーパー系コンデンサは長年の間に吸湿してリークしますので不可です。 

内部.jpg 内部の配線の状況 

6SH7周り.jpg 6SH7周りの配線

そのほかの電解コンデンサはPhilips BCコンポーネンツや米Illinois Capacitor製のものにしました。抵抗はA&Bです。Philipsの電解以外は昔,米国の部品屋のバーゲンで買ったものです。 


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6G-A4シングルパワーアンプの製作~その2・設計編~ [オーディオ]

2016年6月7日の日記
 

さて,今回は回路設計に入ります。まずは増幅部から。

6G-A4は戦後の球なので高感度で,前回の規格表を見てもバイアスが-18V程度ですから, 入力電圧としては1/(2√2)なので,6.4Vrmsで十分です。

こんな程度の出力電圧でよいのなら,まずはパワーアンプのトータルゲインは20dBくらいあれば十分ですから,NFBで+6dBと考えると,裸のゲインは26dBとなり,逆算していくと,出力トランスで√(8Ω/5kΩ)で0.04倍,終段の6G-A4のゲインが約8倍となるので,前段のゲインは36dB(62倍)あればOKです。

と言う次第で,ゲイン的には12AX7 (ECC83)1本で十分で,実際,12AX7 1本で済ましている方が多いと思います。前回の三栄無線のSA-523型の回路も同じです。6BX76G-A4は同じ特性なので,この回路で作っても問題ありません。ただ,前回も書いたように,6G-A4はプレート損失に余裕があるので,もう少しプレート電圧も高くてもよく,SA-523型の回路で6G-A4で使用するのは少しもったいない感じがします。もっとも,球の寿命,という点ではこちらの回路の方が優しいので,このまま作ってもよいと思います。

ただ,何事につけ天邪鬼で世の中斜めに見ているiruchanは,12AX7 1本という回路じゃおもしろくない,と思いました。6BQ56CA7などの高感度の多極管のドライブ回路と同じで,作ろうという気がしません。こんなんやからいつも会社じゃ冷や飯食ってんだな~~~orz。

と言う次第で,以前からずっと,この回路で行こう,と考えている回路がありました。 パワーアンプの設計と製作.jpg 武末数馬氏の "パワーアンプの設計と製作"

ずっと中学の頃から愛読している,武末数馬氏の "パワーアンプの設計と製作" の上巻に6G-A4シングルアンプの試作記事が載っています。

武末氏の記事は常に正確で技術的にも高度なものなので,この本で私も真空管のアンプやNFBなどの勉強をさせていただきました。 

武末6G-A4Sアンプ1.jpg この回路です。

前段は6AU6を使い,多重負帰還を施し,トータルで15dBの負帰還をかけています。いまじゃ数dB程度のNFBを軽くかけるくらいが普通ですし,無帰還のアンプの方が下手すると人気がある感がありますが,どうにも無帰還のアンプというのは気に入りません。

iruchanはアンプはやはり性能,と考えています。と言う次第で,性能重視の武末氏の考え方に共感しています。iruchanは性能の悪いアンプがいい音がするはずがないと考えています。無帰還アンプというのはせいぜい,直熱3極管で成立するくらいのものじゃないでしょうか。多極管でノンNFBなんてアンプはロクな音がしないはずですし,それじゃ,アンプじゃなくてラジオ,という気がします。最近出ている本の記事は無帰還のものばかりでとても作る気がしません。

と言う次第で,増幅部はこの本の記事を採用することにします。

ただ,武末氏は前段は6AU6ですが,せっかく6G-A4を使うのだから,ということで同特性のGT管,6SH7GTを起用することにしました。6SH76AU6同様,gmが4.9mSと高感度です。

う~~ん,なんか真空管でS(シーメンス)なんてしっくりきませんけどね~。やっぱ,記号はmho.jpgで,読み方はモー(mho)だと思うんですけどね。そもそも物理量の単位に何でもかんでも人の名前つけんなと思うのは私だけでしょうか.........(^^;)。

GT管だと6SJ7がポピュラーですが,こちらはgmが1.6mSと6SH7の1/3です。同じ負荷抵抗ならゲインは1/3となります。と言って,本機に使えないわけではありません。6SJ7の方がメーカの選択肢も多いので,たまに差し替えてみたいと思っています。 困ったことに6SH7は米国だとほとんどメタル管で,ガラス球が少ないのです。私の手持ちもメタル管ばかりでした。国産でもどうやらほとんどが通信用だったらしく,値段も高いし,数も少ないのです。と言う次第で,6SJ7の方が楽しみとしては多そうです。メーカも多いし,メタルやMG管もありますしね。おそらく,6SJ7は民生用として大量に生産されたものの,6SH7はハイgm管と言うことで通信用で,あまり民生用の機器には使われなかったと思われます。

東芝, NEC 6SH7GT.jpg NECと東芝の6SH7GT

手持ちの6SH7はメタル管ばっかりだったので,あわててガラス管を購入しました。出力管が国産なので,6SH7も国産を探しました。NECは通信用,東芝は通測用でした。 

ところで,通信用って???

昔から疑問なんですけど,一応,通信設備などに使用する信頼性の高い球のことですが,早い話,電電公社か郵政省納品のものではないか,と思っています。

通測用というのは通信用のさらに上で,測定器などに使用する目的で品質管理をして一定の品質基準を満たした上で,寿命試験を経たものです。

なお,電源部は新規にリップルフィルタ式のものを設計しました。iruchanはもはや重くて高いチョークコイルは使わないことにしています。

リップルフィルタはTr1石とコンデンサ1個で済む非常に簡単なものです。ですが,効果は絶大で,ハムは根絶できますし,追加のメリットとして,電圧の立ち上がりが非常に遅くなる,と言うメリットもあります。真空管に優しい回路ですね。

リップルフィルタ.jpg リップルフィルタ回路

通常はダイオードや整流管で整流したあとの脈流はコンデンサで平滑化します。このコンデンサの容量は大きいほどよいのですが,整流管を使う場合,ラッシュカレントの制限のせいでせいぜい47μFが限度です。直熱整流管だともっと厳しく,5Y3GT80だと10~20μFが限度です。古い球ほど,小さくしないといけません。

これではリップルが残っちゃうので,普通はこのあとにチョークコイルとコンデンサを用いたLC回路によるπ型フィルタを用います。 

ところが,出力管が3極管の場合,内部抵抗が低いので,このLC回路の時定数はかなり大きくしないといけません。チョークコイルのインダクタンスはiruchanは多極管で5H,3極管で10H以上,と思っています。

なぜかというと,OPTの1次側にリップル電圧が現れますが,出力管の内部抵抗とOPTの1次側インピーダンスにより分圧されるため,内部抵抗の小さな3極管は不利なのです。 

この点,Trを用いたリップルフィルタ回路は▲の図にある通り,等価的にコンデンサの容量がTrのhFE倍となるため,整流管を使うと47μFが最大容量ですが,リップルフィルタを使えばTrのhFEが50くらいだとすると2500μFもの大容量をつないだのと同じ効果を得られます。

出力電圧は下式で求められます。ベースに接続されているコンデンサには電流が流れませんので,

                 リップルフィルタ出力電圧計算.jpg

Trのベース~エミッタ間電圧VBEは常温で0.6~0.7Vと一定だし小さな値ですので,無視してもかまいません。上式からもわかる通り,出力電圧はRBの値で自由に決められます。Vinはトランスメーカが発表しているコンデンサインプット整流の特性図から求められます。

PH-100(S)整流特性.jpg タンゴPH-100の出力特性 

一方,電圧の立ち上がりはRBとCの時定数により決まるので,この時定数(RB×C)の値を大きくすれば,最大値まで達するのに数分かかる,と言うような回路も設計可能です。

では,Spiceで実際にシミュレーションしてみませう。

6G-A4シングルアンプ電源(π型フィルタ,10H).jpg

チョークコイルとして,インダクタンス10HのタンゴC-110を使います。結果はやはり10Hは必要,と言う結果になります。武末氏の記事もLUXの4110という10Hのチョークコイルを使っています。 

6G-A4シングルアンプ電源(π型フィルタ)結果.jpg こんな結果となります。

出力電圧の平均値は整流直後(コンデンサインプット電圧)で339.8Vですが,LCフィルタを出たあとだと311.5Vとなります。ところが,リップル電圧は34mVP-Pという結果になりました。これが問題か,と言うと...... 

先に述べたように,OPTの2次側(スピーカ)に現れるリップル電圧は出力管の内部抵抗rpとOPTの1次側インピーダンスZpの比で決まりますので,OPTの2次側に現れるリップル電圧Vr_outは,

リップル電圧:OPT.jpg     リップル電圧出力.jpg

となります。√内はOPTの巻線比(インピーダンスの平方根に比例)です。

仮に6BQ5シングルのアンプだとすると内部抵抗は100kΩ,負荷抵抗は5kΩですから,B電圧のリップルが34mVの場合,スピーカ端子間のリップルは0.065mVP-Pとなり,全然問題じゃありませんが,6G-A4シングルだと内部抵抗は1.4kΩなので,リップルは1.1mVP-Pとなります。

まあ,これはいろいろとご意見があると思いますが,私はアンプの残留雑音は1mVrms以下が目標で,この場合,実効値だと0.39mVrmsですから合格ではありますが,やはり10Hものインダクタンスが必要なのか,という感じがします。やはり3極管は難しいと言うことがおわかりいただけるかと思います。

と言う次第で,3極管を用いたアンプの場合,電源のチョークコイルは10H以上必要ですが,巻数が多くなるので高いし,同じサイズだと電線径を細くしないといけないので許容電流値が小さくなります。結構,これ,困るんですよね。同じケースでインダクタンスの異なるチョークコイルが売られていましたが,10Hだと電流が足りなくてひとつ下にする,なんてことになりました。 

ちなみに5Hだとどうなるか,シミュレーションしてみました。

6G-A4シングルアンプ電源(π型フィルタ,5H)結果.jpg

やはりリップルが増え,69.8mVP-Pという結果になりました。 6BQ5だとSP端子間で0.13mVP-P6G-A4だと,2.2mVP-Pでした。

では,Trによるリップルフィルタはどうかというと,

6G-A4シングルアンプ電源(リップルフィルタ).jpg リップルフィルタ回路

結果は▼の通りです。なお,Spiceは日本製のTrのデータは少なく,松下製の2SD1350を使いました。 VCEO=400V, IC=0.5A, PC=1W, hFE=30です。Pcが小さいので,実際には使えませんけど。本機では損失は3Wを超えます。

6G-A4シングルアンプ電源(リップルフィルタ)結果.jpg 電圧の立ち上がりも遅いです。

ついでに,Spiceは制御Trの損失まで計算してくれます。最初,飛び上がっていますが,実際には相手は真空管なので,負荷は0からスタートしますので,問題ありません。損失は定常状態の平均で3.4Wの損失です。iruchanは大体,1W以上の熱が出る場合は放熱器が必要,と考えていますので放熱器をつけないといけません。 

リップル電圧は1.6mVP-Pとなります。LCのπ型フィルタに比べると1/20ですね。これだとスピーカに加わるリップル電圧は0.05mVP-Pとなり,無視できます。 

iruchanはすでに何台もリップルフィルタを採用したアンプを作っていますが,聴いてみた感想としてはやはり断然静かなアンプができます。どうしても真空管のアンプ,特に3極管のアンプはハムが出ますが,リップルフィルタを使うとほぼハムは根絶できますので,ぜひおすすめします。まあ,直熱3極管の場合はフィラメントによるハムもあるのですが,B電源からくるハムはなくなります。 

以上で設計した電源部を示します。整流はGT管で6G-A4と同サイズの6AX5GTにしました。5Y3GTの方がぴったり,と言う気もするのですが,直熱整流管は使っているとスイッチを入れるたびにフィラメントがパッと光り,あまり精神的によくないので,傍熱管にしました。もっとも,直熱整流管でもリップルフィルタを使うと,傍熱整流管みたいにB電圧の立ち上がりはゆっくりですので,出力管から見れば優しいです。

ところで,6AX5は整流直後のコンデンサ容量は10μFに制限されているようです。GEやTung Solの規格表にもこう書いてあります。ただ,ちょっとほんとかな~という気がします。古い直熱の80でも20μFですし,5AR4GZ34)や▲のタンゴの特性図に記載されている6CA4でも47μFはOKです。様子を見て47μFのままにしたいと思います。 

6G-A4シングルアンプ電源部.jpg 回路です。

リップルフィルタ用のTrは東芝の2SC3425にします。VCEO=400V, IC=0.8A, PC=10W, hFE=20~100と少し電流的には小さいですが,真空管用として最適です。hFEは大きいほどいいのですが,高圧TrはhFEは小さくなる傾向がありますから,こんなものです。フルモールドのTO-220パッケージなのも高圧を扱うのに適しています。コレクタが外被に接続されていると絶縁がやっかいですからね。

ちょっと長くなりすぎましたので,製作編は次回です。 


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6G-A4シングルパワーアンプの製作~その1・さよならタンゴトランス~ [オーディオ]

2016年6月6日の日記

先日,東京の三栄無線がキットとして販売していた,6BX7シングルのSA-523型パワーアンプを修理しました。3極管らしい,低音の豊かな音楽性の高いアンプでした。

6BX7自体は,もとはTVの垂直発振,偏向用の真空管で,オーディオ用ではありません。でも,内部抵抗が1.4kΩと低く,プレート損失も10Wと,オーディオ用としての素質も十分であるため,これをオーディオ用にしたのが東芝の6G-A4です。特に,6BX7は先日の三栄無線のキットの音を聴いてもそれなりに音もよく,管形も小さく,シングルで3W,プッシュプルで10Wくらいは見込めるので,オーディオ用として適していますが,残念ながら双3極管のため,使いづらい面があるのでこれを独立して単独の3極出力管としたものです。

特に,6BX7はプレート損失は先にも書いた通り,10Wありますが,2ユニット同時だと合計で12Wに制限されてしまうため,シングルでは出力は2Wほどが限度です。これを単独で10W使えればもっと出力が取れるはずです。

6BX7はもとはTV用であるため,各社の規格表を見てもオーディオ用としての規格は記載されていません。しかし,誠文堂が出していた,"実用真空管ハンドブック" に記載がありましたので,引用します。たくさん真空管やエレクトロニクスの本を買いましたけど,今までで一番役に立った本かもしれません。数年前まで復刻版が出ていましたが,すでに在庫切れのようです。

実用真空管ハンドブック.jpg 

   よく読んだよな~。復刻版じゃなく,オリジナルです。私のは1978年発行のものです。

実用真空管ハンドブック1.jpg 6BX7の動作例です。 

Ep  Ip  Ec  Po   RL  RK

6BX7 250V 40mA -18.2V 2.25W 3.8kΩ 450Ω

6G-A4 250V 40~49mA -14.4V 2.2W 5kΩ 360Ω

280V 47~57mA -17.8V 3.2W 5kΩ 380Ω 

と言う具合で,Ep=250Vでの動作はほとんど同じですが,すでにプレート損失は10Wに達するため,6BX7ではEp=280Vでの動作は不可です。一方,6G-A4だと280Vでの動作も可能で,そのとき3.2W取れる,と言うことがわかります。6G-A4だと許容プレート損失は13Wなのでこういうことができるわけです。ちなみにプッシュプルだとEp=350Vで出力10Wが得られます。

三栄無線SA-523型アンプ4.jpg三栄無線SA-523型回路図

もっとも,前回の三栄無線のSA-523型アンプの回路と各部電圧を▲に示しますが,プレート電圧は250Vで,ほぼ,上記の規格表の通りの動作です。ちなみに,真空管で各電極の電圧は対カソードの電圧で表します。規格表のEpというのも対カソード電圧です。実際にプレートに供給する電圧はカソードバイアスの場合は,バイアス電圧分だけ上乗せする必要があります。

プレート損失は両ch.とも10Wギリギリで,規格表の合計で12Wというのはオーバーしてしまっています。でも,実際にはプレートが赤熱したりすることもなく,無事に動作します。このアンプ自体,私が使い始めてからでも10年は経っているのですが,問題なく動いているので,球としてはそれほど問題ではないようです。 

と言う次第で,6G-A46BX7の片割れ? なわけですが,これは真空管の時代にはよくあったことで,特に戦後,真空管産業が斜陽化すると新規に設計するとコストもかかるため,既存の真空管の電極や製造用の金型を流用することは多かったようです。

実際,この球は電極の数以外はほとんど同じものです。実はiruchanは東芝製の6BX76G-A4も両方持っています。

東芝6G-A4,6BX7GT-1.jpg どちらも全く電極は同じものです

    東芝製6G-A4     6BX7

ただ,それにしても戦後の新型球として,NECの6R-A850C-A10はラックスや山水など,大手メーカの顧客があったのに比べ,東芝の6G-A4はセットに使われていた記憶がありません。と言う次第で,純粋にアマチュア向けに製造された訳なのですが,大して売れもしないアマチュア向け真空管を製造してくれたとは本当に驚きです。

東芝6G-A4.jpg 東芝6BX7GT.jpg 

   東芝製6G-A4(箱が古~~ッ!)        同じく東芝製6BX7 

実は,6G-A4の入手はとても苦労しました。最初に私が作ったアンプは6G-B8のシングルでしたが,あまり音がよくなかったので,次は3極管を,と考えて6G-A4を入手したいと思っていました。ところが北陸の田舎じゃ入手不可で,名古屋や大阪の電気街を探しましたが見つからず,あきらめていました。

ところが,その頃,秋葉原にはたくさんあったようなんですね~。とうに名古屋や大阪じゃ姿を消していたんですけど。結局,高校生のときに東京のお店の通販で1ペア入手したのが最初で,あと何本か入手することができました。

といって,実際にアンプを作っているのは今なんですよね~。何年経ってんだよ........(^^;)。

というのはなかなか気に入ったシャシーやトランスが手に入らなかったからで,特にシャシーはなかなかいいものがなくて探していました。

最近,名古屋の小坂井電子で,昔,伊藤喜多男氏が愛用されていたような弁当箱シャシーを見つけてこれで作ってみようと思った次第です。本当に小さくて,こういった小型の3極管シングルアンプにぴったりだと思います。

また,出力トランスもタンゴのH-5Sにすることにしました。 すでにタンゴさんも2013年9月に廃業してしまわれましたので,私も最後の1台です。

ご存じの通り,タンゴの廃業は2回目で,最初は2000年10月のことで,創業者の2代目であった平田富弥氏が廃業を決断されたものです。 すでにオーディオの黄金時代は終わり,アンプを自作する人も大幅に減ったのでやむを得ない決断だったと思います。

iruchanもびっくりして,このときは慌てて小遣いはたいて将来必要なアンプのトランスを買った記憶があります。H-5Sもそのときの1台です。幸い,電源用のPH-100Sも同時に入手できたので,ぜひこれで6G-A4シングルのアンプを作ろうと考えていました。

この最中に,もと平田電機の有志の皆さんがタンゴトランスの製造を引き継ぐ,と言う話が出てきてほっと一安心したことを思い出します。この後,有限会社ISOができてタンゴのトランスが復活したのですが,とうとう3年前,ISOさんも廃業されることとなりました。それこそ,iruchanは中学時代以来,ずっとタンゴのトランスを使っていたので本当に残念です。感謝の念を込めてこれらの貴重なトランスを使ってアンプを作りたいと思います。 

Tango PH-100S, H-5S.jpg 使用したトランス

Tango H-5S.jpg タンゴH-5S

Tango H-5S-1.jpg プレートに6G-A4用とあります。

H-5Sにはプレートがあり,6BM86G-A46BQ56V6用ですね。まさにぴったりだと思います。 6V6もとてもいい音のする球ですね。

さて,今回はこれらのトランスを使ってアンプを作りたいと思います。次回は回路の設計です。 


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