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三栄無線SA-523型パワーアンプキット(6BX7シングル)について [オーディオ]

2016年5月22日の日記

三栄無線SA523Kit.jpg 三栄無線SA-523アンプ

実家に置いてあった,6BX7シングルのアンプを修理しました。東京の三栄無線が1970年代に販売していたものです。純3極管の6BX7をシングルで使い,最大出力は2Wほどです。そんな小出力じゃ,話にならない,という人もいるかもしれませんが,家庭用なら十分な出力で,3極管らしい,柔らかな音のするアンプです。

当時,三栄無線は初心者向けのこういったアンプから熟練者向けの高級アンプまで,幅広いキットを販売していました。大手のラックスやケンウッドをはじめとして,中小の会社まで,幅広いキットが売られていて,今から思えばいい時代だったな~と思います。 

そんな中で,三栄無線は主として真空管のアンプのキットを扱い,初心者向けのものから211シングルと言った高級品までありました。このSA-523のほかには6BQ5シングルのSA-530,6CA7シングルのSA-560などがあり,初心者向けでした。

私は中二の時に自分で部品を集めて作った6G-B8シングルのアンプが最初の第1作で,次はぜひ3極管のアンプを作ろう,と考えていました。そんな中で,このアンプは6BX7を使い,ステレオで小型だし,しかも値段は2万円しない価格だったので,これを組み立てたいとずっと思っていました。

でも,所詮,中学や高校生の小遣いじゃ買えないし,こちらも受験があったりして結局買わずじまいでした。ようやく入手したのは10年ほど前のことです。Yahoo!オークションで落札しました。もちろん,どこかの知事さんのように公金じゃなくて,ちゃんと私費で購入してますけどね......(^^;)。

調べてみると,2005年9月に購入しています。こうやってちゃんと記録も残っていますので,第三者機関の調査にも十分答えられます......(^^;)。 

ただ,残念ながら,キット組み立て品を購入する,というのはやはりリスクがあります。市販のアンプやキットでもメーカで組み立てたものならいいのですが,ユーザが組み立てたものは組み立てた人の力量で出来,不出来があり,ひどいものだと組み立てに失敗していたり,その後故障したりするようなものが多いです。

私が落札したのはあまり出来がよくなく,まあ,見たところ,初心の方が実体配線図を見ながらそれなりに上手に配線したような感じなのですが,どうにもラグ板の使い方がおかしく,電線を上の端子穴に配線し,部品を下の穴に差し込んであったり,電線もおそらく太く短い方が音がよいと思ったのか,かなり太いAWG#18くらいの電線で配線してあります。シールド線も使うと高域が落ちると信じたのか,シールド線は使っていませんし,肝心のハンダも大量に盛ってあったり,ちょっとびっくりするような状況でした。まあ,ハンダは大量に盛ってある方が天ぷらハンダになっているよりマシですけど。部品も位置や向きがそろえていなくて,あとで修理するのに苦労する状態です。

三栄SA-523内部.jpg 買ったときの内部の状態 

と言う次第で,買ったときにそれなりに手を入れているのですが,あれからでも10年ほど経っているので,再度,整備します。実際,久しぶりに通電してみると音が出ない状況でしたので,それも修理したいと思います。

前回,6BX7のパスコンはELNAのセラファインに交換しています。このコンデンサ,私のお気に入りだったんですけどね。 半導体用のみならず,管球用の高圧のものもあり,重宝していました。そのほか,カップリングは日通工のフィルムコンだったのを米ASCのフィルムコンに交換しています。日通工のはフィルムコンなので問題ありませんが,古いので一応,交換しておきました。なお,ペーパーコンやMPコン,オイルコンなどの紙系コンデンサは長年の間に吸湿して絶縁性能が落ちていますのですべて交換しましょう。詳しくはこの記事をご参考になさってください。

一方,電源のフィルタに使われている47μF 350Vのコンデンサはオリジナルのままです。日本製なので問題ないと判断していました。

ただ,さすがにあれから10年経っていますし,実際の製造から考えると経年40年というところですので,この際,交換しておきたいと思います。実際,外したものをチェックしたら18~27μFと言ったところで,やはり容量が減っています。でも,40年経ってもこれだけ残っているのは優秀だと思います。海外製だと0μFになってもおかしくありません。

と言いながら手持ちに先日,修理したPhilipsのCD104(日本ではマランツCD-34)の修理の際に,部品屋さんで見つけたPhilips BC componentsの47μF 385Vがありますので,これに交換しました。一応,警戒して容量を計ったらちゃんと47μF以上ありました。

整流ダイオードもウルトラファーストリカバリに交換します。使用されていたのは日立のV08Jと思われます。一般用ですが,trr=200nsと比較的高速なDiです。結構高速なやつなので交換しなくてもよいのですが,このところよく使っているVishayのUF4007(1kV,1A)に交換しました。trr=75nsと高速です。ちょっとサイズが小型すぎるので,心配なくらいなんですけど。でも,やっぱり整流はファーストリカバリです。ノイズも少なく,音もよいです。

三栄無線SA-523型アンプ3.jpg回路図です。

回路自体は12AX7 1本で単段増幅し,6BX7をドライブします。電源はチョークコイルを用いたπ型フィルタとなっています。安価なアンプだと抵抗で代用していることもありますが,ちゃんとチョークコイルをおごっています。出力管が3極管のため,内部抵抗が低く,電源のリップル分の影響が大きいので,電源のフィルタは厳重にしておかないといけません。チョークコイルかTrによるリップルフィルタは必須です。その点,6BQ5などの多極出力管だと内部抵抗が高いので,多少,フィルタの時定数は小さくてもOKなんですけどね。

6BX7, 12AX7.jpg 使われていた真空管

使用されていた真空管は12AX7は松下製で,6BX7はWestinghouseでした。おそらく,私が買ったキットが販売されていたときは東芝製でしょう。あとで差し替えられたのだと思います。6BX7は小さなガラスエンベロープに2つも電極を詰め込んでいるので,寿命が短いのでは,と想像します。私も東芝の6BX7を持っているのでたまには差し替えてみたいと思います。もっとも,普段使うのはこういうアメ球なので,これで十分です。といって,この頃のアメ球はもはや米国の工場では採算がとれず,日本製の真空管のOEMであることが多く,この球も日本製の可能性がありますが,この球は作りから見て米国製のようです。ちなみにWestinghouseやRaytheonなどの1960年代の球は日本製です。そういや,Westinghouseは今は東芝の子会社だな~。 

トランス類はすべて特注品で,サイズもぴったりです。現在,秋葉でこのような小型トランスを見かけますので,回路も簡単だし,同じ回路で再現してみてもよいかと思います。

さて,修理については上記のコンデンサとDiを交換したほか,音が出ないというのはボリウムに原因があるようなのでボリウムを交換しておきました。

VR交換1.jpg  もとのボリウム

どうしても日本は湿度が高いせいか,可変抵抗は長年経つと導通不良となります。使われていたのはごく普通の可変抵抗で,端子部に隙間がありますので,一番簡単な修理法としてはここから接点復活材をシューッとやればたいてい直ります。

でも,接点復活材はあとで周囲が腐食したり,結局はまた導通不良になったり,いろいろ問題を起こすことが多いので,私は使いません。やはり根本的には新しいボリウムに交換しちゃうのが一番いいと思います。もし,どうしても代わりがない特殊なボリウムの場合は分解して接点グリスを塗るのをおすすめします。

真空管アンプでいつも使うのは密閉タイプのRV24YNです。JIS規格になっているので標準品で品質が安定しているのも魅力です。 これの100kΩのが手元にあったので交換しました。

ただ,軸の開口部が若干大きいので,リーマーで拡大しました。鉄のシャシーなので,ここから錆びるかもしれないので,ミッチャクロンで下塗りしたあと,茶色の塗料を塗っておきました。

VR交換.jpg ちょっと穴を錆防止のため塗っておきます。 

改良後内部1'.jpg 部品の交換状況

そのほか,スイッチやねじ,パイロットランプなどの鉄製部品が錆びていたので交換しています。パイロットはネオンランプ仕様のものは製造中止で,LED仕様のものに交換しています。 

さて,これで完成です。 いよいよ再度,通電します。

一応,整流Diを交換したり,フィルタコンデンサを交換していますので,スライダックで徐々に加圧します。まずは直流50~100Vくらいで止め,数時間放置します。フォーミングと言いますが,これでフィルタの電解コンデンサの絶縁皮膜を復活させておきます。 まあ,日本製の電解コンデンサの場合は不要で,いきなり高圧をかけても問題は起きませんが,米国製などの電解コンデンサの場合はいきなり高圧をかけるとフューズが飛ぶことがあります。

AC100Vに加圧したらすぐに各部の電圧を測定します。特に,6BX7のカソード抵抗は20Vくらいの電圧になりますので,これでプレート電流をチェックできます。

f特と出力を測っておきました。ちゃんと音も出ますし,ボリウムもガリはありませんでした。

三栄SA-523特性.jpg 周波数特性です(1W時) 

-1dBで35Hz~30kHzと言ったところで,なかなかこのOPTは優秀であると思います。低域のカットオフは十分低いと言えます。多極管のシングルアンプだと100Hz付近からだら下がり,と言うことが多いですが,これは,多極管はプレート電流が大きく,OPTの1次側インダクタンスが直流磁化により減少するからで,その点,3極管はプレート電流が小さいので,低域のカットオフを低くできます。こういった点からもシングルアンプはやはり3極管が有利です。 

出力はクリップ時点でちょうど2Wでした。45のシングルより大きいですが,2A3よりは小さい,と言ったところでしょう。 

さて,お楽しみ......。 いよいよ音楽を聴いてみます。

今日はジャクリーヌ・デュ・プレを聴いてみましょう。

Du Pre Dvorak.jpg サン・サーンスとドボルザークのVc協

まずはサン・サーンスとドボルザークのチェロ協奏曲です。いつもお世話になっている方からご紹介いただいた盤です(TELDEC 8573-85340-2) 。サン・サーンスは旦那(バレンボイム)の指揮でフィラデルフィアo.との共演で,ドボコンはチェリビダッケ指揮スウェーデン放響です。

出色の出来はドボコン。あまたあるドボルザークのチェロ協奏曲の中で一番の出来だと思います。録音は1967年です。指揮もチェリビダッケですからフルトヴェングラーばりの勇壮な出だしも迫力満点ですが,どうもさすがのチェリもデュ・プレに引きずり回されているような感がして,激しく盛り上がる名演です。

残念ながら旦那と共演した方はあまりなじみのないサン・サーンスのチェロ協奏曲と言うこともあり,あまり聴かないのですが,彼女の引退する理由となった多発性硬化症の初期症状が現れ出した頃の演奏のようです。演奏にはみじんもそのような感じはしませんが,彼女のその後の運命を知ると襟を正して聴く必要があると思います。そういえば,彼女にはお姉さんがいたのですが,彼女との確執は映画にもなっていますね。アナ雪みたいに仲のよい姉妹じゃなかったようですし,どうにも幸せな人生を送ったわけじゃなさそうで,気の毒です。 

Du Pre Dvorak-1.jpg バッハの無伴奏ほか

ドボコンですっかりはまっちゃったので,ついでに買ったのがこの盤。これ,驚きました。実にデュ・プレ17歳の時の演奏だそうです(英EMI 7243 5 86236 2 8) 。

1962年1月,エジンバラフェスティバルの一環として演奏され,放送用にBBCが録音したものをCD化したものです。 

それこそ,チェロの名曲中の名曲であるバッハの無伴奏チェロ組曲の演奏なので名盤がひしめいているのですが,フルニエなどの大家を退けて私の一番のお気に入りです。 

まあ,カザルスは別格としても,フルニエやシュタルケル,ロストロポービチなど大家と呼ばれる人の演奏はどうにももったいぶった感じがして好きになれません。おそらく,チェリストから見てこの曲はヴァイオリンのツィゴイネルワイゼンと同じくらいチェロの名曲なので,何かにつけ演奏してくれ,と頼まれるのが嫌な上に,この曲を若干,誇張したくらいの演奏をしないと大家として満足してもらえないため,"どうだ,俺のはすごいだろう" と言わんばかりの演奏が多くてちょっと閉口します。

その点,弱冠17歳のデュ・プレのこの演奏は初々しくて技術的にはこれらの大家に劣るようなことがあっても(私にはそういうところがあるとは聞こえませんけど),バッハの楽譜に忠実で誇張したり奇をてらったところが全くなく,素晴らしい名演奏だと思います。

ちなみにこの盤は気に入って一時期,ずっと聴いていた時期があり,愚息の子守歌代わりにCDをかけていたこともあり,よくこの曲はCMに使われていたりするんですが,ある日,TVからこの曲が流れたら,愚息(当時5歳)はひと言,

    ばっは。

と言いました.......(^^)。 

なお,まだ蛇足ですが,このCD,なぜか第3番が入っていません。そういうものか,と思っていたのですが,どうやら演奏会ではちゃんと3番までやったそうなのですが,なんたることか,BBCがテープを紛失してしまったそうです......orz。

さて,音の方ですが,やはり3極管らしい柔らかい音がいいです。特に低音が豊かでダンピングの効いた音はやはり3極管だな~と思わせます。電源のフィルタがよく効いていて,ハムは全く聞こえません。よく,傍熱3極管は音が悪い,などと言われますが,どうしても直熱3極管はハムが避けられず,特にバッハの無伴奏のような静かな曲だとハムの中でチェロを聴く,と言う状態になりますが,このアンプは傍熱3極管と言うこともあり,とても静かに聴くことができます。バッハの無伴奏聴くならこのアンプだな~と思いました。

6BX7, 12AX7-1.jpg やっぱ真空管だな~~。 

ところで,このアンプ,ネットで画像検索したらシャシーが真っ黒のバージョンもあるようです。そういえば,中学生の頃,三栄無線に頼んで送ってもらったカタログに載っていたのも黒いシャシーのバージョンでした。と言うわけで,私が持っているのは初期のもののようです。 

三栄無線SA523Kit-1.jpg ボンネットをかぶせるとこんな感じです。 

 

2016年5月29日追記

修理したアンプを実家に持って帰りました。いつもの20cmフルレンジ・テクニクスEAS-20PW56で聴いてみました。往年の ”げんこつ” スピーカーです。時代的に真空管にはぴったりです。久しぶりにとてもいい音を聴くことができました。

ついでに,実家の書類棚を探したらやっぱり出てきました........。 

三栄無線カタログ.jpg 三栄無線のカタログです。なつかし~~。

送料として100円を送ると送ってもらえたカタログです。時代的には1979年頃と思います。回路図もついていて,当時,とても勉強になりました。当時は全く何のことかわかりませんでしたけどね。でも,ずっと眺めているとわかったような気になりました。しばらくの間,寝る前に布団に潜り込んでずっと飽かずに眺めていた記憶があります。 

三栄無線カタログ1.jpg SA-523は17,000円でした。

やはり,私の記憶にある通り,SA-523型は黒シャシーでした。正面のスイッチが左右反対になっているのも驚きです。たぶん,何かの都合でシャシーの発注先が変わってデザインも変わったんでしょうね。

説明を読むと,真空管はSYLVANIA製を使用,出力は3W+3Wとのことです。ちょっと6BX7では3Wは厳しいですけどね。 

なお,アンプのキットは上記の6CA76BQ5シングルアンプのほか,8045GシングルのSA-560Aとか,KT-88UV-211シングル,2A3PPなど,盛りだくさんです。8045Gのシングルアンプのキットは珍しいと思います。ちゃんとドライバは6240Gで,カソホロドライブとなっています。スゲェ~。一度,作ってみたい~! それにしても,いい時代だな~~。


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ミニDCパワーアンプの製作 [オーディオ]

2016年5月21日の日記

外観.jpg 

オーディオマニアなので,昔からアンプを作っています。でも大出力のものは作るのも調整するのも大変で,いつも作るのは10Wくらいのアンプです。

10年ほど前,AVアンプ用に作ったパワーアンプが故障したので修理しました。といって,実際の設計は相当古くて,電波新聞社刊行の "最高級アンプ自作マニュアル" という本に載っていたものの改造です。この本,私が中学の頃に買ったもので,1979年4月30日刊行とあります。もう30年以上も前なんですね~~。

最高級アンプ自作マニュアル.jpg 最高級アンプ自作マニュアル 

威風堂々,最高級アンプなどというタイトルがついていますが,中身は結構初心者向けのもので,日立のMOS-FETをつかった50Wくらいのアンプが最高機種? で,それもそれほど高度なアンプ,という訳じゃありません。実際,キットが出ていたらしく,秋葉の某通商会社が基板を販売していました。

あの時代,こんな本が多くて,キットが先か,本が先かわからないくらいの感じのものも多かったと思います。この本もキットの組み立て説明書という感じですが,その分,作り方はわかりやすく書いてあり,中学生でも理解できました。それに,地方などでたとえ部品集めが面倒でもキットを買えば作れる,という安心感もありましたけどね。

作ったのは中にあった,25W+25Wメイン・アンプというもので,差動2段+ダーリントン接続SEPP回路というごくオーソドックスな回路です。簡単な回路なので,中学の頃に作ろうと思ったのか,私の書き込みがあります。 

25W+25W出力DCメイン・アンプ.jpg この記事です。 

original schematic.jpg オリジナルの回路図です。 

と言う次第ですが,実際にこの本に載っていたアンプを作ったのは10年ほど前のことです。完成してみるとなかなかいい音で,さすがはDCアンプ,と思いました。

でも,ここから先が工作マニアの悪いところで,完成してしまうともう興味はなくなって放ってしまいました。さすがに作ってから10年経ちますので,再び通電してみたところ,片ch.が鳴らないので修理と相成りました。

電圧増幅段はほんと同じで,初段はソニーのデュアルFETの2SK58を使い,2段目は三菱の2SA725です。音質がよい,と言うことで金田式DCプリの定番だった2SA726の低耐圧版(Vceo=35V) です。オリジナルはドライバ2SA5452SC853(NEC)で,出力は2SA4902SC790という古いものです。東芝のVceo=40V, Ic=3A,Pc=25Wの石です。パワーアンプ用と規格表に書いてありますが,fT=10MHzと高周波特性はショボいです。

普通だったら私はバイポーラTrが好きなのでTrで作りますが,AVアンプ用なので小さく作りたいのでMOS-FETにしました。MOS-FETはドライバ段不要で,その分,基板を小さく作れますので。また,MOS-FETは熱暴走しないので,バイアス回路も抵抗のみでOKです。もっとも,使用したMOS-FETのCissは650pFもあるので,やはりドライバ段があった方がよいかと思います。

使用したMOS-FETは東芝の2SJ1232SK442です。ID=10A,Vceo=70V,PD=30Wで,同じTO-220なのに2SA490などに比べるとずいぶん規格が大きいです。 

ドライバや電源の制御素子としてよく使われる日立のMOS-FET 2SJ762SK213は同じTO-220のパッケージですが,ID=0.5A,PD=1.75Wなので使えません。ヘッドホンアンプならいいですけど。

2SJ123, K442.jpg 2SJ1232SK442

なお,2段目は2SA726にしました。こちらは耐圧が50Vですので,安心です。 オリジナルは±30Vをかけていますので,2SA725では心配です。出力も10Wもあれば十分なので電源電圧も±25Vに抑えました。

基板は100×100mmの大きさでステレオにしちゃいました。ついでに電源部まで載せちゃってます。

基板.jpg プリント基板です。 

回路は次の通りです。オリジナルとはずいぶんと変わってしまいましたけど。電源は日立のファーストリカバリDiを用いてます。電圧増幅部はオリジナルは非安定化電源ですが,3端子レギュレータで安定化しました。

ミニDCパワーアンプ1.jpg 回路です。

さて,故障の状況ですが,残念ながら終段のMOS-FETが飛んでしまっていました。どうやらシャシーを小さく作りすぎ,SP端子とトランスが触れて出力を地絡してしまっていたようです.....orz。

気を取り直してMOS-FETを取りかえ,再度,通電して調整して終わりです。 

出力は最大10Wを目指しましたが,最大で9.9Wとわずかに10Wに届きませんでした。f特は-1dBでDC~100kHzと言うところです。

ミニDCパワーアンプf特.jpg 周波数特性です。 

音はなかなかよく,音楽性豊かなのは2段目の名石2SA726のおかげでしょうか。電源投入時のポップノイズも小さいのはDCアンプの特長です。 

内部.jpg 内部です。

今だったら小型トロイダルトランスを使うんですけどね.....。大きくて重いです。おまけに漏洩磁束が多いため,少しハムが出ます。といって,いくら漏洩磁束が多いEIコアだからって,今まで漏洩磁束に悩まされた経験はないのですが。このトランスはハズレだったようです。まあ,残留雑音は1mV以下なのでOKとしましたけど。 


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Pioneer C-21プリアンプの修理 [オーディオ]

2016年5月5日の日記

こどもの日ですね~。それで子供たちをどこかへ連れて行ってやろう,と言ったらしんどいから家にいる~っだって! 子供も大きくなっちゃうとダメですね~......orz。

しかたないのでiruchanは久しぶりに上京して黒田清輝展を見に行ってきました。切手にもなっていて教科書にも載っている "湖畔" や "智・感・情" がとても素晴らしかったです。 "智・感・情" は一見,貧弱な体格の女性の裸体画ですが,日本女性の体格見本という性格もあるらしく,等身大の日本女性を描いて西洋の伝統的な豊満な裸体画に対抗する意味合いもあったようです。

黒田清輝展.jpg 東京国立博物館にて

さて,上野の東京国立博物館から秋葉原へ。ここで部品をひと通り買って北陸へ帰りました。 

で,何の部品を買ってきたか,と言うと.....,

pioneer c-21.jpg Pioneer C-21 preamplifier

取りかえ部品.jpg 秋葉で買ってきた部品

最近入手したパイオニアのC-21プリアンプの修理をしたいと思います。

端正な薄型のデザインがとてもかっこよく,昔あこがれていたプリアンプです。値段も6万円と手頃で,小遣い貯めていつかは....と思っていました。 でも結局,入手したのはあれから30年も経っています。

調べてみると発売は1976年のようで,そんなに古いのか,と言う気もしますが,結構ロングセラーになったようです。

回路を見てみるとカレントミラー負荷差動2段+PPエミッタフォロア(SEPP)出力,と言う構成で,これって金田式DCアンプ? と言うくらい似ています。実際,中を開けてみると金田氏御用達の進工業の金属皮膜抵抗が使われていたり,結構,設計した人は金田式の影響を受けた,という感じがします。使用されているTrは初段2SA906(三菱),2段目2C1775A(日立)の組み合わせで差動2段アンプになっていて,出力は2SA8982SC1903(富士通)のコンプリです。 残念ながら初段はFETじゃないのでDCアンプじゃなく,ACアンプとなっています。2SA906はローノイズオーディオ用で,名石A726の後継品くらいの立場でしょうか。2SC1775もオーディオ用の名石ですね。

電源部は東芝のTO-220型パワーTrの2SB5962SD526を使ったリップルフィルタです。ツェナーDiも入っているので定電圧化されてはいますが, フィードバックループがないので非安定化電源です。まあ,プリアンプだし,全段A級アンプなので電流の変化はなく,これで問題ないと思います。

と言う次第で,回路は至ってシンプルで修理や改造に便利だと思います。初段をJ-FETの2SJ74なんかを使ってDCアンプにしてみたり,出力のエミッタフォロアにモールドの2SA8982SC1903じゃなく,TO-5型メタルキャンのNEC2SA6062SC959を使ってみようか.....などと言う誘惑に駆られますが,iruchanはオーディオも模型もオリジナルを尊重することにしているので,改造はしないことにします。

さて,さすがに製造から30年は経っていると思いますが,内部の部品の劣化や技術の進歩でもっとよい部品が手に入りますので,整備します。また,片ch.が鳴らない,とのことなのでこちらも併せて修理します。こんなの簡単に直っちゃいますので。

置き換えコンデンサ.jpg 

  30年の技術の進歩です。オリジナル新規取替部品です。

購入したC-21は届いてみるととても外観はきれいで,これならなかなかいい感じです。

でも.......。

ふたを開けてびっくり。おもわずウップ となってしまいました.....(>_<)。

もう,モーレツたばこ臭いのです。 

まあ,よくあることなんですけどね。さすがに修理するのにも耐えがたいので,中をばらばらにして基板も含め,すべて風呂場で洗っちゃいました。あとで十分乾燥すれば特に問題ありません。もちろん,数日間は通電禁止です。割に洗剤できれいに臭いが落ちます。

つまみ洗浄中.jpg つまみを洗います。

シャシー洗浄中.jpg  シャシーとパネルも洗いました。

さて,なんとか臭いも落ちたので気を取り直して修理します。

まず気がつくのは電源のフィルタ用電解コンデンサ。日ケミ製のものが使われています。どうも下部に茶色い液体状のものが.....。一瞬,軒並み液漏れと思ったのですが,接着剤のようです。電源用のサイズが大きなものなので長年の間に振動してリード線の根元が折れてしまうため,接着剤で固定しているようです。

ただ,外装のフィルムがすこし後退してしまっています。意外に温度も高いようです。 

電解コン液漏れ.jpg お漏らしじゃありません。

電源部.jpg Diとケミコンを取りかえました。 

小容量のものも容量変化が考えられますので,すべて電解コンデンサは取りかえます。また,基板がたばこ臭い,ということはボリウムやロータリースイッチの接点にもヤニがべったり,と考えられますので,これらは分解して洗浄用のガソリンで接点をきれいにしておきました。もっとも,使われていたAlpsのデテントボリウムや多点式のロータリーSWは密閉性が高いのか,内部はとてもきれいでした。

VR洗浄中.jpg 可変抵抗をホワイトガソリンで洗浄します。

また,例によって電源の整流用ダイオードはファーストリカバリに取りかえます。オリジナルは富士電機のSIB-01-02でした。規格は200V,1Aです。普通のシリコンDiですので,ノイズ抑制のため,パラに0.01μFのセラミックコンデンサが接続されていました。この前修理したPhilipsのCD104でも同じでした。これも古くさくて大きいので取りかえます。最近はセラミックコンデンサは大容量化が進み,10μFなんてのもありますが,オーディオ用としては向いていないのでフィルムに交換しています。

ただ,ここはダイオードが発生する逆向きの電流を吸収するところで,インダクタンス分と共振して周波数は数MHzにも及ぶのでやはりセラミックです。村田の積層セラミックに交換しました。

整流用Diはサンケン製のRG2Zに交換します。200V,1.2A,trr=100nsのウルトラファーストリカバリDiです。やはりオーディオ機器はファーストリカバリがよいです。  

電解コンデンサはニチコンのFine Goldシリーズに交換します。技術の進歩で同じ大きさだと大容量にできますので極力大きなものを入れました。一番大きな1000μF 50Vは3300μFに交換します。ただ,Fine Goldシリーズは50Vは1000μFまでなので,ひとつ下のオーディオ用標準品KW(M)にしました。残念ながら470μF 63Vは同じ大きさで1000μFにできますが,お店の在庫が品切れ。GWのため,問屋さんが休みで入ってこない,とのことであきらめました......orz。

次は,カップリングコンデンサ。

大きな1μFのチューブラ型フィルムコンが目につきます。ノーブル製のものです。

下側に茶色い液体が固まったようなものがついています。最初,液漏れかと思ったのですが,フィルムコンが液漏れするはずがありません。さっきの電解コンデンサ同様,接着剤のようです。

ただ,やはり古いので取りかえておきました。今だと積層フィルムで1μFのものが売られていて,非常に小型で便利なのはいいのですが,これだと小さすぎ,見た目あまりよくありません。

別に見た目が悪いだけでどうということはないんですが,一応,もっと大きなのはないかと秋葉をうろついてみますと独ERO製の大きな角形フィルムが目につきました。EROのフィルムコンはいつも真空管アンプで使っていますので,これにしようと思いました。MKT1841という250V耐圧のものです。 

ERO MKT1841.jpg カップリング用のフィルムコンです。EROの角形に交換します。

あと,EQアンプの出力はカップリングに電解コンが使われているんですが,フラットアンプへ行く方は22μFの2個直列,TAPE出力はタンタルコンデンサの3.3μFの2個直列となっています。 

C-21 equalizer amp.jpg 

      EQアンプ回路(サービスマニュアルから) 

2個直列というのは有極性の電解コンを無極性に変化させるためのもので,無極性のコンデンサが手に入らないときによくやる手です。+または-極同士をつないでやると無極性のコンデンサになります。 

これらはそれぞれ,合成容量は11μFと1.6μFとなりますので,なんとかフィルムコンの守備範囲となります。それぞれ,WIMAの10μFとニッセイの2.2μFの積層フィルムに置き換えました。タンタルコンは一時,高周波特性がよいのではやりましたが,どうにもiruchanは気に入らないので交換します。特にこいつはショートモードで故障するのがネックです。電源のデカップリングなんかに使われていたりすると電源のTrや,下手するとトランスの温度フューズを道連れにして壊れます。トランスの温度フューズはほとんどの場合,交換不能ですのでこれはほんとにとんでもないです。

EQアンプ出力.jpg 左:オリジナル,右:改良後

ところがここでiruchanははまっちゃいました。ここで気づけばよかったんですが......。

フラットアンプの出力は220μFの電解コンと1μFのフィルムがパラになっています。電解の方は2個直列じゃありません。フィルムコンデンサは電解が高周波ではインピーダンスが上昇してくるのでそれを抑えるためのものです。

C-21 flat amp.jpg フラットアンプ回路

   カップリングコンはミスプリです。220μFはもう1個ないとおかしいです。 

回路図にはこうなっているんですが, この回路はあり得ないです。このままだとこのカップリングコンデンサは+の電圧しかかけられません。

さっきも書きました通り,C-21はプッシュプルのエミッタフォロア(SEPP)だし,電源は±2電源となっているので,出力の電位はほぼ0Vです。ただ,実際には+か,-かどちらかにずれるし(オフセット電圧と言います),パイオニアの設計はオフセット調整回路をつけていないので,もとからどちらかにずれているので出力のカップリングコンデンサは無極性でないとまずいのです。フィルムコンだと問題ありませんが,電解だと無極性タイプが必要です。

実際,基板はちゃんとEQアンプ同様,2個の有極性電解コンを背中合わせに直列にしていました。回路図が違うんですね~......orz。

前回のPhilipsのCD104でもトランスの図が違っていましたけど,サービスマニュアルや回路図は信用しちゃいけません。 

ここはさすがに合成容量でも110μFともなり,とてもフィルムじゃ手に負えないので音のよいOSコンにしようと220μFを買っておきましたが,おかげでiruchanは回路図だけを見て購入する部品のリストを作ったので,220μFのOSコンが足りません。最初にフラットアンプをいじっていたので回路図が間違っていることに気づきませんでした。くそ~~~っ!。

ただ,それにしても110μFもの大容量がなぜ必要なのか.....。パワーアンプの入力インピーダンスは半導体アンプの場合,10kΩ程度と低いので大容量のカップリングコンデンサが必要ですが,ここまで大きい必要はないのでは,と思います。10μFくらいのフィルムコンに置き換えたいところです。これでも10kΩの入力インピーダンスに対し,カットオフ周波数は1.6Hzですので十分です。 

しかたないので,また次の機会とすることにし,修理を完了します。

なお,Trの脚は2SA9062SC1775Aなどは真っ黒!! これはたばこの煙じゃなく,空気中の硫黄分と表面にメッキされた銀とが反応して硫化銀となっているためです。 工場地帯などで亜硫酸ガスが多いとか,石油ストーブを使っているとこうなる可能性があります。金メッキだったら問題なかったのですが,金は高いので銀にしたのでしょう。東芝の2SC372みたいな汎用品でも昔は金メッキでしたけどね。スズメッキだとウィスカを生じて隣の電極とショートするし,むしろ,こんなになるんだったらストッキングはかずにナマ脚でよかったんじゃないかと....(^^;)。

キサゲ.jpg キサゲ刷毛できれいにします。

   もちろん,こんなこと通電中にやっちゃいけません!! 

キサゲ1.jpg 

     やっぱ,ナマ脚 だよな~~....。ゾク~っ!!

硫化銀自体はリード線表面にとどまっている分には見た目が悪いだけですが,どうやらモールドの中にまで入り込むらしく,その上,非導電性のため,チップとの接合部まで入り込むと断線するし,その前にノイズを発生するようです。最近だとチップ抵抗の電極部に銀が使われていて,硫化銀のせいで断線することがあり,問題になっているようです。

三菱製のTrに多く,オーディ用の名石である2SA726やソニーのBCLラジオに多用されている2SC710も同じ現象で故障の原因となっています。今回の2段目や定電流回路に使われている日立製2SA8722SC1775も同様でした。ちなみに,日立のこれらのTrの脚が銀メッキされているのは一番古いバージョンだそうです。日立はこの問題に気がついたのか,単にケチっただけなのか,すぐに銀メッキはやめちゃったようで,あとの2SC1775などはスズメッキです。スズメッキだとウィスカの問題が出ますけど,鉛を添加すると止まるそうです。でもこの手も今は例のRoHS指令のせいで使えなくなっています。なお,電極がECBと書かれている2SC1775などは古いタイプです。ドライバ用の2SD756にもECBと書かれたものがありますね。

それと,整流用のDiもよくこうなります。古いDiは必ずこうなっています。なにか,温度によるものもあるのでしょう。今回のSIB01もこうなっていました。こちらはFRDに交換しました。 

Trはiruchanもどうしようかと思いましたが,特にノイズが出ていなければ古いTrがもったいないのでピンを磨いてきれいにしただけとしました。もし,ノイズが出たり,音が出なくなったら交換です。

eq基板(整備後).jpg 整備後のEQアンプ基板です。

フラットアンプ基板(整備後).jpg 同じくフラットアンプ基板です。 

基板上は小さなスチコンが多用されています。スチコンはもう日本では製造されていません。昔は正確なコンデンサというとマイカかスチコンでした。EQ回路なんかに使いましたね。マイカは高いのでもっぱらiruchanはスチコンでした。スチコンはスチロール樹脂でがっちり固められていますので,長期的な安定性も十分です。そこですべてのスチコンはそのままとしました。2個,フラットアンプの位相補正用に4pFのセラミックが使われていたので,3.3pFのディップマイカと交換しました。 また,フラットアンプ▲の写真の下の方に並んでいる電解コンは汎用品です。ここはミューティングリレーの制御回路で,オーディオ用にする必要はありません。

交換部品.jpg これだけ部品を交換しました。疲れた~~。

さて,ここまで来たら片ch.の音が出ない,と言う問題に取り組みます。この場合,たいていは信号経路がどこかで切れているのが原因です。Trが死んでいる,と言うこともありますが,まあ,きちんとしたメーカ製の製品で通常の使い方をしているのならば故障することはないと思います。

一応,基板の状態で各Trが生きていることを確認しておきました。テスターをダイオードチェックモードにしてP-N接合の電圧を測ります。正常なら0.6V前後になるはずです。本来ならTrをハンダから外してやらないといけませんが,たいていは基板にはんだづけしたままの状態でも調べられます。出力段はSEPP回路なので反対の極性のTrがつながっていて難しいですけど,ステレオなので反対側の正常なチャンネルと同じ電圧になればまず大丈夫と考えられます。 

Trチェック.jpg Trをチェックします。すべて正常でした。

次は信号経路がつながっていることを確認していきます。結局,出力部のカップリングコンデンサからゲイン調整のボリウムへ行くところの導通がないことがわかりました。ジャンパー線をはんだづけして修理完了です。やっぱり簡単で,30分ほどで原因判明で修理完了でした。 

ジャンパ線.jpg フラットアンプ出力のジャンパー線 

あとはRCA端子をピカールで磨いたりして再度,組み立てて完了です。 

Pioneer C-21-1.jpg 完成しました!

pilot lamp.jpg パイロットランプは切れてなかったのでそのままです。

電球色LEDにしようかと思いましたけど,ランプの寿命が来るまでこのままにしました。 

さて,ここまで来たら通電して性能を測定しておきます。

【イコライザアンプ】 

C-21 eq特性.jpgEQカーブ

RIAA偏差は最大で0.2dBと優秀でした。左右のレベル差もほとんどありません。耐入力特性も431mV(1kHz)と優秀です。本機は容量負荷と抵抗負荷を切り替えられるようになっていますし,レコードの再生には非常に適していると思います。よほどレコード好きな人が設計したのだと思います。

【フラットアンプ】 

C-21 flat特性.jpg 出力電圧1Vのとき。

こちらはもっと驚き。なんと100kHzまでフラットです。1MHzでもゲインがあるくらいなので,送信塔の近くだとAMラジオが聞こえるかもしれません。たまに回路のパターンがアンテナになって初段のTrで検波され,AMラジオが聞こえることがあります。

若干,左右でレベル差がありますが,それはこのアンプにはゲイン調整があるので十分対応できます。耐入力は1.9Vくらいで,現在のCDプレーヤなどデジタル機器の最大出力には対応しきれません。フルビットだとサチってしまいますが,古い機器はこんなものです。 

こういう具合ですが,長年探していた機種を入手できて喜んでいます。今度の週末は久しぶりにレコードを聴いてみましょう。 


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Philips CDプレーヤ CD104(マランツCD-34)の整備~基板のメンテナンス~ [オーディオ]

2016年5月1日の日記

オランダ・Philips社の製造したCDプレーヤ,CD104を整備しています。このCDプレーヤは日本ではマランツがCD-34として発売していますし,北米ではMagnavox FD-1040として発売されています。そのほか,少しデザインが違うOEMがMcIntoshなどから発売されています。CDメカニズムとしてアーム式のCDM-1を搭載し,D/AコンバータはTDA1540Dを使用しています。いずれも音の良さで評判のものです。

前回は電源を整備しました。トランスの結線を変更して国内仕様の100Vに変更するとともに整流ダイオードをファーストリカバリ(FRD)に変更しています。 最初のファーストリカバリDiは日本インターの30DF2だと思いますが,1979年に登場し,私も初めて使ったときに音のよいのにびっくりしました。以来,中国LEPY(旧Lepai)社製のデジタルアンプの電源など,自作するものはすべてFRDにしていますが,今回,CD104もFRDに交換しました。

さて,先日は電源を整備して,まずは音出しをして正常に音が出ることがわかったので,内部の基板をメンテします。正常に音が出たので極力,いじる部分は最小限とします。

といって,前回も書いていますが,このCDプレーヤに使用されているPhilipsの電解コンデンサは容量抜けが著しく,甚だしいものは0μFになってしまいますので,交換しておきたいと思います。そういうこともあってか,CD104やCD-34の後期のものは日本のニチコン製の電解コンデンサに代わっています。やはり電解コンは日本製が一番だと思います。

私のCD104はかなり後の製造だったようで,基板上のコンデンサはほとんどニチコン製でした。

と言う次第で,これらのコンデンサは交換せず,もとのままとし,一部の交換にとどめました。

【サーボ基板】

ふたを開けて,一番上にある大きな基板です。CDメカから出力される光ピックアップの信号からサーボ信号を取り出してピックアップの位置制御を行います。普通,CDプレーヤのサーボ機構はトラッキング,フォーカス,ラジアル,スピンドルの4種類ですが, CDM-1はアーム式なのでフォーカスとラジアル,スピンドルのみです。

線番.jpg 必ず線番を振っておきます。

CD104は古いCDプレーヤなので内部にたくさんのジャンパ線があります。今だとフラットケーブルでしょうし,そもそもICの大規模化が進んでIC内部の配線で終わっちゃっていますからCDプレーヤの中の配線は非常に少ないのですが,CD104は20本くらいありますので,差し間違えしないよう,サービスマニュアルに沿って番号をテプラで貼り付けました。 

サーボ基板(オリジナル).jpg オリジナルの基板。数字はコネクタ番号です。

問題となるのは青いチューブラの電解コンデンサで,Philips製です。030という型番で容量は33μFですが,耐圧は16V/40Vの2種類があります。Vishayの47μF25V/40vに交換しました。 VishayはPhilipsの電子部品部門を買収したので,製造の工場は同じでしょう。型番も021 ASMとなっていて,RSコンポーネンツの説明を見ると,用途は汎用,産業用,自動車,オーディオビデオ,モバイル/携帯機器となっています。同じ33μFが入手できませんでしたが,回路を見る限り,47μFでも問題ないと思います。

サーボ基板.jpg 変更後。

Vishayの電解コンデンサに交換したほか,スピンドルモータ制御回路に入っている4.7μFの両極性電解コンデンサはWIMAのフィルムコンに取りかえました。小容量のバイポーラケミコンはフィルムに置き換える方が安心です。

なお,同じスピンドルモータ回路に入っている4.7Ωの抵抗はフューズ抵抗で切れていることがありますのでテスターでチェックしておきます。 端の白帯がフューズ抵抗の印です。

【デコーダ基板】

サーボ基板の下にあるのがデコーダ基板で,D/Aコンバータのほか,エラー訂正やデジタルフィルタなどのデジタル回路,出力のバッファアンプが入っています。

デコーダ基板(オリジナル).jpg デコーダ基板(オリジナル)

この基板には普通,Philipsの035シリーズという青い25V 33μFのアキシャルリード型電解コンが林立していて,それが軒並み容量抜けなんですが,私のCD104はニチコン製のものにすべて代わっていました。ニチコンのは大丈夫だと思いますのでそのままとしました。

1個だけ,Philipsの035 6.3V 150μFがあったので,Vishayのものに交換しました。 

ただ,問題なのは本機で片ch.にたった1個だけあるカップリングコンデンサ。 オリジナルはPhilipsのおなじく035シリーズの22μFが使われています。本機はニチコンの22μF 35Vに代わっていました。

ただ,この部分はオーディオ信号が通る部分だし,きちんとしたオーディオ用部品に交換しておきたいと思います。 使われているPhilipsの035シリーズはこのCDプレーヤの音がよい理由ともされているのですが,さすがに容量抜けはまずいです。CD-34で音が出ない,と言うトラブルは多くの場合,このカップリングコンデンサの容量抜けが原因です。それに,035のシリーズはごく普通の汎用品です。

できれば,この部分はフィルムコンにしたいのですが,さすがにフィルムで22μFというとサイズが大きく,交換は難しいです。上にあるサーボ基板に支えてしまいますしね。無理をすれば入れられないことはないと考えたのですが,サイズが大きいとノイズをひろう原因にもなります。

ということで音のよい電解と言うことでLEPY(旧Lepai)のアンプの改造にも使用した,OSコンにしました。 これは電解コンとは言っても普通の電解コンとは異なり,中の電解液はありません。導電性アルミ固体電解コンデンサというのが正式な名称で,イオンによる電荷の移動を利用するのではなく,イオンよりはるかに軽い固体中の自由電子を利用します。そのため,高周波特性は非常に良好でフィルムに匹敵します。エポキシ樹脂で密封されているので容量抜けも少ないようですし,耐熱性にも優れ,自動車などにもよく利用されているようですが,音もよいのでオーディオ用としても適しています。

LEPYのアンプでこれを使って非常によかったので,今回もこれにしました。サイズが小さいのも何よりです。

ついでに,OPアンプはSigneticsのNE5532Nが使われていますが,これもいずれ交換しようかとDIP8ピンのソケットを取り付けました。ちょっと8ピンのICを外さないといけないので面倒ですが,これをやっておくと後々便利です。

出力OPアンプ周辺(オリジナル).jpg Before

出力OPアンプ周辺.jpg After ICソケットつけました....。

OPアンプを交換すると音が大きく変わります。NE5532自体,音がよいとされていますので,当面,このまま使用することとします。

NE5532は名門Signeticsが開発したものですが,1975年にPhilipsに買収されています。と言うことで自社製品を搭載しているわけですね。でもロゴはSigneticsのままです。 あとでPhilipsブランドのNE5532を搭載している機種もあります。Philips Semiconductorは2006年に大部分の株式をファンドに売却され,今はNXPとなっています。その前,1995年には旧Signeticsの工場だった韓国の工場が売却されていて,そこが今,Signeticsを名乗っています......orz。

まあ,Philips自体,とうにオーディオ事業からは撤退していて,CDプレーヤなどの家電製品は作っていません。欧州で家電メーカの巨人だったんですけどね。今年は祖業の照明事業を売却したようです。時代の流れでしょうか。 

LepaiのアンプではナショセミのメタルキャンOPアンプLF-355HLME49720HAを使って高音が澄み切って非常に音がよくなったので,いずれこれらのOPアンプに交換したいと思います。やっぱ,OPアンプはメタルキャンだと思います.......(^^;)。

【パイロットLEDの取付】

残念ながらCD104は電源投入後はCDを入れない限り,蛍光表示管に -- と表示されるだけで, 何も表示されません。せめて何か照明がつくとか,LEDが点灯するとか,してほしいものです。自作マニアなので,よくわかりますが,パイロットランプがない機械というのは危険で,自作するときは必ずパイロットランプをつけることにしています。

pilot lamp.jpg ピンクのLEDにしました。おしゃれでしょ....(^^)。

1984年当時,ピンク色というLEDは存在しなかったのでおかしいという話もあるとは思いますが.....。 

最近はiruchanはマルツで売っているピンク色のLEDがお気に入りで,Lepaiの電源にも使いました。チップ自体は青色で,樹脂に混入された蛍光体でピンク色にしています。だから青色LEDがなかったらピンク色もできないわけです。

CPU基板1.jpg CPU基板から電源を取りました。

パネルはABS樹脂製なので簡単に穴を開けられます。φ3mmの穴を開けてφ3mmの砲弾型LEDを接着しました。

問題となるのは電源ですが,CD104はフロントパネルの裏にCPU基板というのがあり,そこに5Vが供給されているのでそこから取りました。 

CPU基板.jpg こんな風です。

52番というソケットがあるので,そこの#3ピンと#5ピンに5Vが来ているのでそこから取りました。LEDの電流制限抵抗は10kΩにしています。普通,5Vくらいの電源だと300Ωくらいなんですが,これだと明るすぎ!! 最近のLEDは輝度が高すぎて1mAでもまぶしいくらいです。10kΩだとわずか0.2mAくらいです。さすがにちょっと暗めかな,という感じですがあまりパイロットランプは明るくてビカ~ッと光るのも何なので暗めにしています。これでも真っ正面から見るとまぶしいくらいです。

さて,お楽しみ......。音を聴いてみます。

まずは小林研一郎指揮名古屋フィルのサン・サーンス交響曲第3番 "オルガン" (OXTON OVCL-00079)です。最近,近くのホールでコバケンさんじゃないですけど実演を聴いて感激しました!! やっぱパイプオルガンの音はいいですね~。

この盤は名盤として知られています。1998年7月のサントリーホールでのライブです。のっけからコバケンさんのうなり声が聞こえる迫力満点の超名演です。

コバケン.jpg WaveradioはFM専用です。

使っているアンプはLEPY(旧Lepai)のLP-2020A+です。音のよいことにびっくりの中国製デジタルアンプです。私はアンプ自作派なんですけど,このアンプの音には脱帽です!! これには勝てません。スピーカはBW-800です。バックロードホーンのため,たった8cmのSPユニットでもいい音を聞かせてくれます。

それにしてもパイプオルガンの音がいいのに感激!! 第2楽章でダ~~ンとオルガンが出るところなんかしびれます。後半の盛り上がりはものすごいもので,やはり超名演ですね。 

続いてはマーラーの "大地の歌"。ビバリーヒルズでゆっくり余生を送っていたワルターのステレオ録音です(SONY SRCR 2336)。  

walter lied von der erde.jpg 

このワルターのステレオ録音はさすがに玉石混淆で,さすがにワルターも年取ったのか,名演と凡演(こんなこと書くとワルターのファンにしかられちゃうな)が入り混じっているのですが,この盤は超名演ですね。

聴いてびっくり。いつも聴いているCDなんですけど,フルートが美しいし,ニューヨークのマンハッタンセンターのホールの響きがとても美しいです。いつも聴いていた感じとは全然違います。 やはり,CD-34やCD104は音楽性の優れたCDプレーヤと言われるのがわかりました。

ちなみにマーラーの "大地の歌" はやっぱりワルターが一番で,モノだと例のフェリアー&パツァークのDECCA盤,ステレオだとこれだと思います。 

最後はアナ雪の "Let it go~ありのままで~" 以来,すっかりはまっている松たか子さん。アップのお顔がとてもきれいな "Cherish you" (BMG BVCR-18096-97) です。"明日,春が来たら" が入っています。

cherish you1.jpg 美しいジャケットです。

澄んだ歌声に魅了されます。 癒やされる~~!! 2007年4月の発売なので声も若い感じですけど,圧倒的な "Let it go" の歌唱力を彷彿とさせる伸びやかな高音の歌声が魅力のアルバムです。

さて,肝心のCDプレーヤの音ですが,やはりいい感じです。今まではソニーのSACDプレーヤを使っていましたが,やはりこちらの方がいい感じです。アナログチックな音がする,と言う評判はその通りのようです。

まだOPアンプを交換したりしていませんが,カップリングコンデンサは効果あったようです。電源をとりあえず修正して音出しをしたときは眠い感じでしたが,カップリングをOSコンにしたらずっと解像度も高まり,高音も非常にきれいです。音の分離も向上した感じです。改造したLEPYのアンプの音がよいのもOSコンのせいかと考えているので,やはりなかなかです。

と言う次第で,ようやくPhilipsのCD104を使うことができるようになりました。当分はこの状態で聴いて,将来はOPアンプをメタルキャンにしたり,クロックをVCXOを使って高精度のものにしたりしたいと思います。

ただ,CDが消えていこうとしているのは残念。配信で十分だし,ハイレゾも配信されている現状では配信の方が音もよいし手軽だ,と言うことになれば時代の流れ,と言う気もします。CDプレーヤも命運をともにするのかと言う気もするのですがこれだけ膨大な過去のストックを考えるとまだ残るとは思っています。ソニーやPanasonicも製造中止しちゃっているんですが,そのうち,マニア向けでCDプレーヤが復活すると思います。でもそのときは1台何十万円もするんでしょうね~。

それと,明るい希望としてはレコードの復活。最近は若い人たちの間でカセットも人気が出ているそうですが,ちょっとこちらの方は驚いていますけどね。

要はハイレゾもいいけど,データだけの配信じゃおもしろくない,というのとか,▲の松たか子さんのジャケットもそうですけど,CDやレコードというのはジャケットを集めるというのも楽しみのひとつなので,配信じゃ物足りない,と言うこともあるのでしょう。レコードやカセットだと鳴らす手間を楽しむなんてのもあるのでしょうしね。ボタン押すのだけ,とか触れるだけというのではあまりに物足りないですし,デジタルのあまりに大きなダイナミックレンジや,重低音や超高音に疲れた,と言うのもあるのかもしれません。

いいぞ~~。やっぱこうじゃなくちゃ。デジタル時代だからといっていいことばかりじゃないし,昔のものだっていいことも多いんだ~と,思いました。 


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