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コアレスモータ対応鉄道模型用コントローラの開発~番外編・KATO KC-1の特性~ [模型]

2017年6月25日の日記

KATO D51&KC-1.jpg 

KATOのD51ギースルエジェクター機を運転中。停車中でも明るく点灯します。なお,D51は逆向き点灯防止用のコンデンサを撤去し,スナバ回路を挿入する改造が必要です。

2014年11月にリニューアル発売されたKATOのD51ギースルエジェクターは新設計のコアレスモータを搭載し,非常に低速もスムーズで,非常に評判の高いものなんですが,iruchanが愛用しているTomixの5001 Power UnitのPWM式改造版ではスイッチング周波数が20kHzの時はスムーズに動きませんでした。

最初,なぜ,コアレスモータ搭載機はラピッドスタートになるのか,原因がまったくわかりませんでした。ただ,スイッチング周波数を300Hzに切り替えるとちゃんと動く,ということから,PWMのスイッチング周波数が低い方がよいのではないかと考えました。実際,昔発売されていたKATOのKC-1はスイッチング周波数が50Hzくらいであることから,古いパックでありながらコアレス機との相性もよく,スローもよく効くし常点灯も可能,という話を聞きますし,実際,マニアの方が今でも探しておられるようです。

といって,今どきこのような古いパックを探すのは骨が折れますし,オクの価格も非常に高く,とても入手できないのでiruchanはTexasのスイッチングレギュレータ用IC TL494を用いて,ほぼ同じ回路でKC-1のiruchan版を作って,うまくコアレス機も動くようにしました。一応,現代風に出力の素子はMOS-FETに変更し,過電流検知もR-Sフリップフロップを使った回路にしました。第3回でKC-1改を作って実際にテストしています。やはり驚異的なスロー性能に驚いたばかりです。

ただ,スイッチング周波数が高いとよくない,というのは第一義的な原因ではないことにあとで気づきました。

本研究を始めた最初の頃,iruchanは低周波のパルスほど,パルスがonしたときの時間が長く,モータ電流が大きくなるので,トルクが増え,それでスムーズに動くのではないかと考えました。

でも考えてみれば,1秒間の平均トルクは同じデューティ比ならパルスの数で変わりませんし,LTspice調べてみても,スイッチング周波数によりトルクが変化することはないとわかりました。

では,なぜ,スイッチング周波数が低い方がよいかというと.....,

それは,低いデューティのパルスがちゃんと出力されるから,でした。

20kHzなどという高いスイッチング周波数だと,数%と言うような低いデューティのパルス幅は数μsとなり,結構,スイッチングが厳しくなり,大体,1~2μsくらいで出力できなくなります。デューティで言うと,8~10%前後です。

第4回に書きましたが,コアレスモータは4%くらいのデューティでも回転してしまいます。

ですから,コントローラはこれより低いデューティのパルスが出力できないとラピッドスタートになっちゃうわけです。

通常のPWM式コントローラは出力素子にMOS-FETを使っていることが増えてきましたが,MOS-FETはゲート入力容量が大きく,その容量分を高速で充電しないとMOS-FETがすぐにonしないし,offのときはゲートに溜まった電荷を高速で放電しないと低デューティのパルスが出力できません。そこで,充放電を高速でするため,ドライバ回路を用いることとしました。

iruchanはプッシュプルドライバを挿入してPWM式コントローラを高速化してコアレス機に対応するようにしました。KC-1改でも同様に疑似プッシュプルドライブ回路を挿入して低いデューティのパルスが出るように改良してあります。

また,先週,Tomixの5001コントローラもPICを用いて高速化し,コアレスモータにも対応できるようにしました。

という状況なのですが......。

実は,iruchanもKC-1がほしくなり,ずっと前から中古屋さんやオクをチェックしていました。

そして,とうとう,オク5回目くらいの挑戦で,ようやくKC-1をゲットしておりました。本当になかなか人気が高く,入手は難しいパワーパックのようです。

KATO KC-1コントローラー.jpg わが家にもやって来ました[晴れ][晴れ]

どっかで見たような値札がついてますけど.....。たぶん,前の所有者の方はこの店で中古を買って,再びオクに出されたのでしょう。ひょっとすると▼のように電源が準備できず,運転できなかったのでオクに出されたのかもしれません。

KATO KC-1コントローラー2.jpg とてもきれいな状態でした。

   ▲の写真はACアダプタをつなぐ改造をして通電時の状態です。


KATO KC-1コントローラー3.jpg 背面の黒いつまみが調光用です。

さて,今日はそのKC-1のテスト結果をご報告します。実は第2回で,電子回路シミュレーションソフトLTspiceを使ってKC-1の回路を解析しているのですが,今回は実機の出力波形を調査してみたいと思います。

その前に......。

実は,iruchanが入手したのはKC-1本体のみで,これでは電源がない状況です。

KATOのコントローラーKC-1は電源ユニットKM-1と組み合わせて使用するもので,KC-1単体では電源がないことになり,動きません。

さらに,常点灯ユニットKU-1というのもごく短期間だけ販売され,これらと組み合わせて使用するものでした。KU-1については,最後に解説したいと思います。

と言う次第で,KC-1は今年のGW頃に入手していたのですが,電源の準備を後回しにしていたため,今までブログに書きませんでした。

まずは電源の準備から。

KM-1を探すのが一番手っ取り早い方法だとは思いますが,KM-1はKC-1以上に入手が難しいですし,基本的にKC-1と組み合わせて使うもののため,KM-1単体でオクに出ることはほとんどないと思います。

と言って,KC-1単体でオクに出ることが多いのですが,電源がないため,落札した人はどうやってKC-1を使っておられるのでしょうか?

iruchanは電源は別途,用意するつもりだったので,最初からKM-1を入手することは考えていませんでした。なにより,KM-1はKC-1と同じ筐体に入っているため,かなり図体が大きいのです。それに,使用するときはKC-1と "合体" して使用するため,非常に横幅が広くなってしまいます。

当時はまだスイッチング電源が一般的ではなく,KM-1はトランスを内蔵し,ブリッジDiで整流しているだけの非安定化電源だと思います。こうするとどうしてもトランスが大きいため,筐体も大きなものとなってしまいます。

と言う次第で,iruchanはまずはKC-1に電源を内蔵し,AC100Vで動作させたいと思いました。Tomixの5001改でもDC12Vのスイッチング電源を内蔵してありますしね。

といって,5001もそうでしたけど,中を見てみるとかなり厳しく,いくらスイッチング電源が小さいと言っても内蔵するのは困難な感じです。

と言うわけで,とりあえず,ACアダプタを使うことにします。もちろん,こちらの方が多くの方が改造できますし,便利かもしれません。そこで,まずはACアダプタ仕様に改造し,後日,電源内蔵型にも改造できるようにしたいと思います。

そこで,使用するACアダプタなんですけど,これはパソコン用の周辺機器なんかでたくさんDC12V出力のものがありますので,それを流用します。iruchanはルーター用の電源を使いました。本体はとうに捨てちゃったんですけどね。ACアダプタはもったいないので残してありました。

なお,専用のものではないACアダプタを流用するときは,電圧,電流,極性を必ずチェックしてください。

最近のものはスイッチング電源なので,電圧は負荷によらず一定電圧となっていますので,過電圧の問題はありませんが,昔のトランスを用いたものは非安定化電源なので,仮に12Vと書いてあっても無負荷時は15~17Vくらい出ていたりして,Nゲージには危険です。

また,たいていのACアダプタはプラグに外径φ5.5mmのものを使っていますが,内径がφ2.1mm2.5mmの2種類ありますし,極性もほとんどのものは内側が+で,外側が-ですが,まれに逆のものがありますので,ご注意ください。必ず,事前にテスターで電圧と極性をご確認ください

さて,iruchanが使う予定のはルーターで使っていたやつで,12V,1Aの容量があり,外径5.5mm,内径2.1mmのものでしたので,ジャックもあわせて内径2.1mmのを使います。秋葉などで購入される場合は内径の違いにより,2種類ありますのでご注意ください。

なお,こういう問題があるので,最近はEIAJが決めた極性統一プラグというのも使われています。これは電圧で区分があり,12VだとEIAJ#4型となります。極性は必ず中心ピンが+となっています。もし,お手持ちのACアダプタがこのタイプでしたら,#4のジャックをお買い求めください。

ACアダプタ表記.jpg 使用したACアダプタの定格

事前に表記を確認しておきます。電圧,電流,極性が記載されているはずです。

ACアダプタプラグ&ジャック.jpg 使ったACアダプタのプラグとジャック

プラグの外径はφ5.5mmで,内側のピンはφ2.1mmのものです。

ACアダプタ電圧チェック.jpg 必ず事前に電圧,極性をチェックしてください。

さて,次はKC-1の内部をチェックします。

ところが.....。まず,底ブタが外れません.....orz。

こういうときはどこかにねじが隠れています。どこに隠れているかというと.....やはりゴム脚の裏に隠れていました。両面テープでゴム脚が貼りつけられていましたので,あとで貼り直せばOKです。

kato kc-1底ブタねじ.jpg こんなところにねじが隠れています。

4箇所のねじを外せばOKでした。残念ながら,例によってタッピンねじだったので,いずれバカになってしまうと思います。そのときはTomixの5001 Power Unitを修理するときに使ったインサートナットが便利です。

まあ,まだねじはバカになっていませんので,当面はこのままです。

KATO KC-1コントローラー内部.jpg 内部

内部の部品は日本製のものばかりで,いい時代の製品だと思います。電解コンデンサはどれも直立してきれいにハンダ付けされていますし,非常に丁寧に作られています。オーディオマニアにおなじみの福島双羽のMPC型金属板抵抗器が使われていました。

制御素子には放熱器がついています。バイポーラTrなので発熱量は多いです。表面にサーミスタが密着して取り付けられ,温度補償をしているみたいです。

使われていたのはTO-220型の新電元製2SA1599のようです。普通のTO-220と違い,ずいぶんと厚みのある,見たこともないパッケージです。VCEO=40V,IC=10A,PC=25Wの規格です。

新電元2SA1599.jpg 新電元の2SA1599

型番を調べるため,ねじを外したついでに,後ろの放熱器に密着するよう,シリコングリスを塗って,再びねじで固定しました。真ん中に見えるDiは同じく新電元のファーストリカバリDiですね。

μPC494C.jpg PWM信号発生用のμPC494C

PWM信号は調光用の高周波と走行用の低周波の2波があり,それぞれ,NECのμPC494Cを使っています。Texas InstrumentsのTL494Cのセカンドソース品ですので,もし故障したらTL494Cが使えます。

さて,問題はジャックをつける位置なんですが,iruchanは底ブタにつけちゃいました。KM-1からKC-1に電源を供給する端子が底ブタについているからでしたけど,肉厚が大きいし,加工が大変でしたので,お試しになる方は上ケース(灰色の樹脂のほう)に穴を開けてください。そっちの方が楽です。なお,穴径はφ7.8mmです。

ACアダプタジャック.jpg ジャックをつけました。


ジャック配線.jpgこんな風に配線を準備しておきます。

ジャックから,そのKM-1との接続点に線を配線すればOKです。卵形ラグ端子にはんだづけして,その接続点のねじにとも締めしました。

なお,さっきも書きましたが,ACアダプタはまれに中心ピンが-となっているものがあります(EIAJの極性統一プラグは絶対に+ですけど)。こういうACアダプタを間違えて挿すと故障します。

iruchanはACアダプタ関係の機器を作るときは必ず中心ピン+で作るので問題ないのですが,知らない人が挿しちゃうことがありますので,+側の配線に▲の写真のようにダイオードを挿入しておきました。もちろん,そんなの間違えないよ,と言う方はつけなくても結構ですが,転ばぬ先の杖ですのでつけておきました。

なお,DiはP-N接合面を通る際に順方向の電圧降下があり,シリコンDiでは0.6Vとなります。当然,パワーパックの出力電圧も下がっちゃいますし,0.6×最大電流(W)分の熱も発熱するので,今回,ショットキーDiを使いました。これだと順方向電圧降下は0.2Vくらいなので安心です。

このあと,ジャックからの電流は卵形ラグを使って,KM-1との接続用のスナップ端子にネジ留めする計画です。

ところが....。

そのナットがねじロックで固めてあって,どうやっても緩みません。ねじ頭が小さく,#0のドライバーをつかうのですが,それで緩めようとしても,ガチガチで緩みません。たかがM3のねじなんですけどね....。

こういう場合,はんだごてでねじを暖めればねじロックが溶けて緩むんですけど,それじゃ樹脂のケースが溶けちゃいます。

困ったな~,と思ってネットを探してわかりました。なんと,アルコールでねじロックを溶かせばよいとのこと。さっそく,アルコールを数滴垂らして2,3分たったら見事に緩みました。やれやれ。

ジャック配線1.jpgこういう具合に配線をしておきます。

さて,ここまで来たらようやく通電できます。

まずは,背面の調光用トリマを最低の状態にしたときです。走行用VRを徐々に変化させて調べました。

最低デューティ(調光min).jpg ダイヤル0の時です。

驚いたことに,このときでもパルスが出力されるようになっていました。低周波パルスの周波数は55.3Hz,最低デューティは0.66%でした。これならコアレスモータ機もスムーズに起動しますね!

なお,このようになっているのはボリウムを回していくときにいつまでも機関車が動き出さないとおかしな感じがするので,起動時の位置を適当な範囲にするための調整機構がついているためです。▲の基板の写真中,左下にオレンジ色の半固定抵抗がありますが,これで調整します。iruchanが解析したSpiceの回路ではR11とR12がそれです。

デューティ(dial 1, 調光min).jpg ダイヤル1の時です。

驚いたことに,調光用トリマは最低の状態にしてあるのですが,走行用ダイヤルを少し回すと高周波のパルスが出てきます。ダイヤル1から出始めますが,最初はこのように低周波のパルスの間に出てきますが,途中で消えてしまいます。

デューティ(中間, 調光min).jpg

その後,走行用ダイヤルを回していくと高周波パルスも安定してきて,低周波のパルスの間を埋め尽くすように高周波パルスが出ます。高周波パルスの周波数はほぼ20kHzです。

最大デューティ(調光min).jpg 最大デューティ

KATOのKC-1は最大デューティは95%くらい,と聞いていましたが,ダイヤル9くらいで100%となりました。聞いていたこととは違うようです。

高周波パルスの方が低周波パルスより1V程度,電圧が高いようです。

調光用トリマを回すと,最初から高周波パルスも出ますが,オシロの画像としては,上記と似たようなものでした。

ただ,驚いたことに,高周波パルスは調光用トリマの設定で一意に決まる,と思っていたのですが,走行用ダイヤルとも連動していて,高周波のデューティも最大97%くらいになってしまいます。

ややこしいので,グラフにしてみました。

kato kc-1 duty変化.jpg デューティの変化です。

調光用トリマを回すと,確かに,ダイヤル0のときにデューティが0%~47.8%まで変化します。コアレスモータだと4%を超えると走行してしまいますので,調光用トリマの設定は慎重にしてください。

その後,走行用ダイヤルとも連動してデューティが▲のように変化しました。

ただ,高周波パルスはどうも周波数も途中で変動しているようで,デューティは測定するたびに変化しています。▲のグラフがうねっているのはそのせいです。

どうにもこのあたり,事前のシミュレーションとは違うようです。

さて,ここまで来たら走行テストをしてみませう。

やはり,コアレスモータ搭載のD51から。

予想どおり,ちゃんと常点灯にも対応していて,停車中にも前照灯が点灯してます。また,発進もスムーズで,スロー走行もほかのパックとは違う感じで,非常にゆっくり走行します。

低周波PWMなのでモータの電磁音が気になりそうでしたが,iruchan自作のKC-1改同様,かすかに低速時にジッ,ジッと言う感じの音がするくらいで,大して気になりません。

やはり,KC-1改同様,高周波パルスのせいで,モータには循環電流が常に流れていて,電機子の振動が抑えられているため,と思います。

調光用トリマを回すと前照灯の明るさが変わりますが,通常はmin.の状態でよさそうです。

kato DD13.jpg KATOのDD13と

30年以上前,中学生だったiruchanがお年玉で買ったDD13です。当時,あまりの精密さに感激しましたし,また,走行の素晴らしいのにも感激しましたが,今も見事な走行をするのに驚きます。今は愚息が遊んでいます。

前照灯はLEDに変更し,スナバ回路を挿入しているので,常点灯にも対応します。

こうして,ようやくKATOのKC-1を入手しました。やはり,性能のよさにびっくり!!いつか,AC100Vを直接入力できる,電源内蔵式にしたいと思います。ついでに,電源SWがないので追加したいと思っています。


☆ KATO KU-1について

今回のコアレスモータ対応のコントローラ開発プロジェクト? で最初にKC-1がその解決策ではないかと考え,iruchanも自作してみたのですが,どうしても昔から引っかかることがありました。

KC-1を使うとTomix製の前照灯基板が壊れ,最悪,ボディが変形する,という話があります。

これはどうにもおかしな話で,KC-1は普通のPWM式コントローラだし,iruchanも学生時代からPWM式のものを自作して使っているので,もし,KC-1がダメだというなら自作のもダメだし,PWM式がよくないのか,とも思えますが,そんなはずはないはずだし,どうにもおかしいと思っていました。

確かに,KC-1は低周波と高周波の2周波を用いたPWMコントローラで,電子工学的には低周波のPWMはダメで,理由は損失が増えるから,です。実際,第1回にも書いておきましたが,Spiceでもシミュレーションすると低周波PWMは損失が大きいです。

でも,シミュレーション上は損失が増えると言っても2W以下ですし,これなら脱線したりしてモータが停止しているのにフルに12Vをかけている方がはるかに危険です。1A出力のパワーパックならモータで12Wもの熱を出していることになりますからね。

ネットを見てもよくわからないし,確かにKC-1の使用について不安に感じている人がおられるようです。

しかし,これはどうも誤解だと思います。

よく調べてみると,確かにTomixの説明書にはこのように書いてあり,KC-1とは書かれていません。

Tomix ED61, 62注意書き.jpg Tomix ED61, 62説明書から

カトー製のKU-1などは使えない,と書かれていて,KC-1はダメ,と言う風には書かれていません。

と言う次第で,使用不可なのはKU-1であることがわかります。

KU-1はKC-1と同じ頃,KM-1などとともに使用する室内灯用の電源ユニットとして発売されました。

当時はまだ,前照灯や室内灯は電球(ランプ)を使用しているため,停車中に点灯させることはできませんでした。

なぜか,というと電球はあくまでもフィラメントが熱せられて光るもののため,ある程度の電圧をかけないとフィラメントが白熱するくらいの電流が流れないためで,もちろん,そのときの電圧はかなり高いので,すでにモータは回転してしまったあとになってしまうからです。

それでも,停車中にも点灯させようと考えた場合,やはり瞬間的に電球のフィラメントが白熱するくらいの大きな電流を流してやることが考えられます。瞬間的なパルスにしておけば,モータは回転しない範囲とすることができるはずです。

こうして販売されたのがKU-1で,ピーク電圧で30Vくらいが出力されるようです。KC-1同様,PWM式になっていて,パルスの最大デューティは10%くらいのようです。これくらいであれば,当時のコアつきモータなら回転しませんので,常点灯が実現できます。

ところが,KATOの製品は問題なかったのですが,Tomixの製品は前照灯にレールのギャップ通過時などに瞬間的に前照灯が消えるのを防ぐため,コンデンサが挿入されていました。

kato, tomix前照灯回路.jpg前照灯回路

      KATO          Tomix

この場合,ちょっと問題があります。このコンデンサがパルスを平滑化してしまうのです。 

KATOの場合は,コンデンサがないため,電球にかかる電圧Vlamp (赤)線です。もちろん,電流も立ち上がりますが,瞬間的な電流なのでフィラメントが切れたりしません。

kato ku-1出力波形4.jpgランプにかかる電圧

ところが,ここにコンデンサが入っているとパルスを平滑化してしまい,Cが小さいときは (マゼンダ)線ですから電球にかかるピーク電圧も低いし,電流が流れる時間も短いので問題はないのですが,Cが大きいと,  線となり,ピーク電圧は低くなりますが,平均電圧はNゲージの規格値である12Vを上回ってしまうこともあります。その時,規格以上の大きな電流が流れてしまいます。

余談ですが,このコンデンサは今ではほとんどの車両に入っていて,このため,PWM式のコントローラを使ってもLEDにかかる電圧が低くなってしまい,常点灯に対応しなくなってしまっています。この場合はパルスのピーク電圧は12Vなので,コンデンサにより平滑化されたあとの電圧が約2.8Vを下回るとLEDが点灯しません。停車中はデューティが低いので平均電圧も低く,前照灯が点灯しなくなっちゃいます。このコンデンサは,現在は前照灯をLEDにするとモータの逆起電力で反対側の前照灯LEDが点灯してしまうための対策として挿入されています。iruchanはこのコンデンサを撤去し,スナバ回路を挿入することで常点灯に対応させています。▲のD51やDD13もそのように改造してあります。

さて,KU-1を使ってTomixの車両を運転した場合,Cが比較的大きいため,ランプにかかる電圧が12Vを超えてしまい,過大な電流が流れてランプが断線したり,ランプが発熱してボディを変形させてしまったのだと思います。当時は積層セラミックコンデンサがなく,それほど大容量のものができない時代で,容量としてはせいぜい0.1μFくらいのものだと思いますが,それでも平均電圧が12Vを超えることもあったのでしょう。

と言う次第で,LTspiceでシミュレーションしてしまいました。そんなのできるんかい?

まずは電球の抵抗について。

電球はフィラメントを使っていますが,温度により抵抗が変わります。代表的な非線形抵抗で,よく教科書なんかに載っています。

iruchanも,印加電圧の0.6乗に比例することは知っていましたが,正確には0.62乗だそうです。

と言う次第で,電球の抵抗は

              白熱電球抵抗式.jpg

となります。

つぎに,電球の定格なんですが,今どきこんなこと調べようとするとなかなか資料にも載っていなくて困っちゃいます。実際に電流を測った方が早いという気もするのですが,大体,Nゲージに使用されるムギ球は12V,60mAだとわかりました。Tomixの資料に載っていました。KATOのもほとんど同じようです。

ということはワット数は720mWで,抵抗値も200Ωですね。ただ,もちろん,この抵抗値は12Vを印加したときの値です。

上式のkは12Vのときに200Ωとなるように計算すればよいので,

              白熱電球抵抗式1.jpg

ということですね。これをLTspiceで使います。

12Vムギ球simulation schematic.jpgシミュレーション回路

ごく簡単なシミュレーションをしてみました。抵抗を配置し,そのRをこのように式で表して電球の代用にします。LTspiceで部品の抵抗値を入力するところにこの式を記入します。LTspiceは累乗は^でなく,**で表すのにご注意ください。なお,端子電圧をVSという具合にラベルで命名しておきました。

まずはDC sweepを実行して,端子電圧を0V~30Vでスイープしてみます。こうすると電球の特性が表示されます。

ムギ球特性(Tomix)2'.jpg 12Vのムギ球の特性

驚いたことに損失も計算できます。ちゃんと,12Vを印加したときは60mA流れて,損失は720mWと言うことがわかりました。

さて,次はパルス波を印加してみます。ピーク電圧は30Vとします。デューティは10%としました。

すると......。

ムギ球損失(Tomix).jpg Tomixの回路

やはり電球の損失は平均で1.095Wとなり,定格オーバーとなります。これでは加熱するし,フィラメントも切れると思います。

ところが,もし,KATOのようにコンデンサをつけていない場合は,と言うと,

ムギ球損失(KATO).jpg KATOの回路

特に平均損失は275mWと大きくなく,定格内に収まります。フィラメントも切れないと思います。

と言う次第で,やはりコンデンサが入っていると危ない,と言うことがわかりました。

それに,ネットでKU-1の写真を見ても,つまみの色が違うくらいでKC-1そっくりです。おまけにKM-1やKC-1と合体させて使用するシステムのため,うっかりユーザが列車を走らせる目的でKU-1の方のつまみを操作してしまい,高いデューティのパルスを出力させてTomix製車両の前照灯基板を壊してしまう,と言うことも多かったのだろうと思います。KU-1の最大デューティは10%くらいのようですが,最大電圧が30Vくらいあったため,これくらいのデューティでも危険だったようです。デザインがKC-1とそっくりという点は,いまだに自動車がブレーキとアクセルを踏み間違えても何ら誤操作と判断せずに急発進するのと同様ですね。iruchanは自動車の場合はマイコンで判断できるだろ,という気がします。アクセルを急ブレーキをかけたつもりで踏み込んだら,アクセルに取り付けたセンサの電圧の立ち上がりが通常の加速動作とは違うだろ,という気がするのですが.....。KATOのKU-1もKC-1とそっくりのデザインではフールプルーフ設計とはなっていなかったと思われます。こういったことから,KU-1はすぐに販売中止となり,今や幻のコントローラとなってしまっています。

今は前照灯や室内灯がLED化されたので,このような高電圧をかけなくても明るく点灯するのでこのような常点灯システムは不要になりましたが,ランプを使用していたときに常点灯を実現しようと考えられた仕組みだと思います。

一方,KC-1はそれ自身が高周波PWMを発生させるため,常点灯の機能があり,調光用のボリウムも設けられていますし,説明書にも室内灯調整用などと書かれているので,KU-1の問題と混同されてしまったのだと思います。

KC-1単体では問題ないと考えています。


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