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LUXKIT A3600復活への道~その3・アンプ編~ [オーディオ]

2016年11月23日の日記

今日は勤労感謝の日でお休みです。戦前なら新嘗(にいなめ)祭ですね~~。われわれ下々の者はこの日まで新米を食べちゃいけない,という決まりになっていました。

本当に最近は3連休ばかりで嫌になっていますが,このように週の真ん中にポコンと休みがある方がよっぽど身体が休まっていい,とiruchanは思います。そういえば,3連休にならないのは11月3日の文化の日もそうですけど,この日は戦前は明治節(明治天皇の誕生日)で,戦前の皇室の祭日に関連するものばかり,と気がついたのはiruchanだけでしょうか。 10月10日なんて,東京オリンピックの開催日だから祝日になったのに,と思います。また,晴れの特異日とされ,気象学的にも意味のあるだったんですけどね。だから,最近は体育の日ったって雨の日ばかり,という気がしますけどね。昔は体育の日はほとんど晴れでした。

と言う次第で,ハッピーマンデー法なんて早く廃止して,昔の祝日に戻してほしいと思っています。やはり祝日というのは伝統や歴史があるわけですからね。 

さて,前回に引き続いて,今日はアンプ部の設計変更を試みたいと思います。

ラックスキットのA3600というアンプは大出力の8045Gをプッシュプルで用い,最大出力50W×2と言うアンプです。3極管のアンプでこのような大出力,というのはあり得ないくらいで,845か,英国のDA60くらいしか思い浮かびません。

しかも,前回も書きましたが,MJ'83.2号に森川忠勇氏の記事があり,最大出力は公称50W×2ですが,実測66Wも出るようです。実際はもっと大出力なんですね。

それで,ちょっと調べてみたいと思います。

まず,ラックスが発表した8045Gの規格表にはEbb=500V,RL=3.6kΩで出力60Wと書かれています。ロードラインを引いて調べてみます。と,思ったのですが,見事にロードラインは特性図をはみ出しちゃいました.....。グリッド電圧Ec=0Vの線も延長しています。某美人の科学者? じゃないけど,今は簡単に画像が編集できちゃいますので,データをねつ造正規に利用するのは簡単ですね......(^^;)。

8045G-1.jpg8045Gの500V動作

負荷抵抗は3.6kΩとなっていますが,どういうわけか,プッシュプルのアンプの場合,負荷抵抗は2つの出力管のプレート~プレート(P-P)間の巻線インピーダンスで表すのが長年の習慣? で,出力管1本あたりだとプレート~B電源(P-B)間で,巻線が半分ですから,インピーダンスは巻線の2乗に比例するので,3.6kΩの1/4で900Ωとなります。なんで,こんな習慣なのか,ちょっと昔から疑問に思うのですが,長年の習慣なので仕方ありませんね。

横軸はEbb=500Vのところに起点があり,縦軸の終点は500(V)÷900(Ω)で,555mAのところに来ます。これを合成ロードラインと言います。本当はシングルアンプ同様,真空管1本ずつで考えないといけないのですが,プッシュプルのアンプの場合は2本の出力管の動作を合成した合成ロードラインで考えます。半導体のアンプの場合も同じです。

出力管1本ずつのロードラインは▼の図の  線のように湾曲していて,EC=0Vのところから, 印のある動作原点を通ってすっと右の方へ伸びていきますが,どこかでIP=0となってカットオフするのがAB1級やB級です。A級だと最後までカットオフしません。ちなみに,AB級は真空管の場合,グリッドをマイナスの領域のみで動作させるのがAB1級で,プラスの領域まで動作させるのがAB2級です。半導体はV-FET以外はエンハンスメントモードのものばかりなので,AB級と言います。また,真空管の場合は普通はグリッドをプラス領域まで使うことはないので,ほとんどAB1級です。

一方,反対側の出力管が上下対称の動作をするのでプッシュプル出力段の動作はのように直線となります。AB1級やB級は1本ずつの動作はたくさんのひずみを含んでいますが,合成するとこのようにきれいな直線となり,ひずみが打ち消されます。2本のロードラインを合成した,と言う意味で合成ロードラインと言います。まあ,いちいち,合成ロードラインというのも面倒なので,単にロードラインと言えばプッシュプルのアンプでは合成ロードラインのことを指します。それに,出力を求めるのには合成ロードラインで考えればよいので十分です。 

半導体のアンプの場合は負荷はスピーカですので,一応,純抵抗と考えて1本あたりのロードラインは直線となりますが,真空管は負荷はトランスですからAB1級やB級の場合,このようにゆったりと湾曲します。

時折,縦軸の555mAのところから動作原点を通る, のような直線でロードラインを引いている人を見かけますが,これは誤りです。MJのレギュラー執筆者の方でもこんな描き方をする人がいるので困りますね。昔,iruchanも真空管アンプを勉強し始めた頃,結構,悩んじゃいました。おそらく,このようなロードラインを描く人は出力管1本あたりのロードラインと,合成ロードラインをごっちゃにしてしまっているのでしょう。もちろん,森川氏は技術的にきわめて正確な先生なので,こんなことはありません。 

正しい合成ロードライン.jpg 間違ったロードライン

さて,8045Gに戻ると,実際に真空管が出力するのはEC=0Vまでの領域ですから,▲の図の通り,EP=120V, IP=430mAまでです。半導体だとほぼ,VCE=0Vまで使えますから,やはり真空管は出力が小さくなってしまいます。

さて,このときが最大出力ですが,そのとき,AB1級やB級などのプッシュプル回路では正弦波の半波とみてよいので,これらはピーク値です。実効値にするにはそれぞれ1/√2にしないといけないので,出力は下記となります。さすがに最大出力の時は波形がひずんでくるので正確に1/√2じゃないですけど,誤差は無視できる範囲です。

        出力計算式1.jpg  

結局,よく教科書に書いてあるとおり,Ec=0Vの線と合成ロードラインの交点から垂線を下ろしてできる三角形の面積と同じ,ということになりますね。 

それで,8045Gなんですけど,なんと,81.7Wもの出力が得られることになります。

えぇ~~って感じでびっくりしちゃいました。iruchanは何か間違ったか? と思っちゃったくらいです。

それならなんでラックスの規格表に60Wと書いてあるの? という気がしますが,おそらく,ラックスは真空管メーカじゃなく,セットを作る会社なので,あくまでもスピーカに加えられる正味の出力,ということで60Wと書いているのじゃないかと思います。

真空管の規格表に記されている動作例はあくまでも真空管のプレートに現れた信号電圧をダイレクトに出力に換算したもので,実際には出力トランスの損失だけ出力が減りますし,メーカのテスト時には定電圧電源を使ったりして,500Vなら正確に500Vの電圧がプレートにかけられていますが,実際のアンプではトランスのレギュレーションで電圧が下がってしまいますので,ラックス発表の数値はそういうことも考慮に入れた数値だと思います。 ただ,それにしても80Wと60Wじゃ,OPTの損失がそんなには大きくないので,やはりかなり控えめな数値,という気がします。

A3600の場合は,Ebb=490Vですから,下記のようになります。  の線がA3600のオリジナルの状態です。

出力はやはり,77.3Wにもなります。動作原点● はEC=-100V,I0=75mAです。森川氏も同様にロードラインを引いて,最大出力75Wという計算結果を示しておられます。

8045G-3.jpg 

   森川氏の検証結果と今回のiruchan改造の場合

出力トランスのOY-15-3.6KHPは損失が-0.4dBですので,91.2%です。とすると,出力は70.5Wとなります。実際には真空管のアンプの場合,クリップ点は半導体のアンプのように明確じゃないし,トランスのレギュレーションのこともあるので,もう少し小さく,やはり森川氏の実測結果どおり,66Wくらいが妥当なところでしょう。

それにしてもやはり出力が大きすぎますね。

と言う次第で,前回,8045Gの寿命も考えてB電圧を60Vほど下げることにしましたので,この場合の動作は  線の通りです。出力は58.7W,OPTの損失を考えれば,53Wといったところで,ラックス発表の数値くらいになります。これでよいのではないでしょうか。

なお,動作原点 ● はB電圧が下がった分,若干,左の方へずれますから,EC=-85Vくらいでしょうか。この電圧は重要ですから,覚えておきましょう。これが8045Gの入力電圧,すなわちドライバ段の出力電圧(のピーク値)となります。

オリジナルの状態でドライブ電圧が100VP,今回のiruchanの改造でも85VPもの電圧が必要なのに驚きます。多極管ならせいぜい10~20Vくらいと言ったところですから.....。

これほどの高電圧が必要というのは驚いちゃいますが,このため,ラックスは専用のドライブ管として6240Gを開発しています。実際,ピークで100Vもの電圧を出力させるにはプレートに400Vくらいの電圧をかけないといけないので,高耐圧の真空管が必要となります。

ただ,6240Gはいまじゃ,8045Gより希少なくらいで,Yahoo!などでも1本,7,000円以上するようです。実はiruchanも6240Gは1本しか持っていません。

6240G, NEC 6FQ7.jpg NECの6FQ7 (左)と6240G (右)

ついでに,6240Gを買ったとき,箱の中に入っていた規格表をupしておきます。

6240G規格表.jpg 6240G.pdf

と言う次第で,昔からこの球は代用球として6FQ7が使われています。実は▲の写真をご覧いただいてもおわかりになるとおり,外観もそっくりでした。おそらく,6240Gは電極も6FQ7と同じだと思います。NECの一木吉典氏も電波科学で書いておられましたが,真空管の最後の頃はコストダウンのため,もとからある管種の電極や製造用の金型などを流用することが多かったようです。東芝の6G-A46BX7の電極を流用していますし,6240G6FQ7の電極や金型を流用していたとしてもおかしくありません。

6FQ7は古くはGT管の6SN7と同特性で,昔から6SN7はタフなことで知られ,ドライバ管はもちろん,出力管としても使われました。ただ,A3600で6SN7を代用に使おう,なんて思いもしませんけどね。シャシーが鉄なんでGT管用の穴を開けるのは非常に大変です。

ちなみに特性を比較すると次のような感じです。

EP(V)  PP(W) μ gm(μS)  rp(kΩ)

6240G 800 3 35 3500 10

6FQ7  330 4 20 2600 7.7

6SN7  300 2.5 20 2600 7.7

やはり,耐圧が800Vもあるのに驚かされます。 改めて調べてみると,6SN7より6FQ7の方が耐圧が高いんですね。特性はやはり同じですけど。

特性を比較しておきます。NECやSYLVANIAなどの規格表から手読みしてExcelでプロットしてみました。

6240G特性曲線.jpg 6240G 

6FQ7特性曲線.jpg 6FQ7

う~ん,確かによく似ているような気もするんですけどね......。

6240G, 6FQ7特性曲線.jpg6240G6FQ7

重ねて描いてみるとこんな感じです。何だ,やっぱりよく似ているじゃん,と思ってしまうのですが,よく見ると6FQ7の方が同じバイアスだと倍くらいの電流が流れます。 重なっている曲線の各バイアス電圧は6FQ76240Gの倍くらいの電圧です。

これはとりもなおさず,6240Gの方がgmが3割以上大きいためで,gm=IPECですから,バイアス電圧の変化に対してプレート電流の変化が大きいということで,6240Gの方がゲインが取れることがわかりますが,NFBをかけて使うので,それほど問題ではありません。やはり問題は耐圧と出力電圧です。

まず,真っ先にチェックしないといけないのがプレート損失。A3600は2段目のドライバはEP(プレート~カソード間)=265Vで,損失2.85Wですので問題ありません。

と言うことで次はいくら出力が取れるか,と言うことです。本来なら出力管同様,ここで特性曲線にロードラインを引いて,と言うところだと思います。

でも,iruchanはSpiceで真空管を使う方法を採りました。こちらはひずみ率まで計算してくれるのでとても助かります。昔はロードラインからひずみを読み取ったりしていましたけど......。先日の記事に書いたように,Spiceだとボタン1発でひずみ率が出てきますから,やはりSpiceは楽です。

おまけに,前回ご紹介した,Ayumiさんが6240GのSpiceモデルもご用意してくださっているので簡単です。

A3600 original driver.jpgオリジナル回路

先のMJ '83.2号で,森川氏は6FQ7を代用として使う場合として,共通カソード抵抗を10kΩにするよう,推奨されています。

A3600 driver(森川氏).jpg森川忠勇氏の改良

以上の回路でシミュレーションしてみます。いまはこんなことができちゃうんですね~~(^^;)。

オリジナルの回路と森川氏のモディフィケーションをシミュレーションしてみました。

A3600 original driver THD.jpgオリジナル回路 6240G

A3600 森川氏 driver THD.jpg 森川忠勇氏 6FQ7

6FQ7を使ってもオリジナルと遜色ないどころか,むしろひずみが少ないことがわかります。さすがは森川さん,ですね!! 

さて,オリジナルの状態で6FQ7を代用として使用する場合,森川氏の設計で共通カソード抵抗を10kΩとすればよいことがわかりました。もし,A3600をお持ちの場合,6240Gがない場合はこのように抵抗を1本(ステレオだと2本)交換するだけでOKです。

今回,iruchanはドライバは同じ6FQ7を使うつもりですが,B電圧が60Vほど下がっています。これで問題ないか,確認しておきます。 

A3600 driver(iruchan)1.jpg iruchan改造

実は,少し問題があることがわかりました。

やはりB電圧が下がったことにより,最大出力電圧が80VPくらいになってしまいました。これじゃ,8045Gがクリップする前にドライバがクリップしてしまっている,と言うことになります。まあ,クリップとは言っても,先ほども言いましたように,真空管じゃ本当に頭が平らになってクリップしちゃうわけじゃなく,ひずみが数%になって急上昇してくる,と言う程度なんですけど。

原因はドライバの6FQ7のプレート電圧不足か,と思い,6FQ7のプレート電源の電圧を上げてシミュレーションをしてみたら,全然出力電圧が変わりません。なんと,初段の6AQ8がクリップしていました。何のことはない,初段のプレート電圧が足りないんです。これなら簡単です。

と言う次第で,初段の電圧を少しupしてやりました。 クリップ時のドライバ出力電圧74.1Vrmsでした。ピーク電圧だと104.9VPなので,先ほど,8045Gの新しい動作点はEC=-85Vと決めましたから十分な値です。

A3600 iruchan driver THD.jpgiruchan mod 6FQ7

さて,以上でアンプのすべての回路の設計変更が済みましたので,実際に配線していきます。次回は調整編です。なんとか12月だし,完成したA3600でフルトヴェングラーの第九を聴きたいと思います。


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jun

つい最近、完動品のa3000を手に入れてブログからいろいろと勉強させていただきました。8045gからぜひ力強さと繊細感を兼ね備えたオケの響きが出力されることを祈っております。
by jun (2016-12-28 13:11) 

iruchan

junさん,どうもご覧いただきありがとうございます。

A3600の完動品とは貴重ですね。完動品と言っても6550Aに換装されてしまっているものが多いと思いますが,junさんのは8045Gなんでしょうね。

近いうちに電源を投入して試験してみたいと思っております。
by iruchan (2016-12-28 14:43) 

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