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ソニーのパワーアンプTA-N86の整備~パルスロック電源~ [オーディオ]

2016年8月19日の日記

sony TA-N86.jpg 

毎日暑い日が続いていますが,皆さんくれぐれも体調など崩さないよう,お気をつけてください。

さて,iruchanはこのところソニーのTA-N86パワーアンプを直しています。 6月に購入したものです。

この前修理したパイオニアのC-21プリアンプと同世代です。 あの頃,オーディオは輝いていましたね~。もちろん,日本の電機メーカも輝いていました。世界の電機,半導体業界を牛耳っていたし,それほど数が出るとは思えない,オーディオ用にわざわざ半導体を開発するなんて今じゃ考えられないようなこともしていました。あぁ~,本当にいい時代だったな......(遠い目)。

本機は1978年の発売で,出力段には新開発のハイfTトランジスタを用いています。来たるべきデジタルオーディオの時代に向けて,より広帯域のHiFiアンプを作ろう,という時代で,出力半導体もfTの高さを競っていました。

本当だったら数年前に開発されたV-FETの方がスイッチング速度は速く,これを普及してほしかったと思いますが,V-FETは3極管特性だったのが災いし,飽和領域が広いので出力が取れない,と言う欠点があります。折からアンプの大出力時代が始まり,59,800円のアンプですら100Wの出力は当たり前,と言う時代になるとV-FETでは不利,と言うこともあったのでしょう。 

MOS-FETだと大出力が取れますし,高周波特性も良好ですが,日立に特許料を払うのも何だし,そもそも日立が大宣伝していたので自社のアンプにMOS-FETを使うのは癪だなんてこともあったのでしょう。NECやソニー,山水,ヤマハと言ったメーカはハイfTトランジスタを使ったパワーアンプを発売しました。もっとも,あとでソニーなども自社でMOS-FETを開発してアンプに搭載したりするんですけどね。実はMOS-FETだと素子自体は高いけど,ドライバ段の回路が簡単になるのでコスト的には抑えることができます。熱補償も不要ですしね。

でも,iruchanはどうにもMOS-FETは好きになれません。ゲートが絶縁されているため,真空管に似ている,なんて言われて音も真空管に近いなんていう人も多いのですが,実際,自作して鳴らしてみるとなんか眠い音がします。iruchanはよっぽどバイポーラTrの方が音がよいと思っています。V-FETも聴いてみたいと思いますが,まだ作っていません。 

それにしてもあの時代,いろんなメーカが半導体まで作ったりしてしのぎを削っていたのはマニアとしてもわくわくする時代で,MJやFM雑誌など,毎号,出るのが楽しみな時代でした。

ということで,iruchanもハイfTトランジスタを用いたパワーアンプを作っているのですが,先にソニーのこのアンプを入手しちゃいました。

薄型のパワーアンプで,とてもかっこよく,いつかは手に入れたいと思っていました。

兄貴分でTA-N88というパワーアンプもありますが,こちらはV-FETのパワーアンプです。ただ,残念ながらこのアンプはデジタルアンプになっていて,今でこそデジタルアンプが主流となっていますし,中国製のLEPY(旧Lepai)のアンプなんか,私も2台持っていて,驚くほど音のよいアンプなんですが,ちょっとせっかくV-FETを使っているのにスイッチング動作しかしていない,というのは引っかかります。やはりV-FETは非飽和領域で使用したいものです。

弟分は出力は自社製のハイfTトランジスタ2SA10282SC2398を使っています。 このTr,当時のMJを見ると秋葉原の某通商会社の広告で1ペア5,800円(!)もしています。こんなの買えないってば。当時,カナダ・マルコニ社などの2A3が入ってきていて,1本2,000円くらいでした。こっちの方が安いですね~。そういえば,この2A3,とても品質がよくて今から考えれば,もっと買っておけばよかったと後悔しています。

2SA1028.jpg 本機の出力段です。 

その割に,このTrはVCEOが低く,100Vしかありません。ちょっと100Wのアンプを作るにはしんどく,安全を考えるとパラPPにしないとダメで,そうなるとコストが高くつきますからこのアンプはシングルPPで作ってあり,最大出力も80Wに抑えてあります。

まあ,iruchanもパラPPのアンプは作ったことないし,シングルPPの方が音がよい,なんて話もあるのでこれでよいと思います。

さて,買ったはいいけど,さすがに40年近くも前のアンプなので中の部品を取りかえて整備したいと思います。特にこのアンプはアンプ部はアナログですが,電源はスイッチング電源を採用しています。発熱も大きいでしょうからケミコン類は交換したいと思います。

さて,アンプ自体は故障していなくて音は出る状態です。パワーアンプはジャンクと称するものに手は出さない方がよいと思います。一応,音が出る状態のものを買って整備する方が安全です。特に出力の石が飛んでいると目も当てられませんしね。

また,こういう古いアンプを修理する際には必ずマニュアルを入手してください。幸い,このアンプは英語版のマニュアルが入手できました。 そもそも,下手するとケースの分解方法すらわからなくてマニュアルを読まないとダメ,と言うこともありますので。

service manual.jpg サービスマニュアルを入手しました。

まずはフタを開けてチェックします。上下のフタが簡単に外れるようになっていて,ソニーのアンプとしては珍しく? メンテ性はなかなかよいアンプです。

original inside.jpg 内部 

電源はさっきも書きました通り,スイッチング電源となっています。今じゃごく普通ですけど,当時はスイッチング電源は画期的で,高効率,軽量な電源部となるのが特長です。 ソニーはパルスロック電源と称していました。いったん,AC100Vを整流したあと,再度,スイッチングして高周波のパルスにして高周波トランスを介して電圧を必要な電圧まで下げます。トランスを通るのが高周波の交流なので非常に小型にできます。

パルスロック電源1.jpg 電源のブロック図

ただ,いきなりAC100Vを整流するので結構危険で,また,スイッチング時に盛大なノイズを出しますので,本機も電源部だけアルミのダイカストケースに収められ,シールドされています。

結構面倒ですが,そのダイカストケースを分解します。中は密封されているので高温になりますからケミコン類の劣化が心配です。

original puls lock power supply.jpg オリジナルの電源部

幸いにも中はとてもきれいで,ケミコン類も液漏れや膨れたりして劣化したあとは見られません。ケミコンやコイルの下部に見える茶色い塊は液漏れのあとではなく,接着剤です。大型のコンデンサやコイルは振動で断線することがありますので,このように接着してあることが多いです。 

右奥に電線が集まっているのが高周波用トランスです。 60Hzのトランスなら考えられない小ささです。

S-34.jpg サンケンS-34

スイッチング電源を出たあとの20kHzのパルス電流を整流するDiで,500V,0.8A,trr=300nsの高周波整流用ダイオードです。ノイズを発しますので,ファーストリカバリDiにしたいところですが,このDiは比較的高速ですし,今どきこのような金属ケース入りのDiはほとんど入手不可能ですのでそのままにしました。 

電源部ケミコン.jpg 交換したコンデンサ類

      色はオリジナル交換品です。 

電解コンデンサはすべて105℃品に交換しました。ほとんどはニチコンのKTシリーズにしましたが,一部,入手できなかったので日ケミのKM 105℃品に交換しました。当時はそんなのなくて85℃が最高です。容量もできるだけ大きくしました。30年の時間が経っているため,ずいぶんと小型化しています。 

電源部交換後.jpg コンデンサ交換後です。

電源部フィルタ.jpg AC100V整流後のフィルタです。

このコンデンサはあとで中国製のチェッカで調べたら30年経ってもちゃんと1000μFありました。 

127V フィルタコンデンサ.jpg 容量は倍でもサイズは小さいです。

AC100Vはダイカストケース外で整流され,同じくケースの外に設置された1000μFのコンデンサで平滑化されます。60Hzのブリッジ整流なのでリップルは120Hzで,かなり低いのでもっと大容量のものにしたいところです。最初,同じ1000μFを買ってきましたが,▲の写真のように非常に小さくなっています。そこで,フィルタコンデンサはニチコンのスイッチング電源用KXシリーズ2200μF 200Vを使いました。同じく105℃品なので安全です。 幸い,技術の進歩で容量は倍ですが,サイズは小さくなっています。

実は,これでも30年前の1000μFより少し小さくて,基板にはバンドで固定するのですが,ごそごそだったのでゴム板を挟んで固定しました。 

平滑化後,本機はTrを使ったシリーズレギュレータを通ってDC127Vにしています。その後,20kHzの周波数でスイッチングします。現代のスイッチングレギュレータならICを使うんでしょうけど,本機はトランスを使ったブロッキング発振回路になっています。 よく,自動車のバッテリーで蛍光灯を点灯する,なんて2石式のインバータ回路が本に出ていましたが,それです。

30D4F.jpg 30D4FA(600V,3A)

AC100Vを整流するDiです。なぜか古いDiはこのように脚が真っ黒になっちゃいますね。安全のため,交換しておきます。ここはファーストリカバリですので,VishayのウルトラファーストリカバリDi UF5408にしました。いつも真空管アンプで使っているやつです。1000V,3A,trr=75nsと高速です。

ただ,スイッチング電源の設計時に気をつけないといけないのは電源のインピーダンスで,AC100Vいきなりだとインピーダンスが低いため,突入電流が問題となります。これ,私も頭を悩ますんですけどね~。本来なら入口に数Ω~数10Ωの抵抗を入れたいところですが,レギュレーションや音を考えると入れるわけにいきませんしね。 整流管のときは特にそうですが,ダイオードを使った現代の電源でも問題は同じです。

UF5408-2.jpg VishayのUF5408を使いました。

耐圧は1000Vで,余裕十分です。AC100Vをブリッジ整流していますが,ブリッジの場合,耐圧は電源電圧の2倍でよいので,余裕を見ても普通なら400V級でOKです。

オリジナルはリード線がむき出しになっていましたが,ここはAC100Vを直接,整流しているところですのでリード線の1本に触れただけで感電することがあります。安全のため,スリーブをかぶせておきました。 

基板上にはスイッチング電源で作った±45Vのフィルタコンデンサが並んでいます。20kHzの高周波なので容量は小さくて済み,実際,1000μFをパラにしているくらいで小容量です。 このまま交換してもよいのですが,例によってサイズ的に小さくなりすぎるので許される範囲で大きなものにしておきます。今回,3300μFでも同じサイズ(φ18mm)でした。技術の進歩に驚かされますね。うまくニチコンの105℃オーディオ用が手に入りました。

50V 1000μF,3300μF.jpg こんなに大きさが違います。 

電源部コンデンサ交換後1.jpg これで電源部は終了です。 

パイロットランプ.jpg パイロットランプの修正。LED接着中。

なお,故障箇所としてパイロットランプが切れていました。オリジナルは6.3Vの電球ですけど,さすがに今どきランプでもあるまいし,と言うことで直列に1kΩを入れて緑色のLEDにしました。 本来なら逆耐圧保護用のシリコンDiが必要ですが,電源がAC6Vなので入れませんでした。

さて,ここまで来たら電源をつないでテストしてみます。アンプ部へは3Pのコネクタとなっていますので,このコネクタをまずは外しておいて,電圧の確認をします。±45VくらいならOKです。 

長時間放置して,コンデンサのチャージがなくなってからアンプに接続してください。これを忘れていたiruchanはコネクタをつなごうとしたとたん,目の前で火花が飛んで,久しぶりにビビりました.....(^^;)。

次回はアンプ編です。 


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Ann

小生も一台保有してますが、どうもflat ampをショートさせたようで動きません。
あわてて回路図をDLして検討しています。
ご指導お願いいたします。
by Ann (2017-04-28 10:24) 

iruchan

Annさん,さて,それは困りましたね。

残念ながらいただいた情報だけでは何が原因かわかりませんが,電源が動作していない可能性が大きいです。

最悪のシナリオとしてはドライバ段(フラットアンプとはなんでしょうか。プリアンプにはフラットアンプがありますが)をショートさせたのでしたら,ドライバのTrが飛び,Vccを接地してしまっていて電源が地絡している可能性があります。

この場合,ドライバ段の電圧が0なので動作しません。また,ドライバ段のTrを飛ばしたときに出力段のTrも昇天してしまっている可能性があります。

逆に,一番簡単なシナリオとしてはパイロットランプ断というのがあります。当時はLEDじゃなく,ランプなので,意外に多い故障です。それとか,単に出力のDCオフセット調整がずれていて,保護回路が働いているだけというのもあります。これなら調整するだけで直ります。

ただ,技術も知識もないとアンプの修理はかなり危険です。もはやソニーは修理してくれないでしょうから,専門の業者さんがネットを探すと出てきますので,お願いする方が無難だと思います。
by iruchan (2017-04-28 21:40) 

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