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サイラトロンの実験 [ラジオ]

2016年3月16日の日記

サイラトロン整流器3.jpg 動作中のサイラトロン。とてもきれいです。 

いつも大変お世話になっている河童さんから,昨年,サイラトロンをいただきました。

サイラトロンは水銀ガス入りの整流管です。大型のものはグリッドのバイアスを変化させて位相制御もできるようになっていて,出力の直流電圧を変化させたりすることができます。1960年代に入って,シリコンダイオードが実用化するまでは割に大規模な整流装置としてセレン整流器とともによく使われました。一般的な用途としては溶接機だったでしょうか。溶接機は低圧大電流の上,出力を調整するため電圧調整が必要だったので,サイラトロンが最適でした。もっとも,セレン+スライダックという組み合わせの方が多かったと思いますけどね。

シリコンDiのほか,サイリスタが実用化されるに及んで御用済みとなり,歴史の彼方に忘れ去られてしまいました。それに,今じゃ水銀が入っているので,RoHs規制に引っかかっちゃいますし,米国のアマチュア無線ののみの市などでも持ち込み禁止になっていたりして,なんかすっかり厄介者扱いになっているのは残念です。

でもアマチュアが使用するのは自由ですし,オーディオマニアの人も83をはじめとして8662H66)など,水銀入り整流管を愛用している方も多いと思います。 83なんかST16バルブなので2A3とか300Bと同じ大きさでぴったりですね。とはいえ,これらは主として民生用の整流管として開発されていて取り扱いも簡単ですが,大型のサイラトロンは図体も大きいし,ヒータ電力も大きいし,ソケットもないし,ということで使う人は少ないと思います。

でも,以前から一度は動作させてみたいと思っていました。私は83で経験しましたけど,管壁が青く光ってとても美しいですしね。 

さて,いただいたサイラトロンをどうやって使うか,なんですが,まず問題なのはヒータトランスです。

サイラトロンは扱う電力が大きい分,ヒータ電力も大きく,今回使用した米Westinghouse社製のWL672AだとEh=5V,Ih=6Aと大食いです。 まだこれなんか小さい方で,FG105だと10Aも食います。これだとトランスが大変ですが,河童さんから米Chicago Transformer製の米軍向けヒータトランスもあわせていただいたので使わせていただきます。

WL672AはWestinghouseの型番で,ほかにRCAやGEなど各社が672の番号で作っています。割にサイラトロンの中ではポピュラーな球のようです。最大で1500V,2.5Aが扱えます。

ソケットも問題で,最初,211などと同じ大型UVソケットだと思いましたが,211用のものはそのまま使えません。同じ1インチの直径にピンが配置されていますが,間隔が微妙に異なります。それに,ハカマとなる金属部分が邪魔をします。幸い,中国製のもののハカマを外してみたらなんとか使えました。 専用の米軍向けのソケットを米国のサープラスショップで見つけたので発注しました。今ごろ,米国から太平洋を船に乗って渡っているでしょう。

211,672base.jpgベース部分の比較です。 

回路は下記の通りです。とりあえずテストなので単純な半波整流回路にしています。

サイラトロン整流装置.jpg テスト回路です。

なお,サイラトロンは3極管ないし4極管構造をしていますが,効率の点でスクリーングリッドを持っているものが多く,WL672Aも4極管構造となっています。

どちらのグリッドもバイアスをかけて使用しますが,スクリーングリッドはたいていはバイアスなしで0Vでよく,コントロールグリッドの方は位相制御をする場合,カットオフする電圧があるので,それを利用して位相制御しますのでバイアス電圧は変化しますが,位相制御しない場合でもそれ以前に放電するかどうかという電圧がありますので,事前に検討が必要です。

今回は位相制御まで考えてなくて,単に半波整流すればよいだけですが,プレート電圧が低いので,バイアスが必要かどうか,というのは実験で確かめないといけません。0Vでもよいのではないか,と考えられるのですが,一応,WestinghouseのWL672Aの規格表を見ると0Vでは放電するかどうかわからない感じです。実際,斜線部は球のばらつきおよび寿命により放電するかどうかは不明という意味の記述があります。

WH 672特性曲線.jpg WL672Aのプレート特性曲線 

プレート電源はAC100Vを直接使用することを考えていますので,ピーク電圧は141Vです。この場合,Eg=-6~+8Vの間はこのグレーゾーンで,放電するかどうかはビミョー,という感じです。"CERTAIN CONDUCTION" (導通確実)とある領域は+8V以上の領域です。

と言う次第で,ヒータトランスの余った巻線をつかってプラスのバイアスをかけました。6.3Vの巻線を半波整流して,実測約+7.7Vをかけました。もう少し高い電圧の方がよいと思います。

さっそく,電源を投入します。水銀入り整流管のおきまりで,内部の水銀は冷えている間に液化して電極の隙間などに固まっていますので,それが十分熱せられてガス化するまで高圧はかけてはいけません。Westinghouseの規格表ではCathode Heating Time 5 minutesと書かれていますが,実験してみたら5分では全然だめで,15分くらいは予熱しないといけない感じでした。

十分に加熱しないまま高圧をかけると全く放電しませんし,中途半端にガス化した状態だと内部でスパークして球の寿命を縮めますのでご注意ください。

83などの民生用整流管だと予熱時間は1分で,タイマーリレーなどを使ってもいいのですが,たいていの人は高圧用に別のスイッチを設けておられると思います。私もそうしました。わざわざタイマーで自動化しなくても,と言う気もしますし,それに真空管アンプなんで手間を楽しむようなものですしね。

サイラトロン整流器.jpg 電球は負荷です。

スイッチは2個設け,1個はヒータ余熱用で,もう1個は高圧用です。高圧用は15分くらいたってから投入します。 

いただいたヒータトランスは米Chicagoのトランスで,ちょっと塗装がはげていたので塗り直しました。米軍用だし,カーキ色だよな~,と言うことで一生懸命似た色を探してみても米陸軍用は緑系で,全然違う色で変です。おかしいなぁと思ったらなんとタミヤの日本自衛隊用TS-90がぴったりでした。 茶系だそうです。以前からChicagoのトランスとUTCじゃ色が違うな,と思っていましたが,こういう具合で,Chicagoのトランスは茶系なんですね。

シャシー内部.jpg シャシー内部

WL672 ヒータ点灯状況.jpg ヒータは点灯してるかわからないくらいです。

ヒータは工業用らしく,セラミックヒータとなっています。うっすらと赤くなる程度で,明るいところでは点灯しているかどうかわからないくらいです。

それにしてもこの真空管,date codeらしき表記があり"76-17" と書いてあります。ひょっとして1976年の17週? そんな最近まで作っていたのか,という気がしますが,米国だと軍で使っていたのかもしれませんし,溶接機など,未だに現役のものもあると言う話なので,割に最近まで作っていたようです。 

サイラトロン整流器1.jpg 動作すると内部が青く光ります。

高圧スイッチを入れると内部がパッと青く光り,負荷の電球も明るく光ります。まあ,半波整流だし,サイラトロン内部の電圧降下もあるのでそれほど明るいわけではありませんけど。

薄暗い部屋に持って行くと内部がボウッと青く光り,とてもきれいです。もう真空管マニアにとってはまるで夢の世界.....。うっとりと見とれてしまいました......。

現在はAC100Vを整流しているだけなので使い道はありませんけど,1000V位を整流させて211とか超大型3極出力管の212のアンプに使ってやるとよいかと......夢想しています。 

なお,サイラトロンにはオシロスコープの掃引用の弛張発振回路を構成するための2D21T66-GTなどの球もあります。これらは当然整流用じゃありませんのでご注意ください。 もっとも,これらの球を使ってサイラトロンをon,offする回路もあり,ややこしいです。今で言えばUJTやPUTと言った素子の役割をしていました。もっとも,今じゃUJTやPUTもとうに製造中止なんですけどね......。

お世話になった河童さんからコメントをいただきました。「屋根裏で寝ていた球を活用していただき感謝。」 どうもこちらこそありがとうございました。

 

【サイラトロンコレクション】 

C6M.jpg 米Electrons inc.製のC6M

Eh=2.5V, Ih=21A(!), Epmax=1000V, Ipave=6.4A 

なんかとてもできがよく,ガラスも平滑度がよくて表面はとてもきれいです。陽極はタンタルで,キセノンガス入りのようです。米軍放出品を扱っている店で1本$4で買いました。211と組み合わせるとかっこうよさそうですが,ヒータ電流21Aに驚き! 間に小数点が入っていると思いそうですが,ありませんのでご注意ください。

GE FG105.jpg GE製のFG105

Eh=5V, Ih=10A, Epmax=2500V, Ipave=6.4A。サイドの電極はSGです。

三菱5G72.jpg 三菱製5G72。規格は672と同じだと思います。 

東芝4G23.jpg 東芝製4G23。ソケットはUXです。 

Motorola KS19699 Thyristor.jpg モトローラ製KS19699-L

実はサイラトロンじゃなく,サイリスタです。箱に "SOLID STATE THYRATRON" とあります。WEへ納入されているので,KS番号となっています。なお,Western Electricと書かれていても,KS番号のものは外部調達品です。これは製造はモトローラです。

おそらく,672などのサイラトロンの代用品として1970年代に製造されたものでしょう。シリコンDiが実用化されると,整流管の置換用として真空管のソケットを持ったシリコンDiが発売されました。私も5R4GYの代用品とか,WEの412Aの代用品を持っています。増幅用にFETを用いたFETRONなんかも有名ですが,サイラトロンにこんな代用品があるとは知りませんでした。 

Motorola KS19699 Thyristor箱.jpg 箱です。


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