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AMステレオラジオ製作記 [ラジオ]

2011年7月3日の日記

ちょっと北陸の実家に帰っていました。

もともとは電子工作マニアなので,鉄道模型じゃなく,アンプやラジオなんかを作るのが本職? です。実家に帰って,昔,自作したAMステレオのラジオを取ってきました。

AMステレオラジオ.jpg 

自作したAMステレオラジオ。ステレオインジケータも点灯しています。

AMステレオは1992年から始まり,ほぼ20年を経て,消滅していきつつある状況です。2007年3月末の九州朝日放送(KBC)を皮切りとして,その後,同じ九州の熊本放送(RKK)や北海道放送(HBC)など地方局がやめていきましたが,とうとう,去年春に大阪の毎日放送(MBS)と朝日放送(ABC)がやめ,大都市圏でも終了するようになりました。今年に入って,ついに,と言うべきか,1月30日には東京のTBSが終了しました。TBSはAMステレオにはもっとも熱心だった,と言う気がするので本当に残念です。

ラジオが大好きなので,AMステレオは特に,音の悪いAM局の音質改善の抜本策として,非常に期待していただけに,残念です。FMも好きですが,NHKと老舗のJFN系列以外の他の民放FMは,どこの国の放送局だ?  と言うくらい英語が氾濫していて,若者向けの番組ばかりで,とても聞く気がしません。朝はNHK-FM,日中はAM局を聞くことが多いので,AMステレオの打ち切りは残念のひと言に尽きます。

なにより,AMステレオはNHKが実験に参加しただけで,本放送はしなかった,と言うのが衰退の原因だと思います。AMステレオは音質の改善ばかりでなく,アジア各国の混信に悩まされる日本では同期検波による混信の除去にも役立つはずで,せっかくの技術を活かすことができなかったのは返す返すも残念です。

さて,AMステレオは日米ともに,1950年代末に一度,本格的に検討されています。当時,ステレオのレコードが発売され,ステレオブームとでも言うべき,ステレオ人気が沸騰していました。そこで,旧来のメディアであるAM放送でのステレオ化が検討されたのも当然のことだったでしょう。そもそも,日本ではこのとき,FMすらなかったんですからね。

日本ではNHK第1と第2,日本放送(現ニッポン放送)と文化放送でそれぞれLとRの信号を別々に放送する2波方式ステレオ放送が試験されました。しかし,この方式ではモノラル受信機での互換性がなく,2つの放送局を使うと音の位相の管理も厄介で,当時の貧弱な通信回線の状況では放送局から送信する前にそもそもオーディオの部分でステレオ感を出すための左右の分離を十分に取ることがむずかしかったと思います。

米国ではすでにこの方式はあきらめ,1960年までに1波方式のAMステレオがCBSなどの放送局やRCAやWestinghouseなどのメーカから各種考案され,日本で言えば,郵政省や総務省にあたる,FCC(米連邦通信委員会)に提案されます。

このときにAMステレオが本格的に始まっていれば,問題なかったと思います。

ところが,FCCは懸案だったFMのステレオ化を優先し,AM局のステレオ化は承認しませんでした。当時,AM局は日本よりも圧倒的に強く,FCCは弱小のFM放送の普及を優先したのでしょう。AM局側も収益がまだ優位にあり,特にステレオ化しなくてもよい,という雰囲気だったと思います。

日本ではTBSがステレオ化に熱心で,1962年からFAM放送と称して,1波方式でAMステレオを試験しています。これは,L+Rを従来通り,振幅変調し,L-RをFM変調する方式で,のちのベラー方式と同じ原理です。モノラル信号は従来通り,振幅変調だったので,従来の受信機と互換性がありました。

日本の場合,驚くべきことにFMは全然で,そもそも1960年の時点では試験放送が始まったばかりという状況で,本放送が始まったのは実に1969年のことで,民放に至ってはさらに翌年から。と言う次第で,日本ではFMが全然脅威ではなく,AM局がこのときステレオ化していれば,よかったのに,と思います。

なんで日本ではこんなにFMの放送開始が遅かったのか,驚きますね。米国では戦前から放送していたのに。それに,日本ではなぜか1県1局などというばかげた政策があって,いつまでたっても民放が増えませんでした。今は多少増えたというものの,地方では相変わらず民放がなかったり,米国に限らず,諸外国はわんさとFM局があったり,クラシックやジャズ専門局なんてあったりするのに,日本は残念です。

1980年代に入り,米国ではFMが普及し,AM局の収入が減少するようになると,AM局側もステレオ化で挽回を図る,という時代に入りました。

メーカ側も応援する態勢を整え,モトローラやハリスなどの半導体メーカのほか,ソニーや山水電気など,セットメーカも受信機を試作し,試験が始まります。

しかし,ここでもやはりFCCが問題となります。FMステレオの時はFCCが各社の提案を一本化し,最終的にGE-Zenithの両社が提案した,FM-AM方式によるステレオを唯一のFMステレオ方式としたのにならい,AMステレオも一時はマグナボックス社の方式に一本化しますが,レーガン政権下の自由主義的政策により,5社から提案されたAMステレオの方式を全部認可してしまう,と言うことをやってしまいます。おそらく,モトローラから猛烈な巻き返しがあったのでしょう。

結局,放送局はどの方式が生き残るか,見極めた上で自局のステレオ方式を選択しないといけませんし,受信機メーカは各方式全部に対応しないといけない,と言う事態に陥ります。当然,セットは高くなりますね。また,ユーザも受信機を買ったら,スイッチで各局ごとに切り替えないといけない,と言うことになってしまいます。

と言う次第で,モトローラ方式とカーン方式が優勢で,一時は全米のAM局が両社どちらかのAMステレオを採用するのですが,受信機が普及せず,今では米国でもほぼ全滅,と言う状況です。一度,ニューヨークへ行ったとき,日本からAMステレオのラジオを持っていったことがありますが,ステレオのLEDが点灯するのは1局だけでした。それも,どう聞いてもモノラルのままで,どうやらステレオのパイロット信号だけ流していただけのようでした。

日本では郵政省がモトローラ方式に一本化し,1992年3月15日からAMステレオが開始されます。ソニーやアイワ,松下電器などからラジオも発売され,いい音なのに感動しました。

私は自作マニアなので,事前にHam Journalなどに載った記事を読んでおり,ICが入手しにくかったのですが,何とか入手して作りました。 "エレクトロニクスライフ" や "ラジオの製作" (懐かし~~!)などにもよく製作記事が載りましたね。

使われたICはほとんどモトローラのMC13020Pでした。モトローラの第1号のAMステレオデコーダICですが,セカンドソースとして東芝のTA8120Pも出ました。

モトローラ方式はL+Rを振幅変調し,L-R成分は直交変調しています。直交変調というのは振幅変調の一種で,主信号(L+R)と90゜異なる位相の搬送波をL-Rで振幅変調して元の主信号と合成したものです。そのとき,主信号のエンベロープが変形して歪みを生じるので,その歪みを取り除く技術がモトローラ方式の特長でした。

ただ,直交変調は今でもアナログカラーTVの色信号変調や携帯電話のデジタル変調技術などにも応用されているのですが,先に述べたように,搬送波の0゜と90゜に同期して検波する,同期検波が必要です。同期検波は何よりPLLが必要で,回路は複雑となり,当然デコーダのICの価格にも影響します。この点もAMステレオの普及を妨げた原因だと思います。メーカはラジオなんて1円でも安く作りたい,と言うのが本音だったでしょう。その点でL-Rを単に位相変調しただけのマグナボックス方式が決定していたら,その後の経緯は異なっていたかもしれません。位相変調(PM)は周波数変調(FM)の親戚みたいなもので,復調回路は比較的簡単ですからね。と言って,同期検波は特定の位相の信号だけ取り出すので,AMステレオだけじゃなく,短波放送など混信が問題になる場合に有効で,日本のように諸外国の混信に悩まされる地域では有効な手段だったと思います。ソニーの短波ラジオにCX857というAMステレオデコーダICを使って同期検波をしているのがありますが,うまい手法だと思います。

ラジオの方は私も "Ham Journal" No.63の記事を参考に,組み立てました。フロントエンドはHJの記事は東芝のTA7640APでしたが,入手の関係で,TA7687APを使いました。AMステレオ検波用に,PLL用の発振素子が必要で,ムラタの3.6MHzのセラロックが必要で,なかなか手に入りませんでしたが,秋葉で入手できました。

と言って,実は簡単に作れるものではなく,かなり苦労した記憶があります。なにより,モトローラのMC13020Pが非常にご機嫌を取るのがむずかしく,安定した450kHzのIF信号を入力しないとなかなかステレオになってくれません。そもそもAMラジオとは言っても,フロントエンド部分まで自作すると大変です。感度がなかなか出ませんし,IFを450kHzにする,というのもむずかしい話です。そこで,当初は実際に動作しているAMラジオからIFを取り出して,実験しました。この場合でも実際に使われているラジオのIFは455kHzですから,OSCコイルをちょっといじってやらないと450kHzになりませんので,安定してAMステレオで実験するのに苦労しました。

と言う次第で,周波数カウンタやら発振器やら結構,計測器を揃えるはめになり,ようやく安定して動作するようになりました。

まあ,自作マニアなので,これらの機械はいずれ揃えよう,と思っていたので,いい機会だったと思います。

プリント基板を製作し,調整に手間取りましたが,なんとか動かすことができました。20年ぶりに実家から持ち帰ってきました。

AMステレオラジオ内部.jpg 自作したAMステレオラジオの内部

中はごっちゃごちゃですね。自分でもよく作ったなぁ~と感心します。バリコン周りの配線が厄介なので,プリント基板に一体化した方がよさそうです。バリコンとバーアンテナのインダクタンスがうまく合わず,結局,ジャンクのAMラジオから取り出してきたと思います。結局,こちらの方が早いかもしれません。

また,フロントエンドは東芝のTA7687APというICを使いましたが,ICは高感度のため,結構厄介で,ディスクリートのTrを使った方が案外調整がやりやすいかもしれません。私も結構,このICには苦労させられました。特に,安定して局発を動作させることができず,手こずりました。

ようやく安定して発振するようになったと思ったら,今度は短波が入る始末で,原因はOSCコイルのQが高すぎ,高調波で短波が入ってしまうんですね。パラに高抵抗をかましてOKでした。

AMステレオデコーダ自体は無調整ですが,IF信号の品質が問題で,規格表を見ると結構厳しいことが書いてあり,調整は大変でした。

そもそも,モトローラのMC13020PはIFにカウンタがついているらしく,安定した450kHzのIF信号が何秒間か持続しないとステレオにならないようになっていて,これでうまく行かないと断念した人も多かったようです。

どうも,MC13020P自体にロットがあるらしく,米国本国のモトローラ製よりも香港製の方がよいとか,あとでいろいろ噂を聞きました。

am stereo radio.jpg 回路図。クリックすると拡大します

20年ぶりに電源を入れてみましたが,無事に動作しました。ステレオのLEDもちゃんと点灯しました。しばらく,AMステレオを楽しんでみようと思います。

aiwa cr-35.jpg 一緒に持ち帰ってきた,アイワのCR-35

AMステレオのラジオも何台か買いました。一番のお気に入りはソニーのSRF-A300ですね。据置型みたいに使えていいラジオだと思います。

オークションではソニーのSRF-M100が一番人気のようで,値段も高いようです。私は普通に流通していたときに買ったので,安く買いました。確かに,一番音もよいと思います。ただ,イヤホンでしかステレオで聴けないのは残念。ソニーさんも別付けでスピーカを売ってくれていたら,と思います。

↑ のアイワのラジオはデコーダに東芝のTA8124を使っています。ステレオインジケータの赤いLEDの横に,同調する方向を示す緑のLEDが2つ着いているのが特徴です。

それにしても,とうにこれらのラジオは製造中止になっていますし,ICもとうの昔に製造中止です。モトローラや東芝のほか,ソニーや三洋などもデコーダICを作っていました。そもそもモトローラ自身,半導体部門を切り離してしまって,フリースケールなんて訳のわからない会社になってしまっていますし,ICの名前からモトローラの名前が消えてしまっていますからね...。時代の移り変わりは早いものです。

ただ,やはりAMステレオは消えていくと思いますが,FMもどうなるのでしょうか。英国ではFM放送の打ち切りが決まっています。日本でも今月,アナログTVが打ち切りになりますが,空いた1~3ch.の帯域でデジタルラジオが始まる予定です。超HiFiのデジタルラジオが普及すれば,アナログのFMは消えていくと思いますが,総務省はFMについて,将来を明らかにしていません。AM局もデジタルラジオに移行する局が出てくると思います。

といって,いつまでも電波メディアによる放送が存続するか,というのも怪しくなってきたと思います。Radikoによるインターネットサイマル放送がようやく全国に普及しつつありますが,今後は放送はネットで,と言うことになりそうです。AM局もちゃんとステレオで放送していますし,AMステレオなんかよりRadikoの方がずっとよい,と局の人は考えているでしょう。

携帯電話もこの前の震災で意外に災害に強い,ということがわかりましたから,携帯で放送というのも実現するかもしれません。単にパケットを飛ばすだけですからネットも携帯もそんなに変わりませんからね。

と言う次第で,AMステレオどころか,FMやそもそも放送という形態すら,危ないのでは,と考える今日この頃です。

 

2014年5月12日 追記

久しぶりにこのAMステレオラジオを引っ張り出してみると,AMステレオになりません。チューニング時にピーッと少しビートが聞こえるはずですが,聞こえないのでどうもVCOが停止してしまっているようです。これじゃステレオになりませんね。

最初は3.6MHzのセラロックの劣化を疑いました。経年劣化でQが低下し,発振が止まる,という話を聞いたことがあります。

そこで,オリジナルの村田CSA-3.60MGから手持ちのCSA-3.60MTZに変更してみますが現象は同じです。 

どうもおかしいのでMC13020PのVCC(#6ピン)の電圧を見たら5V程度しか出ていません。VCCが低すぎて動作してないんですね。何でぇ~っ? と思ってパターンを見てみると9Vのレギュレータが基板に載っていましたが,その出力から電源をとっています。ところが,今使っている自作のACアダプタは出力が9Vなので,基板上のレギュレータが動作してないんですね。仕方ないのでこのレギュレータを取り外してMC13020Pを直接電源につないだらVCOが動作するようになりました。どうもACアダプタは12Vのものを使うように設計していたようです。

ただ,この状態でも不安定で,VCOがロックしにくく,あまりAMステレオになりません。仕方ないので,VCOの波形を見てみるとやはり周波数が変化していて,本来なら3.6MHzなのに,3.577MHzのようです。これじゃIFは447kHzになってしまいますね。

そこで,やはりチューナ部のトラッキングを再調整し,IF=447kHzでIFTも再調整しました。さすがにIFTは普通の455kHz用を使ったので検波用の黒いコアのが一番下まで入り込んだ状態です。やはりFCZ研究所から出ていた450kHz用を使うべきだったでしょうか。もっとも,検波段のIFTは負荷が大きいため,Qが小さめなのであまり問題にはならないと思います。

CSA3.60MT7.jpg 3.6MHzのセラロック(左:MG,右:MTZ)

袋入りはAMステレオデコーダ用に大阪の共立電子が温度補償用51pFとセットで売っていたものです。昔はよかったな~。 

VCO波形.jpg VCOの波形です。少し周波数が低下しています。

ようやくこれで安定動作するようになりました。それにしてもAMステレオは難しいですね。


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