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6S19P(6C19P) DCパワーアンプの製作~その1・OTLアンプの出力の計算とトランスレス回路について~ [オーディオ]

2018年6月9日の日記

金田明彦氏設計のオールWE真空管式DCプリアンプを作っています。あと少し,と言うところまで来ました。

つづいて,パワーアンプを作りたいと思います。こうしてオール真空管DCアンプシステムにしたいと思います。

といって,DCパワーアンプですから,当然OTLアンプになってしまうわけですが,真空管でOTLというとやはり大変です。なんと言ってもOTLは大がかりだし,出力管がプレート損失を大幅にオーバーしてしまうなど,設計上も大変です。

ということですが,まずは,出力管を何にするか,と言うのがやはり大問題です。

ただ,さすがにプリがWEだからと言って,パワーアンプまでWEで揃えようとは思いません。実際,金田氏はMJ '01.12月号に,"WE 421Aパラpp DCパワーアンプ"(No.165)として発表しておられますが,WEの421Aなんて4本も買った日にゃ,球だけで10万円近く飛んで行ってしまいます。ついでに予備も......と考えるとガクガク,ブルブル~~~~。

まあ,WEの421AはRCAの6AS7-G6080と同特性ですから,これらの球で作れば安く作れますし,実際,iruchanは6080を持っているので,それで作ればいいんですけど,この球は扱いにくいことで有名で,過去,いろんな人が書いていますが,OTLを作ると調整で手間取るようです。発熱もすごいし,プレート電流が安定しすぎ? ていて,アイドリング電流の調整だけでも長時間かけてやらないといけないようです。

と言う次第ですが,iruchanは昔からOTLのアンプが好きで,いろいろと球を集めてあります。

多極管だと30KD640KG6AなどのTV水平偏向管が考えられます。ただ,これらはちょっと大きすぎるので,25E5とか,12G-B3Aなんかが昔からよく使われています。
とはいえ,OTLで多極管を使うと,スクリーングリッド用の電源も必要なので,とりあえず,3極管で考えます。

候補としてはNECの6R-A2でしょうか。これは正直,OTL用として作られた唯一の球だと思います。やはりとても使いやすく,いい球だと思います。

ほかにはレギュレータ用の6R-A312B4Aが考えられます。大型だと6336Aがありますね。LUXがOTLアンプを出していました。

実は,iruchanは全部持っているんですが,今回,6S19Pを起用することにしました。6R-A26R-A3は別のアンプにしたいと思います。

なお,金田氏も含め,昔からこの球は日本では6C19Pと表記されますが,ロシア文字の6С19Пという球はラテン文字では6S19Pですので,こう表記させていただきます。海外だとちゃんと6S19Pと書かれているので,日本は変だと思います。ちなみに,ロシア文字で6C19Pという球もあり,これはTVのダンパ管です。

6S19Pは昨年末,ウクライナからたくさん仕入れました。比較的,6R-A26R-A3はいまでも秋葉原で見かけますし,そんなに高いわけじゃないので入手可能ですが,OTLなので最低16本くらいは必要となるので,やはり安い球の方がよいです。

その点,6S19Pは今でも@1,000円くらいで購入できますし,iruchanのように海外に直接注文すると〒込みでも@200円くらいで買えます。

ということですが,金田氏も過去,いろいろ記事を発表しておられます。

一番古いのはNo.146(MJ '97.6)ですが,その後,No.193(MJ'07.7,8),No.201(MJ '09.5, 6)とあります。やはり小型で値段も安いし,使いやすい球なのでしょう。

ただ,問題は電源。OTLアンプは電源で手を焼いちゃいます。

なにより,OTLであると同時に,OCL(アウトプットコンデンサレス)なので,出力段は正負両電源になっちゃいます。さらに,高圧のドライバ段用電源も必要なので,電源の設計が大変です。特に,出力段は高圧(150~200Vくらい)で大電流なので,設計が大変だし,おまけに出力段は固定バイアスになっていることが多いので,バイアス用の巻線も必要で,トランス式だとトランスは間違いなく特注になっちゃうのでコスト高になっちゃいます。

実際,金田氏の初期のDCパワーアンプはトランス式で,Rコアタイプの特注電源トランスを使っています。

ただ,iruchanはRコアトランスはどうにも好きになれないんですよね~。あまりに大きいし,不格好なので.....。

普通のEIコアのトランスだと,シャシーの上に載せてもかっこうよいですが,さすがにRコアだとそんな気がしません。また,あまりに大きいので,別シャシーとなっています。これだとシャシー代も倍になっちゃうし,かなりお金がかかります。

そこで,金田氏はトランスレスとした回路を発表しておられます。6S19PだとNo.201がそうです。40KG6Aなどだと,No.207がそうです。

しかし!!

iruchanはトランスレスにする気は毛頭ありません。これだとトランスはいらないし,非常に軽くて低コストなアンプができます。また,柱上トランスの巻線抵抗が小さいので電源インピーダンスが低く,音もよいと書かれています。

でも,iruchanはやはり大変危険なのでトランスレスはやめにします。感電する危険性が非常に高いです。実際,iruchanはラジオマニアなので真空管のラジオもいじっていますが,やはりトランスレスのものは過去,何度もうっかり感電したことがあります。当然ですが,場合によっては死ぬこともあります。

トランスレス,というのは真空管の時代,トランスが非常に重くて,高価なので,よく採られた手法です。ラジオやTVでよくそういった回路が使われていました。問題となるヒータはIh=300mAとか(ラジオ),450mAや600mA(TV)で揃えておいて,全部直列にすると100Vになるような組み合わせにしてヒータもAC100Vから取るようになっています。ただ,全部の真空管のヒータの立ち上がり時間を揃えておかないと,ウォームアップ中に特定の球のヒータに高電圧がかかってヒータが切れちゃうので,ウォームアップ時間は日本では11秒と決められていました。とはいえ,実際に使ってみるとやはりばらつきがあるらしく,特に,AC100Vは電源のインピーダンスが低いのでラッシュカレントが流れて,特定の球のヒータが一瞬,電球みたいにパッと明るく光ることも多かったのでヒヤヒヤしましたが,この瞬間に電球みたいに切れる,と言うことはなかったと思います。

B電源は倍電圧整流にすることが多いです。ラジオはそのまま35W4で半波整流というのが多かったです。

もちろん,シャシーにはAC100Vの片側の線が接続されているので,シャシーに触れると感電します。たいていの場合は高抵抗が挟んであって,直接,シャシーに触れて感電しても電流が抑えられてはいましたが,心臓が止まるくらいの電流が流れてしまうこともあるので,大変危険です。

人体の抵抗はおおよそ数kΩでしかなく100Vがかかると数十mAもの電流が流れます。汗をかいていたり,濡れていたりすると1kΩを下回って,100mAを超える電流が流れます。この場合,心臓が停止します。100mA以上の電流が流れると死にます

とはいえ,ラジオやTVの場合は,シャシーはちゃんとキャビネットに収められ,ツマミ類もプラスチックでできていて,直接,加圧部分が人体に触れるようにはなっていなかったので,そうたいした問題にはなりませんでした。

ただ,アンプの場合はシャシーが金属製ですし,むき出しですからね~。やはり電源側に絶縁トランスを入れることを考えたいと思います。


☆日本の家庭内配線について

ちょっと,ここで日本のAC100Vの配線について調べておきましょう。電柱から一般家庭への配線は次のようになっています。クリックすると拡大します。

家庭用AC100V配線図.jpg 

              日本の家庭内の配線

電柱の上に載っている柱上トランスが三相AC6600Vを単相200Vに変換します。なお,柱上トランスの2次側は中点が接地されています。

柱上変圧器1.jpg 柱上変圧器です。

うちの近所の柱上変圧器です。なぜか,1個赤くなっていました。なんで赤いのか,ちょっとわからないのですが,詳しい方教えてください。

高圧の6600Vは三相なので,太いケーブルが3本入っています。一番上に架空地線と呼ばれる接地線があり,避雷線となっています。低圧線が200Vの単相3線として各家庭につながっています。各家庭では,接地線を挟んだ2本の電線のうち,どちらか1本を使って100Vを受電するようになっています。

とすると,どうしても1次側が三相不平衡になるんじゃ.....,と思ってしまうのですが,その辺は大して問題ないそうです。

接地線.jpg 接地線が配線されています。

よく見ると電柱の根元の方まで接地線が伸びていて,接地されていることがわかります。

実を言うと,このせいで,AC100Vの電線は対地電圧をもってしまい,対地電圧100Vの方に触れてしまうと,感電します。

それだったら,中点を接地しなければいいんじゃないのか? 

そうしておけば,2つの線を同時に触らない限り,感電しねぇんじゃないのか!

って,思っちゃいますよね。

でも,これはダメなのです。

なんでか,と言うと,もし,柱上トランスが落雷などで絶縁不良になってしまうと,2次側に6600Vが現れてしまうから,です。さすがに対地電圧が6600Vになってしまうと危険なことはおわかりいただけると思います。

日本の一般家庭の電圧は100Vなので,柱上トランスから出てくる,3本の電線のうち,2本を使って100Vを取り出しています。単相だし,電線が3本あるので単相三線式と言います。普通のご家庭の電力量計のところに,3本電線が来ていると思います。場合によっては2本しかない場合もあり,その場合は単相2線式と言います。

まあ,どっちでもいいのですが,どちらにしろ,AC100Vの電線は片方が接地線で,対地電圧は0Vです。こっちがシャシーにつながっていれば感電しないので,金田氏もこのようにするよう推奨されています。

ところが.....。

いつ,誰がプラグを逆向きに差すとは限らないし,こうなると,電圧線(対地電圧100V)がシャシーに接続されているので,感電します。せめて,英国みたいに接地極のついたプラグを使って,強制的にシャシーが接地されているような構造なら,仮にアンプ内で逆に配線してあってもブレーカが飛ぶだけだし,逆配線じゃなくても,絶縁不良などでシャシーに漏電してもシャシーは接地されているので安全なんですけどね....。もっとも,日本の家は木造だし,畳が敷いてあったりするので,絶縁性が高く,おかげで感電しないこともあって,今まで日本の家庭用配線は安全が軽視されてきたように感じます。とはいえ,iruchanは何度もトランスレスのラジオをいじっていて感電したことがあるので,油断してはいけません。

米国のように,せめてプラグの左右の金属の幅を変更し,逆向きに差せないようにしてあれば,つねに接地線側に差すこともでき,比較的安全ですが,日本はまだプラグがそのようになっていませんし,そもそも,コンセントの配線が逆になっていることも多く,▲の図のように,縦に長い方が普通は接地線なんですけど,たまに電気工事屋さんが間違えて逆になっていることがあります。屋内配線は接地線が白で,電圧線が黒になっているので,普通,黒=GNDなので,間違えちゃうんでしょうか。それとも,どうせ線間電圧は100Vですから,別に逆にしたってちゃんと電灯はつくし,TVなども動くので,問題はねぇ~よな,といい加減に考えちゃったのでしょうか。

実を言うと,うちの職場で最近,LED式の照明に代わったのですが,灯具を交換中,配線が1ヶ所,そうなっていたようで,漏電ブレーカが飛びました......[雨][雨]

だから,少なくともPTLの機器を接続するときはコンセントの極性を検電ドライバーで確認する必要があります。

コンセント極性チェック.jpg 検電ドライバーで極性を確認しませう。左側が接地線です。

コンセントは通常,縦に長い方が接地線で,短い方は電圧線です。わが家は正しく配線されていました[晴れ]

その意味で,パワーアンプなんだから,ノイズは大して問題ないのでシャシーとは絶縁しておけばよい,と言う考え方もあり,実際,金田氏も "パワーアンプのGNDはシャシーから浮かせて配線すると感電しない" と書かれていますが,確かに,これだとパワーアンプに触っても感電しないのですが,プリアンプやCDプレーヤなどは信号のRCAケーブルの外被(コールド)がアンプのGNDとシャシーにつながっているので,パワーアンプのプラグの極性によってはプリアンプのボリウムに触れたとたん,感電する,と言うことになりますのでやはりダメです。と言う次第で,トランスレスは大変危険です。

アンプGND配線.jpgアンプ内のGND配線

ただ,安全のため,3Pプラグで電源コードを作っておけば,シャシーはコンセントを通じて強制的に接地されますので安全です。洗濯機や電子レンジに接地線がついていて,接地しないといけないのはこのためです。残念ながら,日本の一般家庭ではほとんど3Pコンセントになっていないのが問題なんですが.....。

どうも日本の家庭用の電化配線は電圧が100Vしかなくて貧弱だし,感電防止の観点からも電化製品の筐体を強制的に接地する構造になっていなくて,安全軽視だと思います。

以上の観点から,iruchanはトランスつきで作ることにします。

となると,次なる問題は,トランスの容量をいくらにするか,と言うことです。これは結構大問題です。


☆出力段の設計

トランスの容量を決めるために,まずは出力段の最大所要電流を求める必要があります。

ここでようやくロードラインが出てきます。OTLのアンプの最大出力を求めるとともに,そのときの最大プレート電流を求めます。

残念ながら,金田氏は出力については事前に計算した結果を載せておられますが,最大のプレート電流については記述がないので,特性曲線から求める必要があります。

ついでに,金田氏は6S19PのDCパワーアンプについて,4パラで15.13W(8Ω)と報告しておられます。この点についても確認したいと思います。

さて,まずは特性曲線ですね.....。

と思ったら,なんと,ロシア語で書かれた6S19Pの規格表にある特性曲線は驚いたことに,EC=0Vの線がありません!!...........(爆)

これじゃ,最大出力は計算できません。

確かに,EC=0Vの曲線のところはひずみが多いので,昔のアンプの教科書なんかを見ると,電圧増幅回路だとひずみ重視のため,最大出力電圧はEC=-0.5Vくらいのところで計算したりしているのですが,まあ,出力段は普通は0Vの線で評価するので,この線がないと困ってしまいます。

6S19P特性曲線.jpg 6S19Pのプレート特性曲線

困っちゃったのですが,OTLのアンプの出力を求める場合,規格表に載っている特性曲線を大幅にはみ出しちゃうので,いずれにしろ,規格表のデータをそのまま使うことはあまりないんですけどね.....。

実測することも考えたのですが,かなり面倒だし,結局,LTspiceでシミュレーションしてEC=0Vの曲線を求めました。

幸い,6S19PのモデルはAyumi氏が発表しておられるので,ありがたく使わせていただきます。

6S19P ロードライン(8Ω,16Ω)-1.jpgLTSpiceで求めた特性曲線です。

線がLTSpiceで求めたEC=0Vのデータの近似曲線で,それ以外の,などはロシアの真空管規格表のデータです。大体,よいところに来ていると思います。

ロードラインは スピーカのインピーダンス×出力管パラ数 で引きます。8ΩのSPで2パラ出力段だと16Ωで引くことになります。▲の図ではSP 8Ωの線は実際には16Ωで引いてあります。

なお,真空管のプレート電流は0バイアスの時はプレート電圧の1.5乗に比例するのですが,やはり多少ずれていて,Excelで近似曲線を求めると▲の式となりました。

6S19P ロードライン(8Ω).jpgロードラインを引きます。

今度はすべてSpiceのデータをExcelでプロットして曲線を引きました。

金田氏の6S19P DCパワーアンプはトランスレスのものは4パラ,Ebb=135Vで動作しますが,iruchanは初期のNo.146同様,2パラで作ることにしました。No.146ではEbb=160V,出力8.4Wと報告されていますが,iruchanはNo.201と同じ回路で作りたいと思っていますので,Ebb=135Vとなりますが,出力段は2パラにします。

出力はまずは135Vのところから線を引きます。縦軸の交点は135÷(8×2)となります。×2は2パラだからで,出力管1本あたりの負荷抵抗は倍の16Ωとなります。

そうすると......。

なんと,8.4375Aのところが交点となっちゃいます!ひぇ~~~っ!!

そんなところまでプレート特性曲線は描いていないので,結局,やはりExcelで引くことになっちゃいます。

昔はEC=0Vの曲線を手読みしたあと,両対数のグラフにプロットしてその線を延長して遠く離れた位置のプレート電流,電圧を読んで再びもとの特性曲線にプロットする,なんてやっていましたが,いまはExcelでできちゃうので便利な時代になりました。

さて,いよいよ最大出力などを計算していきます。OTLアンプはB級ですので,半導体のパワーアンプの設計と同じです。

よく,▲のロードラインとEC=0Vの線の交点から下ろした線で構成される三角形の面積として説明されています。実際,結論としてはそうなんですけど,

          最大出力.jpg 最大出力の計算式です。

本来は電圧と電流の実効値の積が出力なので,正弦波の場合,波高値の1/√2が実効値ですから,最大出力は

          最大出力1.jpg 

ということで,結局は一番上の式になっちゃうんですけどね。

ちなみに,Eb_min=126V,Ib_max=630.9mAと求められましたから,出力は上式から,2.8Wと求められます。2パラですからこの倍で,片ch.で最大5.7Wが出ることになります。

まあ,この5.7Wという出力をどう考えるか,なんですが.....。

NECの6R-A2の規格表にはEbb=150V,16Ω動作時に6.2Wの動作例が載っています。8Ωの場合はもっと小さくなりますし,6R-A2は150Vでの動作例ですから,6S19Pの方が大出力になると思います。

No.146のようにB電圧を上げて,160Vにしてやると8Wを超えるんですが,球の寿命の問題もありますので,B電圧は135Vのままとしたいと思います。

続いて,球の最大プレート電流および最大プレート損失について求めます。

最大プレート電流は正弦波の半波のピーク値がIb_maxということですが直流電流としては、平均値ですので、

    最大プレート電流.jpg 最大プレート電流です。

積分まで出てきますけど,何のことはない,最大プレート電流は Ib_max÷πです。

なお,最大プレート損失はスピーカへの出力の半分を引くことができますので,

         最大プレート損失.jpg 最大プレート損失です。

一応,プレート供給電圧Ebbはこの最大プレート損失も考慮して決めたいと思います。

結局,iruchanはこれらの計算を何回もやるのはめんどくさいので,Excelのマクロで一発で計算できるようにしました.......(^^:)。

OTLアンプ出力計算マクロ.jpg Excelの出力計算マクロです。

負荷抵抗とパラ数,プレート供給電圧を入力すると,ボタン一発で上記の計算をしてくれます。

結果です。

負荷抵抗8Ωの時は,

6S19P 出力(8Ω).jpgRL=8Ω

Ebb=135Vのときは先ほどの計算どおり,5.7Wですが,Ebb=160Vのときは9W以上出ることがわかります。金田氏の計測結果どおりです。4パラだと18.5Wとなります。

160Vの時を計算してなくて申し訳ありません。各計算値などは使用する予定の絶縁トランスの端子電圧からもとめたB電圧の値です。

ただ,プレート損失はEbb=135Vのときは25.7Wですが,Ebb=160Vのときは40W近くになっちゃいます。6S19Pのプレート損失は11Wなので,4倍近い値になっちゃってちょっとかわいそう,という気がします。135Vの時だと2倍強という範囲で収まりそうです。

ちなみに,スピーカのインピーダンスが16Ωの時はこうなります。

6S19P 出力(16Ω).jpgRL=16Ω

Ebb=135Vでも出力は10Wも得られて十分です。

スピーカの公称インピーダンスが8Ωになってから久しいですし,最近では6Ωや4Ωのスピーカも普通になってきていますが,真空管のOTLのアンプは16Ωで設計することが多く,最後の方で,"スピーカが8Ωだと○○Wになる" と言う風に書いてありました。やはり,16Ωだと8Ωの時より大きな出力が得られますし,プレート損失も少ないので,スピーカは16Ωの方がいいですね~。

さて,と言うことで,結局はやはりEbb=135Vで考えることとしました。やはり,ちょっと160Vじゃ,出力管がかわいそう,という感じがします。

さて,と言うことからいよいよ所要のトランス容量ですが.....。

確かに,プレートの最大電流×プレート電圧(W)×2(正負電源)×パラ数(今回は2)×チャンネル(2)と言うことになろうかと思いますが,このままだとトランスの容量が大きくなりすぎます。まあ,音の余裕,と言う観点からは大きい方がよいのですが,シャシーの大きさやコストの問題もありますからね~。

真っ正直にこの考え方で計算すると6S19Pのアンプは最大出力時に両ch.で約280Wの電力を消費します。とすると,力率100%と考えて280VAのトランスが必要になってくるのですが......。

A級アンプの場合は最大出力時でも無信号時でも消費電力は同じなので,やはり280VAのものが必要ですが,OTLのアンプはB級なので,同じ容量でなくてもOKです。まさか,正弦波で連続最大出力を出すわけじゃありませんしね。

この記事でも書きましたように,トランジスタ技術'03.8号に,デジタルアンプの電源容量について解説があり,デジタルアンプの場合は最大出力の1/3が必要,と書かれています。一方,AB級のアナログアンプの場合は1/8でよいとあります。もちろん,オーディオのアンプは正弦波で連続出力するわけじゃないので,最大出力分の容量が必要なわけではないからです。

ということで,本機では余裕を見て最大プレート電流の1/3を確保することにしました。もちろん,A級動作部分(アイドリング電流)と,前段の電圧増幅部はA級アンプなので,この部分は最低限,絶対に確保しておかないとトランスが焼けますので注意が必要です。

本機では,A級部分は240mA必要で,前段をステレオで20mA程度と考えると最大容量は大体130VAくらいになります。

ただ,タンゴの半導体用電源トランスPB-80Sの規格表を見ると,AB級20~50Wステレオ用と書かれていて,容量は19V×2×2.3Aですから,87.4VAです。合計の最大出力100Wのアンプにこれだけの容量ですから,かなり贅沢なトランスだと言うことがわかります。やはりタンゴのトランスはよかったな~と思います。

ちなみにA級15W用のA-35Sだと152VAです。改めて計算してびっくり。PB-80Sより容量が大きいのか~。やっぱ,A級は大変ですね。

さて,こうして電源と出力段の設計も終わったので部品を手配することにします。

電源用のトランスはトロイダルにします。トランスレスアンプの絶縁用ですから,電圧は1種類だし,EIコアやRコアで特注しなくても,という感じです。それに,最近はRSコンポーネンツなどでトロイダルトランスが安く手に入りますからね。

AC100Vを絶縁するだけでよいので,1次:2次が115Vの仕様のものでOKです。これだと完全な汎用品なので安いです。選んだのはMOUSERで売っている,Triad Magnetics製の553-VPT230-700という型番で115V:115Vで160VAのものです。これで5,000円ほどなのですから驚きです。大きさはφ103mm×H48mmと小型です。

実を言うと,▲の計算通り,Ebb=160Vにして出力10Wというのを考えたのですが,トランスがいいものがなく,これだと1次100V,2次120Vのものが必要です。実際,Plitronなどでこういうトランスもありますし,Triadのも医療用のものにこういう巻線のものがありました。ただ,B電圧が高すぎて6S19Pの損失が大きくなりすぎるので今回はあきらめました。いずれ,6R-A212B4AのOTLを作ろうと思っていますが,そのときにこういうトランスを使おうと思います。

次回はB電源回路ほかの設計です。


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ゲルマニウムトランジスタ スーパーヘテロダイン方式FMラジオの製作~その4・調整編~  [ラジオ]

2018年5月19日の日記

ようやく局発の動作に成功し,泥沼の西部戦線を脱してパリに向けて進撃中のiruchanです。

局発が動作するとスーパーのラジオは難所を越えています。もう90%完成,という感じなんですけどね。そろそろパリも砲撃する射程距離に入った....という感じなんですが....。

☆局発の動作確認

まずはスーパーのラジオだとAMもFMも局発が動作しているかどうかの確認が必要です。
 
やはりオシロが必要だと思いますが,AMの場合,局発が動作するとスピーカーからガーッと言うAM特有のノイズが聞こえますので,オシロがなくても割に簡単です。それに,AMの場合,配線間違いをしなければまず局発が動作しますしね。
 
AMの場合,たまにものすごい雑音がするか,何にも音がしない場合があります。これはIF段が発振している証拠で,これもオシロを検波のところのDiにつないでみるときれいな正弦波が見えるのですぐにわかります。
 
まあ,何にも音がしない,というのは高周波で発振しているわけなんですか,もちろん,配線ミスでIF段が動作していないということもあります....。
  
IF段が発振している場合,IFTのインピーダンスが高すぎ,IF段のゲインが高くなりすぎて発振しています。正攻法の対策はIF段のTrやIFTの交換なんですが,まあ,普通,そこまでする必要はなく,たいていはIFTの1次側に100kΩくらいの抵抗をつないでIFTのQを下げてやると発振が止まります。また,1次側の配線が逆だと発振する原因になります。
 
Trはインピーダンスが低いので整合を取るため,IFTの1次側の同調回路はタップが入っていて,Vccがそのタップに接続されるようになっています。IFTからコレクタにつながる側のピンを間違えるとインピーダンスの整合が取れず,発振しますのでご注意ください。
 
☆IFTの調整
 
さて,局発が動作したら調整に入ります。
 
ところが,またここで難敵に遭遇し,泥沼にはまってしまいました......orz。
 
局発が動作したらIFTのコアの調整をします。アンテナ入力にIF信号(AMだと455kHz,FMだと10.7MHz)の信号を入れて,検波後のオーディオ出力が最大になるよう,各IFTのコアを回します。信号発生器SG(蒸気発生器じゃありません。EF57やEF58じゃないってば。古~~っ!)には1kHzのAM変調がかけられますので,これでやるとスピーカーからピーッと言う音がするのでこの音が最大になるようにします。
 
そのあと,トラッキング調整をします。
 
FMでも実は同じで,リミッタがついているのでこの音は聞こえないはず.....と思ってもちゃんと聞こえるのでIFTの調整ができます。
 
ところが.....。
 
やっぱり,まだウンともスンとも言いません。
 
おっかし~~なぁ~~。
 
でも,よく考えてみるとFMラジオはAMと違って,高周波増幅段(RF)がついているので,アンテナ入力にIFを加えても同調しないので,音が聞こえてくるわけがありません。
 
なあんだ,考えてみれば当たり前のことなんですが,こんなことすら気づくまでに時間がかかりました。iruchanはいままで,ディスクリートのAMラジオは何度も作りましたが,FMは初めてですしね.....。もっとも,IC式のFMラジオは何度か作りましたが,これらはもちろん,RF段がついていますが,非同調増幅器なので,こういう問題はありません。
 
改めて局発の出力についているIFTに10.7MHzを注入します。IFTの1次側コイルにSGをつなぎます。局発が動作していると調整が面倒なので,▼のように局発のコイルを接地して局発の動作を停止させます。
 
FM IF&トラッキング調整箇所.jpg調整箇所です。
 
こうしてようやくIFTの調整ができました。スピーカーからピーッと言う音が聞こえるので,それが最大になるよう,IFTのコアを回します。
 
☆トラッキング調整
 
さて,ここまで来たらまた局発に戻って発振周波数の範囲を決めます。
 
AMだと上側ヘテロダインですから985~2055kHzで発振すれば,535~1605kHzをカバーできますが,実はかなり難しく,きちんとここまでできることは少ないと思います。やはり範囲が広すぎるんですよね~。どうやっても完全にカバーできないことがあります。
 
FMの場合は世界的には周波数が88~108MHzだし,同じ上側ヘテロダインなので,局発は98.7~118.7MHzで発振させる,と言うことになりますが,日本は下側ヘテロダインなので,この記事の通り,65.3~79.3MHzで発振させます。もっとも,今はワイドFMやってますから,上限は84.3MHzにしたいと思います。こうすると76~95MHzがカバーできます。
 
ところが,ここまで来てiruchanのFMラジオはどうしてもトラッキングが取れません。
 
受信できる範囲は大体,60~75MHzと言ったところで,10MHzほど上でないといけません。
 
一応,▲の図にもあるとおり,局発の発振波形はt.p.と言うところにプローブをつなぐと見ることができますし,周波数カウンタをつなぐと周波数が確認できます。周波数を確認したらちゃんと65MHz以上で発振していましたから,ちゃんと76MHzから受信できるはずなんですが.....。
 
なお,FMはもちろん,AMでも局発の波形は局発コイルや局発のTrのコレクタにプローブをつなぐと観察できますが,プローブをつないだことにより発振周波数が変わるのでご注意ください。直列に数pFのコンデンサをつなぐと影響が軽減できますが,やはりどうしてもつなぐと周波数が変わってしまいます。本機も5pFを直列につなぐように基板上に配置しましたが,プローブをつけると1MHzほどずれました。
 
さて,今回のトラブルは局発の周波数が低いためと考えて,局発コイルをいろいろ変えてみてもダメ。何回トライしても受信範囲はこれくらいです。低いのはイメージを受信しているためのようだと思ったのですが.....。
 
ただ,局発コイルをインダクタンスの小さなものにすると下限が上がってくるのはわかりましたが,今度は上限がまったく変わらないどころか,そもそも受信できなくなってしまいます。
 
う~~ん,なんでこうなるのかわかりません......[雨][雨]
 
でも,よ~く考えてみるとやはりまずいのはFMはRFつきであること。さっきのIFTの調整と同じで,RF段がまずいのですね。RF段の同調周波数と局発の発振周波数がきちんと全帯域で10.7MHzだけずれていないといけないのですが,途中で外れてしまっているようです。
 
つまり,ディスクリートのFMラジオは同調式高周波増幅回路になっているため,当然,負荷が同調コイルになっています。ですから,この部分の同調周波数が一致していないとうまく受信できません。低い方は音がするのに,高い方が出てこない,というのはとりもなおさず,このRF段の同調周波数が上の方でずれているからです。
 
ようやく原因がわかりました。
 
とすると,怪しいのは▲の図のRF段の同調コイルかバリコンの調整が必要です。どちらかを交換しないとダメな感じです。
 
改めてここで使用しているバリコンの同調容量を調べてみました。使っているのは横浜のテーダブリュ電気製のもので,非常に出来がよいものです。背面にTWDと書いてあるものです。さすがは日本製,という感じでiruchanも愛用しているのですが,さすがに数が減ってきて入手困難になってきているのは残念です。
 
改めて容量を測ってみてびっくり。意外に大きいんです。
 
メーカ      型番              min.   max.
TWD   4.43 24.01
20.7 40.72
韓国 CBM-223 3.39 22.78
10.52 30.04
 
それぞれ,上段がトリマ最小,下段がトリマ最大のときの値です。TWD製は最大40pFと言うところで,iruchanはFM用のバリコンは最大20pFと思っていたので驚きです。エアバリコンのFM用のものや,ポリバリコンのミツミ製PVC-2FMなどは最大23pFですので,少しTWD製のは大きめのようです。特にトリマが16pFもあるのは大きいです。まあ,調整しろが大きい,と言うことなのでアマチュアには便利なんですが。
 
キャパシタンス測定.jpg 台湾DER社製のLCRメータDE-5000で測定中
 
秋月で売っている台湾製のLCRメータです。0.1μH程度のFM用の空芯コイルまで測定してくれるので便利です。 
 
最近入手可能なポリバリコンは黒い樹脂製の韓国製CBM-223というバリコンですが,これは少し容量が小さいです。
  
これに交換しようかとも思ったのですけど.....。
 
残念ながら,どう見ても作りがチャチ。ネットを見ると中の絶縁用のポリエチレン樹脂が破ける,と書いている人もいますし,ケースの樹脂も割れやすいポリスチレンのようですし,薄いです。iruchanのもトリマの羽根が傾いていて,間にポリエチレンが入っているのでちゃんと回転するんですけど,羽根が重なるときに樹脂を巻き込む感じなので,そのうち破れてしまうと思います。
 
と言う次第で,やはりTWDのものを使うことにします。
 
となると,調整すべきはコイル,と言うことになります。まずは前回,LTspiceでコンバータをシミュレーションしていますが,RF増幅回路もシミュレーションしてみました。
 
FM RF(2SA56+TWD).jpg 76MHz入力のとき
 
76MHzを受信するとき,必要なインダクタンスは0.085μHであることがわかります。
 
幸い,iruchanはRF段のコイルにはFCZ研究所製の10S144を使っています。これはコア入りのため,インダクタンスを可変できます。普通,FMは空芯コイルを使いますが,これだと調整が厄介だし,特にRF段と局発のコイルのインダクタンスが近いため,結合して発振することがあるので,このようにコア入りだとシールドケースに入っていて,結合しにくいのも便利です。
 
バリコンと同じように台湾製のLCRメータでインダクタンスを測ったら0.084~0.135μHでしたので,ギリギリ範囲に入る,と言うことがわかります。
 
同様に,局発もバリコンの容量が大きいと局発コイルのインダクタンスも変わるので調べておきます。 
 
FM局発(2SA56+TWD)1.jpg 最終的な定数です。
 
FM局発FFT.jpg 
 
  ちゃんと65MHzくらいで発振することがわかりました。
 
局発コイルL3のインダクタンスは0.116μHです。φ5.5mmの塩ビ棒にφ0.5mmのUEW線を6回巻いて作りました。これを伸び縮みしてインダクタンスを調整します。 
 
トラッキング調整.jpg トラッキング調整の様子
 
受信範囲の調整は局発コイルL4とバリコンのトリマCt OSCで行います。下限をL4のインダクタンスで決め,上限をCt OSCで調整します。このとき,SGの発振音が聞こえない場合はCt ANTをいじって聞こえるようにします。
 
ただ,RF段の調整は同様にL2とCt ANTで行います。下限はL2,上限をCt ANTで決めます。順番としては,局発のトラッキング調整の前にやるべきだと思いますが,今回は同時にやっちゃいました。
 
ようやくこれで76~95MHzで強力にSGの発振信号を捉えるようになりました。これで放送が入るはず.....です。
 
と言うことで,トラッキング調整もAMと違ってFMは非常に厄介です。
 
☆ディスクリ調整
 
次は周波数弁別器の調整です。ディスクリミネータというので,日本でもディスクリの調整なんて言うことが多いです。
 
今回,FM検波としてはフォスター・シーリー回路を採用しています。2次側に同調回路を持っていますが,同調曲線がS字状のカーブになるため,入力の周波数に比例した直流電圧(実際は音声信号で変調されているので交流になりますけど)を取り出すことができます。詳しくは前回をご覧ください。 
 
FM検波回路にはレシオ検波がよく使われましたが,フォスター・シーリー同様,コイルの1次側,2次側ともに同調回路になっているので,複同調となっています。
 
真空管のIFTだと複同調が当たり前ですが,Tr用はTrのインピーダンスが低いこともあってほとんどが単同調になっています。ところが,FM検波段だけ,複同調のためコアが2つ必要で,FM検波のIFTは2個使うか,それを1つのケースに収めて細長いケースになっています。後者だとすぐにどれがディスクリIFTかわかるので便利なのですが,前者だとなかなかどれがディスクリかわからないのでちょっと困るのですが,たいていはすぐ並んで配置されていますので,わかります。
 
今回,FCZ研究所の10.7MHz用IFTを2個使用します。1次側,2次側ともに10.7MHzに同調させればよいので,IFTの調整の時と同様,局発から10.7MHzを注入し,オシロで検波出力を観察して最大になるようにコアを回します。
 
       ☆         ☆         ☆
 
1918年3月,西部戦線に巨大な大砲が出現します。列車砲として知られた独クルップ社製の通称パリ砲(Paris Gun)です。その名の通り,パリを砲撃する目的がありました。ドイツ軍ではKaiser Wilhelmと名付けられていました。
 
口径210mm,砲身長21mの巨大砲で,106kgの砲弾を130kmも飛ばしました。最大射高は42000mにも達しました。
 
たぶん,ドイツ領内での試射の時の話だと思いますが,技術者や将校たちは射撃すると奇妙なことに気がつきました。仰角が45゜ではなく,50゜以上にした方が遠くに飛ぶ,と言うのです。実は,砲弾が成層圏に達していて,空気抵抗が減少するので,仰角が高い方が遠くまで飛びました。人類が作ったもので初めて成層圏に達したものとされています。
 
3月21日木曜日の朝7時18分,最初の砲弾が発射され,15分間隔で初日に21発が着弾しました。
 
当初,フランス軍はツェッペリン飛行船からの爆撃と考えたようですが,破片を分析した結果,砲弾であることが判明し,それも前線のはるか後方から発射されているらしいと判明して驚愕します。最初はベルギー・リエージュの12個の要塞をたった2週間で沈黙させた42cm榴弾砲かと考えられましたが,そもそも榴弾砲は迫撃砲の一種ですから砲身が短く,長距離は飛びませんから,何らかの巨大砲と考えられました。
 
パリ砲は8月までに320発以上を発射し,犠牲者は250人に上ったようです。すでにアメリカが参戦していましたが大部隊が到着する前に決着をつけようと,第1次世界大戦最後の大攻勢にあわせ,砲撃を開始しました。ただ,巨大砲弾と言っても中身は7kgのTNT火薬しかないため爆弾の威力としてはそれほど大きくなく,これなら第2次世界大戦中にB17爆撃機がドイツに雨あられと投下した1t爆弾の方が威力は大きいです。フランスを屈服させる新兵器,と言うよりはパリを砲撃して戦意をそぐという意味合いの方が濃かったようです。
 
第2次世界大戦ではさらに巨大なグスタフとドーラと名付けられた2門の巨大砲が作られますが,フランスが予想外に早く屈服したため,実際にパリに向けて砲撃することはありませんでした。
 
いよいよiruchanもゲルマニウムTrを使ったフルディスクリートのFMラジオが完成に近づきました。さあ,パリに向けて砲撃開始!!!!..........してはいけません!!

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ゲルマニウムトランジスタ スーパーヘテロダイン方式FMラジオの製作~その3・IFTとFM検波回路について~  [ラジオ]

2018年5月6日の日記

前回でようやく局発が動作するようになり,泥沼の西部戦線を脱してパリに向けて進撃中のiruchanです。今日から調整に入りました。

さて,ようやく本格的に調整,と行きたいところですが,まだ未設計の箇所があります。

実は,検波段をまだ設計していないのです。

というのも,第1回にも書きましたけど,まずはIFTが問題なのです。そもそも,今どきTrラジオ用のFM IFTを入手しようとすると手に入らないのも問題なのですけど,特に,FM用の場合,検波段用のIFTが特殊で,これを入手できないと組み立てられないのです。

ラジオ部品のお店でも,もう売ってはいないと思います。まだAM用は手に入るのですけどね。と言って,FM用は昔も簡単に手に入ったか,と言うと昔でも売っている店を見かけたことがありません。やはりFMは難しすぎて,作る人もいないので売っていなかったのだと思います。

でも,熊本のFCZ研究所が最近まで10.7MHzのIFTを作っていました。iruchanも大変ありがたくそれを使わせていただいています。

ただ,このIFTは1種類しかありません。

厳密に言うと,IFTは4種類必要なのです。FMは特に,最後の検波段用が面倒で,専用のIFTが必要となります。また,前回も書きましたように,初段用は同調コンデンサがないので,これも特殊です。

そんなこと言うと,AM用も同じで,真空管で2種類,Tr用で3種類あるのです。

これらは使用する位置で決まっていて,AMだと変換管に使うものと,中間周波増幅管に使用するものの2種類があり,たいていはA,Bという記号がついています。Tr用は中間周波2段ですから,A, B, Cの3種類が必要です。コアに色がついていて,それぞれ,黒となっています。順番に,コンバータからこの色のコアのIFTを使います。

ついでに,局発コイルも同じ形状ですが,コアがに塗られています。もちろん,これはIFTじゃありませんが,2次巻線があるのが普通です。

だから,AMのTr用IFTは4種類セットで売られていることが多いです。

とはいえ,真空管もそうですが,今どき全種類のIFTを入手することは難しく,特に真空管だと455kHz用として1種類しか売られてないことも多いです。

で,これらを2ヶ所に使っても問題ないのか,ということですが,ほとんど問題ないと思います。Tr用だって,1種類しか手に入らなくて,全段に同じものを使っても問題になることはないと思います。

なんでこのように種類があるのかというと,微妙に使用するTrにあわせてインピーダンスが変えてあるためで,さらに検波段用の真空管のBとTr用のC(コアは黒)は2次側のインピーダンスも下げてあって,2極管やダイオードの低いインピーダンスに整合するようになっているからです。

ところが,FMの場合はそれだけじゃありません。

真空管用は2種類,Tr用は3~4種類あります。特に最後の検波段用が特殊で,AM用と違ってほかとまったく違う巻線構造になっているのでほかの色のコアのやつを流用することはできません。また,前回も書きましたように,初段(コンバータ)用は同調コンデンサがありません。

検波用が特殊なのは検波回路がAMと違って当たり前ですけどねいるためです。

FMはレシオ検波を使うことがほとんどですが,レシオ検波は巻線構造がほかと違い,3次巻線まで必要な特殊な巻線構造になっています。それに,そもそもTr用のIFTはAM用のも含めて,単同調になっているのが普通ですが,FMの検波段用だけ複同調になっているのでコアが2個必要です。これを1個の箱にまとめて,長方形になっているものもありますし,バラバラで2個になっているものも多いです。

       ☆        ☆        ☆

ということで,やはりFM用のIFTは大変なのです。

それと,もう一つ,iruchanには大きな疑問が.....。

FM用のIFTのコアの色がわからないのです。

確か,ピンクとか,とか,AMとは異なる色だったのですが,何色が何用なのか,わからないのです。

当然,AM/FMの2バンドラジオだと調整時に間違えると危険なため,AMとは違う色が使われているのですが,それが何を意味するのかわかりませんでした。

そこでいろいろ調べたのですが,わかりません。JISで決められているのかと "JIS C6421 放送受信機用中間周波変成器" を見ても色の規定はありません。

そこで,国内某2社にメールで問い合わせてみました。

1社は "型番を特定していただかないとお答えできません" の一点張り,もう1社は ”コアの材質によるものです” とのこと。どちらも答えになっていませんね。

特に前者はどうも若い人らしく,端末を叩いているだけの人のようでした。横のベテランのおじさんに一言聞くか,図書室で古いカタログでも見てくれれば,何かわかるんではないかと思ったのですけど.....。

世界的にどのIFTもこのような色が使われいるので,何か決まりがあるはずだと思ったのですけどね。

それにしても今,日本のメーカに何か問い合わせをしてみると,どこもこのような対応です。めんどくさいことを聞いてくれるな,と言わんばかりの応対ですし,完全に無視で返事が来ないこともきわめて多いです。この2社は答えが来ただけマシ35なのかもしれません。

それどころか,半導体などの規格表をダウンロードしようとしたらいちいち登録しないとダウンロードできないのはもちろん,JIS規格や特許など公的な資料を調べようと思ってもネットには出ていません。JISや公開特許公報くらいはPDFでダウンロードできないといけないと思うのですが,実際,米国特許庁USPTOだと1790年からの公報が見られます。どうやら,日本の場合,これらの資料を販売している業者さんがいるので,無料でPDFで公開できない,と言うことらしいのですが,一体何だかな~って感じです。これじゃ,日本でビジネスをしてみたい,と言う外国企業は日本をパスしてしまうと思います。

ちょっと脱線しちゃいました。

結局,いつも大変お世話になっている河童さんに伺ったところ,1971年発行の東光のカタログをいただきました。

ようやく,FMのIFTはオレンジの順でIF1,IF2となっていて,レシオ検波用のは2個あって,入力側がピンク,出力側がと言うことがわかりました。また,前回も書きましたとおり,はコンバータ用で,これには同調コンデンサが接続されていません。ほかにシリコン用はIF段共通で黒色のものがあるようです。それと,おそらく後述のクォドラチャ検波用のコイルもあるはずで,それはまた別の色に塗られているはずですが,そこまではわかりませんでした。

これでようやく謎が解けました。部品屋さんで見つけたり,ジャンク基板から取り出す際などにご参考にしてください。

ただ,これは必ずしも全社統一されていたわけではなさそうで,検波段はという組み合わせもあるようです。と言う次第で,下手すると今どきディスクリートでFMラジオを作ろうとすると,ジャンクのFMラジオの基板から取り外した方が早い,と言うことなのかもしれません。

       ☆        ☆        ☆

さて,ここまで来たところで,やはり問題は検波段用のIFT。ピンクのコアのIFTが入手できればレシオ検波ができるのですけれど.......。

eBayや海外の部品屋さんやサープラスショップも探してみましたが,無理なようです。

といって,iruchanは実はレシオ検波用のIFTの入手が無理なのは先刻承知で,別の方法を考えていました。

ひとまず,FMの検波についておさらいしておきましょう。

最初のFM検波回路はスロープ検波でしょう。

中心周波数をIFとは少しずらしたIFTを用意します。その中心からずれたところの傾斜したカーブを利用し,その領域にIF信号を通すと周波数に応じて振幅の変わる波に変化します。これをAMみたいにDiで整流してやれば周波数に比例した直流が得られることになりますね。これがスロープ検波です。以後のFM検波はこの方式を踏襲して,やはりFM波を周波数に比例したAM波に変換するのが目的です。周波数弁別器なんていかめしい日本語がありますが,英語ではdiscriminatorで,日本語でもディスクリなんて言ったりします。

スロープ検波の場合,やはり傾斜したカーブが非線形なのでどうしてもひずみが発生するのでHiFi向きじゃありません。

次に考えられたのが,IFTの2次側に2つ,やはり中心周波数のずれた同調回路を設けるものです。複同調検波回路とか,発明者の名前を取ってトラビス回路とか言います。

これも2つの中心周波数がうまく配置されていないとひずみを生じますのですぐに廃れました。

本格的なHiFiのFM用としてはRCAのFosterとSeeleyが発明した,フォスター・シーリー回路が有名です。

ひずみも少なく,本格的なFM用として普及しますが,残念ながら,AM妨害に弱く,どうしてもリミッタが必要なため,この点を改良したのがやはりRCAが開発したレシオ検波です。

これはリミッタ作用があり,安価なセットではリミッタを省略しています。

このレシオ検波はFM検波の主流となり,真空管の時代からTrの時代になっても,さらにはICの時代が来るまで主役でした。チューナーもソニーの名機ST-5000Fがレシオ検波です。このチューナー,Marantzの真空管式10Bを凌駕する,という触れ込みがありました。1971年開発なのでICをまったく使っていないフルディスクリートのチューナーで,とてもあこがれました。う~~ん,昔はよかったな~。

一方,周波数弁別器と異なる原理に基づいたFM検波方式も開発されています。

有名なのはゲーテッドビーム管の6BN6ですね。位相検波と言われます。一種の5極管ですが,グリッドが2種類あり,スクリーングリッドに相当するG2にIFに同調したタンク回路を接続すると,そこに主搬送波と90゜位相がずれた信号が発生し,G1に加えられたIFと積を取ると位相のずれに比例した直流がプレートに出る,と言うものです。

おまけに6BN6はリミッタ作用もあり,また出力電圧は数Vと大きいため,直接出力管をドライブできることもあって,TVで普及しました。TVではトランスレス用の3BN6がよく使われました。ほかにも,6DT6FM1000などの専用管も開発されていますね。ただ,ひずみが多いので,HiFi用としては用いられませんが,リミッタ作用は強力なので米Scott社のチューナにリミッタとして用いられています。

ICの時代になると,同様の乗算器をIC内部に作り,クォドラチャ検波として多用されることになります。今でもラジオ用のICはこのクォドラチャ検波を採用しているものが多いです。なにより,セラミックディスクリミネータが開発されると,これはLCのタンク回路と違って単なるセラミック共振子ですから調整不要というメリットもあり,現在は主流となっています。レシオ検波はコイルを使っている関係上,どうしても調整が必要で,調整をするおばちゃんかどうかしらないけどの人件費がもったいないと言うよりおばちゃんは怖い,というわけです.......。

ほかにも,ICの時代にはPLLが簡単に実用化できるようになり,PLL検波というのもあります。これはIFに追随したVCO(電圧制御発振器)を作り,その制御電圧が音声そのものとなる性質を利用したものです。

そのほか,通信機で用いられたパルスカウント検波なんてのもあります。

これは,IF信号を一定幅のパルス列に置き換え,そのパルスを積分することにより音声信号を取り出すものです。

1980年代に入ると郵政省が各県に1局,民放の設置を許可するようになり,多局化が進められるとにわかにFMブームとなり,チューナーも売れたので,昔から高周波の得意なトリオがチューナーに採用しました。いかにも高級そうだし,音もよさそうなのでiruchanもとてもあこがれました。KT-9900とかL-02Tなんて,いまでも中古価格が10万円を超えるくらいだし,大変な高級チューナーでしたよね。

ただ,パルスカウント検波はそのまま10.7MHzのパルスでやることはほとんどなく,もっと低い周波数に変換してからやるのが普通です。

その1980年代は各社,差別化を図るため,このように検波方式もバラバラで,競っていました。そんな中,関西の某大手家電メーカがレシオ検波をHiFiにぴったりだと売り出して笑っちゃったことがあります。ラジオはともかく,もう当時すでに使われることはない技術だと思いましたけどね......。

さて,こうやってFMの検波にはいろんな方式があるのですけど,ディスクリート回路に使えて,しかも簡単な方式でレシオ検波以外,と言うことだとフォスター・シーリーだと思います。しかも,フォスター・シーリーだと特殊はIFTは不要で,段間用のIFTを流用できるんです。また,昔からフォスター・シーリーの方が直線性がよく,音がよいとされています。確か,80年代のチューナーブームの時もどこかが出したような.....。

       ☆        ☆        ☆

さっそく設計してみたいと思います。

でも,レシオ検波もそうですが,フォスター・シーリー検波の詳しい設計法を書いた資料が見つかりません。原理を書いた本は一杯あるのですけど,具体的に各定数をどうやって決めるか,書いた本がないのです。

ということでやはり困ったときのSpice頼みで回路シミュレータで設計します。

まず,FM変調波は通常の電圧源voltageから変調を選択できますので楽です。

FM変調設定.jpg SSFMを選択します。

Foster Seeley(10S10.7).jpg回路はこうです。

IFTは3個の巻線が必要です。しかも,トランスとして使うので,いずれも結合してないといけません。

これについては,LTspiceの一番右上にあるdirectiveの設定が必要です。

Spice Directive.jpg Spice Directiveボタンはここです。

これをクリックして,

  K L1 L2 L3 結合係数

と記述すると3つのコイルが結合します。回路中に複数のトランスがある場合はK1,K2....と記述すればOKです。

なお,2次側の51pFはIFに同調しないといけないのですが,L2,L3はもちろん,この結合係数によっても同調周波数が変わるので,▼のSカーブを調べて,ちゃんと中心に10.7MHzが来るように決定する必要があります。

また,シリーズにつながっている2個のコイルは本当は1個で,センタータップが出ているだけなので,向きを合わせないと電圧を打ち消しちゃいますので,コイルの記号を右クリックして,show phase dotをチェックして向きを揃えておきます。

なお,L4は単なる独立のインダクタでいいので,結合の設定は必要ありません。レシオ検波だとこれまで結合しないといけなくて,このせいでIFTが特殊な巻線となってしまいます。

IFTはFCZ研究所の10.7MHzのものを使います。

ただ,問題はこのコイル,同調側の真ん中のピンがセンタータップではありません。

これはTr用のIFTには共通のことで,AM用も普通,センターではなく,ずれたところからタップが出ています。

これは接続するTrが低インピーダンスなので,それにあわせて整合を取っているからですが,FM検波に使うには不都合です。

どうしようか迷ったのですが,とりあえず,Spiceでテストしてみてどうするか決めたいと思います。

FCZのIFTの同調コイルの巻数は4Tと6Tなので,インダクタンスとしてはこの2乗に比例しますので,16:36になるようにインダクタンスを決めます。っていうか,4:9だろ。

結果は.....。

Foster Seeley output(10kHz).jpg10kHzが出てくるのがわかります。

10kHzで変調していますので,10kHzが出てこないといけませんが,ちゃんと出てきます。輝線? が太いのは10.7MHzのIFが漏れているからですが,これは簡単なフィルタで消えますので問題ありません。

また,さっきの独立インダクタは100μHくらいないとダメな感じです。意外におおきなのが必要なんですね。

ただ,実を言うと,教科書にはフォスター・シーリー検波だとここがコイルになっていますが,普通の抵抗でもよく,メーカ製のセットだと抵抗で代用している場合があります。LTspiceでシミュレーションしたところ,50~100kΩでよさそうです。

さて,さっきの2次側非平衡の問題ですが,

S curve.jpg Sカーブです。

IFをスイープして2次側の電圧を見てみますとこんな感じでした。いわゆる,Sカーブが出ていますね。この曲線を利用して,IFからずれた周波数に比例したAM波に変換します。

そんなにひずんでいる感じではないし,しょせん,小さなスピーカをつないで鳴らすだけだし,これで十分ではないかと思います。こんな小さなラジオだとスロープ検波でもいいくらいだし,これでいいんじゃない,と思います。

       ☆        ☆        ☆

ついでに,レシオ検波もシミュレーションしてみました。

ratio FM discriminator.jpeg こんな感じです。

レシオ検波は2次側のコイルは3つ(実物は2個で,1個は真ん中にタップがあるんですけどね)必要で,いずれも結合が必要です。

2つあるDiはフォスター・シーリーと違って逆向きで,また,Diの出力に大容量のケミコンがつながっているのがレシオ検波の特徴です。このコンデンサのおかげでリミッタ作用があります。

出力波形はフォスター・シーリーも同様で,起動後しばらくは▲のようにマイナス側に大きく振れます。ちゃんと出力に10kHzが出てくることがわかりますね。

残念ながら,FM用のレシオ検波用IFTを入手することは古いFMラジオを解体でもしない限り,難しいかと思います。

ただ,問題になる3次巻線はやはりFMなので,ほんの数Tの巻数でよいはずだし,FCZのIFTを改造して作ることもできるのではないかと考えています。

つづきはこちらへ。


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ノートパソコンのHDD交換 [パソコン]

2018年4月29日の日記

とうとう,サブのノートパソコンのHDDがお亡くなりになったようです。

このノートパソコンはiruchanが単身赴任していたときに社員寮で使っていたもので,今は家族が使っています。スマホでネット見ているので,目を悪くするからネットするならノートパソコンでやれ,と言っています。やはりスマホは見にくいですよね。皆さんはどうしておられますか。

ところが,先週,嫁はんが,"画面が青くなって,何かメッセージが出て起動しない" って言ってきました。

やれやれ~,どうせまた何か,使い方間違えて起動しなくなっているんだ,と思いましたが,やはりiruchanが電源onしてみると,ずっとメーカのロゴが出ているだけで,全然Windowsが起動しません。そのうち,

       "問題が発生したため,PCを再起動する必要があります"

と出ます。あとは再起動ループに入っちゃって,結局,Windowsは起動しません。それに,時折,キーッというきつい音がします。

ところどころ,データが読み出せないのでヘッドがリトラクトしている音ですが,これ,非常にヤバいです。もう,HDDはすでにお亡くなりになっていると考えた方がよさそうです。

でも,一応,昔ならセーフモードで再起動して,ディスクのチェックをしようか,と思いますが....。

残念ながら,Windows8以降,電源投入後,F8キーを乱打してセーフモードに移行する,ということができなくなっています。これ,非常に困るんですけど。次回,復活して欲しい機能です。

昔だったらここでWindowsをセーフモードで立ち上げるか,それもダメならコマンドラインにしてチェックディスク  chkdsk /r をすると直ったのですけどね。以前は/rオプションで修復してくれました。起動のオプションすら表示されないのでこの手は使えません。

現在,Windowsをセーフモードにするには,

「スタート」ボタン→「設定」の順にクリックします。
「設定」が表示されます。 ...
「回復」をクリックします。
「今すぐ再起動」を選択。
 
なんて方法が書かれていますが,そもそもこれはWindowsが立ち上がってからの話なので,通常どおりWindowsが起動しているのにわざわざセーフモードにする人がいるの???? って感じなんですけど.....。
 
Windowsが起動しない状態でセーフモードにして起動するには正常に起動するWindows10のパソコンで修復ディスク(ディスクじゃなくてもUSBメモリでOKですけどね)を作っておいて,それで起動すると "スタートアップ修復" というメニューボタンが出てくるので,それで修復しよう,と考えますが,やってみるとこのボタンをクリックしても結局,元に戻ってしまって全然修復してくれません。

まいったな~~~[雨][雨]

しかたないので,HDDを外してハードディスクケースに取りつけて外付けHDDにして今使っているデスクトップにつないでみると.....。

一応,ドライブは認識しますが,プロパティは表示しませんし,もちろん,中のファイルも見られません。そのうち,このドライブは応答していません,と出ます。プロパティすら開かないので,ディスクのチェックもできません。

やはりご臨終のようです......[雨][雨]

    ♪リメンバー・ミー お別れだけど......  リメンバー・ミー 忘れないで....

ってか? 最近,アナ雪ファンのiruchanはアナ雪の続編を見に行くついで? に "リメンバー・ミー" を見てとても気に入ってます。

と言う次第で,結局,HDDを交換してWindowsを再インストールしないといけなくなりました。

ノートPCなので下手に自分でやると壊す可能性があるので,メーカに問い合わせてみると,HDD(500GB)交換で¥12,000,手数料で¥6,000ということで¥18,000くらいとのこと。他の部品が損傷していることも考えられるので,概算修理をお願いしますとも。あらかじめ少し高い金額で申し込んでおいて,あとで実費精算とのことのようです。

このノートPCはなかなか出来がよいし,今回の返答もすぐに来たし,金額的にもとてもリーズナブル,とは思ったのですけど.....。

修理に出してもHDD→HDDに交換するだけだし,いっそのことやはりSSDにしたいと思いましたし,自分でやればもっと安くできるはずです。手数料はいりませんからね。故障の観点から,やはり機械的な部分のない,SSDが安心です。2年前に自作のデスクトップ機もSSDに交換しましたしね。

ただ,おそらく,このメーカさんもSSDに交換してくれ,といえばやってくれるとは思ったのですけど,おそらく+1万円くらいにはなりそうだし.....ということでSSD交換の価格については質問しなかったのですけど,自分でSSDに交換することにしました。

SSDはWestern DigitalのWDS250GB0Aにしました。やっぱ,○○○○○gなんて使いたくないですしね....。容量はもとのHDDが500GBでしたけど,データの保存はデスクトップ機でやることにしていて,このノートPCはデータを保存しないので250GBもあれば十分と思って250GBにしました。やはりノートPCは発熱が多いし,落としたりするのでデータの保存はデスクトップの方がよいと思います。iruchanはデスクトップにはRAID1でバックアップするドライブもつけています。

このWDのSSDはいろいろ調べたけど,結局Amazonが一番安くて,¥8,291でした。う~~ん,やっぱAmazonになっちゃうんだよな~。

さっそく,ノートPCをばらします。デスクトップ機なら過去,何度もHDDが壊れて交換していますが[雨][雨][雨],ノートPCはメモリ交換をやったくらいで過去,あまりやったことがないので慎重にやります。

インターフェースはSATAなので簡単に交換できます。

SSD installation.jpg SSDを取りつけました。

また,OSは最近はやりのダウンロード版にしました。ライセンスキーがメールで送ってくるだけで,OS本体はMicrosoftからダウンロードします。

皆さん,こんなことやったことないのか,Amazonでもレビューの評価が低いですね。iruchanは先日,仕事でOffice2016をこの方法でインストールしたのでやり方はわかります。

usb起動ディスク.jpg USBでインストールします。

でも,今回驚きましたが,OSのダウンロードそのものは非常に時間がかかりますが(30~40分),インストールは驚くべき早さで終了します。今までだったら,HDDのフォーマットと領域確保で2,3時間,OSのインストールで1時間弱,結局,最低でも半日かかるという状況[雨][雨]でしたが,なんと,今回,たった10分でした[晴れ][晴れ]

MOUSE note PC.jpg ここまででたったの10分でした

Windows10はわざわざDVD-Rに焼く必要はなく,USBメモリでOKです。最低8GBのものが必要ですが,USBメモリにWindows10のイメージをコピーしておいて,それをノートPCに差し込んで電源を入れると,インストールがはじまります。

もし,不具合のあるHDDドライブが残っていて,それに再インストールする場合は,一度,BIOSを起動して,起動するドライブの順番をHDDより先にしておけばUSBドライブから起動します。

          ☆        ☆        ☆

先週,子供らを連れてディズニーの "リメンバー・ミー" を見に行きました。

実を言うと,iruchanはアナ雪の続編,"家族の思い出" が目当てで,"リメンバー・ミー" が目的じゃなかったのですけれど.....。

結構,映画館もアナ雪目当て,と言う人が多そうで,実際にアナ雪みたいな服を着た幼い姉妹が見に来ていたりしました。かわい~~。

アナと雪の女王・家族の思い出.jpg 

     エルサとアナがかわい~~[揺れるハート][揺れるハート][揺れるハート]

でも,今回は見て思ったのですけど,似たようなテーマなんですが,ストーリーは断然,"リメンバー・ミー" の方が上。最後はホロッとしてしまいました。

アナ雪の "家族の思い出" の方は,クリスマスにも何かやらなければならない特別の行事がない,と言うことに女王のエルサが気がついて探してみるのですが,家族というか王室の記録がありません。そもそも彼女たちの両親は船が難破して早く亡くなっているわけですから......。

でも,普通は王室があるくらいの国なら記録係がいて,きちんと王室の行事や祭祀など記録しているのでは? 勝手に公文書をあとで書き換えたり,軍隊が出動して現場の指揮官が日報を書くのは当たり前なのに具合の悪いことが書いてあるからと,なかったことにしちゃう国と同じじゃない? なんて思って見ていましたけど。アレンデールだって国境警備隊は日報をつけるでしょ......(^^;)。

と言うわけで王室の伝統を探してオラフ[雪]が大活躍,という物語でした。

"リメンバー・ミー" の方はちょっとキャラクターが骸骨だらけであまりにもキモいのをのぞけばこれじゃキャラクターが売れへんやろ,アナ雪みたいに歌が素晴らしいし,ストーリーもひいおばあちゃんの殺された父親の思い出をひ孫が取り戻す....という内容で感動的でした。

歌は感動的ですね~~。特に,主役の石橋陽彩君は歌もうまくてびっくり。今回も松たか子さんと神田沙也加さんの歌も素晴らしかったですけどね。それと,ハンスみたいなクソ野郎のデラクルスの橋本さとしさんも素晴らしいテノールで驚き。

リメンバー・ミー1.jpg 

 iruchanは工作マニアなので後ろの白黒TVがいいな~って思いました。真空管かな?

エンドソングは最初,日経の映画評で渡辺祥子が "歌も素晴らしい" と書いていて,その前の日にNHKラジオで "歌手は明かしませんが",なんて言って同じことを言っていました。一体誰だよ? 意地悪~~って思って娘に聞いたら "シシド・カフカでしょ" だって。最近の女子高生はよく知ってますね.....。

そのエンドソングも素晴らしいですね。この人,NHKの朝の連ドラ "ひよっこ" で主人公がボロアパートに住んで,まわりの住人は変なやつばかりって "めぞん一刻"(古~~~っ!!)みたいな話になってきて,そこの管理人さんか,朱美さんみたいな感じで出ていましたけど。なんて,このおばさん女優さん,美人なんだろってびっくりしましたけどね.....。

それにしても "リメンバー・ミー" の音楽はアナ雪と同じロペス夫妻の作ったもので,今回の "リメンバー・ミー" も "Let it go" みたいに名曲ですね~。早速,SSD買うついでにAmazonでサントラ買っちゃいました。

リメンバー・ミー.jpg あまりの美しさにびっくり。

それにしても映像がきれいなのに驚き。2014年のアナと雪の女王でも驚きましたけど,今回はさらにパワーアップした感じで,髪の毛の1本1本まで光の当たり具合や風に揺れる様を表現しているのとか,▲死者の国の俯瞰映像の美しさに驚きです。もはや2次元手描きアニメの時代じゃないな~,って思いました。


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ゲルマニウムトランジスタ スーパーヘテロダイン方式FMラジオの製作~その2・ゲルマニウムトランジスタのSpiceモデル~ [ラジオ]

2018年4月18日の日記

前回に引き続いて,ゲルマニウムTrを使ったFMラジオを作ります。

やはり,事前に予想したのですが.....すっかり泥沼にはまり込んじゃって膠着状態です。これじゃ,塹壕掘って西部戦線だな.......。

まずは,前回,基板の組み立てが終わったので,ひと通りチェックしてから通電します。回路については,前回も書いた,吉本猛夫著 "ラジオの組立て" に載っていたFMラジオの回路を踏襲("ふしゅう" じゃありません)します。Trはさすがに東芝の社員が書いただけあって,ラインナップは2SA240(RF,conv)+2SA433(IF)+2SB54(LF)+2SB56(output)とオール東芝です......(^^;)。

なお,低周波部は1段で済ませますし,検波もIFTの関係でレシオ検波じゃなく,フォスター・シーリーにする予定です。また,RF部は非常にクリティカルで,別のTrを使う場合は定数の変更が必要です。

FMラジオ配線図(ラジオの組み立て)1.jpg "ラジオの組立て" から

スピーカからかすかな雑音がすればひとまず安心なのですが.....。

ウンともスンとも言いません.....orz。

これは,低周波部分が動作していない証拠です。どこかに回路ミスがあります。普通は電池をつないだ瞬間にガリッと音がするはずなんですが.....。

ようやく,LFの2SB101のエミッタ配線にミスがあり,ちゃんとGNDにつながっていないことに気がつきました。

はんだづけし直して電池をつないでみるとかすかな雑音がしますし,Trのケースなんかに指を触れてみるとスピーカからビ~ッと音がしますので,低周波部はOKです。

ついでに,出力の2SB163のアイドリング電流を調べておきます。数mAだったらOKです。

ただ,予想していましたけど,FM特有のザーッというホワイトノイズみたいな雑音は聞こえません。

これはやはり高周波部分が動いていない証拠。まだ成功とはとても言えない状況です。

次にチェックするべきは局発。

ここから長い戦いが始まります。

局発コイルの両端にオシロのプローブをつなぎ,波形を観測してみると真っ平ら.....orz。

スーパーヘテロダインのラジオの生命線はやはり局発です。これが動作しないことにははじまりません。

AMでも同じで,局発が動作しているかどうかチェックするところからはじまりますが,比較的,AMは楽で,トランジスタ式はもちろんのこと,真空管式でも変換管に6BE66SA7を使った場合は楽勝です。配線間違いでもしない限り,ちゃんと発振するはずです。

でも,FMはそういうわけにはいきません。特にTr式の場合は大変です。ちょっとした配線のしかたやTrのばらつき,コイルの作り方で発振しないことが多いのです。

さぁ,困ったな~~~[雨][雨][雨]

原因はいくつか考えられます。

まずは帰還コンデンサ。これの容量が足りないと発振しません。今回4pFを使っていましたが,これを10pF程度まで増やしてみますがダメ。

次は,負荷となっているIFTと発振コイルの間のセラミックコンデンサ。小さいと発振が止まりますが,これも容量を変えてみますがダメ。

あとは,発振回路ですから,クローズドゲインが1(0dB)を超えていないと当然,発振しません。ゲインはTrのhFEに依存しますので,できるだけ高hFEのものが望ましいのですが,2SA56は40~80と規格表に書いてありますので,普通は問題ないはずです。

次に疑うのは動作点。

うっかりカットオフするくらいバイアス電流が小さかったり,サチってしまうくらい大きいと当然,発振しません。

一応,局発の2SA56の各電極の電位を調べてみると,コレクタ -8.24V,エミッタ -1.169V,ベース -1.438Vですから,あまりよくありません。もっとベース電位が高くないと,つまりアイドリング電流が大きくないとダメです。

この動作点はベースにつながっている2つの抵抗で決まります。いわゆる電流帰還型のバイアス回路ですね。

これをいろいろいじってみて,ベース電位を-3Vくらいにしてみましたがダメ。

う~~~ん,ここまでくると2SA56をあきらめるしかなさそう,という結論になります。ここで代打登場となります。

FM RF Tr'.jpg FM用高周波Tr

iruchanは東芝の2SA240も2個,持っていました。これでもいいのですが,やっぱりNECにします。

代打はNECの2SA213にしました。前回もスタメン入りしていますね。ベンチで待機していました。

ところが.....。

2SA213の代打は空振り三振。まったく発振しません.......orz。

あとでわかったのですが,2SA213はゲルマニウムTrなのに,VBEが高く,0.5Vくらいありました。そのせいで動作点が狂ったのかもしれません。

        ☆        ☆        ☆

とうとうこちらももう打つ手がない,という感じです。どうして発振しないんだろと頭を抱えてしまいます。

が,やはり困ったときのSpice頼みという諺ほんなもん,あらへんを思い出しました。回路シミュレータSpiceで動作を調べてみたいと思います。リニアテクノロジー社が無料版のLTspiceを出していますので,これで調べてみます。

FMの局発はコルピッツ型が使われます。AMだとハートレー型ですね。ハートレー型の方が可変範囲が広いのですが,高周波ではコルピッツが使われることが多いです。まずはこのコルピッツ発振回路の動作を確かめてみます。

さっそく,今回の回路をLTspiceでモデル化してみます。とりあえず,TrはPNPのデフォルトのTrで実行してみます。

FM局発回路(ラジオの組み立て).jpg ベース接地コルピッツ発振回路

ありゃま,発振しません。本に載っているような回路が動かないようじゃ,問題なんですが.....。

原因はデフォルトのTrがシリコンであることもありますが,やはり特性がオリジナルの2SA240とは違うためと思われます。あとでモデルを作りますが,2SA56だとちゃんと発振しました。

まあ,普通はたいていの回路ではデフォルトの素子でOKなんですけど,MOS-FETなどは個別の素子を指定してやらないとうまく動かないことが多いです。

と言う次第で,2SA56のモデルは.....と思っても,絶対にあるわけありません。

せめてゲルマニウムTrのモデルがあれば....と思ったのですが,これもネットをさんざん探しても2N344AC127があるくらいでした。これじゃ,真空管のモデルの方が多いくらいで,世の中,ゲルマニウムTrのモデルなんて作っている人はいないのですね

でも,真空管に比べれば,比較的TrのSpiceモデルの作成は楽だと思います。

トランジスタ技術2017年9月号に "基本動作から温度テストまで! トランジスタSpiceモデルの作り方" という記事がありますので,参考にさせていただきます。

まずは,LTspiceのトランジスタモデルなんですが,

standard.bjt.jpg standard.bjtの場所

LTspiceをインストールしたホルダ(デフォルトのままだとマイドキュメント¥LTspiceXVII¥lib¥cmp)にある,standard.bjtのファイルに記述します。拡張子が.bjtなんてことになっていますが,単なるテキストファイルなのでメモ帳で編集できます。

standard.bjt-1.jpg 

 2N344AC127はこのようになっています。

このファイルを編集し,次のような文を追加するとLTspiceで使用できます。

.model Tr型番 PNP or NPN(パラメータ1,パラメータ2,パラメータ3......)

複数行に渡る場合は行頭に+をつければOKです。

で,問題はこのパラメータをどのように求めるか,なんですが.....。

とにかく,各Trの規格表,特に特性曲線が必要となります。残念ながら,CQ出版社が出しているトランジスタ規格表のデータだけではモデル化できません。

ところが.....。

2SA56なんて古いTrのデータシートなんてありません[雷][雷]

そりゃ,そうですよね,今どきこんな古いTrを使おう,なんて人はいませんから。ネット上で,真空管やTrなどのデータシートが公開されていますが,どこを探しても見つかりません。古い本に載っているかと図書館も探しましたが見つかりません[雨][雨]

う~~ん,困ったな~~~[雨][雨]

と,思っていたら北陸の実家に帰って本棚を見てみると, "NECハンドブック'64・'65" という本があるではないですか。

なんと,ちゃんと2SA56も載っていました[晴れ][晴れ]

灯台もと暗しとはこのことですね~~。iruchanは割に古い本を持っているので,そこに載っていました。せっかくなので,PDFを載せておきます。


これを見てちょっと気がつきました。2SA56なんて,えらい古いTrだな,と思いましたが,まだAM用のTrですら高周波のものは少ない時代なのに,番号が若すぎます。また,製法もメサ型となっているのでやはり新しいです。FM用の初期のものはドリフト型か合金拡散型のはずです。メサ型はこのあとです。

この規格表を見ると2SA126と同特性で,2SA56は耐圧が高いということがわかります。

おそらく,最初に開発されたのは2SA126の方で,あとから耐圧が高い2SA56を開発したのだと思います。普通は番号は126のあとになるはずなんですが,何かの都合で空いていた56をつけたのでしょう。ちなみに2SA54も同じ理由でこんな若い番号のようです。2SA54も同じ構造ですし,特性もよいので使えます。

2SA56 Vce-Ic特性.jpgエミッタ接地特性

  VCE-IC特性です。これはたいてい載っています。

2SA56のコレクタ電流特性は▲のようなものでした。意外に大きな電流が流れますし,右の方でコレクタ電流が急に跳ね上がって変なことになっています。これは降伏領域と言って,この領域は使用してはいけません。シリコンTrだと,ずっと右の方なので規格表にも載っていないことが多いので,珍しい特性です。

は今回,計算に使用した点です。

LTspiceでモデル化して,この特性曲線を描いてみて比較します。

まず,Trのモデルなんですが,件のトラ技の記事によると,パラメータの数は33も載っています。おそらく,もっとあると思います。

しかし,そんなにたくさんの数のパラメータを決める必要はありません。たいていはデフォルトのままでOKだと思います。特に,逆バイアス時の特性を記述するパラメータなんかもあったりして,真空管だとグリッド電圧がプラスの領域まで記述するようなものですから,使用しない領域であればデフォルトのままでいいと思います。

さて,iruchanはこれらのパラメータのうち,次の3つを決めればあとは何とかなると思っています。

BF  順方向DC特性。いわゆるhFEのことです。

IC  伝達飽和電流。▼の式で求めます。

EG  バンドギャップ電圧。シリコンTrは1.11(eV),ゲルマニウムTrは0.67(eV)です。

そのほか,飽和特性を決めるパラメータがあります。シリコンTrだとデフォルトでいいと思います。

VAF  アーリー電圧。飽和領域のICを決めます。

RB  ベース直列抵抗。デフォルトの10ΩでOKです。

RC  コレクタ直列抵抗。5極管で言うと肩特性を決めます。飽和電圧の大きい古いTrだと結構重要です。VCE(sat)/IBで計算します。

それと,高周波Trだとスイッチング特性が必要なので,次の電極間容量なども決めておきます。

CJC  0バイアス時のCB-CCJC=1.2~2.4×Cob

CJE  0バイアス時ののCB-ECJE=1.5~2.0×CJC

TF  順方向通過時間 TF=1/2πfT

        ☆        ☆        ☆

これくらいでなんとかなるでしょうか。そのほか,MFGというパラメータもあり,製造会社名です。MFG=NECと書いておくと,あとで素子を選択するときにメーカが表示されて便利です。

上記のうち,問題はIC。これの計算はちょっと厄介です。ある特定のVBEのときのICのデータが必要です。

普通のTrだと,IC-VBE特性が載っていますので,そのグラフからどこか1点読み取ればいいのですが,2SA56の規格表には記載されていません。

ただ,なぜか飽和電圧の特性が載っていて,そこから,VBE=-0.4V,VCEsat=-0.35Vの点を読み取りました(点)。

2SA56 Vce_sat-Ib特性.jpgこんなグラフを見るのは初めてですけどね。

先ほどのVCEsatの時のICは▲の図から-10mAですので,これを計算に使います。

Trのコレクタ電流は下式で表されますので,このISを先の数値を使って計算します。

              IS計算式.jpg

ここで,順方向DC特性NFは1です。また,しきい値電圧VTは,

               VT計算式.jpg

なんですが,Kはボルツマン定数,Tは絶対温度,qは電子の電荷ですから,結局は定数で,常温ではVT=0.0258(V)となります。ところで,知りませんでしたけどボルツマンは最後,自殺しているようです。天才なのにとても惜しいことです。天才も悩むことがあるのですね。

また,ICは下記のアーリー電圧VAFにも影響されます。理想的にはIC-VCE特性は飽和領域では水平になるので,SpiceでもほとんどのTrモデルが水平なんですが,初期のTrやゲルマニウムTrではこの部分でも電流が増えます。▲の特性を見ると2SA56なんてそうですよね。シリコンTrや5極管ではほぼ水平なんですけどね。

              VAF.jpg

コンプリメンタリのTrでもPNPのものだけ,この傾向があったりしますのでご注意ください。

と言う次第で,決定したゲルマニウムTrの2SA56のSpiceモデルは,
 
.MODEL 2SA56 PNP(IS=8.91383E-08 BF=68.632 EG=0.67 VAF=12 RB=7
+ RC=20 CJC=12p CJE=12p TF=5.305e-10 MFG=NEC)
 
です。
 
これを先ほどのstandard.bjtのファイルに追加しておきます。
 
こうすると,LTspice上でデフォルトのPNP Trを配置したあと,Pick New Transistorというボタンを押すと選択することができるようになります。

pick new transistor.jpg 使用するTrを決めます。

select bipolar transistor.jpg 2SA56が出てきます。

次に,コレクタ特性曲線を描いて確認します。必要に応じて,先のパラメータを書き換えて何度も修正します。LTspiceで過渡解析を実施します。コレクタ電圧とベース電流を下記のようにスイープして描画します。

PNP Tr特性曲線Spiceモデル.jpgコレクタ特性を描くための回路

2SA56 Vce-Ic特性Spice.jpg2SA56の特性曲線

ちょっと,PNPなので見にくいですね。どうしてもLTspiceはグラフの上限は下限より数値が大きくないといけないので,規格表のグラフと天地が逆になってしまいますが,こんな感じです。▲の規格表のグラフと比較すると似ていると思います。

さて,いよいよLTspiceで今回の回路をシミュレーションしてみます。


ベース接地コルピッツ発振回路.jpgシミュレーション回路

なんと,驚いたことにデフォルトのPNP Trはもちろん,ほかのTrではかなりのものが動きません。2SA562N344とか,シリコンの2SA1015ではちゃんと動くんですけどね。やはり,きちんと周囲の定数を設計しておかないといけませんね。

局発出力(R4=1kΩ).jpg ちゃんと発振しました。

局発出力(R4=1kΩ)-1.jpg 拡大するとこんな感じです。

発振条件としては,閉ループ中のゲインが1(0dB)以上であることが必要ですが,ちゃんとf特を見ると20dB以上のゲインがあることがわかります。そんなに取れるとは思えないんですけどね......。

FM局発f特.jpg 76MHzで20dB以上あります。

LTspiceでいろいろいじれるので調べてみると,やはり帰還コンデンサC5は結構シビアです。2pFでは発振しません。また,IFTと局発コイルの間のC6も20pF以下では発振しません。

そのほか,Trの動作点を決めるR2とR4は重要です。Trのベース電位を見て,ほぼ1/2Vccくらいになるように決めました。原設計とはかなり異なる値になりました。

こうして,再び,基板上の抵抗やコンデンサを取りかえ,発振するかどうか見てみます。

局発波形.jpg なんとか発振しました。

LTspiceではシミュレーションでは9VP-Pくらいの出力となるんですが,せいぜい400mVP-Pくらいと小さいですし,基点もふらふらと移動していて不安定です。もう少し定数を見直してみたいと思います。それに,発振周波数も45MHzくらいと低すぎます。これは発振コイルのインダクタンスが大きいためですが,これも小さくしないといけません。

それにしても2SA56は1950年代末の製品だと思いますが,よくこんな古いTrが動作するものだと感心しました[晴れ][晴れ]


2018年4月30日追記

▲の局発の周波数をもっと高くして,また,波形ももっときれいにしたいと思い,調整を再開しました。

ところが.....。

再度,完全に局発が停まってしまいました。あ~~ぁ.......orz。

こういうの,よくあるんですよね。ほんのわずか,何かをいじったら回路が動作しなくなった,ってよくありますよね~.....。ケースのふたを閉めただけで動かなくなった,なんてのもしょっちゅうですけど.....。

再び泥沼にはまってしまいました。

気を取り直して,いろいろ調べてみますが,うまくいきません。LTspiceでR1の820Ωを大きくすると発振が安定することがわかりましたが,やってみてもダメ。全然,局発は動作しません。

ようやく,再度,"ラジオの組立て" を読み返してみますと.....初段のコンバータ用のIFTの同調コンデンサがないことに気づきました。

実は,気がついていたのですが,てっきり誤植だと思ってしまっていました。この回路,検波段に誤植があり,レシオ検波なんですが,ダイオードの向きが逆でした。それで,これも誤植だろう,と思ってしまいました。

でも,改めて,クラウンのFM-100型ラジオの回路や東光のカタログを見てみると.....,

なんと,やはりコンバータ用のIFTだけ,同調コンデンサがないんです。

Crown FM-100 schematic.jpgクラウンFM-100型回路

やはり,コンバータ用のIFTだけ,同調コンデンサがありません。IF段はついています。

東光FM用IFT結線図.jpg東光カタログ'71から

    中間周波用        コンバータ用

うっかりしていました。FMはすべて同調コイルがついていると思っていました。TV用の場合,真空管やTrの電極間容量を利用して同調コンデンサがないものがありますが,FMもコンバータ用のものだけ,つけられていないんですね。

さすがに同調コンデンサのない,コンバータ用のIFTなんて持っていないので,FCZ研究所の10.7MHzIFTを改造します。同調コンデンサのリード線を切って外しちゃいます。

FCZ 10.7MHz局発用改造.jpg  部分のリード線を切ります。

FCZ 10.7MHz局発用改造1.jpg 同調コンデンサを外しました

ようやくこうやって再度,基板に取りつけてみると発振しました。

今まで,LTspiceでシミュレーションしたときはすべて同調コンデンサがついていましたが,ちゃんと発振していました。

ただ,Spiceで動いたからと言って実際の回路が動くわけじゃありません。この逆は,まずないと思って間違いないんですけど。

この部分は並列共振じゃなく,直列共振になっているんですね。失敗でした。IFTと局発コイルをつなぐコンデンサは10.7MHzに共振しないといけないのでちゃんと容量を決める必要があります。並列にコンデンサが入っているとうまくいかないようです。

局発コイル周辺.jpg 局発周辺

コイルはφ0.5mmのUEW(ポリウレタン)線で何度か試作しました。これはコイル径5mmで,6回巻が適当でした。

局発上限.jpg ようやくきれいに発振するようになりました。

        ☆        ☆        ☆

1914年9月,英仏の宣戦布告から1ヶ月後,事前に入念に策定したシュリーフェン作戦の想定どおり,ベルギーを蹂躙し,パリへ向けて快進撃を続けていた最右翼のドイツ第1軍を率いる将軍クルックは40年前の皇帝ナポレオン3世を捕虜にしたセダンの戦いの大勝利の再現をもくろみ,敵の第5軍を包囲殲滅するべく,東に向きを変えます。
 
その隙を突いて,パリ防衛を任されていた老獪なフランスのガリエニ将軍は敵の右側面と伸びきった補給線を突き,攻撃します。戦況は一進一退を繰り返しますが,とうとう,タクシーまで使って援軍を送り続けたフランスが勝利し,ドイツ軍は越えたばかりのマルヌ川を渡って一気に100kmも後退し,パリを目前にしてドイツ軍は敗北します。有名なマルヌの戦いですね。フランスはガリエニのおかげで危機一髪の窮地を逃れました。一方,補給の軽視はドイツ陸軍ばかりでなく,我が帝国陸軍の悪いところです。
 
シュリーフェンの後任で参謀総長を務めていたモルトケ(普仏戦争の勝利の立役者の大モルトケの甥)は国王のヴィルヘルム2世にこう言ったと伝えられています。"陛下,この戦争は我々の負けです"。
 
こうして1918年11月の休戦にいたるまで,4年にわたる長い塹壕戦が始まることになりました。26年後,この教訓を生かし,今度は独仏国境の森林地帯を機甲部隊が突破してパリが陥落します。フランスはここからは来ないだろう,と高をくくっていました。シュリーフェンは6週間の計画を立てていましたが,今回はわずか1ヶ月でした。1940年6月,ヒトラーがさも愉快そうにエッフェル塔を見上げている映像が残っていますね。
 
        ☆        ☆        ☆
 
iruchanは無事に局発の作動に成功して泥沼の西部戦線を脱出してパリに向けて前進再開です。さっそく,参謀本部に打電します。
 
          "西部戦線異状ナシ"  .......か?       
 
                              つづく かな

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表面実装部品のはんだづけ [電子工作]

2018年4月13日の日記

ここのところ,iruchanも仕事で表面実装部品のはんだづけをしないといけないことが増えました。そもそもTO-92など,リード部品が減ってしまい,表面実装の部品でないと世の中存在しないものが増えてきたのでしかたないです。

表面実装の部品はSMDとも言いますが,これはSurface Mount Deviceの略です。以後,SMDと書きます。

世の中,軽薄短小化がどんどん進み,とうとう虫眼鏡どころか,顕微鏡でないと見えないくらいの部品が増えて困ったものです。特に,抵抗やコンデンサなんか,今では1005が主流となり,これなんて1mm×0.5mmです。さらには今じゃ,0402なんてのもあり,これなんて,0.4mm×0.2mmですから,うっかり吸い込んだら大変です。そのうち春になると中国大陸からSMD部品が風に乗って飛んできて,花粉症じゃなくて,チップ症という病気がはやるんじゃないかと思います.........怖っ!!。

まあ,今までも小型のSMD部品はあったし,1990年代でも実際にICなど,SOPのものがあったので,たまに使いましたけど,今じゃDIPなんて絶滅危惧種のパッケージになってしまい,SOPしか販売されない,と言う場合も少なくありません。

ICのパッケージは大まかに次のような感じです。

ICパッケージ.jpg 各種ICパッケージ
リニアテクノロジーではLT1490AHはMS8,LTC3588はMSE10と言っているようです。

IP系

Inline Packageの略で,たいていは2列になっているのでDual Inline Packageの略でDIPと言ったりします。80年代は主流のパッケージでした。OPアンプのDIP8ピンとかTTLのICの14ピンとか,今でもたくさん使われていますが,新規のICでこのパッケージで出ることはOPアンプをのぞけばもうないと思います。

もちろん,ピンの数が少ないものはピンが1列でになっていて,Single Inline Packageの略でSIPと言います。ヘッドホン用のICなど,TA7376APとかそうでしたね。

SOP系

Small Outline Packageの略で,これからSMDとなります。

今はこのパッケージが主流ですが,もっと小さなパッケージに移行しつつあり,IP系同様,過去のものとなる日も使いでしょう。

SOPだとピンピッチは1.27mmとDIPの半分です。また,さらに小さなSSOPやMSOPというのもあります。SSOPはピンピッチが1mm,0.8mm,0.65mm,0.5mmとあります。MSOPはピンピッチが0.65mmと0.5mmのものです。さらに,本体の厚みの薄いTSOPやTSSOPというのもあって,はっきり言って収拾がつきません.....。

問題はSOP系の場合,会社ごとに呼び方がバラバラなのも問題で,そもそもMSOPのMはminiの略というところもありますし,microの略という会社もあります。

それにしてもピンピッチが0.5mmなんて,ひとくちに0.5mmって言っちゃいますけど,手作業ではんだづけするのは限界です。

それにしてもICはDIPまでは2.54mmピッチで,トランジスタなどもそうでしたが,SSOPのICからmmになりました。長い間,インチに悩まされ続けましたけど,ようやくメートルに切り替わったようです。米国の力も落ちたな.....。

SON系

ここまではピンがついていて,まあ,ICから脚が出ているようなパッケージでしたが,脚が邪魔! というメーカさんがいて,とうとう亀みたいに脚を引っ込めちゃったパッケージがこれです。脚の分だけ,幅が小さくできますね。

ICの外周に金属製の電極が顔を出しているだけで,そのまわりにはんだづけします。

なお,いずれもICのピンが4方向に出ているものもあり,それらは今までの名称の頭にQがついています。

BGA系

こんどは,そのはんだ部分が邪魔! と怒るメーカさんがいるので,とうとう側面にはんだづけしなくなってしまい,ICの腹にボール状のはんだ突起を設けたやつです。スマホ用のICなんか,こればかりだと思います。

これはリフロー炉で基板全体を加熱してはんだを溶かしてはんだづけするタイプのため,手作業ではんだづけすることは完全に不可能です。

そもそも,IC自体,抵抗みたいに非常に小さくなってしまったので,手作業ではICをマウントすることすら無理で,マウンターで基板に載せますが,部品が小さくて動いちゃうので接着剤みたいな機能があるクリームハンダで仮止めしてリフロー炉で過熱します。

そもそもリフローって何? って感じですけど,reflowの略で,その前にフロー炉というのがあり,いわば溶けたはんだの風呂に昔からの裏面にはんだづけする基板を浮かべてはんだづけしたのに対し,表面側をはんだづけするための加熱炉のことです。

さて,手作業ではんだづけするのはSOP系までだと思います。それ以降の物はリフロー炉を使わないとはんだづけできないでしょう。といって,SOP系と言っても,ピンピッチが0.5mmのものなんて,こんなのはんだづけできるの~~~~!! って言うくらい小さいんですけどね。

iruchanは仕事でLTC3588を使うことになりました。ピエゾ素子などの圧電素子が発生する電圧のスイッチングレギュレータICです。1.8~3.6Vの間の4段階の一定電圧を出力してくれます。

LTC3588回路.jpg回路はこんなのです。

ピン間隔は0.5mmです。▲の写真にあるとおり,正直言ってこんなのはんだづけできるんかい!! って怒りたくなるくらい小さいです。

でも,一応やり方はあります。

まず,大事なのがフラックス。SMD部品のはんだづけには必須,と言っていいです。白光やホーザンなどから出ていますから買っておかないといけません。

でも,臭いが変。どこかで嗅いだことのあるような.......。

そう,イソプロピルアルコールの臭いですね。模型ファンならプラモデルの塗装剥離剤として知られています。iruchanも愛用しています。なんと,はんだづけのフラックスはIPAを主体とするアルコール系の材料のようです。

これが,どうもはんだをうまく広げてくれる性質があるようです。

もともと,電子工作用のはんだにはヤニと呼ばれるフラックスが中心に入っています。これをなんでヤニと呼ぶか,と言うと松ヤニが原料だったからで,そんなの今どき松ヤニなんて使ってへんやろ,と思ったら今も木を乾留して作っているそうで,マジで松などのヤニだそうです。英語ではrosinといいます。

ただ,このヤニは使ってみるとわかるのですが,あまりはんだを広げてはくれません。むしろ,余分なところに広がらないようにするためのような感じで,SMD部品のような小さな部品に対してははんだのまわりを阻害し,うまくはんだづけできない原因になってしまいます。

SMD部品にはやはり専用のフラックスを使い,はんだもヤニなしはんだの方がよいのではないかと思いますが,ヤニなしのはんだはほとんど売られていないので,はんだ自体は従来のものを使います。

LTC3588基板flux.jpg フラックスを塗ります。

ICを基板に載せたらフラックスを塗布します。ランドだけじゃなく,ICのピンにも塗ります。

それにしてもこのIC,▲の写真をご覧いただくとわかりますが,なんと,GNDはICの腹にある電極です。本当に悪魔のようなICです。なんでこんなことやってんだ,と思いましたが,要は放熱のためなんですね。

どうやってはんだづけするんだよっ!って思いましたが,なんとかあらかじめパターンにはんだをつけておいて,ICを載せたあと,パターンを加熱してはんだづけしました。ホッ。

LTC3588基板solder.jpg はんだづけします。

普通のTrみたいに1本ずつはんだづけしてもよいのですが,1mmピッチのSOPのICまでで,さすがに0.5mmピッチだとあきらめて全部いっぺんにはんだづけしないとダメです。

LTC3588基板de-solder braid.jpg ブリッジ部分を吸い取ります。

当然,そんなことやっちゃうとICのピン全部がブリッジしちゃうのですが,それは気にしません。

その後,ハンダ吸い取り線で余分なはんだを吸い取っちゃいます。

ここで肝心なのは,▲のように,吸い取り線にフラックスを塗っておくことです。こうするとうまくきれいにピン部分以外のはんだを吸い取ってくれます。

LTC3588基板solder-1.jpg ICのはんだづけができました!

やってみると意外にきれいにできます。あとはルーペでピンの隙間がちゃんと確保されているか,確認します。

もし,ブリッジしてしまっていたら.....再度はんだごてを当ててブリッジしたはんだを取り除きたいのですが,小さすぎてやはりうまくいきません。全部はんだを溶かして最初からICをつけ直すか,カッターでブリッジしたところだけ切っちゃうのが一番手っ取り早いかと......(^^;)。

LTC3588基板(実装後).jpg ほかの部品もつけて完成です。

抵抗やコンデンサは2012サイズ(2.0×1.25mm)を使っています。CR類はこれが限界だと思いますが,これですら,現在は少なくなってきています。

入力に1kHzくらいの交流を加えるとちゃんと3.2Vの直流が出てきます。成功しました。

ところが.....。

これだけ苦労したのに,LTC3588を使った▲の回路の中国製の完成基板が秋月やAmazonで¥800~¥1,200で売られているではないですか!! おまけにこのIC,MOUSERで750円くらいする高いICなんですが,完成基板でこの値段とは.......orz。


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ゲルマニウムトランジスタ スーパーヘテロダイン方式FMラジオの製作~その1~ [ラジオ]

2018年4月11日の日記

先月,米国バンドのFMラジオを日本バンドに変更するのがうまくいったのに気をよくして,自作のFMラジオを調整したいと思います。

iruchanはゲルマニウムトランジスタが大好きで,本ブログでも,Cherryの4石レフレックスラジオキット6石8石スーパーをゲルマニウムTrで作ったり,完全にプリント基板から自作したラジオも2種類作りました。ひとつは国産Trを使ったもので,もう一つは英Mullardのガラス封止の砲弾型Trを使ったものです。

どれもうまくいきました。お気に入りはMullardのTrを使ったもので,OC44OC71を使っています。それこそ,トランジスタ黎明期の本当に初期のTrで,そんなTrが今も使えるのに驚きましたし,感度もよいし,音もよいのにびっくりしました。今もそのラジオでNHKニュースなんかを聴いています。

さて,今日はいよいよFMラジオを作っていきます。フルディスクリートで,しかもゲルマニウムTrを使ったスーパー式のものです。

残念ながら,やはりFMは難しく,過去の製作記事をさんざん探したのですが,ゲルマニウムのスーパーFMラジオの記事は2つの記事しか見つかりませんでした。ひとつは無線と実験に載っていた,カーステレオのクラウンFM-100型と,単行本の "ラジオの組み立て"(吉本猛夫著,元文社1965年刊行)です。

クラウンのは自社の新製品を紹介するための記事ですが,詳しい設計手法や回路も載っていて参考になります。また,"ラジオの組み立て" の方は著者が東芝の柳町工場勤務と奥付に書かれていて,これもどちらかと言えば,東芝のFMラジオの設計記事,みたいな感じです。いずれにしてもプロの技術者が測定器を使って組み立てた内容で,あまりアマチュアが一から作るための記事,という感じではありません。やはり難しいのですね。

おそらく,TrのFMラジオは作るのも調整するのも難しいので,測定器を持たないアマチュア向けの製作記事としては敬遠されたのだと思います。それに,iruchanも記憶が薄れているのですが,ディスクリートのFMラジオキットというのはなかったと思います。AMだとCherryのほか,ACEやHOMERのキットがありましたね~。今,売られているFMラジオのキットはICを使ったものですし,肝心のフロントエンド部分は事前にコイル類を調整してあって,無調整でFM局が受信できる,と言うものですよね。

さすがにFMともなるとSGやディップメータなど,測定器がないと調整できません。おそらく,製作記事もほとんどないし,実際にTrを使ってスーパーのFMラジオを作った人も少なかったと思います。真空管のFMラジオというのはわりに製作記事があるのですけどね。

それに,日本の場合,FM放送の開始は1969年で,すでにTrと言ってもシリコンが当たり前になっていた時代ですから,余計にゲルマニウムの記事が少ないのだと思います。

とはいえ,試験放送は1960年に始まっていたし,69年までにはほぼ全県でNHKの放送が実施されていたので,HiFiマニアの人は作ることを考えていたし,先の記事や本も出たのは60年代に入ってすぐくらいのことですから,実際に作ろうとした人はいたようです。

iruchanはシリコンTrが実用化されてからの生まれなので,ゲルマニウムTr世代じゃないんですが,本にはたくさんゲルマニウムTrの記事が出ていたし,実際,メーカ製のラジオもかなり遅くまで外観はとてもモダンなのに,中身はゲルマニウム,と言う時代が続いたので,とてもゲルマニウムTrには親しみが湧きます。中学になって初めて2SC372(懐かし~~)を使ったラジオを作ったとき,シリコンTrに驚いたことがあります。外形もゲルマニウムだと金属缶なのに,シリコンはモールドになっちゃっていて,例のシルクハットみたいな形状に違和感をおぼえたのを今も思い出します。

もう,あれから30年も経っていますが,ゲルマニウムTrを使ってFMラジオを作ってみたいと思います。

さて,まずは使用するゲルマニウムTrなんですが......

NEC transistors-1.jpg NECのゲルマニウムTrたち

部品箱をひっくり返してかき集めました。黒いNECのTrは河童さんからいただいた中古のものですが,全部生きていました。黒いのはたいてい通信用で,普通は市販されていないものです。通信用=電電公社用と考えてよく,VHF帯の中継器などに使われたものだと思います。

規格を載せておきます。

       VCEO(V)  IC(mA)  Pc(mW)  hFE  fT(MHz)

2SA56    -15     -50     150    40   300  

2SA213    -15     -2       15    -    140

2SA244    -25     -30     200    -    400

2SB101    -30     -50     125    -    1.2

2SB163    -30     -100     125    70    0.8

FM用のTrだと松下の2SA71が有名です。太めの金属缶ケースで,シールド電極を持った4本脚になっています。もとは蘭PhilipsのOC171です。FM用のTrを開発するのに各社苦労していた時期に欧州からカネで技術導入して作ったので,ちょっと反則という気がするのですけどね.....。ということで,2SA71も持っているのですが,反体制派のiruchanはブルジョワは嫌いなのでFA選手は2軍落ちです。実際,2SA71ってデブでおいしいもの食べ過ぎて太った,という感じがしてあまり好きになれないんですよね........(^^;)。

結局,NECのTrを使うことにし,スタメンは2SA56(RF,conv)+2SA244(IF)+2SB101(LF)+2SB163(output)のラインナップで臨みます。ちょっと2SA213は定格が心細く,うっかりすると飛ばしてしまいそうで,ベンチで代打要員です。

さて,次はバリコンやコイル類です。

幸い,まだポリバリコンのFM用は入手可能です。2連の最大20pFくらいのものです。国産のミツミやTWDのものも入手できると思います。黒いプラでできた韓国製のが最近,秋葉で売られていますが,どうも絶縁のポリエチレン樹脂が弱くて破れる,と言う話を聞きました。

問題はコイルやIFT。

コイルは数μHのものが必要です。発振コイルだと0.1μHくらいですので,ほとんどが空芯となります。普通は市販されていないので,エナメル線で自作しないといけません。

これ,大変なんですよね~。

やはり,FMはこれが最大の問題だと思います。

自作すると巻数や直径,線径によりインダクタンスが大幅に変わるので,うっかりすると(しなくても)とんでもないところで発振して,まったく局が受信できない,と言うことになります。せめてオシロか周波数カウンタがあると,発振している周波数が確認できて,調整できるのですけど。

ということで,メーカ製のラジオなどに使われている,コア入りでねじで調整できるやつが入手できると楽ですし,実際,東光やミツミのカタログには載っていたり,メーカ製ラジオには使われているので,こういったのが入手できるといいのですが,市販されていることはほとんどありません。

幸い,熊本のFCZ研究所が長年,ハムバンド用のコイルを販売していて,FM用に使える80MHz帯と144MHz帯のコア入り可変インダクタがありますので,使わせていただきます。アンテナコイルやバンドパスフィルタには80MHzを,発振コイルに144MHzを使うとよいと思います。また,10.7MHzのIFTもあるので,ありがたく使わせていただきます。

ただ,FCZのコイルはもう10年くらい前に製造中止になっています。iruchanもあわてて買いだめしたものです。現在は中国製の互換品が手に入るようですが,品質の面でやはりFCZの方がよいようです。

FCZ 10S10.7.jpg FCZの10.7MHz IFT

非常によくできていて,壺型コアを上からかぶせるようにして調整します。実測したところ,インダクタンスは4.79μH,Q=8.09でした。内蔵されているコンデンサは51pFのようです。

なお,FCZ製じゃなく,ジャンクなどで古いFM用IFTを使う場合はいくつか問題があります。また書きたいと思います。

Ge Tr FMラジオ基板.jpg 基板が完成しました

プリント基板は100×75mmです。ちょっと無理で,もう少し大きな基板にすべきでした。一応,これで低周波部分も入っていて,スピーカを直接つなげます。

次回は調整編です。

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再びFMバンドの変更について [ラジオ]

2018年3月14日の日記

FM dial.jpg 

   このバンドを変更しました。大体,この位置が80MHzです。

6年前に,海外製のFMラジオを国内バンドに変更する方法について書きました。

どうもたくさんお読みいただいているようで,"FMバンド変更" なんて簡単なキーワードでググってみるといきなりトップに表示される始末。ありがたいことですが,前回は簡単にできる方法を書いたので,本当にきちんとFMのバンド変更をやることは書いていないのでちょっとヤバいな......とiruchanは思っていました。どうも申し訳ありません。

前回はFMのバリコンの局発側に15pF程度のコンデンサをパラに接続する,と言うものでした。ごくおおざっぱではありますが,ちゃんと国内のFM局に対応し,今もそのカナダ・Magnasonic社製のFMラジオはiruchanの机の上に鎮座していて,毎日使っています。

ただ,通常の日本のFMバンドに大体,対応していますが,最近はじまったAM局のワイドFMには対応しておらず,改造して受信できた範囲は77.5~90.9MHzです。このように,局発コイルにパラにコンデンサを接続する方法は,日本のFMバンドをほぼカバーできますが,ワイドFMは入りません。

そこで,やはりきちんとトラッキング調整をやり直して海外のFMバンドを日本のバンドに変更する方法について書きたいと思います。ついでに,ワイドFMにも対応させたいと思います。

さて,今回,バンドを変更するラジオは.....

GE 7-4813B.jpg GE 7-4813B

iruchanが20年ほど前に米国へ行ったときに買ってきたもの。GE製のAM/FM2バンドラジオで,アラームクロックが付いています。アナログチューニングのものは日本でもAMだけなら使えますしね。ちなみに,デジタルチューニングのものは米国はAMが10kHzピッチなので,バンドはほぼ同じなんですが,日本では使えませんのでご注意ください。

でも,実を言うと,AMバンドも米国は少し違うのです。

上が1605kHzじゃなくて,AM expanded bandといって1705kHzまでです。1992年に拡大されました。このラジオもダイヤルに1700の表示があります。日本だと上限の表示は1600ですね。大昔は警察無線の帯域で,戦前のRCAのラジオなんかにAMの一番上にPoliceと書かれたところがありました。これって,警察無線が普通のラジオで聴けちゃたの? 犯人が逃げちゃうじゃん。

まあ,当時,FMはあまり聴かないし.....と思ったのですが,時計つきは便利で,今も実家のベッドに置いてあります。AMはさすがに米国製のラジオは音がよいのです。かなりAMも気をつかって設計しているようで,米国でラジオを買うと,AMの音のよいことや感度のよいことに感心させられます。日本製はノイズが多いし,高音が出なくて音が悪いですよね.....。

でも,ワイドFMがはじまったし,日本のFM局が聴けないのも残念なので,これを改造します。

GE 7-4813B 内部.jpg 内部

米国の電気製品らしく,やはりMade in Chinaです。ただ,驚いたことに,AM/FMチューナICは東芝のTA2003Pが使われていますし,出力はTA7368Pです。

これ,よくあることなんですけどね.....。

さすがに,もっと前だとMade in Japanなんでしょうが,この時代,部品だけ日本製で組み立てが中国製,と言うのが多かったです。とはいえ,今だとスマホの中身なんか,日本製はカメラとチップのセラミックコンデンサだけ.......なんて状況なんじゃないでしょうか.......orz。

TA2003Pは今も入手可能で,規格表も手に入るので楽です。使われていたのはDate Codeが9604Uで,M'siaとあるので,1996年のマレーシア製のようです。そういえば,たぶんその頃,このラジオを買った記憶があります。東芝の規格表も2002.10の日付があるものがネットに出ています。

例によって,局発の部分をいじります。問題はどれが局発コイルか.....と言うことです。AMはコア入りでしかも赤と決まっていますので楽です。FMは空芯コイルが普通ですが,大体,2個か3個,空芯コイルがあります。本機は3個ありました。このうち,どれが局発コイルかが問題です。

でも,この点,意外にメーカ製は楽なんですよね。たいてい,基板の裏側,バリコンのトリマにFM OSCなどと書いてありますので,それにつながっているコイルが局発コイルです。高周波の回路なので,すぐ近くに設置してあります。

FM osc VC周辺.jpg 

  バリコン周辺。←→の部分にコイルが入っています。

まあ,こういうアナログチューニングのラジオの場合,最終的に調整しないとラジオとして使えないので,最後に調整をする人がやりやすいよう,必ずシルク印刷してあります。

ここで顔を出しているのがバリコンのトリマで,AM/FM2バンドなので,4個あります。

このうち,いじるのはFM OSCとFM RF(普通のラジオだとFM ANTと書いてあると思います)ですが,主にいじるのはFM OSCですFM RFは最後の最後までいじりませんのでご注意ください。もちろん,AM側はまったくいじらないので,絶対に触らないようにしてください。

さて,前回はこのFM OSCのところにつながっているFM OSCコイルに15pFのセラミックコンデンサをパラってやってバンドを変更していました。こうすると日本のFMが聞こえるようになります。

GE 7-4813B フロントエンド1.jpg フロントエンド周辺

 局発コイルは最初の状態です。これだけ開いていました。

さて,ここでスーパーヘテロダイン方式によるFMラジオと,FMのバンドについて復習しておきませう。

FMフロントエンド.jpgラジオのフロントエンド

AMもFMも原理的にはスーパーなので,ブロック図は同じです。FMの場合,不要電波輻射防止のため,高周波増幅をつけることが義務づけられているので,必ず混合の前に高周波増幅(RF)がついています。TA2003PもRF増幅がついています。AMはディスクリートの場合は面倒なのでRF増幅はつけませんが,ICの場合はたいてい,ついています。ICラジオが高感度なのはこのためです。

TA2003PはFM検波はクォドラチャ検波のようですが,本機はブロック図にあるとおり,セラミックディスクリミネータじゃなく,LCの同調回路になっているようです。

TA2003P ブロック図.jpgTA2003Pのブロック図

スーパーのラジオは内部で別の発振器(局部発振器)を用意し,中間周波数に変換しています。AMの場合は455kHz,FMは10.7MHzというのが世界的に決まっています。
局発の信号を混合器で入力の電波信号との積を取り,例の高校で習う三角関数の積→和の公式に基づいて,出力に中間周波数と,元の信号±中間周波数の信号が出てくるのをフィルタで中間周波だけ取り出して増幅します。
このとき,局発の周波数が元の電波より高い場合を上側ヘテロダイン,低い場合を下側ヘテロダインと言います。
FMは当然VHF帯を使うのですが,日本だけと言っていいくらい変な周波数バンドで,76~90MHzとなっています。海外では,米国など,88~108MHzのところが多いです。

日米正規FMラジオの局発.jpg日米・正規のラジオ

なんで,日本だけこうなのか......いまだによくわからないのですが,すぐ上にアナログTVの1~3ch.があったから,というのが理由ですけど,そもそもそこになぜTVがあるのか,というのもおかしな話で,米国だとすぐ上はTVじゃありません。

どうも,日本は占領の影響を受け,ずっと上に米軍用の周波数があって,TVがかなり下に移動せざるを得ず,とも連れでFMも世界標準より低い位置になった,らしいです。そういえば,最初は日本のTVは6ch.しかなかったのに,12ch.になったのはやはり使用中の米軍向けの周波数帯が開放されたから,だったですよね。

まあ,欧州ではFMやめちゃってデジタル放送に移行する,というくらいですから,いまさら世界標準にする,なんて話もありません。

AMの場合はバリコンの製作上の問題から上側ヘテロダインしかなく,局発は 電波の周波数+455kHz で発振するわけですが,FMの場合はこれも日本だけなんですけど,下側ヘテロダインになっていて, FM電波の周波数-10.7MHz となっています。米国は上側です。

これはなんでか,というと日本の場合はすぐ上にTVのチャンネルがあって,上側ヘテロダインだとTVの映像信号や音声信号を受信してしまって,FMが聴けないとか,FMのアンテナから局発が漏れて周囲のTVに妨害が出る,などの問題を避けるためです。

ということで,結局,▲の図のように,局発が発振しています。

さて,いよいよ米国製のFMラジオを日本のバンドに対応させる場合ですが.....

米国FMバンドを変更する場合.jpg米国製ラジオの改造

米国製のFMラジオは今も書きましたとおり,上側ヘテロダインなので,98.7~118.7MHzで発振します。

これを日本のFMに対応させる場合,下側ヘテロダインとしてしまうと,局発は65.3~69.3MHzとなってしまいますから,かなり周波数を下げないといけません。こうなると局発コイルを交換しないとダメだと思います。

しかたないので,上側ヘテロダインのまま,周波数を約10MHz下げてやれば日本のFM局が受信できます。

まあ,アナログTVはもう終了してしまったし,上側ヘテロダインでも問題ないと思います。

でも,これでも実際にやってみると非常に大変なんですけどね.....。テストオシレータは必須ですし,技術がないと大変難しい作業ですので,自信のない方はやめておいた方が無難です。

今回はワイドFM対応,ということなので,局発を86.7~100.7MHzで発振させます。

           ☆       ☆       ☆

さて,作業に取りかかりましょう。

まず,FMのバリコンを左一杯回し,一番低い周波数に合わせます。

当然ですが,まだ何もしていないので,この場合は88MHzしか受信できません。

次に,局発の周波数を下げるわけですから,局発コイルのインダクタンスを増やします。

この場合,コイルを交換するのが一番ですけど,それをやっちゃうとあとが大変なので,最後の手段とします。FMはVHF帯を使っていますが,局発コイルは数μHしかなく,ちょっとした寸法の違いで,とんでもないところに同調して変な周波数で発振します。となると,もちろん,まったく放送が入りませんし,テストオシレータやディップメータがないと調整できなくなってしまいます。

まずは,元のセットのコイルをいじります。

インダクタンスを増やせばいいので,巻数を増やすといいのですが,それはできないので,局発コイルを密にします

ピンセットでコイルをつまんで,縮めます。なお,トリマを回すドライバ同様,ピンセットも非金属製でないとまずいのですが,セラミックのピンセットはとても高いので,iruchanはステンレスのピンセットでやりました。こうすると,調整中は音が出ませんので,一度,縮めては外し,を繰り返します。

それと,もちろん,一気に縮めてしまうと泥沼にはまっちゃいますので,ちょっとずつです。

テストオシレータで,同調する周波数を確認しながら,ちょっとずつコイルを縮めていきます。うまい具合に,少しずつ,下に下がっていくのがわかります。

ところが....。

残念ながら,もうこれ以上縮められない,と言うくらいにしても受信する周波数は80MHzくらいです。これで,NHKも入ったのですけど,まだ足りません。

困ったな~~~[雨][雨][雨]

でも,iruchanは知っていました。

実は,たいていの場合,メーカ製のFMラジオの局発コイルにはパラにコンデンサがついているんです。

これ,なんでだかわからないのですが,たいていのメーカ製ラジオにはパラに入っています。もし,これがついていれば,前回と同様,このコンデンサを少し,容量upしてやればもっと周波数を下げられます。

案の定,このラジオもバリコンの周辺に22pFのセラミックがあり,局発コイルにパラになっていました。

普通,自作する場合はバリコンとコイルだけで作ってしまいますし,教科書にもこんなコンデンサについては書いていないんですが,メーカ製ラジオには入っていることが多いです。なお,▲の東芝のTA2003Pの規格表にはコンデンサがコイルにパラに入っているように描かれていますが,これはバリコンのトリマのことだと思います。

残念ながら,もしこのコンデンサがない場合は,同様に小容量のセラミックコンデンサをパラにしてやってみてください。

Cosc+Losc.jpg 局発コイル付近。

  一杯に縮めても80MHzまでしか受信できませんでした。隣の22pFを交換します。

理論上,コンデンサの容量は周波数の2乗に比例しますので,約10%周波数を下げるためには30pFくらいになりそうですので,30pFに交換してみました。ついでに,さっきのコイルを少し伸ばして,調整しろを作っておきます。再び,徐々にこのコイルを縮めながら調整します。

ようやくこれで76MHzが受信できるようになりました。

今度は上限が下がってしまいますので,バリコンを一番右に回して,上限をチェックします。当然,108MHzからは下がっているはずです。

この状態で95MHzが受信できるかどうか,確認します。

VC調整.jpg バリコンのトリマを調整します。

このようにセラミック製の調整ドライバで調整すると楽です。セラミックコンデンサは試験中のもので,あとで撤去しました。

iruchanの場合は93MHzくらいでしたので,今度はバリコンのFM OSCと書かれたトリマコンデンサを回して95MHzが受信できるようにします。

その後,再び,下限を調整するため,またコイルを少し伸ばしたり,縮めたりします。

さらにまた上限を......と言う具合で,何回もバリコン,トリマ,コイルを調整します。

まあ,正直なところ,AMラジオの場合も同じなんですが,完全に調整できることはなく,ある程度で妥協しないといけませんけどね.....。

iruchanの場合,大体,76MHz~95MHzとなったはずなんですが....。詳しくはまたあとで。

ここまで来て,ようやくFM RFのトリマを少し調整して,一番音量が大きくなる位置で止めます。

まあ,FMはVHF帯なので,コイルのQが非常に低く,せいぜい10とか20くらいしかないので,同調はシビアじゃなく,このトリマは調整しなくてもいいと思います。AMだと大きく違うんですけどね。

これでいいでしょう。ようやくNHK FMが聴けてゴキゲンです。今もこのラジオで "ミュージックライン" を聴きながらブログを書いています。今日は久しぶりに "ラジオ深夜便" をFMで聴いてみようかな~[晴れ][晴れ][晴れ]

LEADER 17A oscillator.jpg 76MHz付近が入ればOKです。

lubrication.jpg 少しグリスを塗り直してやります。

ついでに,ケースをばらしたので,ツマミなんかのグリスを洗浄剤で落としてから塗り直してやりました。

特に,このラジオは某国産メーカがよく使っていた黄色いグリスを使っています。これ,経年で固まってしまって,そのうち動かなくなりますので,きれいに落として新しいグリスを塗りました。


2018年3月17日追記

ようやく完了したと思ってラジオを聴いていますが,どうにも変な感じ.....。

FMワイドはガンガンはいりますが,どうも通常のFM局が感度が低いです。特に,NHK FMはザー,ザーとノイズが入ります。

やはり可能性としてはトラッキング。

再び調整することにしました。

やはり,上側に少しずれていて,上限が97MHzくらいになっていました。

実は,▲のテストオシレータのダイヤルに頼っていて,周波数カウンタをつながずにやっていました。

残念ながら,ダイヤル自体はあとで調べたらずれてはいなかったのですが,きちんとカウンタかオシロで正確な周波数を確認しながらやらないとまずいですね。

いつも使っているテクトロのオシロをつないで,周波数を見ながら再調整しました。

結局,受信範囲は77.4MHz~94.5MHzくらいとなりました。AMもそうなんですけど,完全にトラッキングをあわせるのは難しい感じです。どうしても下限を合わせると上限が大きくずれてしまいますし,今度は上限を合わせると下限が合わない,という感じで,ある程度で妥協せざるを得ません。

さて,これできちんと合ったはず.......なんですが.....。

これでもNHKの感度が低く,かなりノイズが乗ります。

こういう場合,疑うのは▲のTA2003Pのブロック図にあるとおり,入力にあるバンドパスフィルタ。

自作する場合はほとんど入れたりしないんですけど,メーカ製のものには入っていることが多いです。特に,カーステではノイズが多いので必ず入っていると思います。

ただ,これが実は大きな問題。

メーカ製のセットに入っているのはセラミックフィルタを使ったバンドパスフィルタ。残念ながら,これが手に入らないんですよね~。

閉店した,秋葉のお店で米国向けの88~108MHzというのは買ったことがありますが,国内バンドのものは見かけたことがありません。

幸い,本機をよく見てみると,入力には単なるLCの同調回路が入っているだけで,バンドパスフィルタ,というよりはハイパスフィルタ。バンドパスならあと2個,コイルが必要なはずです。

FM BPF.jpg入力のフィルタ。

残念ながらコイルは空芯コイルなので,外してインダクタンスを調べない限り,インダクタンスがわかりませんが。おそらく,80MHzより下をカットするようになっているはずです。それで日本のFM局が入りにくいと考えました。ただ,これじゃ,減衰率はそれほど高くはないし,このカットオフを下げてもあまり変わらないのでは,と予想しました。

結局は予想どおり,コイルにパラに入っている30pFを少し大きくしてみましたが,現象は変わりません.....orz。

BPF周辺.jpg 入力フィルタ部

 奥のRFコイルと結合しないよう,向きを変えてありますね。

しかたないので,奥の手を......。

米国製のラジオはよく,AC電源コードがアンテナ代わりになっていて,そこから電波を取り込むことが多いです。電灯線アンテナですね......。あ,今はそんなこと言わないか~。

iruchanが使っているBOSEのWave Radioもそうなっています。もっとも,Wave Radioは外部アンテナ端子もついていますけどね。

なんでだかわかりませんが,国内のFMラジオはAC電源を使うものでもたいていはアンテナ線が別についていて,たらりと電線を垂らすものが多いです。これ,邪魔で,いつもWave Radioみたいに電灯線から取りゃいいじゃん,と思っていました。

でも,うちで使っているWave Radioも電灯線じゃ感度が足りず,別にアンテナをつないでいることを思い出し,本機にも▲のLC同調回路のところに電線をつないでみました。

FM antenna.jpg アンテナ線をつけました。

やはり,大正解。感度大幅向上でした[晴れ][晴れ][晴れ]。NHKも雑音なく,きれいに聴けます。

いろいろやったけど,結局はアンテナが重要,という基本的なことを再認識して終わり,でした......。


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ロクタル管の話~オールロクタル管5球スーパーの製作~ [ラジオ]

2018年3月6日の日記

ロクタル管5球スーパー.jpg

ちょっと北陸の実家に帰っておりました。本当に今年は雪がひどく,びっくりでした。iruchanのところはそんなに雪が積もるわけじゃなくて,多い年でも30cmくらいで,それもここ10年くらいはせいぜい15cmくらいだったのに,今年はそれこそ子供の頃以来,という感じの大雪でびっくりしました。被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。

でも,やっぱりiruchanの実家でも確実に春が訪れており,小さな畑をのぞいてみたらたくさんふきのとうが出ていました。

残念ながら,すでに花が開いてしまっていて,食べられません.....。ふきのとうの天ぷらで泡盛を1杯,なんてサイコーなんですけどね.....。

そんなこんなで草刈りしよ.....と思っていたら,もう,種じゃがいもを売っているではないですか!!

あわてて畑を耕して石灰を撒き,肥料を混ぜて土を準備しました。さすがにまだ寒い日もあるので,芋を植えるのは4月になってからですけどね。

種芋看板.jpg いつもお世話になっている園芸屋さんにて。

もう種芋を売っているんですね。びっくりしました。

さて,ついでに実家の部屋に置いてあった5球スーパーを鳴らしてみます。

もう,20年ほど前に組み立てたものです。一時は毎日聴いていたのですが,最近はさっぱりで,しばらく電源を入れていませんでした。工作マニアなので,完成しちゃうと飽きちゃうんですよね~。

でも,あまり電気製品は使わずに置いておくものではありませんね。

やっぱり,スイッチをonしてみてもパイロットランプがつかないし,おかしいなと思ったらしばらくしてバチンと音がしてパイロットが点きました。

どうもトグルスイッチの接点が固まっていて,ちゃんと接点を構成しなかったようです。忘れた頃に力がかかって接点が閉じたようです。

そればかりじゃなく,真空管のヒーターが暖まってもウンともスンとも言いません。

ボリウムを回したらようやく音が出ました。これもボリウムの摺動子が導通不良になっていたみたいです。ヤレヤレ~。

スピーカはTEACの傑作,S-200が遊んでいるのでそれをつなぎます。

これ,コアキシャルスピーカになっていて,12cmウーファーの上にソフトドームツィータがついています。サイズも小さいのに,非常に音がよく,当時,出たときに即買いました。やはりコアキシャル,というのは音の定位もいいし,ウーファーやキャビネットの設計もよいのか,低音もよく出て,いいスピーカーだと思います。それに,普通,このサイズのスピーカーは密閉なんですけど,S-200はバスレフだったのが買った理由です。やはり密閉型SPはいい音がしません。

鳴らしてみると,AMとは思えないくらいのいい音で朗々と鳴ります。ああ,やっぱ真空管ラジオはいいな~[晴れ][晴れ]

       ☆         ☆         ☆

と言う次第で,今日はこの5球スーパーラジオを紹介したいと思います。

20年ほど前,ロクタル管で作りました。

ロクタル管というのは,RCAが開発したメタル管に対抗して,ライバルのPHILCOが真空管の供給元のSYLVANIAに作らせたものです。だから,ロクタル管にはPHILCOと書かれたものが多いのです。

メタル管はRCAが1935年に開発したもので,もちろん,金属でできていますから,割れないという特長があります。

ただ,特長はそればかりではなく,ボタンステムの採用もそのひとつで,従来はバンタムステムと言ってガラスの支柱に一斉に並んですべての電極のリード線が通っている,という構造でしたが,ロクタル管はピン配置と同じ構造で,円形にピンが並んでいて,そこにリード線が通っています。各電極の距離が離れているため,電極間容量が小さく,より高周波まで使用できる,と言う特長があります。

また,ピンも8ピンになり,従来,最大でも7ピンだったのが1本増えて多極管が作りやすくなりました。これがこのあとのGT管の基礎になります。

とは言っても,結局はもう1本必要なことが多かったわけで.....。MT管が登場すると消えていく運命にあります。おまけにメタル管は#1ピンがシールドになっていることが多く,外被を#1ピンに接続してシールドにしています。だからメタル管は#1ピンをGNDに接続しておく必要がありますが,このおかげで,使えるピンが1本,減ってしまうわけですからなおさらです。

一方,1939年にSYLVANIAが開発したロクタル管は,メタル管同様,バンタムステムを採用し,ピン数も同じ8本になっています。

残念ながら,外被はメタルじゃなく,普通のガラスです。これじゃ,割れるのでメタル管に比べると不利なんですが,その代わり,ピン中心のキーがメタル管はGT管同様,縦にはストレートな形状で,何らロック機能はないのに対し,ロクタル管はキーがくびれていて,ソケットのばねにはまり込んで抜けなくなる構造になっています。だから,lock-in-octalの略でLOCTAL管なんですね。もっとも,PHILCOの登録商標はLOKTALです。なお,この金属ベースはこのロックピンを接地して使うのですが,そうすると各ピン間がシールドされるので,より高周波特性がよくなります。この点に目をつけたのか,欧州Philipsが欧州版のロクタル管を作ったので,欧州にも同じロクタル管があります。

メタル管は管全体がシールドされる構造ですが,ロクタル管も電極そのものはもとからあとの6SK7GT6AU6とか6267などと同様,外周がシールドになっていて,ガラス管内でシールドされており,さらにベース部分は金属ベースでシールドされるのでメタル管同等のシールド効果が得られます。名よりも実を取った,と言うわけですね。ロック機能を考えれば,メタル管より優秀かもしれません。

ただ,これはメーカーの宣伝文句で,実際はJohn W. Stokesの "70 Years of Radio Tubes and Valves" にあるとおり,ロクタル管はどういうわけかかなり短足でピンが短く,抜けやすいのでその対策として考えられた,というのが本当のところなのかもしれません。実際,なぜかロクタル管は脚がほかの球に比べて異常に短いんですよね。

残念ながら,真空管は抜けやすく,特にGT管はうっかりすると抜けてしまうんですが,ロクタル管はかなりゴリゴリやらないと抜けないので非常に信頼性が高いです。

その意味で,メタル管もロクタル管も,まもなくはじまる第2次世界大戦中は軍用真空管として多用されるのですが,特に振動の激しい航空機用によくロクタル管は使われたようです。

ところで,iruchanは時代的にこの球はB29にたくさん使われているのでは,と思っています。日本人としては複雑な気持ちです........。

ただ,メタル管もロクタル管も戦後は不遇で,MT管が開発されると消えていきます。

             老兵は死なず,ただ消え去るのみ    (Douglas MacArthur 1880~1964)

.....ってか?

MT管の登場で,より小型軽量,高性能な機器を求める軍の需要が移ったのでしょう。それに,メタル管は中が見えないので,ヒータが切れていてもどの球が切れているかわからない,というのも軍用機器では問題だったでしょう。救援を要請しようとしたら相手が応答しない,どれか真空管が切れているらしいがどれかわからないんじゃどうしようもないですね。

しかし,よほど大量に生産されたのか,戦後は大量に放出され,神田(当時は今の神田須田町あたりが電気街でしたのでこう呼ばれます)で大量に売られていたようです。柴田翔の本ブログと同名の小説が有名ですね~。

iruchanもこの本は読みました。本編の "されど我らが日々" の方はiruchanは全共闘世代じゃないので,全然理解できませんでしたけどね。ただ,今どきの若い人がすっかり保守的で内向きになり,海外にも行かなくなったし興味もない,というのには呆れています。これじゃ,中国やアジアの若者には勝てないし,あの頃の若い人の方がまともじゃないかと思う今日この頃です。

日本ではメタル管は戦争開始前だったので技術が伝わり,東芝とNEC(当時は東京電気と住友真空管ですけどね)が作りました。と言う次第で,国産のメタル管というのは存在するのです。

一方,さすがにロクタル管は日本では製造されませんでした。

そのせいか,日本ではなじみがなく,ソケットも特殊で入手難だったため,製作記事はほとんどありません。浅野勇氏の "魅惑の真空管アンプ" で,7C5 PPの記事があるくらい,だったのですが,ここ20年ほどは海外から球やソケットが輸入できることもあって,たまに製作記事が出ますね。

iruchanはロクタル管のことは浅野氏の本で存在を知りました。メタルベースの小型の真空管で,ゲッターが燦然と輝き,かっこぇ~と思ったものです。いつかはこれでアンプを作りたい,と思っていました。

ただ,実際にこの球でアンプを作るのは大変です。

なにより,ソケットが問題で,今はインターネットなどで入手できますが,昔はピンに直接はんだづけするしかありませんでした。また,最大の球でも米国オリジナルのロクタル管には6V6同等の7C5しかなく,出力はPPで10Wくらいですし,ほかには6K6同等の7B5や低圧用の7A5くらいしか出力管がなく,選択の余地がありません。もちろん,3極の出力管もなく,当時,iruchanは3極管しか興味がなかったので,計画は中止でした。

これはなんでなのか,よくわからないのですが,メタル管は大出力の6L6があったのに,ロクタル管は7C5くらいです。もう少し大型の球があってもよかったのでは,と思います。

でも,ラジオなら7C5で十分ですし,何よりかっこよいので作ってみようと思って作ったのが本機です。

回路はごく簡単で,ロクタル管と言っても特殊な特性を持った球はほとんどなく,旧世代のST管や後のGT管と同じ特性のものばかりなので,通常のGT管5球スーパーと同じ回路でOKです。

ロクタル管5球スーパー.jpg回路図です。

アナログ入力も設けました。昔はここにクリスタルピックアップをつないでレコードを再生しました。米国なんかだとFMチューナをつないだわけですね。

この場合,切替SWで入力を切り替えるだけでは不十分で,レコードを聴いている最中にラジオが聞こえたりします。本当は局発コイルをショートするにしないといけないのですが,iruchanは知らなくてつけませんでした。まあ,今どきレコードプレーヤをつないだりしないので放置プレイです。

なお,ロクタル管は7C514N7など,7とか14と言う数字が頭についていますが,これはヒータ電圧が7Vや14Vという意味ではなく,ロクタル管を意味するためだけの数字で,ともにヒータ電圧は通常どおりの6.3Vと12.6Vですので注意してください。

球のラインナップは次の通りです。

7Q7(周変)-7A7(中間周波)-7C6(検波・低周波増幅)-7C5(出力)-7Y4(整流)

で,それぞれ,GT管だと6SA7-6SK7-6SQ7-6V6-6X5と言うことになります。本当は6SQ7同等管は7B6ですが,入手できなかったので7C6にしました。同じ2極3極管で,特性的にはST管の75と同じです。7C6はRCA製です。本来ならライバルの製品を作るわけはないと思うのですけど.....。軍用かと思ったら例のニッパーが描かれたRCA Victorの箱に入っていて,ラジオや電蓄などの民生用機器の保守用のようです。このあたり,米国はおおらかなんでしょうか。

ただ,iruchanはちょっと困っていました。

実はロクタル管は中が見えない球が多いんですよね~。

特に7C5は中が見えるものは少ないです。どうにもゲッターが飛びすぎていて,ガラスが全面銀色,と言うのが多いです。また,7Q7も中がアクアダックで塗装されていて,これはガラスが灰色で中が見えません。

アクアダックというのはカーボンで,よくGT管でも6SN76SK7などで塗られています。ブラウン管も普通,中が塗られています。シールドの役割をするのが多いようですが,いろんな文献を読んでみると真空管の場合,要は目隠しが本音だったようで......中の電極の仕上がりが悪くてもバレない,と言うのがマジで理由だったところも多いようです。

ということで,実は7C5以外の球はすべて米国のAntique Electronic Supplyから購入したもので,ついでにロクタル管用のウェハータイプソケットもそこで買いました。やはり人気がないのか,今でも安いですね。7C5も$9.90という値段になっています。

ただ,7C5は中身の見えるものを探していたので,これだけ国内で買いました。GEのが透明なガラスでした。

7Y4,7C5.jpg  整流7Y4と出力7C5

7Y4はTung-Solです。7C5はGEです。いずれもGT管の6X5GT6V6GTとほとんど同じ電極です。

バリコンはアルプスの小型2連です。おそらく,一番最後まで製造されたエアバリコンだと思います。90年代くらいまで,普通に部品屋さんで入手できました。

ただ,このバリコン,確か,430pFじゃなくて,少し大きめの440pFくらいだったような.....。トラッキング調整に手間取った記憶があります。

局発7Q7.jpg 局発の7Q7と中間周波7A7

CBSとSYLVANIAです。IFTは古い6BM8 PPの松下製電蓄からの再利用です。

アンテナコイルと局発コイルはトリオです。いまも入手は可能だと思いますし,気合いがあれば自作もできますので,何とかなります。

ロクタル管5球スーパー内部.jpg シャシー内部です。

ロクタル管は中心ピンが接地されるので,ちゃんとGNDに配線しておきませう。もちろん,出力管や整流管はその必要はないですけどね。

ネジ留め式のトリマはパディングコンデンサの代わりです。正規に今どき,パディングコンデンサを買うと大変な目に遭いますが,アマチュア無線の店などでこのようなセラミックを使ったネジ留め式トリマが売られていますので,それを使うとよいです。パディングコンデンサとしては600pF必要です。

もし,親子バリコンとか,トラッキングレスバリコンと呼ばれる,アンテナ用と局発用で容量が異なるバリコンを使う場合は不要です。中古のバリコンを買うときはこちらの方が便利だと思います。

整流7Y4,Fox condenser.jpg ん?

フィルタコンデンサはAESでまとめて安く売っていたものです。ただ,米国の部品屋で買ったのに,送ってきたのはなんと日本のフォックスコンデンサ。これ,ELNAの前身です。たまにこういうサープラス品で日本製というのがあります。米国製のケミコンには不安があり,いきなり高圧をかけてはいけません。内部の絶縁が破壊するものがあります。でも,これは日本製なので安心できます。実際,本機は最初,真空管が米国製だからとケミコンもMalloryを使っていたのですが,いきなりスイッチonしたら整流管の内部で火花が飛び,焦りました。このフォックスコンデンサ製のは何の問題もありませんでした。製造から50年くらい経っていると思いますが,ハムもなく,今も使えます。350V40μF×3という定格です。やっぱ,ケミコンは日本製ですね! もっと買っておけばよかったと後悔しています。

電源トランスはタンゴのPH-70にしました。本当はタンゴが5球スーパー用に販売していたM-60を使いたかったのですけど.....。今も探しているのですが,入手できません。

久しぶりに自作の5球スーパーを聞いて大満足でした。やはりいいスピーカをつないでAMを聴いてみたいですね!

         ☆         ☆         ☆

2018年3月10日追記

どうやら,国産のロクタル管が1種類だけ,存在したようです。

UL-6306, 5B/248M, EF50.jpg 

    左から,UL-63065B/258MEF50

いつも大変お世話になっている,河童さんからいくつか写真をいただきました。

太平洋戦争中に,レーダー用として作られた,UL-6306という球がそれで,驚いたことに双5極管という不思議な構造です。どうも共通カソードになっていて,ともに3結にして使っていたようです。

もっとも,レーダーとは言っても,高射砲による射撃用の電波標定機用だったようです。

電波標定機というのは飛来する爆撃機の位置を測定して高射砲の照準を決めるためのものです。有名なのはウルツブルグレーダーですね。本当はWürzburgなので,ヴュルツブルグと書くのが正しいと思いますが,日本ではウルツブルグレーダーと言われます。B29を撃ち落とした,と言われている五式十五センチ高射砲に使用されていました。

五式十五高は有効射高16,000mで,B29を撃ち落とせる性能を持っており,東京の久我山に配備されました。実際,2機撃墜したと言われていますし,米軍も久我山周辺が危険だとして飛行禁止とした,とされています。五式と言うことからわかるように,制定されたのは昭和20年なのですが,遅すぎました。戦後,米軍が接収したときの写真が残っていて,砲弾は隣に立っている米兵の身長より高い位で,相当大きく,驚きます。

もっと早く作って日本の海岸にずらりと並べておけば,アメリカが日本を焼け野原にすることも,広島,長崎への原爆投下もなかったのではないかと思うんですけどね......。終戦までに実戦配備されたのはわずかに2門のみでした。

今日は奇しくも73年前の東京大空襲の日です。この日未明,300機のB29が東京の下町を空襲し,10万人もの無辜の市民が犠牲になりました。ご冥福をお祈りします。

残念ながら,十五高の実戦配備はこのあとのようですし,当時,すでにB29も本来の目的であった,高空からの軍需工場へのピンポイント爆撃は効果がないと判断し,低空飛行による一般市民に対する無差別爆撃に切り替えていました。迎撃する飛行機も,高射砲も数がほとんどなくなっていることを見越した上での悪辣非道な行為だと思います。のちのキューバ危機に際して,東京大空襲をはじめとして,日本を焼き尽くしたルメイは空軍参謀総長として,核による対ソ先制攻撃を主張しました。"アメリカ人の1/3が死ぬだろうが,我々は勝つ!” 

東京都復興記念館.jpg 東京都復興記念館(横網町公園)

年末に息子と近くへ行く機会があったので立ち寄ってきました。1931年建立で,震災時に火災旋風が起こって多数の犠牲者が出た,陸軍被服廠のあったところに建っています。今は震災と東京大空襲の記憶を残すべく,記念館となっています。すぐ隣の慰霊堂で息子とお祈りしてきました。

もっとも,十五高に使用されていたのはドイツ型真空管ですが,戦時下なので安全に輸入できるわけもなく,国産化しないと実戦配備は難しいのですが,UL-6306は日本版ウルツブルグに用いられた "た号改4" 電波標定機に使用されたようですから,この球も十五高で使われていたのでは,と思います。

UL-6306は東芝が開発した旧海軍用のRH-8 5極管を2つ内蔵したものです。レーダー用の受信機の混合用として用いられたようです。

ただ,やはり問題となるのはソケットなんですけど.....。神田で米軍放出品を買った? んなわけね~だろ。

どうやら専用のクリップみたいな金具があって,ピンに挿して使ったようです。中心のキーは単なる抜け止めだったようです。五式十五センチ高射砲は分厚いコンクリートで隔てられていましたが,すぐ横で高射砲をガンガン撃っているので,ものすごい振動と衝撃だったことでしょう。

河童さんから送っていただいた写真のUL-6306は不動品で,動かないようです。中心の金属製のキーも錆びて取れてしまっているそうです。

また,蘭Philipsが欧州版ロクタル管を開発した,と書きましたが,実物の写真をいただきました。

真ん中の英STC製の5B/258M5B/205Aの一族で,米国系だと807に類似しているようです。ヒーターが19V/0.3Aで,頭にプレートが出ています。米国のロクタル管はシングルエンドであることが特長で,RCAのメタル管が6A86L7など,トップグリッドで使いにくいのを改良したのだと思います。

もっとも,5B/258Mは送信機用のため,トッププレートになっているのだと思いますが,このように,欧州版ロクタル管はこのように送信機の終段で使えるような807並みの大出力管があるのが特徴です。

英国は9本足のロクタルも作っておりEF50が有名です。Stokesの先述の本によると,1939年に英Mullardが開発して,蘭Philipsと同時に発表されました。英MullardはPhilipsの子会社だったので,同時発表となったのでしょう。最初のバージョンはEF37みたいにガラスの表面にアルミを塗ったメタルスプレー管でしたが,のちにアルミのカバーをかぶせたメタルガラス(MG)管になりました。本来はTV向けのGm=6mSの広帯域増幅用の球でしたが,すぐに戦争が始まったため,レーダー用に大量生産されたようです。日本でもよく知られていて,PX4とかDA30とか欧州の出力管のアンプを作るときにドライバとして使う方がいらっしゃいますね。

河童さんのは米SYLVANIA製のようですが,レーダー用に大量に需要があるのに英国だけじゃ生産が足りず,ロクタル管のノウハウがあったSYLVANIAにも作らせたのだと思います。

もっとも,EF50は9本脚で,もはやoctalじゃないので,ロクタル管と呼ぶのは変な気がしますが,ロクタル管の仲間とされています。

5B/255M, CV327-1.jpg 6L6級のの5B/250MEF52CV327

5B/250Mをトッププレートにして耐圧を高め,送信管としたのが5B/258Mのようです。EF52はMG管です。番号から考えて,EF50のあとに開発されたと思いますが,Gm=10mSで,米国が開発した6AC7(Gm=9mS)よりハイGmです。

鉄ちゃんのiruchanはどうしてもEF50とか,EF52とか,ドイツ版メタル管のEF13とかEF15など,こういう番号の真空管は機関車のように思えちゃうんですけどね。English ElectricのEF50は模型が出たらぜひほしいと思っているのですが.....(^^;)。

sonotone EM71.jpg EM71

一方,ドイツではロクタル管のマジックアイが作られました。Stokesの本にはLorenzが開発して,英国でも販売した,と書かれています。河童さんからいただいたこの写真のEM71はMade in Englandと書いてありますので,どこか,英国のメーカもOEM生産したのでしょうか。

EM71はビーム生成電極が中心からずれていて,同調指示が見やすくなっています。

EM71-1.jpg EM71の同調指示部

ほかに,ロクタルで有名なのはPHILCOのFM1000 7極管ですね。6BN66DT6などのように位相検波(ロックドオシレータ検波)をさせるためのものです。製造はSYLVANIAですが,戦後,FMの普及を目指してわざわざ作ったのでしょう。iruchanはFM1000は持っていた気がするので,いずれ,オールロクタル管FMラジオというのを作ってみたい気がします。


2018年4月9日追記

庭の畑にじゃがいもを植えました。今年はアンデス赤とベニアカリを植えました。赤いじゃがいもって,スーパーじゃ売っていないし,珍しいので育てています。味もとてもよいと思います。

シリカ.jpg 連作障害防止のシリカです。

初めて使いますが,果たして効果はどうでしょうか。

じゃがいも植えつけ.jpg 種芋を植えました。

ところどころ,芽が出ているのは去年の取り残しの芋が芽を出しているからです。ちょっと笑っちゃいました。たぶん,取り残したくらいだから梅干しくらいの小さないもだと思いますけど,寒い冬に耐えて芽を出してくれるとはとてもうれしいです。


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オールWE真空管式DCプリアンプの製作~その4・AOC回路の調整~ [オーディオ]

2018年2月17日の日記

前回から2ヶ月が経ってしまいました。実はどツボにはまっちゃっていました。

一応,年末に電源部とEQアンプの通電試験を行い,無事に動作が確認できました。若干,リップルフィルタを採用したB電源の電圧がばらばらだったので調整したりしましたが,EQアンプも無事に動作しました。

ところが.....。

いざ最後のフラットアンプの調整をしようと通電してみたら,R ch.は無事に動作したのですが,どうしてもL ch.だけ,オフセットが25Vくらいにもなって,おかしいです。R ch.はAOC回路を採用したこともあって,最初からオフセットは10mVくらいで,調整用のVRを回したらほぼ0Vにできますので,正常です。

それにしてもオフセットが25Vとは異常です。おまけに,AOC回路に入っている調整用のVRを回してもまったく変化しません......orz。

とりあえず,やはりパターンミスが考えられますので,チェックしてみますと1ヶ所やはりミスが見つかりました。おまけに,何を間違えたのか,出力の407Aのカソードに接続されているツェナーDiが本来はRD33Fなのに,なんと,RD2Fがついていました......orz。

これじゃ,ツェナー電圧はわずかに2Vしかないので異常なのは当たり前,と思ったのですけれど.....。

パターンミスとこのツェナーDiを交換してみてもやはりオフセットは20V以上あります.....。

あとでわかったのですが,ここのツェナーDiを間違えていても,このフラットアンプは正常に動作するのです。恐るべし,AOC。

う~ん,困ったな~~[雨]

普通はこんなことなくて,調整前だったら100mVくらいのオフセットが出てもおかしくはないのですけど,それにしても20V以上のオフセットとはおかしいです。実際,ネット上でもオフセットが出る,と書いている方がいらっしゃいますが,それでも数百mVくらいのレベルのようです。

とりあえず,パターンは正常だと考えると真空管のばらつきが考えられますが,真空管を交換しても同じです。あとはAOC回路の2.2μFのフィルムコン(Audynを使っています)のリークや2SK170BLのIDSSのばらつき,などが考えられます。

そこで,このコンデンサを交換してみたり,2SK170BLを外してばらつきを調べましたが,IDSSはほとんどばらついていません。

原因をいろいろ考えましたが,わかりません。そうこうするうちに時間が経ってしまいました。

そこで,製作前にLTspiceでフラットアンプのモデルを作っていたのを思い出し,LTspiceで回路のシミュレーションをしてみます。

これでひとつわかったことがあります。

AOCの定電流回路で2SD756のエミッタに入っている抵抗に3.3kΩを使っていました。金田氏の原設計では3kΩです。

実を言うと,iruchanは進でもニッコームでも手持ちに3kΩがなかったので,3.3kΩで代用していました。某通商会社? ではどちらの3kΩもありません。まあ,2kΩや5kΩはE12系列の抵抗にはなく,使用する場合は2.2kΩや4.7kΩを使用するわけです。3kΩも同じで,普通は3.3kΩを使うので,ここに3.3kΩを使っていました。

でも,これはダメなのです。

ここに3.3kΩを使ってしまうと,LTspiceでシミュレーションすると,407Aがほぼカットオフしてしまい,アイドリング電流が0.1mA程度になってしまうのです。逆に,2.7kΩでも同様で,ここはやはり3kΩでないとまずいのです。非常にこの抵抗はシビアです。

それで実機に戻って,この抵抗をタクマン電子の3kΩ 1/4Wにしました。いつも使っている,非常に小さなアキシャルタイプの抵抗です。とても1/4Wとは思えない小ささです。KOAや利久電器のもあります。

さて,実際,3.3kΩの時にはアイドリング電流は0.12mAしか流れていませんでした。これじゃ,AOC回路は制御しようがありません。

でも,3kΩに交換してもアイドリングは1mAちょっとです。アイドリング電流が小さすぎますね。

原因は初段の407Aの共通カソードに入っている,これも2SD756の定電流回路の電流が小さいからです。これはすぐにわかりました。

原設計では2.7kΩとなっていて,最初,500Ωの半固定を入れておいて,調整後に固定抵抗に取り替えることになっています。ここはiruchanも規定どおりの2.7kΩを使っていました。

残念ながら,L ch.はこれではダメなようです。しかたなく,2.2kΩに変更してアイドリングを測ってみますと,ようやく4~8mAくらい流れます。設計値は5mAですので,そこで調整用の半固定抵抗を止めました。

やれやれ~。ようやくこれで出力段の407Aのプレート電流が設計どおり,5mA流れることとなりました。

ところが,これでもまだオフセットは数Vも出ています。全然,0Vになりませんし,AOCの半固定を回してもほとんど変化しません。

こうなると,AOCに入っている,半固定VRが200Ωなんですけど,原因はおそらくこの調整範囲に入らないため,と考えて500Ωに交換してみます。

ようやく,オフセットが調整できるようになり,オフセット電圧も変化するようになりました。

ただ,これでも2V以下に下げることができません。

業を煮やして,半固定の片側に220Ωを追加したら多少下がったのですが,まだ0V以下にならないので,結局,1.2kΩを接続したら0V以下になりました。

調整も可能で,数mVくらいになるように調整しました。

ようやくこれで実用化かと,思ったのですけれど.....。

やはり正常に動作するR ch.と比較すると挙動がおかしく,これでOKするには無理があります。

電源投入直後から観察すると,R ch.は確かに電源投入して412Aが暖まってくると,瞬間的に300mVくらいのオフセットが出ますが,速やかに数mVに下がります。

ところが,L ch.は一旦,4V以上のオフセットが出たあと,2Vくらいまで下がってきますが,その後,なかなか下がりません。3~5分くらいしてようやく数十mVくらいになる,と言う始末で,その後,徐々に下がっていき,今度はマイナスになっちゃいます。

その後もふらふらと変動しますので,やはり状況はおかしいです。

う~~ん,困ったな~~[雨][雨]

そこで,再び,LTspiceに戻って考えてみます。

今度はAOC回路のみ取り出してLTspiceでシミュレーションして考えてみることにします。

AOC 2SK170回路.jpgAOC回路(オリジナル)

±Vccはiruchanが現在製作中のB電源電圧です。ずれがあってもほとんど問題になりません。2.4kΩは前段の2SA1967のエミッタ抵抗です。

AOC回路は1段の差動アンプで,2つのFETのゲートはそれぞれフラットアンプの出力と,GNDにつながっています。フラットアンプの出力はLPFが入っていて,音声信号には反応せず,オフセットのみに反応するようになっています。

差動アンプなので,2つの入力間の電圧差に比例した電流を出力するようになっています。電流は,共通ソースに入っている定電流回路で和が一定になるように制御されますので,2つのドレイン電流はシーソーみたいに対称に変化します。普通はドレインに負荷抵抗が入っていて,電流の変化を電圧の変化として取り出して使うわけですが,AOCの場合は電流そのものを使います。2つの入力は片側がGNDですから,純粋にオフセット電圧に比例した電流を出力するわけです。

今,出力と書きましたが,実際には "吐き出し" ではなく, "吸込み" として動作します。

金田氏のDCプリアンプは初段が真空管,2段目がレベルシフトのTr,3段目が完全対称出力段という構成になっていますが,AOCは2段目のレベルシフトのTrのエミッタにつながっていて,最大,1.9mAの電流を吸い込めるように設計されているようです。

レベルシフトTrの動作電流は1mAのようですので,AOCは約1mAくらいを吸い込んで2SA1967が動作するように制御します。

LTspiceでの出力結果を▼に示します。入力のオフセット電圧として電圧源を挿入し,それを-3~+3Vの範囲でスイープします。

AOC 2SK170(VR200Ω).jpg ふ~ん,こうなるんだ。

2つX型に交差している線がそれぞれ2SC1775のコレクタ電流を示します。ちゃんと2つの電流が対称的に変化するのがわかりますね。最大,1.9mAまで吸い込むことがわかります。X型の範囲がAOC回路の制御範囲で,それを超えちゃうと制御不能になります。

このX型の制御範囲は非常に狭いようで,▲のグラフにもあるとおり,オフセットが-365mV~+370mVの範囲です。この範囲を逸脱してしまうとAOCがサチってしまい,オフセットを0Vにできません。

おそらく,現在のiruchanのフラットアンプのL ch.はオフセットがこの範囲を大きく超えてしまっていて,0Vに制御できない状況だと思います。

ということで,この範囲を少し広げてやれれば,と思いました。

2つの2SK170BLのソースに入っている可変抵抗が原設計では200Ωですが,これを1kΩにしてみます。

AOC 2SK170(VR1kΩ).jpg VRを1kΩにしたとき。

-1.16V~+1.13Vと広がりますね。可変抵抗を大きくするのは効果があるようです。

ただ,iruchanのアンプは観察していると,最大4Vくらいまでは出ています。まあ,ほとんどは±B電源の立ち上がりに出ているので,B電源が落ち着いてくると2Vくらいにはなっているようです。

とすると,iruchan製作中のアンプではVRを1kΩにしても制御できない,と思われます。それに,2SK170BLを使った原設計の回路では,この抵抗値を大きくしてもそれほど制御範囲が広がりません。

困ったな~~。

ちなみに,定電流回路の2SD756のエミッタに入っている抵抗を小さくしてやるとこの制御範囲が広がります。

しかし,これをやっちゃうとこれまた困ったことになっちゃいます。

3kΩが原設計ですが,2kΩにするとこうなります。

AOC 2SK170(VR200Ω,RE=2kΩ)'.jpg RE=2kΩの時

確かに,制御範囲は-509mV~+509mVと広がりますが,問題は2SC1775Aのエミッタ電流で,最大,2.86mAとなります。

で,これが何が問題かというと.....。

オフセットが0Vのところが1.4mAくらいになります。前段の2SA1967のエミッタ電流の最適値は1mAですから,AOC回路がほとんど電流を吸い込んじゃって肝心の407Aのバイアスが深くなりすぎてプレートに流れる電流がほとんど0になってしまいます。実際,フラットアンプのLTspiceモデルで実験してみますと,407Aのプレート電流は1mA以下になってしまいました。

ということで,この方法は使えません。

2SC1775Aを交換しても,ほかの抵抗値を変化させても制御範囲は変更できません。

しかたないので,やはり2SK170BLはあきらめざるを得ません。要は,もっとゲート電圧の変化に対してドレイン電流の変化の小さい,つまりgm(今はgmとは言わない......ってか?)の小さなFETにする必要があります。

2SK170BLはハイgmで,22mSもあります。普通はiruchanもgmの高いFETを好んで使うのですが,AOCにはローgmの方がよさそうです。

ということで......。

代打は2SK30にしました。これはgmが1.2mSしかありません。今どき,こんな低いgmのFETなんて使わんやろ,と思うのですけどね。iruchanも2SK30を使う回路には2SK117を使うことが多いです。

でも,今でも盛んに2SK30は使われていますし,とうに製造中止なんですけど,市中の在庫はまだありますし,やはり需要があるのだと思います。iruchanも中学の頃からよく使っているFETなのでなじみがあります。

ということで,AOCに2SK30を使うとこうなります。ついでに,可変抵抗も500Ωに変更しました。

AOC 2SK30回路.jpg2SK30

AOC 2SK30(VR500Ω).jpg 2SK30 AOCの特性

結果は見事で,可変範囲は-2.03V~+2.05Vとなります。もちろん,0Vのところは1mA程度で,十分,本機のAOC回路として使えそうです。

         ☆         ☆        ☆

さて,このあと,カスコード接続されている2SC1775Aの耐圧がギリギリなので,こちらの代打についても考えてみたいと思います。

カスコード接続はエミッタ接地増幅回路とベース接地増幅回路をシリーズに接続したものです。ベース接地アンプはそれほどゲインは取れませんが,何よりベースが接地され,エミッタとコレクタを交流的にシールドできるため高周波まで安定して使えるので,FMの高周波回路などで使われます。ゲインが取れないので,低周波では使いませんけどね。

TrやFETとシリーズにカスコード接続すると,例の悪名高いミラー効果を相殺できるため,さらに高周波特性が改善されますし,TrやFETがゲインを稼いでくれるので,ベース接地増幅回路の欠点を補ってくれます。ただ,ベース接地回路は教科書には載っていますけど,実際には単独で使用されることは初期のFMのRF増幅回路で用いられたくらいで,現在使用されることはほとんどないと思います。FMやTVのRF増幅回路もカスコードアンプであることが多いですよね。

また,AOC回路ではFETの耐圧不足を補うのが目的ですね。DCプリアンプでも初段がカスコードアンプになっていることがありますが,ほとんどはFETのゲートリーク電流を抑えるため,VDSを小さくするために設置されることが多いと思います。

実を言うと,▼の回路でもAOCは動作しちゃうのです。つまり,カスコード接続されたTrは不要なのです......。

AOC Trなし回路.jpg ありゃ~~?

本当はこんなことやると2SK30は即死しちゃうんですけど......(^^;)。

2SK30のVDSは最大50Vです。LTspiceは過電流や過電圧は無視します。だから,うっかり抵抗が燃えてしまうような大電流が流れていても画面上は何も表示されないので,実際に基板を作る前に1個ずつ,抵抗の損失を調べないとわいけません。LTspiceも過電流が流れると画面の抵抗が燃えるとか,過電圧がかかるとTrが吹き飛ぶとか,それくらいの芸をしてもいいんじゃない? って思ってます......(^^;)。

さて,元に戻って,2SC1775Aは耐圧が120Vであるため,ちょっと耐圧がギリギリです。AOC回路では最大115Vくらいまでかかります。

メーカの保証範囲ですが,ものによってはこの電圧までかけるとリーク電流が増えたり,壊れるものもあるでしょう。

金田氏もこの点,認識されたのか,あとの回路では2SC1775Aの代わりに2SC2230が使われていたりします。ただ,ご存じの通り,2SC1775A2SC1400が入手難になって代わりに使われるようになったのですが,2SC1400のVCEOは80Vなので仮に持っていたとしても使えませんのでご注意ください。

もうひとつ,2SC1775AではhFEが高すぎると思います。

2SC1775Aは本来はプリアンプの初段など,高増幅率の回路に使用されるもので,hFEは400から1200もあり,大きすぎます。あまりhFEが大きなTrというのはノイズに弱いですし,ばらつきも大きくなるので,もっと小さなhFEのTrがよいかと思います。

実際,LTspiceでシミュレーションしてみますと,2SC1775Aのベース電流はほんのわずかです。こんなに小さくてええんかいな~。

AOC 2SK170(2SC1775Aベース電流).jpg AOC回路の2SC1775Aのベース電流

そこで,いくつか,カスコードアンプ用の高圧Trを調べてみました。2SC2230は先ほども書きましたように,40KG6A DCパワーアンプ(No.207 MJ '10.4)などで使われていますね。

カスコードTr    ベース電流      VCEO(V)       IC(mA)  PC(mW)

2SC1775A     1.46μA   120     50    300 

2SC2230      4.97μA   180     100     800

2SC2240      4.98μA   120     100         300

2SC2551      11.42μA     300     100     400

2SC5201      1.73μA     600      50      900

本来はhFEが小さな2SC5201(hFE=80)が非常にIBが小さくて,2SC1775A並み,と言うのが変なんですけどね....。

LTspiceでシミュレーションしてもhFEの違いによる,特性の違いは見られなかったので,ここはもっと耐圧が大きくて,hFEの小さなTrでもよいと思います。2SC1775Aでは耐圧がギリギリですしね。もちろん,耐圧が90Vの2SC1775は使ってはいけません。ここはもっと耐圧の大きな,2SC22302SC2551などでよいと思います。

と言うことなんですけど,iruchanはとりあえず,2SC1775Aを使っているので,このままにしておきました。次は2SC2551にしようかと思っています。もう,なんか2SC1775Aなんて石でも非常に貴重なものになってしまいましたしね。次回,真空管DCプリアンプを作るときは別のTrにしてみます。

         ☆         ☆        ☆

さて,代打2SK30ですが,実際に基板に搭載してみます。すでに,可変抵抗は500Ωに交換してあります。

2sk30a pair.jpg 代打,川藤!!じゃなかった,2SK30A-GRです。

某店で買ったペア品が出ててきたので起用します。

起動後にすぐにオフセットは400mVに下がり,そこで止まっていますので,うまくいったようです。2SK170BLのときはオフセットは2V以下には下がりませんでしたが,2SK30は最初から1Vを下回っているので希望がもてます。それに可変抵抗を回すと変化しますから,何とかなりそう....。

しかし......。

やはり80mVくらいで止まってしまい,それ以下には下がりません.....orz。

ひと晩考えました。そんなにかかるんかぃ?

手としては,さっき,2SK170BLのときにやったように,可変抵抗の片側に抵抗を足してやる方法です。要は,可変抵抗の調整範囲からはずれっちゃってるからこうなるわけですので,この手があります。

あとはあきらめて初段の共通カソードに可変抵抗を入れちゃうか....とも思いましたが,定電流回路に可変抵抗が入れてあるし,もう1個,つけ足すにも基板のスペースがありません。

やはりここまで来たら407Aの交換しかないと思います。

といって,今まで差し替えをすでに試したのですが,いずれもオフセットは変わりませんでした。

でも,よ~く考えてみると,おかしいL ch.の2本の真空管を入れ替えただけで,正常に動作しているR ch.の真空管と入れ替えてみたわけじゃありません。

ということで,初段の407AをLとRで入れ替えてみました。

備後~~! じゃなかった,ビンゴ~~!でした。ATOKもアホだよな~~。

いつまでもオフセットの変わらなかったL ch.がすっとオフセットが下がり,可変抵抗で0Vにできるではないですか[晴れ][晴れ]

おそらく,L ch.は2本の407Aがともにバランス不良だったので,入れ替えても同じ現象だったのだと思います。

金田氏は "AOCのおかげですべての396A407Aの6.3V管)が使えるようになった" と書いておられますが,やはり選別は必要な感じです。

それと,調整の順番も,金田氏はAOCの調整をしてオフセットを0にしてから396A407A)のアイドリングを5mAにする,と書かれていますが,これは逆の方がよいです。先に396Aのアイドリングを5mAにしてからAOCの調整をするべきです。そもそも,iruchanも経験しましたが,アイドリングが5mAに達しない場合が多いと思います。これじゃ,AOCが動作しませんし,また,初段のアイドリング調整の半固定はAOCと連動していて,アイドリング電流に応じてオフセットも変化しますのでご注意ください。

オフセット調整.jpg ただいまオフセット調整中....。

ようやくオフセットの調整をして,1mV以下に下げることができるようになりました。

それにしても原因は407Aの両ユニットのアンバランスでした。とはいえ,AOCも元の2SK170BLのままでは調整できなかったと思いますし,2SK30のAOCは有効だと思います。やっぱ,川藤じゃなかった,ベテランが役に立ちますね!

さて,不良だった407Aですが,iruchanは本機用に20本ほど407Aを買い込んでありますので,別のやつと交換してもよいのですが,成績が悪いからと言ってリストラしてしまうのはかわいそう.....。iruchanだって会社じゃ,とうの昔に戦力外で同じ立場ですしね.......orz。

それに,407Aはそれほどでもないですが,396Aはとても高くなっていて,リストラしちゃうと退職金? が大変ですからね......。

これは初段では使えなくても出力段なら十分使えるはず,と思って出力段にまわってもらうことにしました。

ちゃんとこうしてもオフセットは0Vになりますので,十分使えると思います。まあ,多少のアンバランスが残っちゃうのでひずみ率なんかに影響が出るのでは,と思いましたが,問題ないと思います。そもそも,LTspiceで各真空管の電流や動作点を調べられますが,オフセットが0Vになった状態でも出力段の上下の真空管のプレート電流は同じではなく,ずれていますし,もとから完全対称出力段とは言ってもアンバランスな状態ですので。

初段407A選別外.jpg この子は両ユニットバランス不良でした。

一応,初段としては使えないので×印をつけておきました。出向先じゃなかった,出力段で頑張ってくれ~。

と言う次第で,ようやくこれでフラットアンプも完成です。次回は特性を測ってみたいと思います。


2018年2月24日追記

まだおかしな現象が残っていました。

ようやく,先週,AOC回路の素子を2SK170BLから2SK30Aに交換して,オフセットが0Vになるようにできましたが,よく見ていると一応,0Vに調整しても,ゆっくりですが,どんどんずれていきます。15分もすれば1Vくらいになる始末。オシロをつないで時間軸を最大まで延ばしてみると......

AOC 2SC1775A.jpg 左の方で0Vに調整しています。

こら,アカン~~~[雨][雨][雨]

最初は,初段の定電流回路に使っている,2SD756の周辺で温度特性の悪いのがあるのかと思いました。Trはもちろん,ツェナーDiも温度に敏感です。

金田氏の真空管式DCプリアンプは初段の定電流回路で出力段の真空管のアイドリング調整をするようになっていますが,同時にオフセットも変化します。AOC回路がついていてもこのVRをいじるとオフセットも動きますのでご注意ください。

おそらく,この定電流回路の電流が時間とともに変化しているのだと思いました。

でも.....。

この定電流回路に使われている2SD756のエミッタにつながっている抵抗の両端の電圧を測定しても全然変化しません。

と言う次第で,この部分はシロです。

となると,疑うのはやっぱりAOCの2SC1775Aです。

先週,このTrは古くて貴重なTrだからと交換しませんでした。

どうもやはりこの点があだになったようです。

オシロで観測してみると,どんどん,プラスの方にオフセットがずれていくのがわかります。それに,2SC1775Aに触ってみると輝線が少し下がって,水平になります。やはり温度により変化するようです。今は冬だから私の指の方が冷たいので,温度が下がるとオフセットが下がるようです。

R ch.の方はまったく変化せず,輝線は水平のままなので,やはりL ch.はおかしいようです。

しかたないので2SC1775Aの方にも代打を出さないといけないようです。おそらく,L ch.の方の2SC1775Aはどちらか1個,温度特性が悪いようです。

というしだいで,代打を何にしようか,と言うことなんですが.....,▲の表から選んでもよかったのですが,どうも温度の変化にシビアなようなので,思い切ってTO-92をあきらめ,TO-126かTO-220にすることにしました。これらの方が熱結合したときの接触面積が大きいし,ボリュームもあるので熱容量も大きく,温度変化に対しては強いかと思います。実際,金田氏もWEの421A(No.165 MJ'01.12)のときに三洋の2SC4578を使っておられます。

といって,部品箱を探してもそんなTrはないので,NECの2SC2752を起用することにしました。それに,2SC4578はレベルシフト用の2SA1967同様,あまりにもハイスペックだと思います。こんなに耐圧は高くなくてもよいですよね~。

カスコードTr    VCEO(V)       IC(A)  PC(W)      pin

2SC3421     120     1   10   ECB

2SC2752     400     5   10   ECB

2SC4578     900    50mA  1.75     BCE

実は,基板のパターンが2SC1775A用なので,これと同じピン配置でないとまずいのです。大体,2SC1775Aなど,TO-92は左からECBですが,TO-220だと逆で,BCEのものが多いのです。

ところで,余談ですけど,なんで日本製のTrは真ん中がベースじゃないんでしょ。昔から腹立つんですけど....。これだったら楽なのに~。FETだと割に真ん中がゲートという石が多いので助かるんですが。

おかげで,日本製のTO-92がほぼ絶滅して海外から代替品が入ってきていますが,海外のものは真ん中がベースのものが多いようです。

じゃ,これから便利だな~と思ったんですけど,いままでECBに慣れちゃったので,というか慣らされちゃったので,どうも真ん中がベースのTrは違和感ありまくりで,まだ使っていません。なんか変なんだよな~。


最初,東芝の2SC3421が出てきたので耐圧は2SC1775Aと同じなのでちょっとギリギリですが,2SC2752と違ってフルモールドだし,それにしようと思ったのですが,残念ながら1個しか見つからなかったのであきらめました。

ちょっと,2SC2752だとフルモールドパッケージのように見えて背面にコレクタが露出しているのでデンカシートが必要なのが残念ですが,NEC製だし,これにしました。

実を言うとiruchanはどうも東芝はあまり好きじゃないんですよね~。理由はいろいろあるんですけど,オーディオ用にはあまり使いたくない,という感じです。

2SC2752は本来は6G-A4シングルパワーアンプなど,パワーアンプのリップルフィルタ用として買ってあったものですが,フルモールドじゃないので,放熱器に取りつけるときにデンカシートが必要だし,面倒なので予備役? となっていたものです。iruchanも会社じゃ,とうの昔に予備役だしな~~[雨]

NEC 2SC2752.jpg 2SC2752(NEC)

ちょっと,ドレスの背中が見えすぎ....ロシアのメドベージェワみたいに女の人ならいいけど,トランジスタの背中が見えてもね~という感じなんですけどね.....(^^;)。

さて,とうとう2SC1775Aをお役御免にして,代打の2SC2752を起用した結果です。

成績優秀でした。オシロの輝線はずっと水平のままです[晴れ][晴れ]

AOC 2SC2752.jpg 代打2SC2752の成績です。

    よし,よし,いい子だ~~!!

AOC 2SC2752-1.jpg こんな感じになりました。

ようやくこれでオフセットの問題が解決しました。あとのシールド線の配線を済ませて特性を測りたいと思います。


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